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えっちな俺とおバカな女神(候補?)
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「─と言う訳なんですが、ご理解頂けましたか?」
「······。」
真っ青な空の下、いま俺はあぐらをかいて芝生の上に座っている訳なのだが···
「池田様? 聞いていらっしゃいますか?」
シルクハットに燕尾服を淡麗に着こなし、銀縁のチェーンの付いた丸眼鏡を掛けた···
「うさぎ、だな···」
少し垂れた耳をクイッと掴んでは、ゆーらゆーらと揺らす。
「おやめ下さい。池田様。私は、うさぎにはうさぎでも、そんじょそこらのうさぎとは違います。おやめ···やめ···っろーーーーっ!」
いきなり小さな二本足で蹴られ、うさぎ共々芝生の上に突っ伏した。
「─ったく、あなたって人は···」
「······。」
(それは、俺が言う台詞なんだがな···)
身体は、小せーのになんなんだよ、その凄まじきパワーは!
「私が、あなたの頭! でも、わかるように教えて差し上げたのに···」
小さなうさぎは、前足で服に付いた汚れをはたき落とすと、毛づくろいをし始めた。
「うさぎじゃねーか。どう見ても···」
「うさぎではございません。私は···」
目の前にちょこんと立っているうさぎが、俺を見上げながら一息付いた時、少し離れた所から、
「ヴァールー! どこ行ったのー? ヴァールー!」
そんな声が、聞こえてくると、うさぎの耳がピクピク動き出し、うさぎがポケットから小さな懐中時計を取り出した。
(さながら、ふし○の国のア○スじゃねーか!)
「おっと、いけません。お姫様のおやつの時間でございますね。さ、池田様? 急ぎましょう!」
そう言われても、何故俺が?状態で···
こちらが、急がなくても向こうから来てくれた。
のはいいが···
(誰? 可愛いとは思うが、デカくね?)
そう思わざるを得ない位に、俺の前に立った少女?の胸は、デカかった。
「あ、お嬢様。やっと見つけましたよ、池田様」
「······。」
(見た目、小学生?)
「あ、ども···」
そのお嬢様?は、真っ白なフワッとしたドレスに、銀色のウエーブがかった長い髪を揺らし、頭には小さな花飾りを付けていた。
「まぁ! あなたが?! 初めまして。私、この国の王妃·エデリーと申します」
ドレスの裾を少し摘んで、ゆっくりと頭を下げる姿に、俺もつい正座して頭を下げた。
「さぁ、急ぎましょ! お母様が探してますわ!」
小さな女の子に手を引っ張られ、うさぎも二本の足で走り(跳ねるんじゃねーのかよ!)大きな屋敷まで向かった。
(屋敷というより···)
「城?」
フランスとかにありそうな○○宮殿みたいなそんな感じのデカい城だった。
「早く参りましょ!」
エデリーという少女は、にこにこして先を走り、後ろを歩く俺を見、転んだ。
小さな子供でもよくあることだ···
泣きそうな顔で俺を見たが、
「お嬢様? 後ろばっか見て走るからそうなるのですよ? さ、お立ちなさい?」
執事風のうさぎ·ヴァル(と言うらしい。しかも、執事だ!)にそう声を掛けられ、涙目をグイッと擦りながら立ち上がった。
石で積みあげられた階段もさながら、扉も割と大きく怖そうな門番が、ジロリと俺を見た。
「シルバー、この方が池田様よ! こっちが、ゴールド。双子なのに、髪色が違うの」
そういや、顔の造りや体格は同じなのに、髪色だけが違うが、怖そうな人だ。
ギィーッと重い音を軋ませ扉が開くと、眩いばかりの大きなシャンデリアに真っ赤な絨毯が延々と階段をつたっている。
「「「お帰りなさいませ! エデリー王妃様!」」」
20人はいそうなメイドが、両脇にズラッと並び、頭を下げる。
「マリー? お母様は?」
「お部屋に···」
「シェリー? 今日のおやつはなーに?」
「はい。ラズベリームースとヴィスキュイでございます」
(この女の子すげー! メイドひとりひとりに声を掛けてる! 俺なんてろくにクラスメイトの名前知らんのに)
自分と比べても仕方がないが···
(でも、何かを忘れてるような? はて?)
