異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

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学園編-学園武術会

フィクサー

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 「お前らは来るなって……」
 その日の学園武術会は、2試合で終了し残りの試合は翌日となる。
 俺は、まだ帰らぬライト達を心配し、裏の学園内に乗り込んだが……

 「レス、貴様だけでは心配だからな……」
 レイン、そしてクリア、クロハとヴァニ、マリアの5名がついて来る。

 「俺たちが下手したら逆にライトたちの邪魔をする事になるんだ……」
 そう言い聞かせるが、言う事を聞いてくれそうにない。

 夜の学園……その隣に立つ旧校舎の中……
 灯り一つ無い……そんな中をそれぞれが暗闇の恐怖を押し隠しながら探索する。

 何処かに秘密の入り口でもあるのだろうか……
 未だ、ライトたちの一人として遭遇していない。

 そして……

 明らかに他とは何か違う教室に辿り着く。

 それぞれが……自分のタイミングでその教室に入るが……

 全員が教室に入った瞬間ぐにゃりと空間が歪み……


 一瞬、ハイトの時間停止と同じような意識が飛ぶ感覚に襲われると……

 「!?」

 気がつくと……今居た教室とは別の教室に立っている。


 「……レインっ!クリアっ!」
 俺はそう名を呼ぶが……返事は無い。
 俺……一人。

 分断された?

 そして……誰かの歩く足音が近づいてくる。

 「!?」
 瞬間誰かに口元を押さえられると、そのままぐいっと身体を引き寄せられる。

 「なぜ、小僧がここに居る」
 褐色の白い髪の女性が俺にそう尋ねる。


 「……アストリア?」
 俺がその女性の名を呼ぶ。

 「小僧の事だ、私たちを心配して来たというところか」
 少しあきれたように返す。

 「妙なトラップにかかってな……ライトたちと分断された……脱出方法するにも敵陣の中だ、迂闊に行動もできん……足音が去るまで大人しくしていろ」
 そうアストリアが俺に告げた。



 ・
 ・
 ・



 誰かが争っているような、激しい爆発音が響く。
 同時に、俺とアストリアが身を潜めていた教室に何者かが何かから逃れるように勢いよく教室に入ってくる。

 「くっ……読みきれない……か」
 入り込んできた者が少し悔しそうに呟く。

 暗闇の中に揺れる美しい金髪……見知った最強が息を切らしている。

 「……さすがは、勇者の血筋というところか」
 そんな彼女を追うように何者かが、教室の中に入ってくる。

 「……ニアン=キャノン」
 闇にうっすらと映る男を見てアストリアがぼそりと言う。

 「……ニアン?」
 初めて聞く男の名……

 「……恐らく、この学園の闇……その黒幕にあたる奴だろうな」
 そうアストリアが俺に言う。


 「よく、ここまで耐えた、だが……ここまでだよ、ルンライト=ブレイブ」
 そうニアンという男がライトに向け言う。

 ニアンの側には、4つの水晶のような物体が浮いている。

 奴の能力というところか……

 暗闇の中とはいえ……あのライトがおされている?
 俄かに信じがたい……が……

 奴もまた……何かしらの学園の闇に触れ、
 その能力の糧を外しているというのなら……

 「悪いが……君がココで何を見たかは知らないが、それを誰かに告げる事はかなわない」
 そうニアンがライトに告げる。

 「くっ……」
 ライトの瞳が暗闇の中忙しく動く。
 ニアンのそばにあった水晶は教室内を飛び回り……

 それぞれが、波動砲……ビームのような光を放ちライトの身体を追う。

 懸命に回避を続けるが……

 回避する先に水晶は飛び回りそして、再び波動砲を放つ。

 回避に徹し、それらを回避を続けるが……4つの水晶から放たれる波動砲に……
 その一撃を受けることを覚悟し、身を構える。

 「「!?」」
 その波動砲が透明な結界に遮られ、ニアン……そしてライトも驚いている。

 「……レス?」
 ライトがそう名を呼ぶ。

 「なんで……君が……」
 驚いたように俺が身を潜めている方を見ている。

 「……噂の転入生……なぜ、貴様が……」
 そうニアンと言う男も俺の方を向く。

 これ以上、身を潜めていてもしかたないか……

 俺はそう思いその姿を晒す。


 「レス!?」
 ライトが一瞬だけうれしそうな顔をするが、すぐに複雑そうな表情をする。

 「なぜ、来た……」
 そう俺に問う。


 「あんたの実力を疑う訳じゃない……それでも、心配くらいするだろ」
 こんな時間まで戻ってこない……

 「私という者は……未だここまで未熟だというのか……」
 そうライトは呟き……

 「目の前の男に苦戦し……君という者に心配をかけ……そして……そんな迷惑をかけている君に心配されていることに……喜びを感じている」
 そう己を悔いる。

 「おっと……ルンライト=ブレイブ?、まさか……と思うが、この状況がその男一人の登場でどうにか覆せるとでも思っているか?」
 ニアンがゆっくりと歩き教室の中央に位置を取る。

