異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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学園編-魔王討伐

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 「煩い……聞きたくない……もう……何も……」
 耳を塞ぎ、雑音を振り払うように頭を振る。
 何十年もずっと……ずっと悩まされてきた雑音《おと》……

 「落ち着けよ……貴方《おまえ》は何で敵対《かたな》を……」
 俺の声も雑音《ききたくない》と……

 「煩い……勝利をっ……」
 そう答える……

 「……聞きたい言葉《おと》を……」
 この数十年……聞けなかった音をただ求めて……


 「……頑張ったのに……頑張って優勝《てにいれた》のに……勝ち取ったのに……努力した……不正などしなかった……なのに……」
 なんで……成し得ない努力ばかり評価するっ……

 「無常迅速《むじょうじんそく》っ」
 そう突進するレイヴィに……

 「舞い散れっ残桜《ざんおう》っ」
 そうヨウマが俺の前に陣取り、その一撃を相殺する。

 唯一、技を封印《だまら》されていない……
 そして、刀能力《かりょく》だけなら、恐らくは刀使いの中では、
 現トップであろう……

 一人、修羅《きかくがい》な能力者《かたなつかい》……
 一人、嘘吐《げんかいしらず》な能力者《ぺたんこ》は要るが……


 「レスちゃん……よくわからないけど、駄目だよぉ」
 何故かヨウマに心を読まれるかのように叱られる。

 「無断借用《むだんしゃくよう》……舞い散れっ残桜《ざんおう》っ」
 再び、見よう見真似でレイヴィが一気にヨウマに突進する。

 言って、自分の技……
 そして、妖刀《ダリア》は……
 この場の刀を頭一つ抜けた能力だ……

 基礎能力、運動能力……それらを劣っていても……
 真正面からぶつかれば……

 ヨウマが振り払った刃で、レイヴィは再び元の場所で刀を構えている。

 「煩い……煩い……聞こえない……聞こえないだろ」
 そうレイヴィは耳を塞ぎ……耳を傾け……

 「……わたし……頑張るから……頑張るから……勝つから……だから……」
 そう……遠い昔に聞けなかった言葉《おと》を……
 ずっとずっと……求めている……

 「無眼……」
 俺たちには、余り意味が無いというのは気がついているだろうが……

 「無音……」
 それでも、厄介なのは変わらない……

 それでも……
 俺とツキヨの瞳がそれを追う。

 対抗できる手段《なかま》は揃っている。

 「無常迅速《むじょうじんそく》っ」
 ツキヨの瞳がその残像する刃《ほんもの》を見極める。

 突き出した刃がそれを相殺する。

 その隙をつくようにヨウマがレイヴィを切り裂くように刃を振るうが、
 レイヴィが同じく刃を振るい刃同士がぶつかり合い、それを受け止める。

 すぐにレイヴィが刃を振り上げそれを地面に向けて振り下ろす。
 俺はその間に入り……

 頭上に液体のようなビームシールドのような結界を創り出す。
 魔王の力によって多少のアレンジを加えられるようになった。

 「……これ、失敗したら超かっこ悪いよな……」
 そう苦笑しながら、失敗したときの保険のように呟く。

 結界《ビームシールド》でスピードと威力が軽減されながらも、
 刃が俺の顔に迫ってくる。

 俺は屈んだ姿勢のまま、レイヴィの振り下ろされる刀を見上げながら、
 頭上《めさき》で合掌するように強く手を合わせる。

 「なっ……」
 レイヴィが目を見開き驚くように俺を見ている。

 「無刀取《むとうど》り……」
 成功したことに安堵しながら、破邪暗黙《あいてのかたな》に魔力を送る。

 「オトネッ!!」
 今だとそう告げる。

 「びゅーん」
 黙らされていたオトネがその能力で……

 「どーんっ」
 レイヴィが刀から手を離し、後ろに吹き飛ばされる。

 「無言《だまれ》っ」