そんな事を考えつつも、目にする全てが驚きづくし!で···
「池田様? はしたないですよ? おくち、おくち!」
何故か、うさぎのヴァルが肩に乗っていたのも気づかなかった。
「降りろよ」
そう言う聡太に、ヴァルは澄まし顔で、
「嫌でございます。少し歩くのに疲れました」
うさぎの癖に、歩くのに疲れたと戯言を言うから、ひっぺ剥がそうとしても、これが接着剤でも使ったのか剥がれず···
いつの間にか、城の入り口よりもデカ過ぎる扉の前まで来ていて、ヴァルもやっと肩から降りた。
重い音を軋ませ、扉が開くとまたもや先程と同じ姿のメイドが、ズラリと並び、頭を下げていく。
(全員一斉ではないのな。ウェーブみたいだ)
そんな中を歩く俺ら3人···
あ、二人と1匹?
は、壇上にデンと座ってる女性の前に出ていった。
「お母様、只今戻りましたわ」
母親の前でもエデリー王妃は、お姫様らしく頭を下げ、うさぎのヴァルはハットを胸に頭を下げ、俺は···
「どうも···」
軽く頭を下げたのであった。
(そういや、なんで椅子が1つ?)
「浮気、をしたからです」
「······。」
目の前に座っている女性が、顔を紅くしそう言った。
「お母様? お父様は?」
(俺、いま声に出した?)
「声にしなくても、私にはあなたの考えてる事がわかります。エデリー? もうあなたには、お父様はいないの。わかってちょーだい」
「やだっ! エデリーにとっては、パパはパパだもんっ!」
「さ、お嬢様? あちらで、おやつを召し上がりましょ」
うさぎのヴァルが、気を利かせエデリーを連れてくが···
(え? 嘘! マ?)
うさぎの姿から、人間の姿になり変わり、ズルズルとエデリーを引きずっていった。
「申し訳ございません。お見苦しいところを···」
「いえ···。あの、少し聞いていいですか?」
母さんみたいな温かい空気が、周りを包み混んでいく。
「そうですわね。まだエデリー達は、あなたがなんでここに来たのか? すらも、話してはいないでしょう」
「俺···」
「貴方は、無謀な運転をした方に跳ねられ、亡くなったのです」
「やっぱ?」
女神は、頷き頭上に映し出されたモニター画面を指で操作していた。
「ん?」
モニターに映し出されたのは、病院のベッドの上で眠り続けてる俺。
「幸い、怪我は1つもなくきれいなままなんですが···」
そうだな。頭に包帯は巻かれてるが、あの機械はピコンピコン動いて···動いて?
「死んで? ね?」
「はい。一旦は、心肺停止になり危うかったのですが···」
「はぁ···」
「池田様の身体の中に···」
「はい?」
(もしかしたら、戻れる? 戻りたくねーな)
「別の方の霊が入りまして···」
「はい? いまなんと?」
「戻れなくなりましたねぇ···。困りましたわ」
···
······
·········
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!? マジ? じゃ、俺ずっとこの世界にいられんの?!」
階段を駆け上ると、メイドが駆け寄り、女神を庇う。
「大丈夫ですよ。池田様は驚かれただけ。お下がりなさい」
女神は、優しく言うとメイド達は、頭を下げ、もといた場所へと戻った。
「いえ。ここに異世界のものが住むことは禁じられております。何か別のものとして、生まれ変わるしかございません」
女神は、溜息を付きながら首を振った。
「別のもの? 俺の身体には?」
「確実に戻れるという保証はありません。申し訳ございません。エデリーが、あんなことをしなければ···」
「?」
俺の頭の中には、ハテナマークが積み重なる。
そんなところへ···
「お母様ー。おやつ美味しかったー!」
場違いな声で登場したエデリーとヴァル···
(うさぎだ)
「お嬢様、慌てない···」
(なんだこいつ。うさぎになったり、人間になったり···)
「ヴァル? あなたの素性を覚えてる範囲で、教えてお上げなさい。池田様? 選択肢は、こちらにはございません。どちらを選択するか、暫くこちらに滞在してお決め下さい」
女神がそう言うと静かに立ち上がり、メイドに囲まれる形でこの大きな部屋から出て行った。
「ほぅ? 全てお聞きに?」
ヴァルがそう言うと、エデリーがヴァルの後ろに隠れる。隠れてはいないが···
「怒る?」
弱々しい猫みたいな声を発しながら、俺を見る。
「俺の部屋は? そこで、心ゆくまで、お前が何をしたのか教えてくれないか。エデリー姫?」
静かな部屋にエデリーのガタガタと震える音が聞こえてきそうだった。
「では、こちらへ。お嬢様? 大丈夫です。池田様は、お嬢様に何もしませんから。そう、な·に·も···。参りましょう」
「うん。確かにこれじゃ、なんーもっ出きんな! つか、うさぎー! テメー、俺に薬もってんじゃねーよ! この縄解けーーーーっ! テメーーーッ!」
確かに部屋に通された時は、何もなかった。
「さ、これをお飲み下さい。心が落ち着きますから···」
ヴァルに言われるがまま、差し出された紅茶を飲み、クッキーを摘んでる内に···
眠らされて、気付いたら縄でグルグル巻かれ、ベッドに寝転がされていた。
(このベッド、デカ過ぎるだろ!)
