CHANGE syndrome

ハイブリッジ万生

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後日談

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「どんな状況?」
ポニーテールの警察官らしき若い女性が現場の警察官に話しかけた。

警察官らしきというのは服装が警察官ぽいのだけど微妙に違うような気がするからだ。色も紺ではなくて濃いピンクだし...ちょっと警官のコスプレに見えなくもない。

「はっ、ただ今も犯人は拳銃を所持して立てこもっており非常に危険な状態であります!」
しかし、中年くらいに見える警察官が敬語を使っている所をみるとちゃんとした公務員...しかも若いのにかなりの階級の様だ。

「危険な状態って?」
「こちらの説得に応じず、銃口をあちこちにむけて笑ったり唸ったりと挙動不審でして...あの通り巨漢ですし、迂闊に近づけない状況であります。」
「了解、人質だった赤ん坊は見つからないの?」
「はっ、それが...まるで消えてしまった様に居なくなってしまって...。」
(通気口かダストシューターはどうかしら?)
「通気口とか、ダストは調べたの?」
「はっ、ダストシューターの方は調べましたが見当たりませんでした…通気口は調べてませんが赤ん坊が登れる高さでは...。」
「ばかね…赤ん坊が登れなくても犯人なら届くでしょ!」
「は、はい。...しかし、お言葉を返す様ですが...何の為に?」
(犯人がいつまで刑務所の中に居たか知りたいわね)
「犯人には前科があるらしいけど刑務所に入ってたは何年前?」
「はっ...えー、5年ほど前であります。出所してすぐに空き巣に入り...住人に見つかってすぐ側に居た赤ん坊を人質に立てこもっております。」
(五年前なら知らないかもしれないわね…49日の事)

「2人組でしょ?もう1人は?」
「それが...見失ってしまって。」

「もう1人の罪状は?」
「はっ...特殊犯罪です。」

(やっぱりね...)

「だったら人質を通気口に逃がす理由になるわ。」

そこにショートヘアの似合う警察官らしき若い女性がもう1人来て聞いた。
「遅れてごめん、どうする?」
「私は突入する、通気口の出口を抑えて...赤ん坊が居たらよく見てね?」
「了解。」
返事を聞き終わる間もなく女性は扉の鍵穴を拳銃で撃ち抜くと蹴り開けた。
ポニーテールが揺れた。

「ヒュ......ゴホンッ」
中年の警察官は無駄のない2人のやりとりに、つい口笛を吹きそうになったが、誰が見ているかわからない事に気がついて咳払いで誤魔化した。












ポニーテールの警察官らしき女性は部屋に入るとどんどん犯人に近づいて行った。
周りを固めていた警察官は固唾を呑んで見守っていた。

「あーあうー」
犯人は拳銃を振り回していたがやにわに銃口を自分に向けた。

次の瞬間更にスピードをあげたその女性は見事なハイキックで拳銃を犯人の手から吹き飛とばした。

ガツン!

拳銃が壁にぶつかって落ちた。

犯人は不服そうに女性を睨んだ。

女性は犯人に言った。
「めっ!」

一方通気口の出口に向かったショートヘアの女性は、ほどなく赤ん坊を発見した。

「...ば、ばぶぅ」
赤ん坊は抱っこをして欲しい様子で手を伸ばして来た。

女性はニッコリと微笑むと赤ん坊に銃口を向けた。
「はい、そこまでよ!なかなかの演技ね助演男優賞にノミネートされるかもよ?」

赤ん坊は驚いた顔で言った…
「なんじぇわかっちゃ?」

「私、見えちゃうの...それより相棒から聞かなかったの?49日以内に元にもどらないと、あの世いきなのよ?」

「えぇ?しらなかっちゃ...。」

「でしょうね、本体を捨てて逃げるなんて、普通はしないものね。」

「あいちゅ、そこまでは教えてくれなかっちゃ。」

「そいつはどこにいるの?」

「知らない...助けてくれるって言ってちゃ...いいやちゅ」

「いいやちゅ...?いいやちゅが空き巣しちゃだめでちゅね?2人とも逮捕でちゅね」

そこに電話がかかってきた。

「終わった?」

「終わったよ…もう1人はわからないみたい...。でもイイヤツみたいだからその辺にいるかもよ?」

「了解...それにしても...総指揮官と参謀は?」

「さぁ?」

その、様子を遠くから見ている男達が居た。

男達は紫色の警察官ぽい服装をしていた。

「終わったみたいですね。」

「ほんと...やる事が早いね、あの2人。」

のほほんとそんな会話が聞こえた。









石川「...にしても③はないと思ったんだけどなぁ」

山崎「なんですか③て?」

石川「いやぁ山崎総指揮に、お聞かせするほどのことではありませんので。」

山崎「ちゃかさないで下さいよ、石川参謀。」

石川「いやね...今度入ってくるでしょ?若いのが...。」

山崎「あぁ、例の瀬戸と日勝ですか?」

石川「そうそう、友也とサトシですよ...なんで、うちを志願したんですかね?」

山崎「そりゃ、知り合いがいるところが良いと思ったんじゃないですか?」

石川「知り合いっていうなら特務のエースも同じでしょう?多分あの2人が目当てだとおもうんだけどなぁ…てゆか、考えてみると不思議だよね俺が警察にいるなんて。」

山崎「1番対処法に詳しいからでしょ?昔の暴走族が白バイ警官になるみたいな?」

石川「あぁ、一理ある。」

山崎「まぁ、石川さんが変わったってのもあるかと...そういえば知ってますか?平和町の奇跡。」

石川「いやぁ初耳。」

山崎「あの事があったあと平和町では3ヶ月もの間パッタリと犯罪がなくなったんですよ...。」

石川「そりゃすごいね、なんで大ニュースにならないんだい?」

    