 水晶が教室内を飛び回る。

 あいつが……アレフや……オトネを……
 似合わない他人の為の怒り。

 「伏せろ……小僧」
 そう言われ、右の手のひらをニアンに向けかざすアストリアが立っている。

 青白いランスが精製される。

 俺が身を潜めると同時にその青白いランスがミサイルのように発射され、一気にニアンに向かい飛んでいく。

 水晶が二つ、ニアンの前に飛んでくる。
 水晶が重なり一回り大きくなると……

 今までより激しい波動砲を発射すると、アストリアのランスが相殺されるように消し飛ぶ。


 「……ライトが苦戦する訳か」
 アストリアはそう額に汗を浮かべ、少し悔しそうに笑みを浮かべる。

 一つ大きさを増した水晶が再び光輝くと波動砲が発射される。

 その波動が俺、ライト、アストリアを捕らえるが……


 「小癪にもこの攻撃を防ぐか……」

 結界に遮られる波動砲。
 その様子を見て……ニアンが俺にその言葉を向ける。

 「お前が、アレフやオトネを陥れたのか……」
 俺は……目の前の男にそう返す。

 「……何の話をしている?あいつらは、自分の意思で闇《それ》を望んだ……僕はその手助けをした……それだけだ」
 そう男は告げる。

 「……なんで、彼や彼女を巻き込んだ……何が目的なんだよっ」
 彼や彼女の弱みに付け込み……能力を必要以上に引き出し……
 壊れるほどに……何をさせようとしている?

 「……僕ではない……彼や彼女らがそれを望んだ、そう言っている」
 今度は彼の周囲を飛ぶ水晶が小さく分裂する……
 その数16個に分裂した水晶が一回り小さくなった波動砲を放つ。

 俺は俺とアストリア、ライトの周囲を守る結界をはりそれを防ぐ……

 「それに……もし……貴様の考えている何かだったら?だったらなんだと言う?」
 ニアンはそう不適に笑う。
 いつのまにか、水晶は大きい一つにまとまっていた。

 そして波動砲が放たれると……

 幅広くはった結界は破られ波動砲が飛んでくる。


 顔を伏せその衝撃に供えるが……


 「くっ……」
 俺の前に立ちふさがったライトがその一撃を受け、
 膝を地につける。

 「ライト……」
 心配しその名を呼ぶ。

 「……屈辱だが……我々の負けだ……レス、アストリアと共に撤退してくれ」
 そうライトが俺とアストリアに言う。


 「ようやく、その身の程を弁えたか」
 そうニアンが言うが……

 「さっきの質問は忘れてくれ」
 俺は唐突にニアンに言う。

 「てめぇからは……同情できる過去を聞きたくねぇからな」
 そう俺は目の前の男に告げる。


 「……なんの話だ?」
 そうニアンが俺に返す。

 「てめぇは、そのままでわかり易い、悪でいろよ」
 「本気で誰かをぶん殴りたいと思ったのは初めてだって話だ」
 俺は結界を解くと……その右手に魔力を集中させる。

 「……最強と言われる彼女が触れることすら適わなかった相手を貴様ごときが殴るとでも?」
 そうニアンが俺に吐き捨てる。

 「できる、できねぇじゃねーよ、やるかやらねぇーかだ」
 できないことをやることは嫌いだった……惨めだから。
 できそうなことをやらないことが日常だった……弁えていたから。

 それでも……今は……
 この男だけは……

 一つにまとまった巨大な水晶が光出す。

 「だめだ、逃げろ……レスっ!!」
 無謀な俺を止めようとライトが叫ぶ。

 すべての魔力を右手に集中する。

 この世界に……いや……産まれて初めて……

 この世界で授かった力……

 産まれ持った自分の実力を……

 水晶から再び……結界が打ち破られるほどの波動砲が飛ぶ。


 「てめぇーを意地でもぶん殴る、そんだけだっ!!」
 俺は全魔力を集中し結界を張り巡らせた右腕をその波動砲に向かって振りかざす。

 「……レス……やはり君は……」
 その目の前の光景にライトは頬を赤らめ魅入っている。

 「小僧……お前のその力は底知れぬな」
 そうアストリアも苦笑する。

 ニアンの全力の波動砲を右腕がかき消しながら、俺の身体は目の前の男に迫る。

 そして、その拳はニアンの右の頬を捉える。


 「あっ……?」
 想定外……のその結果に戸惑いながらも目の前の男ははるか後方に吹き飛んでいく。

 ニアンはほかに現れた誰かの影に回収されるようにその場から姿を消す。


 不意にぐいっと身を引き寄せられ、ライトにその身体を抱かれる。

 「レス……改めて感謝する」
 そうライトが俺に告げる。

 「君が来なければ私たちは……、レス、やはり君は私のヒーローだ」
 そう頬を赤らめライトが俺に言う。

 実感はない……
 彼女ほどの者が俺にそこまで肩入れする言動も……
 その期待に答える実力も……

 それでも……俺は……
 手にした能力で……

 出来る事……

 あいつらの為に、何かできるのなら……
 あいつを殴ってやる……それだけだ。
 
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