転がってもなかなか橋までいかねーのなんの!
「ヴァルー。まだ、怒ってる?」
泣きそうな顔で俺とヴァルを見比べるエデリー。
「さぁ、どうでしょうか? 池田様? これから怒らないとお約束して頂ければ、解いて差し上げますが?」
うさぎの癖に手にしたナイフをクルクル回して、ニヤニヤ笑う。
「こえーんだよ。それしまえよ。つか、トイレ行かせろーー。しょんべん、漏れるーーーっ! 怒らないからーーーっ!」
かくして、10分後···
ジャーーーーッとトイレの水を流し、スッキリした俺は椅子にちょこんと掛けてるエデリーの頭を軽く叩きながら、ベッドへと掛けた。
「で? 話して貰おうか? 俺が死んだのに、なんで他の奴の霊が入ってんだ?」
エデリーは、チラチラうさぎを見るも真っ向無視を決め込んでるし。
「エデリーがね、ボタンを間違えたの」
「なんの?」
「転移ボタンと転生ボタン···。ママは、押しちゃ駄目よって言ったのに···」
「おや、時間だ」
逃げよとするうさぎをムンズと捕まえ、傍に置く。
「ほんとは、転生ボタン押せばお兄ちゃん転生するんだけど···。ちょうちょがね、止まったの」
なんとなく嫌な予感はしたが···
「ちょうちょ、がね」
「うん。で、エデリーね、ママにちょうちょ見せたら、ママはパパ許してくれると思って、捕まえようとしたらね···」
「そしたら、ボタンを二つ押したと?」
「うん。ごめんね」
(ごめんね、で済んだらお巡りさんいねーよ)
「こういう時はな、俺の世界じゃ、こうすんだ!」
エデリーを膝に乗せると、ドレスをめくりパンツを下ろし···
ペチンペチンと尻を叩き始めた。
「うぇーん。ごめんなさーい! もうしないからー!!」
「当たり前だ! うさぎ、お前も同罪だかんな!」
「えーーっ? おイタしたのは、お嬢様···だぁっ!!!」
うさぎの尻の毛を抜いてやった。
俺が死んだのは、突発的な事故だったにしろ、同じ時刻に転生させる奴がエデリーのミスで、俺の身体に転移したらしいのはわかったが···
「じゃ、俺の身体に入った奴って誰?」
そう聞いても二人は、顔を見合わせわからないと言う。
モニターで見る限り、いまはまだ昏睡状態らしく酸素マスクをしてる姿しか映し出されない。父さんも母さんも妹もベッドの周りで立ち尽くしたままだった。
「もしこのまま俺が死んだら、中の奴も死ぬんだよな?」
「えぇ、そうです。このヤマを乗り切ってくれないと中にいるのが誰なのかもわからないですし···」
「お兄ちゃんは、おうちに帰りたい?」
エデリーは、大きなクッションを抱えながら聡太に聞いた。
「帰りたいってか、もし仮に俺が助かったとしても、俺が俺の中に入ることって出来るの?」
「それは···」
うさぎのヴァルが、エデリーを見、
「パパなら···出来るかも知れないけど。ねぇ」
今度は、エデリーがヴァルを見て、互いに溜息をつく。
(ん? 待てよ?)
