異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編-スノー編

クロノ

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 「クリア……扉のそばから少し離れていてくれ」

 俺は扉の前で俺の声を聞いているだろう彼女に言う。


 「貴様っ……何を」

 扉の前の護衛が俺を止めようと動くが……

 「いいから、あんたらも離れててくれ」

 フィルの魔力を右足集中して宿す。


 合宿で多少、特訓した武術、その魔力を高めた右足で扉を蹴破る。


 スノー家にも訳が有り、彼女をこの部屋に押し込んでおこうと思ったのだろう。
 それでも、何一つ解決しない……
 彼女の身も護れない……俺なりの答えを出す。

 「クリアっ……」

 俺はただ名前だけを呼び、右手を伸ばす。

 クリアはその行動の意味を一瞬理解できないように戸惑うが……その手を掴むことを逃すとその全てを失うような恐怖を覚え、慌ててその手を握るように手を伸ばす。

 俺はそのクリアの手を取ると、180度振り返ると、両足にフィルの魔力を宿し、少しでもデキの悪い運動神経をごまかすように、走力をあげて走る。

 飛び出す、外に自然と俺たち二人に目線は集まる。


 「なんのつもりだよって」

 ディアスがその様子を睨むように見て……

 「へぇ……」

 少し興味深そうに、クロノはその瞳を向ける。


 恐らく、加減しているだろうクロノの矢が俺たちを目掛け飛んでくる。

 それを俺は結界をはり防ぎ、走り抜けるその場所に懸命に自分たちの座標に結界を移すようにはっていく。


 「なるほど……」

 クロノは余裕のある笑みを浮かべながら……

 複数の矢は俺を狙い、それは結界に防がれ……
 また、別の数本の矢は俺たちの前の地面へと突き刺さると、
 進路を塞ぐように、地面の土が盛り上がるように進路を邪魔をする。


