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学園編-魔王討伐

引き立て

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 俺は部屋の中央辺りに立っている。

 その右側の先にある通路あたりに、ヴァニ。

 その少し奥にキール=トランスが立っている。



 そして、俺の左側にどちらも引くことなく、

 クレイとイザヨイが刀をぶつけ合っている。



 「トランス……ビースト」

 キールがそう呟くと自分の腕が獣の腕に変化する。



 「鉄拳制裁ッ!」

 ヴァニの手甲が容赦なくキールに振り下ろされるが、

 その拳をキールの獣の腕が掴み取る。



 「くそっ……見た目通り馬鹿力かよ」

 そうヴァニが力で押し切ろうと拳に力を込めるが、

 腕はぴくりとも動かない。



 「壱の型……爆撃拳ショットガンッ」

 手甲と腕の隙間ができ、現れた銃口のような先から火花が吹くと、

 一気にキールの身体が壁に叩きつけられる。



 「ぐっ……なんだよ、それ」

 怪力だけには余程、自信があったのか、

 その進化こうげきの前に困惑する。



 「ふざけやがって……」

 壁に叩きつけられ、崩れた壁の破片をひとつ拾いあげると、

 それをヴァニの方に投げつける。



 「………」

 確かにその怪力で投げられる瓦礫はもの凄いスピードで飛んでくるが……

 ヴァニは無言でそれを手甲で弾く。



 「……くそがっ」

 再び、瓦礫を拾いあげて、それをヴァニへと投げる。



 「壱の型……」

 そうヴァニは地面を蹴り、投撃を気にすることなく一気に間合いをつめようとする……



 「ヴァニ止まれっ」

 そう俺がヴァニに呼びかけた瞬間、キールがにやりと笑う。



 「トランス……」

 その言葉とともに、瓦礫が大きな岩石に姿を変える。



 「……ぃ」

 寸前で動きを止めたヴァニの前に結界をはる。

 バラバラと岩が砕け散り地面に落ちる。



 「た……助かった、レス」

 そう……敵の攻撃に驚きながらヴァニが感謝の言葉を言う。



 もう少し冷静に敵を分析できるようになれば、

 ヴァニも学園のトップにでも入れそうなくらいの実力だよな……と思いつつも……

 ヴァニの強さは、その何も考えずに突っ込むところが真骨頂なのかもしれない……



 「弐の型……火炎弾ロケットパンチッ」

 キースの元に赤い弾を飛ばす。



 「く……トランス」

 瓦礫を拾いあげ、地面に置くと……

 自分の身体を隠すだけの壁をつくりあげる……



 が、そのヴァニの能力はそんな壁を軽く破壊するだけの火力を誇る。

 が、出来た隙をうまくつかい、キースがその攻撃から身を避ける。



 さらに、キースがいくつもの瓦礫をヴァニに投げるが……



 「トランス」

 言葉と共に巨大な岩石がヴァニを襲うが、俺の結界の前にそれは届かない。



 「くっそ……なんだよその結界みえねぇかべはよぉ」

 少しイラつくようにキースが俺を見るが……



 その後も、キースはそれでも自分の能力を生かし、攻撃と防御さけを繰り返すが……



 「トランス……」

 瓦礫を巨大化させ、周囲に壁を作り逃げ回る。



 「……レス、決めるぜ」

 そう……地面に手甲こぶしを突きつける。



 「な……なんだ?」

 キースの身体が俺の作り上げた人一人分の広さの長方形型の結界の中に閉じ込められる。

 出られることはできないが……こんな頑丈な壁で囲っては攻撃もできない……

 攻撃の寸前に結界をとくつもりか?