「エデリーのパパって、この国の?」
「さようで。ここケイレール国の国王でございます」
ヴァルが、鏡で自分のお尻をチェックしながらそう言った。
「でも···」
「いま少しありまして···」
(どこの世界でも浮気なんてあるだろうけど···)
「でも浮気の1つや2つ···」
エデリーは、首を傾げながら指を折り、ヴァルは、
「そうではございません。全てでございます」
「はい? 全て?」
全てってなんだ?この国?まさか、世界?
「このケイレール国全ての女性という女性と浮気···コホンッ」
(つか、よく身体持つな、おっさん!)
「すごいんだよ。エデリーのお友達にも···」
神様? 俺の中で何かがキレそうですよ?
「エデリーは、いま何歳?」
見た目小学生のエデリーが、パッと片手を広げた。
「5歳?」
「ううん。50歳だよ。お兄ちゃん、何歳?」
って、待てやゴラァ!どこの世界にこんな小学生みたいな、50歳がおんねんっ!!
なんか頭がこんがらがってきた。
「おや、お嬢様? そろそろ、眠るお時間になりますよ?」
「ふぁっ···」
エデリーは、お嬢様らしく小さくあくびをし、目を擦りながら立ち上がった。
「俺も寝る。なんか、疲れてきた。頭が···」
「そうですか? では···」
何故かうさぎは、ウキウキとしながら聡太が寝ようとするベッドに···
「······。」
ポイッ···
「おめーは、ここじゃねぇ」
廊下にエデリーと共に出されたヴァルは、名残惜しくチラッと聡太を見、怪しげな笑みを浮かべた瞬間、枕の攻撃を受け飛ばされた···。
「ふん。寝よ、寝よ。あとのことは明日考えよう! うん」
あまり深く考えないこの性格が、あとに頭を悩ますことになろうとは、この時の聡太には予測もつかなかった···
「······。」
真っ青な空の下、いま俺はあぐらをかいて芝生の上に座っている訳なのだが···
「池田様? 聞いていらっしゃいますか?」
シルクハットに燕尾服を淡麗に着こなし、銀縁のチェーンの付いた丸眼鏡を掛けた···
「うさぎ、だな···」
少し垂れた耳をクイッと掴んでは、ゆーらゆーらと揺らす。
「おやめ下さい。池田様。私は、うさぎにはうさぎでも、そんじょそこらのうさぎとは違います。おやめ···やめ···っろーーーーっ!」
いきなり小さな二本足で蹴られ、うさぎ共々芝生の上に突っ伏した。
「─ったく、あなたって人は···」
「······。」
(それは、俺が言う台詞なんだがな···)
身体は、小せーのになんなんだよ、その凄まじきパワーは!
「私が、あなたの頭! でも、わかるように教えて差し上げたのに···」
小さなうさぎは、前足で服に付いた汚れをはたき落とすと、毛づくろいをし始めた。
「うさぎじゃねーか。どう見ても···」
「うさぎではございません。私は···」
目の前にちょこんと立っているうさぎが、俺を見上げながら一息付いた時、少し離れた所から、
「ヴァールー! どこ行ったのー? ヴァールー!」
そんな声が、聞こえてくると、うさぎの耳がピクピク動き出し、うさぎがポケットから小さな懐中時計を取り出した。
(さながら、ふし○の国のア○スじゃねーか!)
「おっと、いけません。お姫様のおやつの時間でございますね。さ、池田様? 急ぎましょう!」
そう言われても、何故俺が?状態で···
こちらが、急がなくても向こうから来てくれた。
のはいいが···
(誰? 可愛いとは思うが、デカくね?)
そう思わざるを得ない位に、俺の前に立った少女?の胸は、デカかった。
「あ、お嬢様。やっと見つけましたよ、池田様」
「······。」
(見た目、小学生?)
