異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編-神の遊戯

勝負

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 「……最後の勝負をしようか」

 彼はそんな言葉を私に送り、自分の王将を掴みあげると、
 そんな彼の寿命ともなる魔力を惜しみなくその駒に送り込むように、

 その駒は女性《わたし》を形どるような形に変わる。


 「……能力《さよなら》を送るのなら……やっぱり……さ」

 ゆっくりと駒をあるべき場所へと戻し……


 彼の右手《かざした》の手のひら、私の駒の王将を守る兵の駒の6体が不思議な輝きを持つ石へと変わる。


 「何年後……何十年後かもしれない……」

 そんな盤面を変化させた男はゆっくりとエメラルド色の瞳を私に向ける。


 「六人の転生者《ぎせいしゃ》がこの場に現れる……そんな駒《だれか》と……僕の我侭《ねがい》をそれを紡ぐのは姫《かみ》だ……それは誰でもない……僕にとってはね……それは君以外にはありえない……」

 吸い込まれそうになるようない透き通ったようなエメラルドの瞳に……


 「だから……ぼくの姫《おうしょう》は君《これ》だ……そんな抵抗するための召喚石を6つほど用意した……そんな何十年後かに開かれる神の遊戯……そこで僕たちの最後の決着をつけよう……」

 そんな不幸《にんげん》をこの異世界《せかい》に集めて……

 「僕の我侭で……君を拘束した神《たちば》を……終わらせる誰かが現れるのか……これまで、君に負け続けてきた……」

 そう、苦笑いをするように笑顔を向けて……


 「それでも……」

 自分の手前の王将を再び持ち上げながら……


 「僕は……誰よりも君が勝者になる世界《びじょん》だけを見てきた……」


 「だから……その最後の遊戯《しょうぶ》は負けない……」


 この異世界……私に会うまでずっと一人に孤独だったからにとっては最初から一つの盤の一つでしかなかったのかもしれない。

 何度もひっくり返しては……そんな駒を入れ替えて正しい場所へと配置してきた。


 そんな彼の運命を終わらせるように強気に入ってきた……

 一国の王も、邪神としての力を得たエリードさえも、
 そんな駒の一つにすぎなくて……


 「許さないから……」

 私は……盤を見つめるように下を見つめたまま……

 そんな、自己犠牲《ふこう》を語るなど……
 許してなるものか……

 全部、全部……ひっくり返してやる。


 「私は……不幸だなんて名乗らない……私はっ……不幸になんてならないっ」

 「私は強く生きる……それが努力と呼べるものかわからない……それでも、あなたの言う世界など実現させてやるものかっ!」

 負けてなんてやらないから……不正など許さないから……


 その石には、今……彼の言った冗談のような召喚《ちから》があるのだろう。


 でも、それでも……そんな遊戯を実現を許さないように……


 現れた王に無駄に逆らうようにその頬を右の手のひらで強くたたく。



 その後の処罰《たいぐう》が彼が望まないものだったとしても……



 望みどおりにならない人形《かみ》など必要ない。

 国王も邪神も……そんな私に見切りつけるように……


 国王はその神能力《せしる》の力を手にして……
 そんな私をその力で処罰することで、その国を正そうとした。



 それで……いいと思った。
 そんな遊戯など実現しなくて……

 それが、私にもそんな彼のためでもあると……


 でも、それも……全部、全部……彼の脳裏で予測された……
 駒の動きだった。


 役の変換……

 救世主となるべく、召喚された私は、
 この国王が倒すべき悪に変わり、

 私を処刑することで、神に並ぶ栄光を手に入れる。


 国王が私に代わり、セシルの力を手に入れて……
 私を殺してその地位を得る。


 そんな……盤面が用意される。


 そして、王座の前で……
 国王の持つ短剣が私の首をいつでも切り落とせる位置に置いてある。


 不思議と怖くなどない……


 これを不幸だと認めれば、これまでの私を否定する……


 そして、そんな私の処刑場となった王座……
 そんな王座と廊下を硬く閉ざす扉を吹き飛ばすように……


 ゆっくりと男が歩いてくる。


 「神の力が欲しいんだろ?焦るなよ……彼女ではなく、まずは僕の命《まりょく》を手にするんだろ?」

 その短剣の先を自分に向けさせる。
 立場を得るのはその後だろ……と。


 「なんで……」

 私はそんな現れた男を拘束された、不自由な体で見上げるように……


 「なんで……か……誰かが誰かを救いたいと思うとはどんな時かな?」

 そんな過去の会話を思い返すように……


 「僕は……こんな世界がどうなろうと関係ない……それでもね……心のそこからね……君を……君だけを救いたい……そう思ったんだ」


