きょうのご飯はなぁ〜に?

赤花雪夜

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一週間カレー〜其の二〜

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朝目を覚ますとそこにいるのは自分の部屋。いつも通りの朝。リビングに行けば可愛い妹と料理上手な母が「おはよう」と朝の挨拶をして、私も挨拶を返す。今日の朝ご飯は食パンにサラダとオムレツに赤ウインナーと冷たいコーンスープ。
私は母が作った手作りいちごジャムをパンに塗って食べる。妹の方を見ると厚切りの食パン六枚に一枚一枚違う味のジャムを付けて食べていた。
口の端に付いたジャムに気づかずそのまま手を合わせて「ご馳走様」と言いながらお弁当を持って学校に行こうとするのを私は止める。
「ジャム、付いてるわよ」
「えっ! 嘘鏡見てくる!」
ドタドタと走りながら洗面所に向かった妹を見てパンをまた一口食べる。
「それじゃ行ってきます!」
汚れを取った顔で慌ただしく妹は学校に向かおうと玄関に行く。そして妹を見送る母。
見送りが終わると母はリビングに戻ってコーヒーを一口飲みながら「そんなにゆっくりで大丈夫?」と聞いた。
「大丈夫よ。時間はまだ余裕あるもの」
「そう。食べ終わったお皿は置いといて」
「分かった」
そんな短い会話で終わって私は朝食を食べる。
食べ終わった後言われた通りお皿は置いて仕事用の鞄を持って玄関に向かう。
「気をつけてね。遅くなるなら電話はしてよ」
「わかってるわ。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
私は家を出て職場に向かう。

自分のデスクに置いてあるパソコンとにらめっこしながら向き合い続けているといつの間にかお昼になっていた。
デスクから離れ食堂でお昼のお弁当を食べる。
今日のお弁当はサンドイッチに串に刺さったアスパラのベーコン巻きにフルーツの串刺しが入っていた。母はいつも私に片手でも食べやすいお弁当を作ってくれるから仕事も捗り本当に助かっている。まだ残っている仕事をお弁当を食べながらこなしなんとか終わらせ、お弁当も食べ終わる。
今日の仕事も定時で終わらせ家に帰ると香ばしいカレーとニンニクと生姜の香りが家の方から漂ってきた。
今日は妹の提案で確かキーマカレーだった事を思い出す。
私は鍵を出して玄関を開けて家に入るといつも妹がお出迎えをしてくれる。今日も妹は私に飛びつきなから「おかえり」と言ってくれた。
「お姉ちゃんおかえり! わかっているとは思うけど今日の晩御飯は……」
「キーマカレー、でしょ。部屋に行って着替えてくるから先にリビングに行ってて」
「分かった!」と妹は元気良くリビングに向かい私も自分の部屋に行く。鞄を置いて部屋着に着替えリビングに行くともう既に、キーマカレーやサラダ、スープがテーブルの上に置かれていた。
「おかえり」
「ただいま」
母にもおかえりと言われ私はただいまと返す。
テーブルに座って母と妹も座るとそこで私達は手を合わせてご飯を食べる。
スプーンでキーマカレーを掬い一口口に入れ食べる。
カレーのスパイスな香りに挽き肉の旨味があり、ニンニクと生姜のガツンっとくるのが堪らなく美味しい。
ちょっと口の中を落ち着かせる為にシーザードレッシングがかかったサラダを食べ、オニオンスープを少し飲んだ後、またキーマカレーを食べる。
こんな感じで食べ進めるといつの間にかお皿三枚は空になっていた。妹も母も既に食べ終わっていて「ご馳走様」と言っていた。
私も「ご馳走様」と言ってお皿を下げて母の隣でお皿を拭いていると、妹が冷蔵庫から何かを出した。
「食後のデザートに、甘い林檎のゼリーはいかが?」
林檎ゼリーを見せて私と母は急いで洗い物を終わらした。ニンニクの入った物は林檎が良いっと聞くけどまさか妹が林檎ゼリーを作ってくれるなんてとても有り難かった。林檎のシャリシャリ感が残っていてゼリーもしっかりと林檎の味がしてとても美味しかった。三人で林檎ゼリーを食べて、歯を磨き、部屋で寝る。
とても美味しいご飯に、美味しいデザートを食べて幸せな気持ちになりながら私は眠った。

