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降霊
最後に伝えたかった事
しおりを挟む交通事故であった。
すぐさま教授が病院に駆けつけたときには、もう意識がない状態だった。
何度も呼びかける教授の声に一瞬ピクリと目が動いて、うっすらと目を開けた。
「大丈夫か!」
「き、教授、、、僕、、、気がついた、事が、、、」
「ん?なんだ?何に気がついたんだ?」
「そ、そ、それは、、、」
助手はそのまま動かなくなった。
教授は助手が何に気がついたのか知りたくてたまらなくなった。
「そうだ、わたしの知り合いの病院に運ぶ」
そう言って、教授は有無を言わせない迫力で助手の体が横たわっているストレッチャーごと自分の車に運んでいった。
幸い助手には身寄りらしい身寄りがない、両親は他界していて、祖父や祖母も遠方に住んでる為すぐには駆けつけられない。
身内として私が多少移動するくらいは許容範囲のはずだ。
まだ死体として誰も確認してはいないのだから、、、。
移動する車の中で教授は政府のとある機関と連絡を取った。
「大至急試験体をよこしてくれ!」
「教授、いくら死刑囚と言っても必ず死体で返されちゃ困りますよ、もうありません」
「そこをなんとか!最後の一人でいいから!」
「、、、仕方ないですね。模範囚なんでできるだけ楽にお願いしますよ」
「わかった!急いでくれ!」
とにかく急がないと遺体と魂の繋がりがどんどん希薄になってしまう、死体という紐付けがなくなればもう、霊体の所在は追いようがないのだ。
教授は研究所に着くと他の研究員に手伝わせて死んだ助手を装置の中に入れた。
特殊なパルスを当てるとまだ霊体は遺体の周りをウロウロと漂っていた。
教授は安堵しつつも、研究所の真上にある監獄から死刑囚が連れて来られるのを今か今かと、待った。
監獄の横には病院も併設されていて、重い病気にかかった囚人はそこに収監されている。
普段はそこから死んだばかりの囚人を研究材料として調達してくるので立地としては最高と言える。
とはいえ、そう簡単に死刑囚を調達はできないので、実験日は決まっているのだが、今回は無理を言って早めてもらった。
「いや、成功さえすればいいんだ」
教授は誰に言うともなくそう呟いた。
成功すれば、囚人を殺す必要はない。
気が触れた囚人をそのまま返す事ができないので、やむなく殺しているだけなのだから。
もちろん死刑囚なのでいつかは死刑が執行されるだろうが、それまでは研究所で過ごせるのだから。
そう教授が自分に言い聞かせている間に扉が開いた。
死刑囚は真面目そうな青年だった。
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