 そんな言葉に無反応の私に、セシルはさびしそうに笑う。


 「おかしいなぁ……僕なりに君に告白《あい》を告げたつもりだったんだけどな」

 そんな透き通るようなエメラルド色の瞳が私を見る。

 「誰にも……渡さないよ……」

 そして……前に向き直ると……国王と私の間を陣取るように……


 国王はそんな男の言葉通りにその能力を奪うように短剣をセシルへ突きつける。


 そして、次の瞬間……


 そんな王座の空間が凍りつくように……

 「さて……この場に置いて……悪は僕《だれ》だ?」

 短剣を受けながらも……
 セシルの右手が、国王の腹部を突き抜けている。


 「こんな悪《ぼく》を殺す者《だれか》は……神か?」
 そんな周囲の人間を炊きつけるように……

 「僕を倒せば、神の力も王《そ》の地位も同時に手に入るよ」
 そう周りの人間を誘惑する。

 その場に居合わせた私もエリードも……身動きもできずそんな盤面を見ていることしかできない……

 そんな手柄《チャンス》に焦る者たちが懸命に、
 セシルの命を狙うが……

 彼の右手、左手が容赦なく……
 悪はその命を容赦なく奪っていく。

 それは、彼の糧となり……
 そして、その命を削っていく……

 剣が槍がセシルの体を貫く……

 意識を失い倒れそうになる体を意識を強く保ち……

 後ろに倒れた体を右足で踏みとどまるように、身体を起こす。


 「この命《まりょく》は誰にもあげない……」

 歯を食いしばるように、セシルは次々と襲い掛かる兵の命を奪い去る。


 「この手柄《いのち》は……」

 目を見開き……叫ぶ。


 「彼女《フィーリア》の者だっ!!」

 自分を殺し、その魔力と地位を手にするものは……ただ一人だと。


 「……どうして……」

 私はただ……

 私はただ……これからもずっと、
 それが不幸だとしても、ただ……
 牢獄のような部屋で、そんな男《あなた》と、

 遊戯ができれば満足だった……

 そんな不幸でも、その毎日があればよかった……
 そんな不幸と向き合って見せるつもりだったのに……

 セシルは王の亡骸から、短剣を拾い上げ……

 かろうじて動く身体で私に近寄ると、
 その短剣を私に握らせる。

 ただ、残酷に微笑んで、その短剣を自分に突きつけろと言いたいように……

 そんな強引に握らされた右手はもちろん動かせるわけもなく……
 その短剣の塚を握る私の右手とその塚の先端にある刃を強く握る彼の右手……

 そんな刃を伝うように彼の血が魔力のように私の中へと流れ込む。

 誰かを召喚するだけの力を……

 この異世界の能力《ルール》を壊せるだけの力を……


 「貴方《フィーリアちゃん》に勝利《こうふく》を……」

 今にも光を失いそうな瞳で私を見上げる。


 「私は……不幸になんてならない……努力《いきざま》を否定などさせたくない……だから、あなたに救われたりなんてさせないから……」

 私は歯を食いしばり、流れる涙をこらえているつもりで叫ぶ。


 「……フィーリアちゃんは、ほんと、手厳しいなぁ……あんな牢獄で……女性を見たのが初めてに近い僕が……言える言葉じゃないんだけどさ……」

 「……一目ぼれ……だったな……ほんと……可愛いなぁ」

 そんな透き通るような瞳は何度も私を見つめなおす。


 「馬鹿にしないで……私は、今……この時を不幸だと思わない……だから……後悔させるから……私は神じゃない……ただの女子高生《おんな》なの……貴方《だれか》に恋するだけの女なの……」

 そんな短剣で繋がる距離を……顔を近づけ、その唇と唇をその目の前の男にぶつけるように……


 「最後の勝負も……負けてなんてあげないからっ」

 私は……目の前の男にそう告げる。
 数年後、数十年後の神の遊戯……

 そんな私たちの我侭の延長戦に行われる遊戯に……


 「くそ……どうしてだろ……」

 悔いるように、セシルは私を見上げ……


 「誰よりも幸せにしてあげたいのに……幸福でいてもらいたいのに……」

 「……僕以外の誰かの側で幸せになって欲しくない……そんな呪《ねが》いみたいなものが横切るんだ……」

 自分の欲望を遂げるように、再び私の唇を奪うように顔を近づける。


 「駒は6つもあるんだ……僕の不幸《ねがい》から……君を救う誰かはきっといてくれるよ……だから……それが最後の勝負だ……」


 光の粒子が……彼の身体から上空へと上る。

 私に彼の残す魔力を託すように……


 そんな不幸の答えもわからない私に……


 私はそんな……召喚《ふこう》の石を……
 そんな異世界のあらゆる誰かに託して……


 そんな瞬間を待つ。


 その答えを……


 ただ……その最後まで私は不幸ではないと言えるように……
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