山崎「まぁ専門家の間では偶然だろって事で地方新聞の小さい記事にしかならなかったんで...。」

石川「ニュースなんてそんなもんだよなぁ。」

山崎「護(む...あぶない!)」

二人は後ろから近づいてきた暴漢に気が付かなかった。

しかし、暴漢は弾かれたように飛んでいった。

弥生「なにやってるんですかお二人!」

石川「悪い悪い」

山崎「ほんとごめん」

みすず「護さんが居るからいいけど、弥生が来てると油断しまくるのは悪い癖ですよ。」

弥生「どう?みすず?」

みすず「大丈夫、入れ替わってないわ」

弥生は手品の様に手錠をだすと、男を拘束した。

山崎「いやあ、でも流石ですな、わが特殊事案対策部隊のエースお二人は...なにより華がある。」

弥生「お世辞言っても残業しませんよ。」

みすず「そうそう、この後予約ありまくりなんだから。」

石川「なんだ?合コンか?」

弥生「研究です!」

石川「はぁ、色気がないねぇ、まぁ、あいつが来たら変わるかもな」

みすず「あいつって?」

石川「みんな大好きな瀬戸友也くん」

弥生「げっ!」

みすず「あらら」


山崎「まぁいいじゃないですか、仲間は多いに越したことはありませんからね。」

石川「やっぱり③かぁ」










山崎「まぁまぁ、そんなにあからさまに嫌わなくても...忘れてる様ですけど彼もholder(保持者)なんですからね?」

あの時雫から飛び出した人格の器になった人々の事を百樹博士はholderと呼んで政府の厳重保護対象に推奨した。

政府はこれを受けて厳重保護という名目で監視していたが、多岐にわたる現在の特殊な事件に大きく貢献できるという事がわかり、これも百樹博士の発案で出来た特殊事案対策部隊の要職に付いてもらっていた。

山崎「まぁ...多少言動に粗野なところがありますけど、凶くんの持ってるハードチェンジ(強制人格変更)は即戦力になりますよ。」

石川「だといいけどねぇ...そういえば、他のholderはいつ帰って来るんだい?」

山崎「さぁ...国連軍次第ってところですかね...あの4人は暫く帰ってこれないかもですね…。」

石川「え?4人?2人じゃないのか?」

山崎「あ...しまった...これは...いや...なんでもないんですよ…。」

石川「おいおい...そこまで言ったなら言っちゃえよ!気になって眠れないだろ!」

みすず「え?!なになに?秘密の匂いがする!」

弥生「お兄ちゃんと観月さん以外に誰か行ってるの?」

山崎「うーん、どうしようかな…」

護(なんなら、精神波の壁を作ろうか?)

山崎(あ...お願いできますか?4人だけの空間を作ってもらえます?)

護(む...お易い御用だ)

山崎を中心に全てを遮断する壁が球体状にできあがった。

山崎「あの...これから言うことは絶対に他言無用ですよ?」

3人はゆっくりと頷いた。





山崎「実は雫ちゃんと未有ちゃんも行ってます。」

みすず「ええ!学校は?」

山崎「そこ気になります?もちろんサボ......じゃなくて超法規的措置にて、うまくやってますよ。」

石川「全然わからないけど、まあいいや、それで?なんでよりによってその2人が一緒なんだ?」

山崎「ふむ、聞いて驚かないで下さいよ?実は百樹博士がある特定の2人がチェンジすると違う力が発揮される事を発見したのです。」

石川「ほぅ、たとえば?」

山崎「たとえばですが雫ちゃんと観月さんがチェンジすると...地球の裏側まで索敵できて、しかもその場にいる誰かの思考を読んだり話しかけたり場合によってはこちらの感情をシンクロさせたりする事ができます...これがスーパーシンクロテレパシー(超遠隔心理操作)」

みすず「ふええ!すごい!」

山崎「更に実験的に行った未有ちゃんと優くんのチェンジでは広範囲...と言ってもどれ位の範囲かはしりませんけど...その範囲内に居る全ての人の動きを止める事ができます...これがスーパーストップコントロール(超静止制御)。」

弥生「え...危険だからやらないって言ってたのに!」

山崎「まぁ...そのへんがトップシークレットってことでしょう?」

みすず「なんか、すごすぎて...よくわからなかった。」

石川「ふーん、なるほどね、もはや一国に縛っておくには勿体ない人材って訳か...。」

山崎「ま、そういうことです…。」

弥生「なんかわからないけど...くやしいわね...教えてくれても良かったのに。」

山崎「とりあえずこのことは絶対に漏らさないで下さいよ!百樹さんに怒られますからね!」

石川「了解、酒の肴になる良い話が聞けた所で早く帰ろうぜ。」

護が精神派の壁を解くと止まっていた電波が入ってきたのかみんなの携帯が一切に鳴った。



携帯に入ってきた臨時ニュースでは、どこかの国の紛争が突然終結した事を報じていた。



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