異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編-神の遊戯

神の間

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 水晶……魔力は失った。

 実の身体はこの異世界《せかい》の深い奈落の底へと落とされた。


 因果応報……

 今はただ、彼女の身体を借りてここに居る。


 本来の魔力とはほど遠い……

 それでも、この能力なら……ある程度はごまかせるだろう。


 でも……それは相手が神域なんて相手でなかったら……


 「まぁ……そんな言い訳をするために出てきた訳じゃないからさ」

 リスカは戦いでこれまでに出来た瓦礫のひとつを掴み取り、
 手のひらで粉々に砕く。


 「コメットっ」

 頭上に振り上げた瓦礫の粒が魔力を帯びて巨大化する。


 「面白い能力だなって……でも無駄だぞって」

 パチンコの玉のような銀色の小さな玉を両手の指に挟み、
 ディアスが頭上に投げる。

 ディアスの頭上で銀の玉が電磁バリアを展開する。
 リスカの魔力《コメット》は電磁波に分解されるように、
 粉々に砕けるように地に落ちていく。

 「ロックシュートっ」

 真っ直ぐに投げた瓦礫の粒が、ディアスに飛ぶ間に巨大化する。

 「無駄だぞって」

 伸び縮み式の警棒のようなものを取り出し、
 その岩を叩きを落とす。

 静かににらみ合いを続け居ている二人に……

 静かにそれでも不自然に耳に残るように外から足音が近づく……


 「やぁ……随分とピンチのようだね」

 ゆっくり部屋に入ってきた男に……
 リスカは、神聖教会の敵対する側の誰か……
 それは、自分にとっても敵かもしれないが、
 そんな誰かが現れたと思ったが……


 「……なんで、あんたがここに……いるんだって」

 ディアスがその男の登場に驚くように……


 「……フィーリアのピンチなんだろ?」

 助けに来たと優しく微笑むように……


 ・

 ・

 ・


 「ん……?」

 俺はきょろきょろと周りを見渡している。


 「どうしたんだ……レス?」

 ライトは、不思議そうに俺の顔を眺める。


 「いや……なんだか、神聖教会《ここ》に入ってから一ヶ月近く経過したような気がして……」

 「何を言っている……全く君という奴は……」

 ライトはそんな俺の台詞にくすりと笑いながら……


 「レス……勇者……無駄話はそこまでだ」

 たどり着いた部屋……先行していたキリングが立ち止まる。


 相変わらずの真っ白な部屋に……その奥に王座のような椅子があり、
 そこに座るフィーリアの姿と。

 その前に立つ、真っ白な征服をまとう金髪の男。


 「フィーリア最高司祭様には……指一本触れさせるわけにはいかない」

 ルーセウスが、一歩、また一歩とこちらにむかってゆっくりと歩いてくる。


 「……神域魔力……なるほど……面白い」

 キリングが剣を抜くのと同時にルーセウスがサーベルを抜く。


 「……レス……余計な真似を、だがここは素直に礼を言おう」

 一瞬で迫って刃を突きつけたルーセウスの一撃から、結界でキリングを守る。


 「神の犬風情が頭が高いな……」

 キリングの能力……
 あの瘴気塊を打ち消したあの日に……

 その断片的な能力を見た気はしたが……

 ただ……皆の魔力を集めるようなモノなのだろうか……

 ギルドの長……


 「レス……勇者、そしてそこで偉そうに踏ん反り返る神よ、見るが良い、これがこの俺の力だ……」

 剣をもつ逆の左手に黒い光が集まる。


 次の瞬間、白い歯を見せ付けるように笑みを浮かべ、
 一瞬でルーセウスの頭を鷲づかみにすると、
 怪力、凄い力でルーセウスの身体を地面へと叩きつける。


 「ふん……」

 つまらなそうに、キリングが立ち上がり、ルーセウスからフィーリアに目線を移す。


 「さて、次は……貴様が俺の前に頭を下げてみるか?」

 ゆっくりとキリングがその王座に近づこうとする。


 「最高司祭様の前だ……頭が高いぞ」

 声のした地面にキリングが目を向ける。


 「膝をつけ……」

 「なっ!?」

 サーベルがキリングの両足を切り裂くように、
 その場に両膝をつく。

 「小癪な真似……」

 とてもそのサーベルの剣先を目で追うことなどできない……
 ただ、そのサーベルが描いた……通った場所が黄色い光の線のように残っている。

 その線が、膝をつき、低くなったキリングの首の位置に描かれている。


 次の瞬間……キリングの首から大量の血が吹き出て、下手をすれば、
 頭と胴体が切り離されていたのかもしれない。


 「くっ……」

 その屈辱にキリングが顔を歪ませる。


 俺のはった結界が何とかそれを防ぐ。


 「君か……地味がゆえに、それを極めた魔力……確かに厄介だ」

 ルーセウスの姿がその場から消える。
 目で追うことなどできない。

 だが、剣筋だけが線を残すように……
 俺の身体を切り裂くように線が描かれる。


 「させないっ」

 フィルの魔眼ですらとらえることができない……
 その神域の動き……


 珍しく余裕の無いライトの瞳は、その剣先だけを追い、
 ライトの魔力の剣がその剣先が俺に届く前に叩き落す。


 「助かった……」

 そう、素直にライトに感謝の言葉を送る。


 ライトは黙って攻撃を二回、ルーセウスに放つが、
 ルーセウスのサーベルがそれを防ぐ。


 「確かに……神域……神に抵抗するってのは、しんどそうだな……」

