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友田、苦難の3か月
第14話 夏蓮との初対面 1
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青野が掲げた4人のヒロイン達。俺はそのうち3人の数字が見えるようになった。しかし、最難関が残っている。彼女に関しては、足がかりすらない。
しかしこれは果たして偶然なのか、それとも友人キャラという役割に与えられた運命なのか。今俺の手元には、氏名欄に一ノ瀬夏蓮と書かれている生徒手帳があった。
「一ノ瀬さんが落としたのか……?」
周囲を見渡すと、廊下で何か探し物をしている様子の一ノ瀬さんがいた。十中八九、この生徒手帳を探しているのだろう。そばにいる一人のボディガードも一緒に探しているようだ。
「あのー……」
一ノ瀬さんに話しかけようと試みる。しかし、俺が声を出した途端に彼女は思い切り飛びのいてしまった。ボディガードはすかさず俺と彼女の間に割り入った。
「ひぃっ! ご、ごめんなさい。男の人は無理なのです……話しかけないでくだひゃいっ」
男が苦手だと聞いていた一ノ瀬さんは、予想通りの反応を見せた。尻もちをついて怯えている彼女を見ると、これ以上関わるのが忍びなくなってくる。しかし、ここで引き下がるとお互い困ったことになる。
「そこの男子生徒、お嬢様に何か御用がおありですか?」
どうしたものかと思っていたら、ちょうどよくボディガードが話題を持ちかけてくれた。俺は胸ポケットに入れていたものを取り出す。
「あの、これ落としてましたよ」
「それは、お嬢様の生徒手帳っ! 一体どこで……貴様、まさか盗――」
あ、この流れはマズい。一ノ瀬グループのご令嬢に盗みの容疑をかけられたりしたら、好感度どころの騒ぎではない。下手をすれば俺の人生が終わってしまう。冷や汗が全身から一気に吹き出した。
「志穂っ! 無暗に人を疑ってはいけないのですっ!」
「は、はいっ!」
「えっ、誰!?」と思わず声が漏れた。ボディガードの後ろから、場違いなほどに凛々しい声が響きわたった。声の主は、なんと一ノ瀬夏蓮。さっきまで縮こまっていた彼女と、同一人物とは思えない。背筋の伸びたその姿は、まさしくお嬢様と呼べる人物だった。
「い、一ノ瀬さん?」
「は、はひゃあぁぁ~……」
そう思ったのも束の間、俺と目が合ったらまた、頼りなさそうな猫背姿に戻ってしまった。膝から崩れ落ちる彼女を、ボディガードが慌てて支える。
「……お嬢様は、男が相手でなければ凛々しいお方なのだ」
「えぇ……」
「うぅ……」
一ノ瀬さんは、思っていたよりも面白お嬢様だった。
背中に一ノ瀬さんが引っ付いたボディガード、倉敷さんに事情を説明すると、ようやく納得してくれた。
「……ふむ、お嬢様の証言とも一致しているようだ。疑ってすまない。どうもこういった手口で近づいてくる輩が多いものでな」
「輩て」
下心を持った男子生徒もいるかもしれない。けれど、桜花高校ってそこまで治安の悪い生徒はいなかったはずだけど。
「先日、『俺のヒロインに会わせてくれぇー!』と言いながら突撃してきた男がいたな。お前と同じ学年だったはずだが……名前を聞く前に投げ飛ばしてしまった」
「うわぁ……」
一体誰なんだろう。心当たりしかないけど。
一ノ瀬さんの頭上を確認すると、数字らしき物はまだ見えない。まともに会話できてないし、無理もないだろう。彼女との関係は一番地道に進めないといけない気がする。
「落とし物も渡せたし、俺はこれで……」
ここで食い下がるのも不自然だ。一ノ瀬さんとの距離感は特に気を付けないといけない。ちょっとでも踏み込みすぎれば、たちまち拒絶されてゲームオーバーだ。まずは見かけたら挨拶、ぐらいからやっていこう。
「あのっ!」
「お嬢様っ!?」
えっ、と驚いて振り向くと、なんと一ノ瀬さんが俺の前まで急接近していた。勢いあまったからだろうか、俺の胸に吐息がかかるぐらいまで、距離を詰めてきていた。俺の視界は今、彼女によって完全に支配された。
「あ、ありがとうございましたっ! こ、この御恩は……かにゃらずっ!」
「ど、どういたしまして……?」
彼女の潤んだ大きな瞳に、自分が吸い込まれてしまいそうな気分になる。彼女のふんわりとした髪から、穏やかな香水の香りが漂ってくる。鼓動が早くなり、体が硬直してしまった。
「あ、あ……」
一ノ瀬さんも、男に近づきすぎたせいか、獲物に見つかった小動物みたいに全身が固まっていた。つまり、至近距離で見つめ合ったままである。
ふと頭上に白い影が現れたのを、視界の隅で目撃した。しかし、視線は一ノ瀬さんから離せず、数字は見えなかった。