「あ、ども···」
そのお嬢様?は、真っ白なフワッとしたドレスに、銀色のウエーブがかった長い髪を揺らし、頭には小さな花飾りを付けていた。
「まぁ! あなたが?! 初めまして。私、この国の王妃·エデリーと申します」
ドレスの裾を少し摘んで、ゆっくりと頭を下げる姿に、俺もつい正座して頭を下げた。
「さぁ、急ぎましょ! お母様が探してますわ!」
小さな女の子に手を引っ張られ、うさぎも二本の足で走り(跳ねるんじゃねーのかよ!)大きな屋敷まで向かった。
(屋敷というより···)
「城?」
フランスとかにありそうな○○宮殿みたいなそんな感じのデカい城だった。
「早く参りましょ!」
エデリーという少女は、にこにこして先を走り、後ろを歩く俺を見、転んだ。
小さな子供でもよくあることだ···
泣きそうな顔で俺を見たが、
「お嬢様? 後ろばっか見て走るからそうなるのですよ? さ、お立ちなさい?」
執事風のうさぎ·ヴァル(と言うらしい。しかも、執事だ!)にそう声を掛けられ、涙目をグイッと擦りながら立ち上がった。
石で積みあげられた階段もさながら、扉も割と大きく怖そうな門番が、ジロリと俺を見た。
「シルバー、この方が池田様よ! こっちが、ゴールド。双子なのに、髪色が違うの」
そういや、顔の造りや体格は同じなのに、髪色だけが違うが、怖そうな人だ。
ギィーッと重い音を軋ませ扉が開くと、眩いばかりの大きなシャンデリアに真っ赤な絨毯が延々と階段をつたっている。
「「「お帰りなさいませ! エデリー王妃様!」」」
20人はいそうなメイドが、両脇にズラッと並び、頭を下げる。
「マリー? お母様は?」
「お部屋に···」
「シェリー? 今日のおやつはなーに?」
「はい。ラズベリームースとヴィスキュイでございます」
(この女の子すげー! メイドひとりひとりに声を掛けてる! 俺なんてろくにクラスメイトの名前知らんのに)
自分と比べても仕方がないが···
(でも、何かを忘れてるような? はて?)
そんな事を考えつつも、目にする全てが驚きづくし!で···
「池田様? はしたないですよ? おくち、おくち!」
何故か、うさぎのヴァルが肩に乗っていたのも気づかなかった。
「降りろよ」
そう言う聡太に、ヴァルは澄まし顔で、
「嫌でございます。少し歩くのに疲れました」
うさぎの癖に、歩くのに疲れたと戯言を言うから、ひっぺ剥がそうとしても、これが接着剤でも使ったのか剥がれず···
いつの間にか、城の入り口よりもデカ過ぎる扉の前まで来ていて、ヴァルもやっと肩から降りた。
重い音を軋ませ、扉が開くとまたもや先程と同じ姿のメイドが、ズラリと並び、頭を下げていく。
(全員一斉ではないのな。ウェーブみたいだ)
そんな中を歩く俺ら3人···
あ、二人と1匹?
は、壇上にデンと座ってる女性の前に出ていった。
「お母様、只今戻りましたわ」
母親の前でもエデリー王妃は、お姫様らしく頭を下げ、うさぎのヴァルはハットを胸に頭を下げ、俺は···
「どうも···」
軽く頭を下げたのであった。
(そういや、なんで椅子が1つ?)
「浮気、をしたからです」
「······。」
目の前に座っている女性が、顔を紅くしそう言った。
「お母様? お父様は?」
(俺、いま声に出した?)
「声にしなくても、私にはあなたの考えてる事がわかります。エデリー? もうあなたには、お父様はいないの。わかってちょーだい」
「やだっ! エデリーにとっては、パパはパパだもんっ!」
「さ、お嬢様? あちらで、おやつを召し上がりましょ」
うさぎのヴァルが、気を利かせエデリーを連れてくが···
(え? 嘘! マ?)
