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異世界編-神の遊戯

大商人

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 ナイツもアストリアも……
 珍しくも余裕もなく一週間《のこされたじかん》を特訓に明け暮れる。

 俺も……多少は動けるようにならないと駄目だよな……

 この能力を使ってできることを……増やさなければ……




 ・・・


 合宿……最終日。

 ライトの別荘。



 「ただいま……」

 そうライトの別荘の出入り口ではなく、自分で作り出したゲートを潜り、セティが皆が集まる大部屋に現れる。


 俺、ライト、アストリア、ナイツ、スコール、フレア、リエンがその場に居る。


 「……神代理《あいつ》の言う通り、王都に2人、ギルドに2人……均等に分かれていたよ」

 そう偵察してきたように言う。

 「まぁ、私はこっちについたつもりもないけどねぇ」

 そう意地悪そうに笑いながら続ける……


 「王都にリプリスとナキ……ギルドに元学園長とリスカ?ってやつ……」

 そして、王都にもギルドにも転生者以外にもやばいやつらは沢山いるのだろう。


 「しかし……俺も、おそらくセティも……神代理なんてものには興味が無いが……学園はこの遊戯とやらに参加するのか?」

 「無論……我々もこんな馬鹿げたものに勝利して、願う事はない……だが、別の勝者がとんでもない願いを言うかもしれない……それに強制的に魔力を賭けられているのだ……」

 そう俺の問いにライトが返す。
 遊戯が終わり世界が安定するまで完全に魔力を失う……確かそう言っていた。

 それが本当なら、それまで瘴気にあてられたり、誰かに暴力《こうげき》を受けたら……それこそ命にもかかわってくる……


 「日の出の会戦直後……激戦となるだろう……どこも攻めに2チーム、守りに1チームで分けて来るだろう……」

 そうリエンが言う。

 恐らく会戦直後……真っ先に狙われるだろう……

 俺はそれを絶対に死守するつもりで……



 ・・・


 突如現れた学園裏にあるビルのような長方形の建物。
 その屋上には赤い大きな水晶が設置されている。

 よくわからないが……こんな水晶に全員の魔力が支配されているというのだ。

 日が昇る。
 日の光が屋上のその水晶を照らすと同時に……


 王都の方角から激しいビーム砲が飛んでくる。


 全力……
 両手を前にかざして、結界の壁を作り出す。

 日の光がそんな俺の姿を映し出す。


 激しい衝撃と音と共にビーム砲がかき消される。

 そして、その音が合図になったように、建物の下が騒がしくなる。


 「さて……私たちも行こうか」

 そう、俺の様子を見守っていたセティがビーム砲が飛んできた方角を見ながら、ゲートを開き俺に言う。

 まずはあの飛空艇を止める……か。


 その魔力《こうげき》の主の場所に繋がるゲートをくぐり、
 敵のいる場所に行く。


 「……毎度……安くしとくよ」

 そこに居たのは紫色の長い髪……ラフな格好をした女性。


 「……リプリス……ナキと二人で?」

 せめてきたのか?


 「……いや、安心しなよ……私だけだよ」

 そう告げるが……じゃぁさっきの攻撃は……
 この女が……?
 そんな訳が……


 「現実を見なよ……しょーねん、こいつが今までどれだけの物を私たちに提供《しょうかん》してきた?」

 そう無理に作り笑いをしセティが言う。


 「……所詮は偽装《レプリカ》……本物には及ばないよ」

 そう謙遜するようにリプリスが言う。


 王国からこの学園に攻め込んできた数。

 リプリス……
 それと、魔王《フィル》の討伐部隊となっていた国の特殊部隊。
 アルファやベータという特殊名で呼ばれていた人物……
 主力と呼べるのはリプリスと合わせ5名というところか。

