異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編-神の遊戯

誇り、名誉

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 ぼんやりと……そんな幼き日の思い出が……
 真っ白な画用紙に子供がクレヨンで落書きした線画のように、
 思い返される。


 「あのね……あのね……こうやってお空に武器を並べるの……それをビュンッてね、それを全部飛ばすのっ」

 出来もしない能力の使い方を少し興奮気味に話す少女《わたし》……。


 周りはそんな私の妄想に呆れて……
 そんな私の妄想を兄は実現して……

 そんな兄《スコール》という英雄に誰もが歓喜して、
 そんな私もそんな兄に大興奮だった。

 不思議と悔しいとか、惨めだとかそういう感情は無かった。

 ただ……そんな兄が誇りだった。


 でも、いつしか私は自分でも形にできない創造《もうそう》だけが先走って……
 それは、兄にも届かないただの……妄想《むのう》となった……


 私にも……兄のような……力があれば……
 そんな妄想を形にする力が有れば……

 白い画用紙に描かれた落書きは、雑に紫色を塗りたぐり、そんな紫《そら》から、亡者たちが残した憎悪が魔力をまとい巨大な瘴気となり落下している。


 真っ白な画用紙に巨大な魔力が描かれる……
 その真下でただ震えている少女《わたし》は……

 ほら……そこに魔力《ちから》はあるよ……
 私《あなた》の無能が力になるか試すチャンスだよ。

 私の隣で幼い少女《わたし》が囁く。


 なんで……こんな場所に立っているんだっけ?

 ポンと私の頭に手を載せる男……


 『大丈夫……お前なら出来る……今日、俺がお前を英雄にしてやる……』

 震える私の手を掴み、空に向ける。


 そうだ……私はそんな英雄《いとしい》こえに答えるんだ……


 だから……創造《わたし》を解き放てっ!



 知っている……その歓声が私に向けられていることも……

 知っている……それが私の魔力が成したことではなく……ここに居る皆の魔力であることも……

 それら全てを創り出した英雄《だれか》が居たことも……


 私は、ただ理解が追いつかなくて……
 ただ……俯きその自分の両手を信じられないように眺めていた。


 そこで、画用紙で描かれた雑な日記《きおく》が、今の時間《わたし》に追いつく。



 ・・・


 王都の中心でただ両手を見つめているレインに歓声が送られている。

 ただ、一人その状況が面白くないように……


 「すぐにこのような茶番《ば》を解散しろ」

 このグレイバニアを支配するゼネリック王が言う。

 「明日には再び敵対する者だ……このような馴れ合いっ」

 不要だと国王はそう主張する。

 その言葉に、王の言葉に民の歓声が止まる。


 「感謝《ことば》を絶やすなっ、世界を救ったのは誰だっ……誇りある王都の民として、その言葉を送るのが誰なのかっ……その意思を示せっ」

 シルバが静まり返るその場で声を張り上げる。

 「……この後の罰は承知の上です……このグレイバニアの将軍の名に恥じる私を今、この場だけでも、どうかお許しください……」

 シルバが、王の前に膝をつき、深く頭を下げる。


 「……小さき、英雄……この王国を代表し、あなたに感謝を告げます……私のようなつまらぬ者の言葉に何の意味も無いでしょう……それでも、私に今できる……この王国を代表しできるせめてものの誠意です」

 全く、彼女がこの後に待ち受ける罪に値する行為ではないが……
 シルバの中の正義が、その王の振る舞いを許さなかったのだろう。

 そんなシルバの言葉に再び王都市民の歓声が響き渡る。


 ゼネリック王はその場で剣を抜き、レインの前で膝をつくシルバにその剣を向ける。


 「……将軍という地位まで譲り渡した、我が恩を忘れたか……そんな王への侮辱……覚悟はいいのだな」

 「はい……いかなる罪も受けましょう」


 再び静まるその場に……俺は右手と左手を叩き合わせるとその場に拍手の音をつくりだす。


 冷たい目線が俺に集まる……


 「シルバさんだったか……俺からもあなたに感謝の言葉を送らせて欲しい……」

 刃を突きつけられたシルバが不思議そうに俺を見上げている。

 「あの瘴気を消滅するだけの魔力を集められたのも……そして……この国が腐らずに今日まであったのも、多分……あなたのおかげだよ」

 俺は感謝の拍手を送りながらシルバに告げる。

 これまでの彼女の王への忠義……いや、この王国への彼女の忠義があったからこそだ。


 俺の後ろから別の拍手の音がする。


 「この俺からも、シルバ将軍……敬意を送ろう」

 キリングが俺の横に並びシルバへと告げる。

 「お前が忠義を誓う、国の誇り、しかと見た……」

 キリングはシルバを見ていた目線を国王へと向ける。
 
 「将軍、誇れ……この俺が保障しよう、それを成したのは……国王《そいつ》では無い……民を動かしたのも、忠義を通したのも、お前の大儀《ことば》だ」

 キリングが抜いた剣を、国王へと向ける。


 「将軍……お前の罪とやら私が貰い受けよう……国王、いやゼネリックよ……その剣先を俺に向けろ……」

 ゼネリック王はゆっくりと瞳をキリングへ向ける。


 「何のつもりだ……若くして数あるギルドの長に上り詰めた程度で、王と対等になったつもりか?」

 「くだらぬ……貴様程度……俺を比較する相手にも値せん……」

 キリングはそう吐き捨てて……


 「その将軍《おんな》は貴様程度にはもったいない……そう言っている」

 静かににらみ合う二人に……


 「やめよう……ここは、英雄《ヒロイン》を称えてくれる場所なんだろ」

 俺は二人に割って入るように……


 「それよりも、ここからは協力して、神聖教会とやらを叩く話をするほうが大切じゃないか」

 その言葉に、キリングはひとつため息をつき……
 今一度、その刃の先を国王へと突きつけると……

 「レス……お前の立場に免じ、この場は刃を収めよう……だが、国王……貴様がその誇り高き将軍に何かしてみろ……この俺が貴様を裁く」

 キリングはそう言葉にして剣を鞘に収める。


 「さて……レスよ、それでこれからどうする?神聖教会を相手にするには、我々が争い、その水晶を破壊しあう必要があるのだろう」

 無論……互いにそれを護る……破壊する理由がある。

 ここまでに破壊された水晶は二つ。


 「……で、どうする……この俺《ギルド》の落とし前を……」

 キリングは後ろを振り返り、ロープで囚われたマナトの姿を見る。


 「魔力は無い……今は危険性はない……」

 俺はその処罰を放棄する。


 「それに、水晶《まりょく》を失ったとはいえ……あの人も無事発見された」

 この世界は表裏一体……そんな持論を持つ人間……


 神代理……神聖教会を相手にするのに……
 三つの勢力に三つの水晶……

 9つあるうちの……半分は奪いたいところだろう。

 だが、まだその内の二つだけ。


 そして……そんな神聖教会よりも……

 一番に厄介なモノを……


 「リスカ……王都、ギルド、学園……もう一度協力し……彼《あれ》を止めるべきだ……」

 たった一人相手に、この国総員でかかる。
 恥じるべき話だ。

 それでも……彼《あれ》はその恥を受け入れてでも……
 瘴気塊にも匹敵する……災害だ。
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