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学園編-交流戦

双子

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 金髪の女性……通称ライトと呼ばれる、勇者という血筋を持つ女性。
 ハイト=クロックタイム……

 もし、自分が相手をしても負ける事はないとは思ってはいた。
 時間を止めると言っても規制がある……

 自分の魔力と能力を持ってすれば……その隙に勝負をつけることは容易である。
 だが……1学年に置いては、間違いなく最強クラスの能力、脅威になりうる能力であることは間違いなかった。

 「異世界からの召喚者……レス……か」
 ライトがそう呟く。

 「……くだらない、どいつもこいつも奴を必要以上に買い被りすぎだ」
 スコールもレスを見てそう呟いた。



 ・・・


 A組のとの交流戦の後……控え室に案内される。
 連戦となる俺は次のB組との対戦に備え一つの部屋に案内される。

 黒い長い髪の少女……
 この世界にも種族的な分別があるとするのなら……
 もっとも俺が現世で過ごして来た民族に近い存在だろう。

 「再、レス共闘、感謝」
 そうクロハが俺に言う。

 「あら……クロハ、誰、その男?」
 二人組の女性……俺より先にこの控え室に居たのは気がついていたが……
 B組となる次の対戦相手だろうか……

 「双子……?」
 茶髪の、ショートカットの女性とロングの女性。
 髪型は違うがその容姿と体格はほぼ同じだ。

 「ナギ=ハーモニー、ナタ=ハーモニー、ハーモニー家、シラヌイ家と少し因縁がある……」
 そうクロハが説明する。

 「シラヌイ家がハーモニー家より優れていたのは過去の話……今は私たちの家系があなたより上」
 どっちがナギでどっちがナタかは知らないが、ショートカットの方の女性が言う。
 勝手な偏見だが、こういう時は髪が長いのは姉で短いほうが妹だ……。
 まぁ、どっちにしろどっちがナギでどっちがナタかはわからない……。


 「そっちが、ナギ、姉……そっちが、ナタで妹」
 まるで心を読んだかのようにクロハが説明をしてくれる。

 髪の長い方が姉でナギ。
 髪が短い方が妹でナタ。
 俺の無駄な能力は健在のようだ。

 「その男がどんな能力者か知らないけど、私たちのコンビネーションの前ではお前の刀技など通用しない」
 髪の長い姉のナギが言う。

 外で行われていた試合が終わったようだ。
 再びリングの上に呼ばれる。

 「さて……交流戦も第3試合、B組対特別クラスの試合を始めます!」
 ラビがそう叫ぶ。

 当然だが先ほどの双子が対面している。
 さて……どんな特殊能力を持っているのか……

 「試合開始っ!!」
 ラビの掛け声と共に、俺以外の3名の腕が即座に動く。

 「……小鳥丸《コガラスマル》……抜刀」
 取り出した柄だけの武器を取り出し、殺人鬼と対面したとき同様に漆黒の刀が現れる。

 対する双子の姉妹。
 姉の右手に薙刀……妹の左手に薙刀が握られている。

 「長物……か、やっかいだな……剣術3倍段ってね」
 そんな俺の独り言。

 「……剣術3倍段?」
 クロハが可愛らしく小首を傾げ不思議そうに尋ねてくる。

 「……あぁ、俺の元居た世界で言われていた仮説のようなものを現した言葉で……本当かはわからないけど、剣で槍に勝つには3倍の技術が必要だっていう意味だったかな」
 実際、実験動画みたいなもので、有段者が素人に負ける動画を見たことがあった気もする……
 

 「……レス、大変……二人居る……6倍?9倍?」
 クロハが意外と冷静に状況を突っ込む。
 ……素人の目線……俺なんかが分析できるようなものではないだろうが、
 1学年に置いて、恐らくクロハの技術的な面では恐らくトップクラスだと思う。

 もちろん、この魔力を能力として形にする世界で技術が高いだけで、最強を名乗ることは難しい。
 ……俺は彼女に何をしてあげられるのだろうか……
 盾になるだけ……それで彼女の役に立つのだろうか……

 「さっさと終わらせるよ、ナタっ」
 そうナギが叫ぶ。

 「了解……ナギ」
 ナタも答える。
 
 普通に交互に繰り出された一撃を、クロハは軽やかにバックステップでそれを回避する。

 何気なく繰り出される攻撃を回避し続けるが……それが双子の狙いだった事に今更気がつく。

 「闘気っ!」
 ナギがそう言葉にすると赤い気を周囲にまとう。

 「練気っ!」
 ナタがそう言葉にすると青い気を周囲にまとう。

 「……何が起こる……」
 何となくよくないことだけは理解する。
 
 「「闘練煉獄」」
 二人に挟まれるような形になった俺とクロハ……
 双子はそう口を揃え技名のようなものを口にする。

 「……なっ」
 慌てて、二人を守れるだけの結界を張り巡らせる。

 二人の位置が交互に入れ替わるように見える。

 が……俺たちの間を高速で入れ替わるように薙刀での攻撃を繰り返しおこなっている。
 

 「合体……技だと?双子が成せる技という訳か……」
 俺の結界に守られる中でクロハは身体を斜に構え……
 存在しない刀の鞘にその刀身を収める。

 「……なるほど」
 まずはその標準を片方にしぼったようだ。

 「刀技……光芒《こうぼう》」
 クロハの黒い刀風が一直線に飛んでいく。

 「くっ……」
 丁度、入れ替わり現れたナタが、その身を捩り、その一撃をかわすが……
 その気が乱れたように二人から出る気がおさまった。

 「刀技……」
 クロハが地に刀を突き刺す。
 何を……する気だ?