 「ちっ……」
 
 俺は矢を防ぐ結界とは別に……走り抜けるための地面を創るように、結界の足場を作り出し、それを足場に速度を緩めることなく走る。

 ……でも、もちろんクリアはそんな俺の作り出す足場にも走力にも合わせられる訳がない。

 「きゃっ……」

 俺に迷惑をかけたくないと懸命に足を動かしていたクリアはその場に転倒しそうになる……俺はそんな彼女の身体を抱えるように……

 「えっ!?」

 そんな戸惑いの声をあげる彼女に……

 「ごめん……少しだけ我慢してくれっ」

 俺はお姫様だっこするように、その軽い身体を持ち上げると、再びその両足で地面と結界を走りぬける。

 「くっ……」

 しばらく結界を駆使しながら走りぬけるも、矢によって進路を妨害に盛り上がった地面に足を取られ、その場に転倒する。

 「レスさんっ」

 不安そうに声をあげるクリアを……

 俺は自分の目の前に結界を作り出すと、180度身体を回転させて自分の背中で結界に衝突するように、その転倒の衝撃を殺す。


 「なるほど……なるほど、合格、合格だよレス君」

 嬉しそうにクロノは拍手をしながら……

 「でも……その立ち周りは少し……まるで、クリアの王子様みたいじゃないか……そこまでは認めた覚えはないよ」

 黒い弓をこちらに構えながら……

 「……あなたは……?」

 俺の両手に抱えられるクリアはその目の前の黒い髪の男に……


 「クリア……何十年……ぶりかな……会いたかったぁ」

 眠そうな目で嬉しそうな顔を作る。


 「……そうだね、少しだけ話しておこうか……」

 クロノは少し寂しそうな笑顔でこちらを見る。


 「俺がどうして……神代理なんてものを作り……邪神の手下なんてものに成り下がったのか……」


 「いまさら……この10年間……私のそばから、クリアのそばから……消えたあなたが、いまさら、何をっ」

 マシロがクロノに、いまさらクリアに何を吹き込もうとしているのか……


 「……最後……かもしれないだろ?」

 寂しそうに……クロノはクリアを見ながら……


 「全く……神代理……そんな奴を倒してくれる……そんな奴がこんな早くに現れるなんてさ……」

 そんな迷惑そうな瞳を俺に送る。


 「……あんたらは、いったい何をしたんだよ」

 俺は嫌悪の眼差しをクロノに送る。


 「神になるはずだった……でもさ、黒い翼……たったそれだけの理由で……災いとされた子が居たんだ……それを助けるためにさ……」

 ゆっくりとクロノの瞳は光を失うように……


 「過去を改変した……」

 そんな理不尽《まほう》のような言葉を平然と語る。


 「どうやって……」

 そんな俺の当然のような疑問に……


 「時間の概念ってのは以外に複雑なんだよ……」

 クロノはそう俺に語りながら……


 「例えば……君は、君の居た世界《いせかい》からこの異世界《せかい》に召喚された……その現世《いせかい》を50年とする……」

 「でもね……別のこの異世界《せかい》に召喚された転生者は同じ君と同じ50年を生きていたものを召喚したとは限らない……60年に生きている誰かを召喚したかもしれないし……30年を生きていた誰かを召喚したかもしれない」

 そうクロノは俺を見ながら……

 「そして……この異世界《せかい》に召喚される時代も……君が召喚される同じ時間帯だとは限らないという事さ」

 クロノが俺を見つめ言うが……

 「難しすぎる……もっと簡単に言ってくれ」

 俺はどことなく理解しながらも、その思考を放棄する。


 「そうか……そうだね……神となるリーヴァが産まれるよりも前に……神としてその資格を失い、災いとされる前に……神代理《かみ》を召喚した……そんな能力者《ちから》を授けた……そんな神代理を維持するためだけの……邪神と遊戯となる場所を用意した……そう絶対……神が有利な舞台をね……」

 それを滅茶苦茶にしてくれたんだよ……
 と、光の無い瞳が俺を見る。


 「で……ぜんぜんわかんねーけどさ……」

 俺はそんな事はどうでもいいように……

 「クリアが……こんな目にあってる理由はなんだって話だ」

 俺は怒りを宿した目に近い瞳をクロノに返す。


 「余りすごむなよ……会話をするのなら、もっと平和的にだ……」

 先ほどまで矢でこちらの走行を邪魔していた男は平然と笑い言っている。


 「だからさ……神代理《フィーリア》がその犠牲を担っていた……彼女が居れば、リーヴァもクリアも……ただの女子《クラスメイト》だったんだよ」

 それを貴様《だれか》が邪魔をしたのだと……
 ゆっくりとそのクロノの瞳が俺を追う。


 「……まるで、俺が悪者じゃねぇか」

 「……レスさん」

 そんな俺の言葉に……クリアが心配そうに声をあげるが……


 俺は、自分の結界を背に、今も両手にクリアを抱えながら……


 「……大丈夫だ……案外おれの正義《しや》の範囲なんて狭いんだ……」

 俺はクリアに苦笑いを浮かべながら……

 「俺は……英雄《おまえ》を幸せにできるならさ……正義なんて価値はその程度《あく》でもいいんだ」

 「もちろん……ただ……悪に落ちるつもりもねぇけどさ」

 再び振り下ろされるアストリアの一撃を、クロノは平然と受け止めながら……
 そして、クロノは大きくあくびをしながら……


 「眠い……でもね……俺に睡眠欲なんてものはないんだよ……」

 そんな矛盾を平気に口にする。


 例えば……人間が眠るという理由にはどんな理由があるのだろうか。

 人間には何かしら、その健康やらを維持するために睡眠を余儀なくされる。
 だが、もしその睡眠欲だけを除外されたとしたら……

 眠れなくなった身体は……睡眠を必要としないのだろうか……

 多分……そんなことは無い……
 それ以外の睡眠で得られる何か……
 それらを必要としないだけの身体が必要なのだろう……


 「眠い……ゆっくり……眠りたいのに……」

 クロノは目をこすりながらも……
 眠れない身体をこちらに向ける。


 
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