【本編完結】転生令嬢、目指すはスローライフ〜イベント企画担当者ではないのよ!

ブラウン

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本編

第68話 懇々と諭されています

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 レティからの手紙。絶対、番の話だよね。レティもカイデール殿下の番。番仲間なのよね。

 レティからの手紙はスタンフォート公爵様の番だったことへの驚き、今度会って話がしたいことが綴ってあった。私もレティに色々聞きたい。カイデール殿下とどう過ごしているのか。聞くところによるとカイデール殿下は2人の時はデレデレに甘えてくる人なのか。誰に聞いたか言わなければわからないだろう。

 いつも暇人な私だから、いつでも大丈夫と返事をした。もちろん学園入学のための勉強や準備は着々としていますよ。

 レティから明日どう?という回答が来た。もちろんOKの返信をした。明日のお土産準備もOK。

 次の日、レティの公爵邸へ。
 ガゼボに通され、レティとマリアナに質問責めです。
「アイリ、スタンフォート公爵様の番だったなんてびっくりよ。なんの兆候もなかったの?」

「レティ、なんの兆候もなく、デビュタントの時に王族のプライベートの場所に連れて行かれた時には何が起こるのと疑心暗鬼だったわよ.。そして番宣言よ。誰が?私?となったわけよ。びっくりしたのは私よ」
 そうよ、私が一番びっくりよ。なぜ私?となるわけじゃない。

「でも、なんだかみんな親戚のような繋がりになったわね。スタンフォート公爵様とロベルト様は親戚、スタンフォート公爵様とカイデール殿下は龍人の血が流れているなんて、私たち運命ね。こうして仲良くなれたなんて」

「ほんと、親戚ね。これからもよろしくね」
 レティもマリアナも、やっぱり私はスタンフォート公爵様と結婚は免れないのかな?あれ?

「レティ、マリアナ聞いていい?みんな私が公爵様と結婚するのが前提よね。やっぱり私公爵様と結婚するの?」

「「えっ!!」」
 すごーくびっくりした顔で見られた。この顔はお父さまとお母さまの顔と同じ表情だ。

「アイリ!」
「は、はい」
 正座ものです。

「この国は龍人様が礎になっていることは知っているわよね」
 はい、耳にタコができるぐらい聞かされております。

「龍人様の子孫である王族やその龍人の証である龍の鱗を持つものは番しか愛せない種族。番を求める気持ちが人一倍強いのよ。そして、スタンフォート公爵様はずっと見つからなかったの。でも、アイリ、あなたが番ということがわかって、公爵様自身はもちろんご両親特に母親の方が肩の荷が降りたと思うわ。前公爵夫人は子爵の娘だったのよ。貴族として位の低いから、前公爵様の熱烈なアプローチを断っていたのよ。でも、番を思う気持ちが強すぎて前公爵様の体に異変が出て、体調を崩してしまったのよ」
 すごいな、番を思う気持ちが強すぎて体調を崩すなんて、ひぇー。

「アイリ、他人事ではないのよ。前公爵夫人は受け入れたけど条件が晩餐会やお茶会などあまり出たくないが良いかということだった。でも、結局は2人で晩餐会には出ていたわよ。そして今のスタンフォート公爵様が成人して引き継ぎし、早々に領地へお二人で籠ったわ。でも、なかなか公爵様に番が見つからないので、前公爵夫人は完全に社交界離れられないでいたのよ。だからあなたが番とわかり公爵夫人の仕事を引き継ぎ、お二人で領地に籠りたいのではないのかしら。前公爵様はそう思っているはずよ」

 なんだかすごいことになってきた。まだあちらのご両親とはあの番判明の時にお会いしただけで正式に対面はしていない。多分、あの時、私が受け入れる精神ではなかったと判断したのであろう、これからゆっくりと進めていこうという話だったかな?本決まりになったら、公爵夫人の仕事を引き継ぎ??この子、16歳よ。まだ学園にも通っていないのよ。ほぇー、どうなる私。

