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大丈夫よ...私の愛しい人
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「お前と婚約破棄する!」
そう言った私の愛しい人は涙を流し、絶望したような顔をして隣の令嬢を抱き寄せていた。
隣の令嬢はにやけた顔をしてこちらを見ているため、彼が涙を流し、苦痛に耐えていることに気がついていない。
大丈夫、大丈夫よ...私の愛しい人。
だから、そんな辛そうな顔で泣かないで。
いま...私が...
「いま...私が貴方を救ってあげる。」
私はその場でゆっくり回る。
私から淡い光が放たれ、髪型は髪飾りで一結びされ、彼の色に合わせたドレスが舞を舞う儀式に用いる巫女服へと変わり、足元も足袋と履物を履いた姿へと変わる。
リーン...。
鈴の音色が一つ響き渡る。
私が片手を上に向かって差し出せば、神楽鈴が現れシャンと透き通った音色を響かせ私の手へと収まる。
シャン...シャン...。
神楽鈴を鳴らしながら、舞を舞う。
神楽鈴の持ち手についている幾重にも分かれている長い光の筋は私の魔力で出来ているため、先が光の粒を発しながら周りに広がる。
幻想的な空間の中で、彼が穏やかな表情へと変わっていく。
彼は隣の令嬢からゆっくりと離れ、こちら側へ向かってくる。
舞は終盤。
スッと神楽鈴を持っている手を上げ、数度鳴らす。
心を込め、祈りを込め、願いを込め、一回一回を大切に鳴らす。
シャララララーーーーン...。
最後に鳴らし、お辞儀をする。
顔を上げると、私は元のドレス姿に戻り、目の前に愛しい人が微笑んでこちらをみていた。
私は微笑んで手を差し出し、寄り添う。
「なんで...。なんでよ...いままでうまくいってたのに!」
一人になってしまった令嬢が唖然としながら叫ぶ。
私は片手を彼の頬へと手を伸ばし撫でると、彼は私の手を自身の手で覆い目を閉じる。
愛しさが溢れて止まらず、笑顔が溢れる。
笑顔になったまま令嬢の方へと顔を向け、いまだに手を離してくれない彼に手を添えたまま
「彼は私の愛しい人だもの。返してもらいましたよ。」
と言い放った。
令嬢は彼を盗られたことに、怒りを感じたようだ。
なにか言い掛けたが...それよりも私は先に発言をする。
「もうあなたがなにをしようとも、私の愛しい人はあなたの物にはならないわ。諦めなさい。」
「嫌、嫌よ!」
令嬢が自身の力を使うが、状況は変わらない。
私が彼と周りを浄化するのに加え、令嬢自身の力を自身で無効にするように変えてしまったからだ。
つまり、令嬢は魅了に近い魔力を発しながら、自身の魔力を無効化している。
令嬢自身はこの事に気がついていない。
膝をつき、泣いてしまった。
もう良いだろう。
私の愛しい人は返して貰ったし、ここに用はない。
彼から私の手を離してもらい、私達は寄り添いながらこの場を去った。
おわり
そう言った私の愛しい人は涙を流し、絶望したような顔をして隣の令嬢を抱き寄せていた。
隣の令嬢はにやけた顔をしてこちらを見ているため、彼が涙を流し、苦痛に耐えていることに気がついていない。
大丈夫、大丈夫よ...私の愛しい人。
だから、そんな辛そうな顔で泣かないで。
いま...私が...
「いま...私が貴方を救ってあげる。」
私はその場でゆっくり回る。
私から淡い光が放たれ、髪型は髪飾りで一結びされ、彼の色に合わせたドレスが舞を舞う儀式に用いる巫女服へと変わり、足元も足袋と履物を履いた姿へと変わる。
リーン...。
鈴の音色が一つ響き渡る。
私が片手を上に向かって差し出せば、神楽鈴が現れシャンと透き通った音色を響かせ私の手へと収まる。
シャン...シャン...。
神楽鈴を鳴らしながら、舞を舞う。
神楽鈴の持ち手についている幾重にも分かれている長い光の筋は私の魔力で出来ているため、先が光の粒を発しながら周りに広がる。
幻想的な空間の中で、彼が穏やかな表情へと変わっていく。
彼は隣の令嬢からゆっくりと離れ、こちら側へ向かってくる。
舞は終盤。
スッと神楽鈴を持っている手を上げ、数度鳴らす。
心を込め、祈りを込め、願いを込め、一回一回を大切に鳴らす。
シャララララーーーーン...。
最後に鳴らし、お辞儀をする。
顔を上げると、私は元のドレス姿に戻り、目の前に愛しい人が微笑んでこちらをみていた。
私は微笑んで手を差し出し、寄り添う。
「なんで...。なんでよ...いままでうまくいってたのに!」
一人になってしまった令嬢が唖然としながら叫ぶ。
私は片手を彼の頬へと手を伸ばし撫でると、彼は私の手を自身の手で覆い目を閉じる。
愛しさが溢れて止まらず、笑顔が溢れる。
笑顔になったまま令嬢の方へと顔を向け、いまだに手を離してくれない彼に手を添えたまま
「彼は私の愛しい人だもの。返してもらいましたよ。」
と言い放った。
令嬢は彼を盗られたことに、怒りを感じたようだ。
なにか言い掛けたが...それよりも私は先に発言をする。
「もうあなたがなにをしようとも、私の愛しい人はあなたの物にはならないわ。諦めなさい。」
「嫌、嫌よ!」
令嬢が自身の力を使うが、状況は変わらない。
私が彼と周りを浄化するのに加え、令嬢自身の力を自身で無効にするように変えてしまったからだ。
つまり、令嬢は魅了に近い魔力を発しながら、自身の魔力を無効化している。
令嬢自身はこの事に気がついていない。
膝をつき、泣いてしまった。
もう良いだろう。
私の愛しい人は返して貰ったし、ここに用はない。
彼から私の手を離してもらい、私達は寄り添いながらこの場を去った。
おわり
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