サブキャラへのゲーム転生は、思ったより大人しくしていられない

こなひー

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第1話 転生、自覚

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 僕は、人の頼みを断れない弱気な奴だった。学生の頃は掃除当番や先生の仕事を引き受け続け、社会人になっても仕事を押し付けられる日々。それが僕にとって唯一、人の役に立っているという実感を持つ事ができる手段だった。

 若くして病気で死んでしまう直前――とある言葉が脳裏に浮かんだ。いや、浮かんでしまった。

 『今まで僕がやって来たことって、僕じゃなくてもよかったんじゃないのか?』

 突如僕の中に過ったこの一言によって、僕の人生の意味が全否定されてしまったのだ。思い返してみれば、僕が役割を引き受けた時の相手は……誰も僕自身に感謝してはいなかった。記憶に残っているのは、ただ自分が楽になったという安堵の表情と、上部だけの感謝の言葉ばかり。

 そして終いには……僕が亡くなるまでの間、心配してくれたのは身内だけだった。他の連絡先からの着信履歴は、ずっと更新されないままだったので消してしまった。

 (思い出せば思い出すほど……意味の無い人生だったな……)

 誰にも届かない嘆きは、僕の身体と共に微睡みの中に消えていった。

 
「ん……朝か……」
 
 夢の中で誰かの記憶を見終えた俺、ハルト・ユークリウッドは段々意識が覚醒する。目覚めると目の前にはきらびやかに装飾された屋根付きベッドが視界に入る。自分の赤を基調とした立派なベッドで上半身を起こし、先ほど見た夢のことを思い出す。

 (なんだったんだ?あの夢……知らない話だったのに妙に自分の事に感じたような)

 ベッドから降りて、サイドテーブルに置いてあった鏡を見る。短めの乱れた銀髪とエメラルド色の瞳、やや童顔な自分の顔は特に異常無し。勿論、夢の中に居たボサボサの黒髪や生気の抜けたような黒い瞳の男とは全く似つかない。
 それなのに、何故かあの姿が自分にしっくりくるような感覚がある。普通の夢なら内容なんて忘れてしまうのに、起きてから時間が経っているにも関わらずはっきりと覚えている。

 (……覚えている?違う……俺、いや……僕は――)

 ここで僕は理解した。夢を覚えているのではなく、あの光景をのだということに。

「お……思い、出したぁっ!」

 思わず大声を上げてしまう。今の光景は紛れも無く自分が経験した記憶そのものだった。しかしその経験は、ハルト・ユークリウッドのものでは無い。つまり考えられるのは前世の記憶ということなのだろうか。

(前世……転生って……あれは創作の話じゃなかったの!?)

 ゲームの世界に転生するという話は空想物語として聞いたことはあった。けれどまさか自分がその当事者になってしまうなんて全くの予想外だ。
 僕がすぐにゲームだと判断したのには理由がある。自分の名前や記憶上関わってきた人物を思い返した時、あまりゲームをやってこなかった自分がプレイすることになった数少ない作品の1つと完全に一致していたからだった。
 
「僕の名前に……これ、昔妹から押し付けられて代わりにやった乙女ゲーの世界じゃないか……」
 
 ここは『プリンスとの箱庭学園』という乙女ゲーの世界と何もかもが一致している世界だったのである。自分がゲームの登場人物になってしまうなんて、これから一体どうなってしまうのだろうか。
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