 「……地ずり黒月」
 刀を振り上げるように引き抜くと……
 地を這うような黒い巨大な刀風がナギとナタに襲い掛かる。

 ナギとナタは大きく飛び上がるように右と左に別々の方向へと逃れる。

 「闘っ!!」

 「練っ!!」
 再び、二人が赤と青のオーラをまとう。

 「「闘練煉獄……改」」
 そう双子が言うと、二人の身体が残像のように曖昧に映る。
 そして、その身体が二つに分裂するように、俺たちを4方に囲う様に構える。

 「なぁ……くそ、何だよその最初から使え的な技っ」
 俺はそう双子に愚痴る。

 「レス……正論」
 クロハもそう突っ込むが……絶対的なピンチだ。

 俺の結界であの双子の連撃をいつまで防げるか……

 俺は再びクロハの前に立つと二人を全体的に防げる結界を張り巡らせる。

 4名とも本物なんじゃないかと思うように4方から来る攻撃。

 「……レス、大丈夫?」
 そう心配そうにクロハが俺に尋ねる。

 「……牛若と弁慶ってね……俺はお前の技に惚れ、俺はそんなお前を守る存在」
 そう意味も無く例える。

 「うしわかとべんけい……?」
 結界の中……そうクロハが小首を傾げ不思議そうに尋ねる。

 「……俺の世界にある昔話……まぁ、一応それ以外にも実在していた歴史上の人物として……色々とその歴史が脚色されて語られているような気もするけどな」
 ……4方から来る攻撃。

 「……薙刀をつえに……立ち往生してでもお前を守るって話だ」
 ……そうクロハに告げる。

 「ナギとナタを杖に? 立ち往生?」
 クロハの頭の中で色々と情報が混雑しているようだ。

 「……クロハ、俺たちも合体技でいくぜっ」
 そう俺がクロハに告げる。

 「……合体技?貴様等にもそんなものが……」
 4方から位置を切り替えるように入れ替わるナギとナタのどちらかが俺のその言葉に反応する。

 「……秘技、八艘飛び……」
 そう俺が言葉にする。

 「……はっけい…とび?」
 そんな技など知らんというようにクロハは首を傾げる。

 「牛若丸こと……義経に語られる伝説……本来はただ船を飛び移るってだけの話なんだけどな……何故か色々と派生して、一部ではすっげぇ大技として語られている」
 そう……俺は説明する。

 「……それで……」
 わたしはどうすれば……?困った様子でクロハが見る。

 「……お前はその身軽な身体で全力で跳べ、そして……全力で敵を斬ることを考えればいい……船《あしば》は俺が作る」
 そう俺が告げるが不思議そうにクロハが聞いている。

 「……奴らが4方と言うのなら……俺たちは8方だ……」
 そう俺は笑ってみせる。

 「……わかった」
 恐らく完全に理解していないが、そうクロハは答え。
 再び斜に構えると……敵を一点に絞る。

 ズンと重力が増すような感覚……黒いオーラがクロハが周囲にまとう。
 
 「……修羅気迫……」
 そうクロハが呟く。

 「……数分間……攻撃魔力を急激に引き上げる……1日1回が限界」
 そうクロハが説明する。

 「……まったく、クロハの剣技は本当に……すげぇな」
 素直に美しくかっこいいと思った。

 「刀技……牙閃《がせん》」
 俺の防御結界から外に出て……突き出した刀を手に一瞬でナギの前に現れる。
 ナギは上空に飛びそれを回避する……

 「刀技……牙閃《がせん》」
 再びその技を上空のナギに向け放つ。
 が……それをうまくナギは回避した。

 上空で無防備になるナギと……クロハ。

 「今だ……ナタ、クロハをっ!!」
 今なら俺の防御結界も無い……叩くなら今だと叫ぶ。

 が……上空のクロハはフフと笑った。

 「……レス、あんたはやっぱり凄い」
 そうクロハが呟く。

 「秘技……八艘飛び……」
 迷うことなくその技名をクロハは言葉にする。

 「なっ?」
 ナギは目を見開く。

 上空でクロハがくるりと向きを変え、ナギの方を向く。
 そして、上空であるはずの無い壁に足をつけるように……
 文字通り足場を蹴り、ナギの居る方に向かい跳ぶ。

 「防御結界を足場に……あの男の仕業かっ!!」
 そう……目線で俺の方を見るが……

 クロハの一撃をその身で受ける。
 そして……再び、クロハはくるりと向きを変えると、
 ナギの居る方へ向き直り、再び見えない壁を蹴り上げ、
 ナギの身体を斬りつける。

 それを数秒の間に8回繰り返した。
 最後はナギの身体をリングに叩きつけるように真下に叩きつける。

 もちろん、クロハも命を奪うまでいかないよう加減をしているだろうが……
 この世界で刃物による攻撃は……誰しも最低限の魔力で身を守られているようで、斬撃は衝撃的な属性に変換されその身にダメージを蓄積しているようだ。

 地に落下したナギは気を失うように倒れている。


 「う、うあああああああっ!!」
 自棄に突撃してくるナタ……

 コンビとしての力を失った双子の片方にはもう恐れるものは無い。

 クロハの刀技が軽く彼女を打ち負かした。


 「勝者……クロハ&レス選手!!」
 そうラビの声が響く。
 
 ワーーーーという歓声。
 クロハに注がれる声。
 これでいい……

 クロハと言えばその歓声の先が自分だと気づいているのか……
 そもそもが興味無さそうに無表情であったが……
 俺と目が合うと、そこでやっと嬉しそうに笑った。

 それでいい……。
 そう誰かに呟く。

 俺は影から彼女たちを……英雄として支えるそんな存在になれればいい。

 それが俺に……出来る事。
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