安瀬乃片敷六丁目六番地六号より

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第二十七話 万引き

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 Y絵さんが、行きつけの薬局が臨時休業で隣町まで足を伸ばさなければいけなかったときの話だ。

「ちょっとあなた」
 お目当ての商品を無事購入し、さっさと帰宅しようと店を後にしようとしたY絵さんの肩を引きとめたのは店の覆面警備員だった。
「あなた、会計通してないわよね?」

 そう言われたが、Y絵さんには心当たりが無い。
 必要なものだけをさっさと購入したから誤解だろうと言ったが、警備員は納得しない。
 しょうがないので事務所に行き、荷物を調べてみたところ…ポケットから、知らないお菓子が出てきた。
「ほら、やっぱり!」
 警備員はそう鼻息を荒くしたが、Y絵さんには本当に覚えが無い。
 そもそも自分は薬を買いに着ただけで、お菓子のコーナーには行っていない。これは誰かの悪戯だ、納得しないなら警察でも何でも呼べばいい。そうはっきり応じるY絵さんの気迫に押された形で、店員もその場は注意だけで済ますこととなった。

 ぷりぷり怒りながらも解放されたY絵さんだが、店を出てからポケットに手を突っ込んだときに驚いた。

 なんとまた、覚えの無いお菓子が入っている。

 というより、先ほど事務所に通されて荷物検査してから、そのまま覆面警備員に見張られる形で出口へ直行している。間違いなく、その間に自分がポケットに入れられたわけは無い。
 いささか気持ちが悪かったY絵さんは再び元の店に取って返し、事務員に事情を説明した。

「本当に、あなたが盗んだわけではないんですよね?」
 事務員の問いに、Y絵さんは覆面警備員と顔を見合わせてうなずく。
 なにせY絵さんがすぐ前を歩いていたのだから、妙な動きをしていないのは確実。覆面警備員も不承不承という形ではあるが、無罪を認めた。

 しかし、そうなると手の込んだ第三者の悪意が関わっているのかもしれない。

 話し合った結果、Y絵さんも納得した上で警備カメラの録画を観てみることとなった。
 しばらく観ていた後、その場にいた全員があっと声を上げることとなる。

 モニターの中では、薬の代金を支払っているY絵さん。その背後に、ぼんやりと白く霞む人型のもやが現れ…何かをポケットに突っ込んでいる光景がはっきりと写っていた。

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 ツギハ6ニチ19ジ
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