 そう目線を送るが……



 「参の型……火槍バースト」

 ヴァニのその言葉と共に、唯一結界の無い地面が爆発し、

 キースの身体を捕らえる。



 「がっ……ぁ……」

 そのまま、意識が持っていかれそうになるが何とかこらえ、

 目線を俺たちに向けるが……



 「壱の型……爆撃拳ショットガンッ」

 地を蹴り両足を地面から浮いたヴァニの姿が目の前に迫っている。

 手甲みぎてを振り上げ、上半身を右に反った体制から、

 一気に手甲を振り下ろす。



 壁に突き刺さるようにキースの身体が埋まる。



 「しゃぁーーーッ」

 そう、ヴァニが小さく勝利の雄たけびをあげた。





 ・・・



 同時刻……

 「裁け……終炎っ」

 イザヨイの大きな太刀から、激しい炎の刀風が飛ぶ。



 クレイはその刀風こうげきをあえて、かわす行動も取らず、

 結界みえないかべにかき消される。



 「なるほど……確かに味方にすると随分と安心たよりにはなるな……」

 そうその結界の能力に関心するようにクレイが言う。



 部屋の中央で忙しそうに、二つの戦況を見極めて能力けっかいを発動させている男……



 「……お嬢と、あの鎧野郎えいゆうおとこを倒した……」

 そうレスを睨む、イザヨイ……



 「余所見をするなっ」

 そうクレイが一気にイザヨイに詰め寄り一撃を放つが、



 「……だりぃーな」

 こバエを払うように、閻魔やいばを振りかざし振り払う。

 互いの刃がぶつかり合うが……



 彼女イザヨイの魔力わんりょくとその太刀の大きさと重量感……



 「……偉そうにしてるだけはあるか」

 クレイは競り負けるようにバックステップで後退する。



 「……軽いな先輩……その胸のせいか?」

 そうイザヨイは蔑むようにクレイを見る。



 「……カチーン」

 ぼそりと、自分のブチ切れた様子を呟き表現する。



 「裁けっ……針地獄っ」

 その言葉と共に地面が黒い炎が吸い込まれるように消える……



 「……っ!?」

 クレイが上空に飛び上がる。

 が、クレイの居た周辺には数多の刃が突き出している。

 このまま、その刃はりに落下するが……



 上空の見えない結界ゆかに着地する……



 「……訂正しろ、能力も魔力も……胸(の大きさ)も、……」

 そう目の前にかざした刀やいばに左手を沿え……

 自分の身体の方に左手をひく。

 流れる血が刃を辿り……黒き瘴気がその能力を引き上げる。



 「……名を叫べ……紅桜……そして……その名を偽かたれっ……」

 「……閻魔、抜刀っ!!」

 クレイがその刃から左手を放すと……刀身がその身丈くらいに伸びている。



 「なっ……」

 イザヨイが目を見開き……驚いている。



 透明な結界ゆかを蹴り上げ、イザヨイの元を目掛け飛び降りる。

 その身丈ある刃を振り上げ……



 「散れっ徒桜あだざくらッ!!」

 大きな太刀を振り下ろす。



 ぶつけた刃が、刀が弾かれイザヨイの身体がその刀と共に少し仰け反る……



 「認めろ……私が実力も胸(の大きさ)も……格が上だっ!!」

 そう太刀を振り上げ……



 「何を……理由にっ!?」

 特に、後半の部分は誰がどう見てもイザヨイが上……



 「散れっ桜梅桃李おうばいとうりっ」

 太刀を振り下ろす……



 「……私が先輩おねーさんだからだっ!」

 そう付け加える。



 「……(おっぱいに)……かんけぇ……ねぇじゃねーかっ」

 その一撃に意識を失う寸前……イザヨイが最後に搾り出した言葉つっこみだった……

 斬られた場所の魔力が血しぶきが周辺に花を咲かせるように飛び散る。



 バタリとイザヨイが倒れる。



 「……ふん、お前らも言葉の使い方には気をつけろよ」

 そうこちらに戻ってきたクレイが俺たちに言う。



 取り合えず、機嫌を取っておいた方がいいかもしれない……



 「よっ……巨乳っ」

 俺は右手を口の横に添えながら今の戦いを称えるように言っておく……



 「……殺すぞ」

 鬼のような顔が向けられていた……



 「ごめん……なさい……」

 この人……どう扱われれば満足なんだろうか?
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