「私、まだデビュタントを済んだばかりで学園にも入学していないのに、公爵夫人の引き継ぎはないわよね?どうなの?」

「私は今、第二王子妃教育とお父さまの跡を継ぐ公爵家のことを勉強しているわ。カイデール殿下も公爵家の勉強をしているわ。だから、早いうちから教わった方が安心できるじゃないの」
 生まれた時から公爵令嬢として、そして第二王子の番として小さい時から教育されてきたレティと、にわか令嬢の私とでは大違いなのよ。私、まず貴族令嬢から勉強していかないといけないのよ。基盤が違うのよ。

 カイデール殿下は私とルルーシェ王女殿下が転生者ということをあの場で聞いたからわかっていると思うが、まだレティやマリアナに言っていない。言うべきか言わぬべきか。ごめんね、言わなくてもいいかな。このままの関係性を続けていきたいなぁ。

「ところで、レティに聞きたいことがあるの。カイデール殿下と距離感はどうなの?近い?」
 レティ顔が真っ赤ですが、何か思い当たることでもおありですか?

「そ、そうね。学園にいる時は節度ある距離だけど、2人きりになると近いわね。ベタベタ触ってくるわね。でも、普通にやり過ごしているわよ、たぶん」

「カイデール殿下は甘々に甘えてこないの?」
 ニタニタしながら聞いてしまったわ。

「あっ、何か聞いているのかしら?顔がニヤニヤしているわよ」

「ううん、別に何も聞いていないわよ。カイデール殿下って甘えるのかなぁなんて思っただけよ」

「えっ、レティ、カイデール殿下は甘える人なの?見えない。いつもキリリとしているじゃないの」
 マリアナは想像できないのかぁ。私は鼻の下を伸ばして、膝枕をするカイデール殿下が想像できるよ。

「アイリ、またよからぬことを考えているでしょう。何考えていたの?教えなさい。さっきからニヤニヤしているじゃない」

「えっ、あのー、レティの膝枕で,鼻の下を伸ばし甘えているカイデール殿下が想像できたの。私って想像力あるなぁ」

「うそ、誰か?ルルーシェ様ね、言っていたのは。2度ほどそういうところを見られたことがあったわ。でも単なる膝枕よ。甘えてなんかいなかったわよ、たぶん」
 真っ赤にして反論するレティ。かわいいね。

「2人ともニヤニヤしないで」
 マリアナまでニヤニヤしていたの?と,振り向けば、今はすまし顔だよ。隠すのがうまいわね。

「私たちは小さい頃から番とわかって、貴族の爵位も釣り合いが取れているからいいのだけど、王太子様と王太子妃殿下が大変みたい。王太子妃殿下は、伯爵の位なのよ。でも、母親がメイドでお手付きされて、王太子妃殿下が生まれたのよ。身分的には低いから肩身が狭いと思うのよ。番の交流会があるけど滅多に出てこないわね。スタンフォート公爵様のお母さまも似たようなものなのよ」
 なるほど、自分の生まれた身分が低いと肩身が狭いのか?王太子妃殿下としての位は上よね?堂々としていればいいのにね。扇をバサっとして、私は番よ。なれるものならなってみなさい、なーんて言ったら性格悪いかな。いじめてくる方が悪いのだから。

「アイリ,すごーく悪い顔していたわよ。また、何考えていたのよ」
 むむむ、よくわかるわね、レティ。

「ただ単に、身分が初めは低くても、番になった時点で位は、その人たちよりも高くなるでしょ。だから、扇をバサってとして、私は番よ。あなた方もなれるものならなってみなさい、あなた方とは金輪際口を聞きません、ふんって踵を返して離れる、というシチュエーションを考えていたの」

「あはははっ、それいい。すごくいい。そうなのよ、番になった時点で、そのいじめている人たちよりは身分は高くなるから強気でいけばよかったのよね。まぁ,本人の性格もあるけど 。アイリならできそう」

「やーねー、私こう見えて気が弱いからムリね」

「「あははは、気が弱いって誰が?」」

「2人ともひどいわね。目の前に傷つきやすい少女がいるじゃないの」
 そのうち、番の集う会が開かれるのではないの、とレティが恐ろしいことを言っていた。


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