朝目を覚ますといつも通りの日常。
ちょっと違うのは朝、昼、夜に出てくるご飯。
毎日私達の為に考えて作ってくれる母が毎日作ってくれるご飯は日常の楽しみでもある。
仕事着に着替えて鞄を持ちリビングに向かうと昨日とは違う朝ご飯がテーブルの上に置いてある。
今日は和食。
白ご飯にお味噌汁。生姜の佃煮に鮭とほうれん草のお浸し、そして鮭。
生姜の佃煮と白ご飯が相性が良くご飯が進みおかずが残りご飯がすぐ無くなってしまう。
おかずも食べるとおかずが先に無くなり残りのご飯を生姜の佃煮と一緒に食べて、お弁当と鞄を持って仕事に向かう。
昨日と同じ日常。ただちょっと違うのは毎日のご飯。お弁当も毎日違う。
今日はおにぎり。彩りが綺麗なおにぎりやちょっと甘めのいなり寿司が入っていてとても美味しかった。朝とお昼がご飯と来ると、夜は沢山のパンがあるかもしれないとそんな事を想像してしまう。午後の仕事を終わらせ問題も無く定時で帰る途中、商店街のよく三人で行っていたケーキ屋さんに目を止めた。私は三つのケーキを買って帰りながら妹が喜んでくれると姿を想像してしまった。
玄関を開けて家に入るといつものように妹が私に飛びつきながら出迎えてくれる。
「お姉ちゃんおかえり!」
「ただいま。今日はケーキを買ってきたわ」
「もしかして商店街の、妖精!」
「そうよ。これ冷蔵庫に入れてくれる?」
「うん!」
妹はケーキを持ってウキウキランランでリビングに向かった。私は自分の部屋に行き部屋着に着替える。
妹が言っていた妖精は商店街にあるケーキ屋さんのお店。そのケーキ屋さんの名前がファンタビアンカ。イタリア語で白の妖精。
ケーキ屋さんの店長のお母さんがアルビノの日本人でお父さんが外国人の血をひくお兄さん。そんな二人の血を受け継いだ白髪で青い目をしたイケメンのお兄さんが一人でケーキ屋を受け継ぎ続けている。
私達三人はそこのケーキ屋さんがとても好きで誕生日の日には絶対にそこのケーキを買っていた。
私は階段を降りてリビングに向かうとテーブルの中央に平たいパンのような物が重ねて置かれてあり、カレーの入ったお皿が三つあった。あれがナンと言うパンなのかしら。
母と妹はなんだかウキウキな感じでニコニコと笑っていた。ケーキがあるのがそんなに嬉しかったのだろうか。
「おかえり。早く座ってご飯食べよう。そしてちょっと休憩したらケーキ食べよう」
「そうそう。早く食べてケーキ食べよ」
分かりやすい二人の反応に私は笑いながら椅子に座った。皆で手を合わせて「頂きます」と言い。
私達は中央に置かれているナンを一枚ずつ取りそれをパンに付けて食べる。
ナンは柔らかいけど弾力はしっかりしている、けど中はふわふわでバターの香りがしてカレーと良く合う。カレーもどろっとしているけど味はそんなにしつこく無くとても美味しい。
手に持っていたナンはいつの間にか私の口から胃に入り無くなってしまいもう一枚ナンを取りちぎると、中からチーズが出てきた。長く伸びるチーズに少し驚くと母が少し笑った。
「どう? 驚いた? 実はチーズ入りのナンも作って見たんだ」
まさかナンも作ったとは、私と妹はこのナンが手作りなことに驚いた。
「ナンも作れるなんてママ凄い!」
私は無我夢中でチーズ入りのナンをカレーに付けて食べた。チーズの濃厚かつまろやかさがカレーのスパイスと相性抜群で癖になりそうだった。だけど、山積みに置かれたナンを見てこの中にチーズ入りが入ってる物と無い物がある。
まるで真剣衰弱をしているかのよう。この中にアタリとハズレがあるようにババか残ったカードと同じものだったり。
そもそもチーズ入りが幾つ作られたかも私は知らない。
「ママ、チーズ入りのナンは何個作ったの?」
「さぁ、忘れた」
やめた。あてにするのは止めよう。私と妹は目があい、一瞬の火花が飛び散る。要するに、これは自分の勘と運でより多くチーズ入りのナンが食べられる。
すっかりチーズ入りの虜になった私達はチーズ入りのナンを求めて奪い合う。
他愛のない話をしながらカレーが無くなり、結果は、私は三枚、妹三枚、母が四枚もチーズ入りのナンを食べた。だけどナンを食べた数は妹が多い。
自分の少食が仇となり途中からお腹いっぱいになって手が止まってしまったがこんなにもお腹いっぱい食べたのは私としても珍しかった。
三人で食べ終わって皿を片付け妹が早速ケーキを食べようと冷蔵庫から出すが母に止められ私達はソファーに三人で座ってテレビを見ながら休憩した。かれこれ二十分位経った頃にそれぞれ好きな紅茶を淹れて妹は待ってましたと言わんばかりに冷蔵庫からケーキを出した。
箱を開けるとケーキが三つに紅茶が置かれる。
私はバタフライピーとチーズケーキ。
妹アップルティーとショートケーキ。
母はレモンティーとミルクレープ。
小さなフォークにケーキを刺して食べて、小さなスプーンで紅茶に砂糖を入れながらくるくる回して飲んで、まるでお茶会のよう。
妹は学校の事を楽しく話し、母は最近野菜がとても良く育つと嬉しそうに笑う。私はケーキを食べなからうんうんと聞いて紅茶を飲む。
私の幸せな時間。一週間のカレーはこれで幕も閉じた。

明日のご飯は何かな。
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