ボディガードも混乱してしまい、チャイムが鳴るまでこの状態が続いていたらしい。彼女の頭上には白い数字らしきものがあった。けれど、数字が何かはわからない。彼女との距離感は、まだまだうまく掴めそうにない。
しかしこれは果たして偶然なのか、それとも友人キャラという役割に与えられた運命なのか。今俺の手元には、氏名欄に一ノ瀬夏蓮と書かれている生徒手帳があった。
「一ノ瀬さんが落としたのか……?」
周囲を見渡すと、廊下で何か探し物をしている様子の一ノ瀬さんがいた。十中八九、この生徒手帳を探しているのだろう。そばにいる一人のボディガードも一緒に探しているようだ。
「あのー……」
一ノ瀬さんに話しかけようと試みる。しかし、俺が声を出した途端に彼女は思い切り飛びのいてしまった。ボディガードはすかさず俺と彼女の間に割り入った。
「ひぃっ! ご、ごめんなさい。男の人は無理なのです……話しかけないでくだひゃいっ」
男が苦手だと聞いていた一ノ瀬さんは、予想通りの反応を見せた。尻もちをついて怯えている彼女を見ると、これ以上関わるのが忍びなくなってくる。しかし、ここで引き下がるとお互い困ったことになる。
「そこの男子生徒、お嬢様に何か御用がおありですか?」
どうしたものかと思っていたら、ちょうどよくボディガードが話題を持ちかけてくれた。俺は胸ポケットに入れていたものを取り出す。
「あの、これ落としてましたよ」
「それは、お嬢様の生徒手帳っ! 一体どこで……貴様、まさか盗――」
あ、この流れはマズい。一ノ瀬グループのご令嬢に盗みの容疑をかけられたりしたら、好感度どころの騒ぎではない。下手をすれば俺の人生が終わってしまう。冷や汗が全身から一気に吹き出した。
「志穂っ! 無暗に人を疑ってはいけないのですっ!」
「は、はいっ!」
「えっ、誰!?」と思わず声が漏れた。ボディガードの後ろから、場違いなほどに凛々しい声が響きわたった。声の主は、なんと一ノ瀬夏蓮。さっきまで縮こまっていた彼女と、同一人物とは思えない。背筋の伸びたその姿は、まさしくお嬢様と呼べる人物だった。
「い、一ノ瀬さん?」
「は、はひゃあぁぁ~……」
そう思ったのも束の間、俺と目が合ったらまた、頼りなさそうな猫背姿に戻ってしまった。膝から崩れ落ちる彼女を、ボディガードが慌てて支える。
「……お嬢様は、男が相手でなければ凛々しいお方なのだ」
「えぇ……」
「うぅ……」
一ノ瀬さんは、思っていたよりも面白お嬢様だった。
背中に一ノ瀬さんが引っ付いたボディガード、倉敷さんに事情を説明すると、ようやく納得してくれた。
「……ふむ、お嬢様の証言とも一致しているようだ。疑ってすまない。どうもこういった手口で近づいてくる輩が多いものでな」
「輩て」
下心を持った男子生徒もいるかもしれない。けれど、桜花高校ってそこまで治安の悪い生徒はいなかったはずだけど。
「先日、『俺のヒロインに会わせてくれぇー!』と言いながら突撃してきた男がいたな。お前と同じ学年だったはずだが……名前を聞く前に投げ飛ばしてしまった」
「うわぁ……」
一体誰なんだろう。心当たりしかないけど。
一ノ瀬さんの頭上を確認すると、数字らしき物はまだ見えない。まともに会話できてないし、無理もないだろう。彼女との関係は一番地道に進めないといけない気がする。
「落とし物も渡せたし、俺はこれで……」
ここで食い下がるのも不自然だ。一ノ瀬さんとの距離感は特に気を付けないといけない。ちょっとでも踏み込みすぎれば、たちまち拒絶されてゲームオーバーだ。まずは見かけたら挨拶、ぐらいからやっていこう。
「あのっ!」
「お嬢様っ!?」
えっ、と驚いて振り向くと、なんと一ノ瀬さんが俺の前まで急接近していた。勢いあまったからだろうか、俺の胸に吐息がかかるぐらいまで、距離を詰めてきていた。俺の視界は今、彼女によって完全に支配された。
「あ、ありがとうございましたっ! こ、この御恩は……かにゃらずっ!」
「ど、どういたしまして……?」
彼女の潤んだ大きな瞳に、自分が吸い込まれてしまいそうな気分になる。彼女のふんわりとした髪から、穏やかな香水の香りが漂ってくる。鼓動が早くなり、体が硬直してしまった。
「あ、あ……」
一ノ瀬さんも、男に近づきすぎたせいか、獲物に見つかった小動物みたいに全身が固まっていた。つまり、至近距離で見つめ合ったままである。
ふと頭上に白い影が現れたのを、視界の隅で目撃した。しかし、視線は一ノ瀬さんから離せず、数字は見えなかった。
ボディガードも混乱してしまい、チャイムが鳴るまでこの状態が続いていたらしい。彼女の頭上には白い数字らしきものがあった。けれど、数字が何かはわからない。彼女との距離感は、まだまだうまく掴めそうにない。
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