 後は、兵隊のような者がずらりと並んでいる。


 そして……その右側……
 ブラッドファング……ギルドの部隊も並んでいる。


 「その壊し合い……僕もまぜろっ」

 そう青白い髪の男が先頭を切るように現れる。
 そして、ギルドの連中だろう……
 同じように主力となりそうな人物を合わせると、
 リスカ合わせ4名……

 そして同じように部下がずらりと並んでいる。


 こちらもすでに、王都、ギルド方面に、
 別れ、主力部隊は出払っている。

 そして……防衛に残した人物は、
 拠点で待機させている。

 ようするにここには、俺とセティしかいない。


 「こっちは任せろ……」

 フレアが王都の特殊部隊の前に立つ。


 「裏切り者が……」

 その場に居た、見覚えのある人物……ベータが言う。
 他は俺が見るのは初見の奴らばかりだ。


 「俺も……手ぇ貸すぜ」

 ヴァニもフレアの隣に立つ。


 「同じく……」

 レイフィスが両腕に魔力を巻きつけ立っている。


 「なら……ギルドの連中は私たちが受け持つ」

 そうツキヨがその前に立ち。
 その両隣にはクレイとヨウマも居る。

 そして……

 「だるいけど、私も……」

 シェルが少し離れた場所に立つ。


 「後ろは……私たちが守ります」

 そう……防衛ラインを守るように、クリアとレイン、
 そして、ブレイブ家の部隊が立っている。


 「それじゃ、こっちも始めようよっ」
 「分析……」

 自分の身体を強化するために必要な魔力を調べ、身体能力を数倍に膨れ上げる。

 その拳の行き先は、リプリスへ向かう。


 「……え……私っすか?」

 そう迷惑そうに声をあげながら……


 「オーダー……ウェポン…………抜刀」

 「……なっ……」

 俺はもちろん……端で戦っていたシェルも……その他の連中も……
 信じられないものを見るように……


 「いろいろと……高くつきそうだねぇ」

 そう……迷惑そうにため息を吐きながら……

 「……力を示せ、獅子王っ」

 そう、本家ほどの性能かはわからないが、
 重力がその場を支配し、明らかにリスカの動きが鈍る。


 反撃に斬りつけられた刃を交わすと同時に、リプリスから距離を取り、
 その獅子王の能力の外に逃れる。


 「……なるほど……でも、壊すっ」

 そう、楽しそうに不気味に笑う。
 近くの石を拾い上げる。

 「分析……」

 石が粉々で手の中で砕け、それを上空へ投げる。

 「コメットっ!!」

 粉々の石が、魔力を増幅させ大岩に変わりリプリスの元に落ちる。


 「オーダースキル……」

 そう……リプリスが呟くが……次々と大岩がリプリスの元に落下する。


 魔力の蒸気と地面の土煙がリプリス一帯を取り巻き、その姿が見えなくなる。
 ゆっくりとその姿を現すが……


 「な……まじかよ……」

 頭上に透明な板の結界を張っている。

 「どんな魔装具《ぶき》も能力も……創り出せるのか」

 その様子を俺は額に汗をにじませて言う。


 「……勘弁してほしいけどね、結構高いんだよな、君《レスくん》の能力……」

 そう小さく愚痴をこぼすようにリプリスが言う。


 「大商人……または大盗賊……その魔力《おかね》で取引ができないものは無い……すべての能力《しょうひん》が思いのまま……」

 セティがそう説明する。

 もちろん、その魔力で具現化できるものは……本家ほどではない……
 それでも……すべての能力、それを魔力の許す限りに同時に発動すらできる。


 「くそ……やべぇのがいきなり二人も相手かよ」

 俺はそんなやり合う二人を眺め……


 「このまま、互いにつぶし合って、お互い戦闘不能にでもなんねぇかな」

 そう……セティが俺の隣で呟くように言う。


 ……全てを卒なく売買《はつどう》できる……リプリス。
 ……おそらく、トップクラスの補助《かりょく》特化のリスカ。


 ……神の遊戯……
 そんな神に願いを頼める……

 そんな願わない遊戯《たたかい》が始まる。
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