うさぎの姿から、人間の姿になり変わり、ズルズルとエデリーを引きずっていった。
「申し訳ございません。お見苦しいところを···」
「いえ···。あの、少し聞いていいですか?」
母さんみたいな温かい空気が、周りを包み混んでいく。
「そうですわね。まだエデリー達は、あなたがなんでここに来たのか? すらも、話してはいないでしょう」
「俺···」
「貴方は、無謀な運転をした方に跳ねられ、亡くなったのです」
「やっぱ?」
女神は、頷き頭上に映し出されたモニター画面を指で操作していた。
「ん?」
モニターに映し出されたのは、病院のベッドの上で眠り続けてる俺。
「幸い、怪我は1つもなくきれいなままなんですが···」
そうだな。頭に包帯は巻かれてるが、あの機械はピコンピコン動いて···動いて?
「死んで? ね?」
「はい。一旦は、心肺停止になり危うかったのですが···」
「はぁ···」
「池田様の身体の中に···」
「はい?」
(もしかしたら、戻れる? 戻りたくねーな)
「別の方の霊が入りまして···」
「はい? いまなんと?」
「戻れなくなりましたねぇ···。困りましたわ」
···
······
·········
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!? マジ? じゃ、俺ずっとこの世界にいられんの?!」
階段を駆け上ると、メイドが駆け寄り、女神を庇う。
「大丈夫ですよ。池田様は驚かれただけ。お下がりなさい」
女神は、優しく言うとメイド達は、頭を下げ、もといた場所へと戻った。
「いえ。ここに異世界のものが住むことは禁じられております。何か別のものとして、生まれ変わるしかございません」
女神は、溜息を付きながら首を振った。
「別のもの? 俺の身体には?」
「確実に戻れるという保証はありません。申し訳ございません。エデリーが、あんなことをしなければ···」
「?」
俺の頭の中には、ハテナマークが積み重なる。
そんなところへ···
「お母様ー。おやつ美味しかったー!」
場違いな声で登場したエデリーとヴァル···
(うさぎだ)
「お嬢様、慌てない···」
(なんだこいつ。うさぎになったり、人間になったり···)
「ヴァル? あなたの素性を覚えてる範囲で、教えてお上げなさい。池田様? 選択肢は、こちらにはございません。どちらを選択するか、暫くこちらに滞在してお決め下さい」
女神がそう言うと静かに立ち上がり、メイドに囲まれる形でこの大きな部屋から出て行った。
「ほぅ? 全てお聞きに?」
ヴァルがそう言うと、エデリーがヴァルの後ろに隠れる。隠れてはいないが···
「怒る?」
弱々しい猫みたいな声を発しながら、俺を見る。
「俺の部屋は? そこで、心ゆくまで、お前が何をしたのか教えてくれないか。エデリー姫?」
静かな部屋にエデリーのガタガタと震える音が聞こえてきそうだった。
「では、こちらへ。お嬢様? 大丈夫です。池田様は、お嬢様に何もしませんから。そう、な·に·も···。参りましょう」
「うん。確かにこれじゃ、なんーもっ出きんな! つか、うさぎー! テメー、俺に薬もってんじゃねーよ! この縄解けーーーーっ! テメーーーッ!」
確かに部屋に通された時は、何もなかった。
「さ、これをお飲み下さい。心が落ち着きますから···」
ヴァルに言われるがまま、差し出された紅茶を飲み、クッキーを摘んでる内に···
眠らされて、気付いたら縄でグルグル巻かれ、ベッドに寝転がされていた。
(このベッド、デカ過ぎるだろ!)
転がってもなかなか橋までいかねーのなんの!