 俺は、ルーセウスを見てそう言った後、その後ろで今も椅子に座る女を見る。


 そんな神《おんな》は、目の前の行く末を黙って見守るように見ている。


 「こんな俗物からも……もちろん、邪神からも、私が貴方様をお守りします」

 「この世界の全てを手に入れよう……」

 そんな、ルーセウスの背で、キリングは立ち上がる。


 「それは……神《きさま》にも成せぬことだろう……」

 「それをこの俺が手に入れる……レス、勇者よ……そんな世界を見せてやる、我が元に来い……お前たちにはそこに、この俺に並ぶ場所でそんな世界を見せてやろう」

 そんな欲望を……そこにたどり着けるのは自分だけだと……

 そんな自惚れを事実と疑わないように……


 ・

 ・

 ・


 ディアスの前に現れる灰色の髪の男。


 「邪神……なんで、お前がって……」

 ディアスがその男を眺めながら言う。


 そんな男の両隣にはその灰色の男の3倍近い大きさの大男と、
 対象的な細身の男が立っている。


 「……神を助ける……あんたはあの人の敵だろって」

 ディアスがその灰色の髪の男に言う。


 「そうだね……僕はね、多分……今日、この日のために邪神、そんなモノになったんだ」

 黙ってディアスの横を横切る。


 「待てよ、行かせるかって!」

 一瞬、その男の登場に困惑して、その男が横切るのを黙って見過ごしそうになるのを、ディアスが許さぬように邪神を名乗る男を見る。


 「オディア……」

 邪神を名乗る男は大柄な男を見ず、その男の名を呼ぶ。


 「神域魔力化……」

 大柄の男はその名を呼ばれ、その神域《まりょく》を開放する。


 その大柄な男一人は……

 その部屋にいる人間に匹敵する、たった一人で凌駕する魔力で……


 残る二人が部屋の奥に行くことを止められず……


 「潰す……」

 オディアと呼ばれた男は……

 逆にその奥に進んだ二人の後を追わせないと、その入り口を閉ざすように立ちふさがっている。


 ・  ・  ・


 邪神……その付き人として現れたオディア。

 その大柄の男の前に。


 リスカもディアスも……

 倒れることはなくても、それを超えることはできない……


 再び……足音は聞こえなかった。

 それでも、一人の人間がその部屋に訪れる。


 「ハズレか……神の居る部屋だと思ったんだがな……」

 褐色の肌……白く長い髪を後ろで束ねた女性。


 「お前……」

 リスカが……少しだけ警戒するようにその女性を見る。


 「……ん、なぜお前が……まぁ、よいか」

 そう不思議に思いながらも興味なさそうに、大柄な男を見る。


 「誰だ……まぁいい、悔いろ、この俺の前に現れたことを」

 オディアはそんなアストリアを見ながら言う。


 「どけ……邪魔だ……」

 そんな神域に居る邪神の僕《しもべ》すらも、自分の相手ではないというように……


 「神域魔力化……鬼神」

 オディアはそう口にする。


 「なんだ……って」

 「これは……」

 そんな鬼神の力を前にしても、ディアスもリスカも、別の誰かの力を意識する。


 「神氷魔力化《グラム》……」

 冷たい空気がこの白い部屋をいつの間にか支配している。


 真っ白なアストリアの髪がうっすらと水の水色に染め上げられるように……


 「死ねっ」

 オディアがアストリアの居る場所へと拳を振り下ろす。


 アストリアは静かにその場で飛び上がると、
 その跳躍に要した魔力がその場に氷をつくように、空気が凍りつく。


 オディアの目の前で、宙を舞いながら、アストリアは身体を旋回させて、
 その右足をオディアの側頭部へと叩き込む。


 「なるほど……だが、軽い、軽いなぁ……おんなぁ」

 オディアがそう、アストリアの蹴りを受けながらも前を見る。


 頑丈なオディア……それとは別の素早さを持つアストリア、
 それを生かすために、すでにその視界から姿を消している……

 そう思ったが、アストリアの姿はまだ、その目の前にある。


 蹴りを受けながらもすぐに真正面を向いた顔を……頭を鷲づかみするように、
 アストリアの右手が、頭部を掴む。


 ペキペキと……アストリアの魔力がオディアを頭部から氷付けにしていく。


 そんな攻撃を遮るように、オディアが右手を拳をアストリアに放つ。


 が、アストリアはオディアのその巨体の胸板に蹴りを居れ、その場から後退するようにその一撃を避ける。

 この世界に置いて……神域《そこ》に近づいた者として……

 もはや、彼女は今、最強《そこ》に近い人間なのかもしれない。


 鬼神……今、この部屋で……
 誰もを凌駕していた男……

 地面を蹴り上げた、アストリアは再びオディアに接近すると……


 右手を先ほど蹴り上げた胸板に手のひらを添える。



 「魔槍……零距離……」

 さすがのその巨体もその魔力の前に吹き飛ばされる。


 「……まったく小僧……せっかく手にしたこの力で無謀でも神に対抗してやるつもりだったが……」

 その魔槍に吹き飛んだ巨体を追うように、アストリアの姿がある。

 「……小僧、そっちは任せたぞ」

 再び、オディアの頭を鷲づかみにする。


 「飛べ……」

 再び零距離で魔槍を精製する。


 容赦なく吹き飛ぶオディアの身体は……

 アストリア以外を凌駕するだけの力を披露することなく散った。
 
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