 そう立ち上がったレイヴィが言葉にするが……

 「ばぁーんっ」
 オトネから指先から飛び出す強力な魔力に成す術なく吹き飛んでいく。
 能力を発動させるための破邪暗黙《かたな》は俺の手に今も収まっている。

 俺が手を離さない限り、再び抜刀《はつどう》することもできないのだろう。

 「煩い……どぉして……」
 そう……立ち上がる気力も失うように……

 「あーあぁ、大丈夫?」
 そう一人の男子生徒が入ってくる。

 「うるさ……」
 蹲ったまま、瞳だけを後ろから来た男に向けるが、言葉を途中で失う。

 「……シグロ?」
 その男の名を呼ぶ。

 「3年B組……シグロ=サイレス」
 そう男子生徒が名乗る。

 「僕が敵《かたき》をとってあげるようか、おねーちゃん」
 そう冷たく、地に両膝をつけた姉を見下すように言う。

 「あんた……学園に……」
 魂を売ったのか?そう睨むような瞳で訴える。

 「……持病も……非力も……もう僕は劣勢じゃないよ、ねぇーさん」
 そう答える。
 瘴気を取り入れ、その病も魔力も全てを補った。

 「……勇者に対立してるってことか?お父さんとお母さんを裏切ったのか?」
 そうシグロと名乗った弟に言う。

 「煩いなぁ……黙れよ、あいつらの愛情《ことば》は聞き飽きたんだ」
 そう見下すように……
 ずっと……ずっと……その愛情《ことば》に飢えていた人《あね》を知っていたように……
 勝ち誇ったように笑みを浮かべる。

 「シグロォーーーーーッ!!」
 そうレイヴィが叫び立ち上がる。

 「……僕がもう姉《おまえ》の適う相手じゃないってのを教えてやるよ」
 そう刀を取り出し……

 「抜刀……王者静寂《おうじゃせいじゃく》……」
 鞘から灰色の刃の刀を抜き取る。

 「静まれっ……静風《しっぷう》」
 風の刃がレイヴィ目掛け飛ぶ。
 刀を持たぬレイヴィは黙ってそれを見ているが……

 彼女に静風《しっぷう》が届かず、男《シグロ》の顔が俺の方を見る。

 「兄弟喧嘩の邪魔して悪いな……」
 その一撃を防いだ事を誤りながら……

 「なんのつもりだ……」
 シグロは俺を冷たく睨みながら……

 「フェアじゃねぇだろ……」
 刀を持たぬ姉《じょせい》に……
 そう言いながら、結界で手のひらを守りながら、
 刃の部分を手にして刀のグリップをレイヴィに差し出す。

 黙ってレイヴィが破邪暗黙を受け取る。

 「まぁ……お節介ついでにもう一言、煩いこと言うけどよ」
 ……そうシグロを睨み……

 「姉を敬え……悲劇気取りならもっと謙虚でいろよ……」
 少ない会話で全てを理解したわけじゃないが……

 「静かにしていろ……それとも静かにさせてやろうか?」
 そう刀を俺に向ける。

 「……やってみろよ」
 俺はそうシグロに返す。

 「……なんのつもりだよ」
 そう戸惑うようにレイヴィが俺に尋ねる。
 当然だ、さっきまでやりあっていた相手が自分を庇うように立っている。

 「そいつ……あんたの弟か……申し訳ないけど……」
 そう俺を睨みつけるシグロを睨み返すように……

 「気にいらねぇ……」
 そういい捨てる。

 「数日前までまったく逆の事を言っていたから説得力ないかもしれないけどさ……」
 そうアクア家の兄妹を思いだしながら……

 「会って間もないあんたらに言える立場じゃないが……頑張ってる、人《あね》を侮辱するな……黙って尊敬していろっ」
 そうシグロに言い捨てる。

 「……ねぇ……教えて」
 そう主語無くレイヴィが俺に尋ねる。

 「ん……?」
 当然、質問の意図がわからない……

 「君の名前……」
 そう尋ねられる。

 「レス……」
 俺は素直に答える……

 「……レス……」
 そう彼女がその言葉を繰り返す。

 「ん……あぁ」
 そう名を呼ばれ答える。

 「……その名前《おと》は……好き」
 そう……疲れた目で……初めて小さく笑った。
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