「ヴァルー。まだ、怒ってる?」
泣きそうな顔で俺とヴァルを見比べるエデリー。
「さぁ、どうでしょうか? 池田様? これから怒らないとお約束して頂ければ、解いて差し上げますが?」
うさぎの癖に手にしたナイフをクルクル回して、ニヤニヤ笑う。
「こえーんだよ。それしまえよ。つか、トイレ行かせろーー。しょんべん、漏れるーーーっ! 怒らないからーーーっ!」
かくして、10分後···
ジャーーーーッとトイレの水を流し、スッキリした俺は椅子にちょこんと掛けてるエデリーの頭を軽く叩きながら、ベッドへと掛けた。
「で? 話して貰おうか? 俺が死んだのに、なんで他の奴の霊が入ってんだ?」
エデリーは、チラチラうさぎを見るも真っ向無視を決め込んでるし。
「エデリーがね、ボタンを間違えたの」
「なんの?」
「転移ボタンと転生ボタン···。ママは、押しちゃ駄目よって言ったのに···」
「おや、時間だ」
逃げよとするうさぎをムンズと捕まえ、傍に置く。
「ほんとは、転生ボタン押せばお兄ちゃん転生するんだけど···。ちょうちょがね、止まったの」
なんとなく嫌な予感はしたが···
「ちょうちょ、がね」
「うん。で、エデリーね、ママにちょうちょ見せたら、ママはパパ許してくれると思って、捕まえようとしたらね···」
「そしたら、ボタンを二つ押したと?」
「うん。ごめんね」
(ごめんね、で済んだらお巡りさんいねーよ)
「こういう時はな、俺の世界じゃ、こうすんだ!」
エデリーを膝に乗せると、ドレスをめくりパンツを下ろし···
ペチンペチンと尻を叩き始めた。
「うぇーん。ごめんなさーい! もうしないからー!!」
「当たり前だ! うさぎ、お前も同罪だかんな!」
「えーーっ? おイタしたのは、お嬢様···だぁっ!!!」
うさぎの尻の毛を抜いてやった。
俺が死んだのは、突発的な事故だったにしろ、同じ時刻に転生させる奴がエデリーのミスで、俺の身体に転移したらしいのはわかったが···
「じゃ、俺の身体に入った奴って誰?」
そう聞いても二人は、顔を見合わせわからないと言う。
モニターで見る限り、いまはまだ昏睡状態らしく酸素マスクをしてる姿しか映し出されない。父さんも母さんも妹もベッドの周りで立ち尽くしたままだった。
「もしこのまま俺が死んだら、中の奴も死ぬんだよな?」
「えぇ、そうです。このヤマを乗り切ってくれないと中にいるのが誰なのかもわからないですし···」
「お兄ちゃんは、おうちに帰りたい?」
エデリーは、大きなクッションを抱えながら聡太に聞いた。
「帰りたいってか、もし仮に俺が助かったとしても、俺が俺の中に入ることって出来るの?」
「それは···」
うさぎのヴァルが、エデリーを見、
「パパなら···出来るかも知れないけど。ねぇ」
今度は、エデリーがヴァルを見て、互いに溜息をつく。
(ん? 待てよ?)
「エデリーのパパって、この国の?」
「さようで。ここケイレール国の国王でございます」
ヴァルが、鏡で自分のお尻をチェックしながらそう言った。
「でも···」
「いま少しありまして···」
(どこの世界でも浮気なんてあるだろうけど···)
「でも浮気の1つや2つ···」
エデリーは、首を傾げながら指を折り、ヴァルは、
「そうではございません。全てでございます」
「はい? 全て?」
全てってなんだ?この国?まさか、世界?
「このケイレール国全ての女性という女性と浮気···コホンッ」
(つか、よく身体持つな、おっさん!)
「すごいんだよ。エデリーのお友達にも···」
神様? 俺の中で何かがキレそうですよ?
「エデリーは、いま何歳?」
見た目小学生のエデリーが、パッと片手を広げた。
「5歳?」
「ううん。50歳だよ。お兄ちゃん、何歳?」
って、待てやゴラァ!どこの世界にこんな小学生みたいな、50歳がおんねんっ!!
なんか頭がこんがらがってきた。
「おや、お嬢様? そろそろ、眠るお時間になりますよ?」
「ふぁっ···」
エデリーは、お嬢様らしく小さくあくびをし、目を擦りながら立ち上がった。
「俺も寝る。なんか、疲れてきた。頭が···」
「そうですか? では···」
何故かうさぎは、ウキウキとしながら聡太が寝ようとするベッドに···
「······。」
ポイッ···
「おめーは、ここじゃねぇ」
廊下にエデリーと共に出されたヴァルは、名残惜しくチラッと聡太を見、怪しげな笑みを浮かべた瞬間、枕の攻撃を受け飛ばされた···。
「ふん。寝よ、寝よ。あとのことは明日考えよう! うん」
あまり深く考えないこの性格が、あとに頭を悩ますことになろうとは、この時の聡太には予測もつかなかった···
応援ありがとうございます!
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