異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

文字の大きさ
131 / 213
異世界編-神の遊戯

壊れたモノ

しおりを挟む
 聞きなれない、お経の音が響いていて……
 見知らぬ親戚の顔が並んでいて……
 僕はただ……その現実を受け止められずに居た。


 そんな会場に、気がつけば僕は一人取り残されていて、
 目の前の……正義《あね》が笑う遺影《しろくろのしゃしん》を見ながら……
 それでも現実を受け止められずに居た。



 ・
 ・
 ・


 現実世界……20××年……

 真っ暗な部屋、ゲーミングチェアに座り、僕はそのパソコンの画面に没頭している。
 その映し出すゲームの世界では僕は英雄だった。

 知っている……それは僕が勝者だからだ。
 強者は正義、弱者は……

 だから、明日には……僕の正義は簡単に裏返る。


 そんな、閉じこもった僕の世界のドアが開かれる。


 「ちょっと何よこれっ!」

 僕が部屋の前に置いた簡単なバリケードが簡単に壊されている。
 そのダンボールのバリケードを壊し、姉の顔がひょっこりと覗かせる。


 「な……なんだよ……ねぇちゃん、学校はどうしたんだよ」

 開いた扉から流れ込む日の光に、今が平日の昼間だということを知る。

 「な、なんだよじゃないでしょ、あんたこそ、学校……どうするのっ!!」

 お節介をやくように姉がまゆを吊り上げながら言う。

 「お母さん泣いてるよ、それにあんたの担任に私がいつも呼び出されるのっ」

 迷惑なんだけどという目を向けられる。


 「ほっとけよ……僕はあんな場所に……」

 居場所は無い。

 「大丈夫……私たちが何とかするから」

 姉がそうにっこりと笑う。
 居場所の無い僕の世界……

 ここだけが僕の世界……
 そんな場所から連れ出すお節介な正義の味方に……
 僕は……

 文武両道、そんな自慢の姉の彼氏と姉に連れられて、
 僕は再び、日常《じごく》へと足を踏み入れる。


 「やめなよ……」

 学校裏で、暴力を振るわれていた僕に姉の自慢の彼氏《せいぎ》は、
 そんな、男たちの拳を止めて、数人いた男たちを簡単にねじ伏せた。

 弱者《ぼく》を守る正義《あねのかれし》はそこに居て……
 僕は確かにそれに守られていた。

 それから、僕にも平凡が訪れた。

 だけど、数日後……
 姉とその彼氏の姿を見かけなくなり……
 家族と交流の無かった僕は、それでも、その平凡を続けようとした。

 しばらく、おとなしかったクラスメイトがニヤニヤと僕を見ながら、
 再び、僕は校舎裏に呼び出され、殴られた僕の体はあっという間にその場に這い蹲り、その頭に男の一人が僕のあたまに靴底を押し付けている。


 その男が僕の頭のよこに自分のスマホを投げ捨てると、
 動画が流れている。


 「も……もう……やめてくれ」

 なさけない……そんな正義《おとこ》の声が聞こえてくる。
 学園のOBが混じっていると思われる大人数に、
 正義は容赦なく敗れ去って……

 辱められるように、すっぱだかの姿をさらけ出している。


 奥からは姉の悲鳴も聞こえていて……

 「おいっ……告げ口されないように徹底的にやれよ」

 リーダーらしい男の声が聞こえてきて……


 正義は簡単に悪に正される……
 

 僕は流れる涙の意味もわからなくて……
 僕と入れ替わるように登校拒否となった姉の彼氏……
 そして、自殺した姉……

 数日後に行われた姉の葬式も……
 僕には全く理解が追いつかなくて……


 数日後の教室……
 僕は購入した折りたたみ式のバタフライナイフを制服のポケットへと忍び込ませて……


 「はぁ……動画を見せろ?」

 クラスメイトは僕のそんな言葉に圧のある言葉と睨みをきかせる。

 直接、手をくだした訳じゃない……それでも、なんでこいつらは今もこうして普通に笑っているんだ?
 なんで、こいつらの日常は正されているんだ?

 正義とはなんだ?正しいとはなんだ?

 おもしろ半分に再び僕の前で男の携帯から動画が流れる。

 僕は冷静に怒りを抑えながら、手にしたナイフの刃を起こし、そのスマホの画面に突き刺した。
 くそ……思ったより頑丈だ……

 僕は、何度も何度もその刃をスマホの画面へと突き刺して……
 やがて動画が流れなくなるほど、それを破壊した。


 「おい、てめぇ何してんだよ……いいや、新しいスマホに買い替えたかったんだ、お前……金だせ……」

 よと男が僕に言う台詞は続かなくて……


 「きゃーーーーーーっ」

 そんな女子の悲鳴が教室に響き渡る。


 「……なんだ、スマホを壊すより簡単じゃないか」

 ずっと怯えていたそれは……
 僕のせいで、壊れた正義の味方を壊したそれは……

 手にした、凶器《やいば》がそれの喉を簡単に切り裂く。
 簡単に目の前の悪《ゴミ》を壊した。

 躊躇などしない……
 目の前の仲間も同様に切り裂く。

 スマホなんかよりも簡単に次々と壊れていく。
 簡単に壊れていく。

 簡単に僕は壊れていく。


 動画の映像を思い出す。
 僕は……男《リーダー》となる男を捜しあてると、
 躊躇無くその刃でその男の喉を突き刺した。

 返り血を浴びた僕の体に人々が悲鳴をあげている。
 警察のサイレンの音がそこらに響き渡っていて……

 僕は逃れるように、導かれるようにその建物に入った。


 「転生者を求める者と転生者になりたい者のマッチングが完了しました」

 目の前の女が僕にそう告げる。


 ・
 ・
 ・


 「壊す、壊れろ……壊せ……」

 第一部隊、第二部隊を退け……
 第三部隊を前に……

 リスカはいかれた目を向ける。
 いかなる攻撃も、能力で修復し、
 そして、そんな猛者たちをたった一人で払い退ける。

 負けなどしない……
 そんな全ての正しさを否定しろ。

 「壊す…壊れろ、壊せ……」

 そう……僕はとっくに壊れている。


 「コメットっ」

 握った石を握りつぶすように、作り出した石くずを空中に放り投げる。


 「魔槍《まそう》……飛べっ!!」

 コメットはレスの結界に防がれている。
 そんなコメットの開放で無防備になった身体に、
 アストリアの魔槍が突き刺さる。

 「ここで、終わらせるっ!!」

 容赦なくライトの魔力の剣が追い討ちをかけるように、切り捨てられる。


 「壊す……壊れろぉ、壊せぇ」

 壊れた身体は、それ以上に壊れない……
 白目の目に黒目《ひとみ》が宿る。

 リスカの周囲の流れる魔力に瘴気が宿るように、
 その瘴気にあてられた、第三勢力の部隊は弾き飛ばされるように、
 地面を転げまわる。

 これだけの勢力を前にしても、
 目の前の男は止められない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...