異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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隣国偏-交換生

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 ……神よ、今もこの私の前にその存在を誇示するというのなら……その存在《けんり》を酷使しろ……この私の大罪を裁いて見せろ……

 私は逃げも隠れもしない……

 現世であんたを恨み続けたこの私をこの異世界に選んだというのなら……


 ・


 ・


 ・


 数年前……
 現世……20××年……

 長い髪、スーツをきた女性が病院の前に車を止める。


 「社長……また此処ですか?」

 部下であろう5歳以上は年下であろう男性が、自らが運転していた車の助手席から少し呆れた声をあげる。


 私はそんな言葉も気にせず、今子供たちに人気のある携帯ゲーム機と、店員から聞いた人気のあるソフトを数本道中で買い、そのプレゼントを手に病院に入る。

 「社長……僕は社長のことを尊敬しています……だからこそ、今の貴方に言わせて頂きます……正直……憧れ尊敬する貴方は……怖いほどに、他人を利用し蹴落とすそんな人です……そうして、その地位と名誉……資産を得てきた……それは誰もが羨むほど……しかし……ここ最近の貴方は……」

 助手席でゆっくりと社長《わたし》に向けて言葉にする。


 「イサナ君……ここに神なんてものを信じて病まない子がいるのさ……」

 プレゼントの袋を手に、私は彼に瞳だけを向ける。

 「君は……そんなものが要ると思うかい?」

 男はそんな私の問いに戸惑う……


 「どうした、イサナ君……難しい顔をしているね……」

 「簡単だよ……それがイサナ君、君が今わたしにした質問の答えさ」

 私の瞳が彼を睨むように見る。


 「もちろん……わたしはそんな神《そんざい》なんて信じていない……なぜなら、そんな信者、一人を守れないんだ……そこに価値などないのだろ?」

 車のサイドブレーキを引く。


 「そんな……神すら見捨てた世界……そんな世界で唯一信用できるものが金《こんなもの》だと言うのなら……そんな神《むのう》の代わりに私が……彼の希望になる……しかたがないだろ……今の彼にはそんなくだらぬ神《モノ》が彼を生かす理由なんだ……」

 「イサナ君、君はわたしに従ってきた者なかでも優秀だ……どうか君は私を裏切らないでほしい」

 そんな卑怯な瞳を私は彼に向ける。


 「りーねぇちゃん、今日も着てくれたんだ」

 嬉しそうに11歳くらいの少年が、病室の布団から上半身を起こしてこちらに言う。


 「うん……それと、プレゼント……よくわからないけど、今時の子供たちは皆これで遊んでいるんだろ?」

 仕事に打ち解けてきた……彼女には少し疎いところだったが……


 「わぁ……ありがとーーー」

 嬉しそうに少年はそれを受け取りながらも……

 「ねぇ、りーねぇちゃん、僕ね……続きを書いたんだ」

 そうスケッチブックのようなノートを取り出す。


 そんな彼が描き続ける未来日記《みらいよそうず》……

 「……将来、僕……医者になろうと思うんだ」

 医者になる彼と……まるでその患者のような私が描かれた絵。

 「……助けたいんだ……僕は、僕みたいな人間を……」

 誇らしげに……笑う彼の顔がただ……愛しくて……



 ・


 ・


 ・



 「次鋒戦《じほうせん》……」

 リプリスがゆっくりと古い記憶を払うように目を開く。


 グレイバニアの学園の制服の生徒が二人リングに昇る。


 狐面の長い髪と、黒い髪をポニーテールにまとめた知的なめがねの女性。


 「あんたと組むのか……」

 ツキヨが狐面と肩を並べる。


 「いつまで、そんな奇妙なお面をつけてるつもりだ」

 「……今となっては素顔を見られることに抵抗ができてしまって……」

 申し訳なさそうに、自分のお面をおしつけるように触る。


 「ししょーはわたさねーっ……ぜっ!」

 対するバルナゼクの生徒。
 茶髪の前髪の一部だけを赤く染め、
 制服の上着を腰の辺りで腰巻のようにそでをお腹あたりで縛っている。


 「私は……普通じゃない……私、普通と言われるの嫌いです」

 短い茶髪の女子がリングにのぼってくる。


 「次鋒戦……はじめっ」


 リプリスの掛け声で次鋒戦が開始される。


 「私はメノウ=ノーヴィス……私は普通を嫌います」

 茶髪女の子がそう自己紹介をしながら……
 そんなメノウと名乗った女子の周囲の重力が変化するように……


 「私の能力は身体能力の強化……知っていますか、魔力を能力化した人は、魔力を能力化していない人の戦闘能力が5倍以上に跳ね上がると言われています……」

 自分の能力を聞いてもいないのに暴露している。


 「私はそんな身体能力を……5倍以上に跳ね上げることができるのですっ」

 驚きましたかという瞳を前の敵……そしてその瞳を俺に向ける。


 「あぁ……そうだな……普通だな……」

 自分で自分の能力が普通であると説明してしまっている……
 俺は戸惑いながらそう返す。

 「……ひどぉいです」

 まさかの返答に驚いたような瞳を俺に向けている。


 「……普通だな」

 ツキヨも左手と右手の5本の指を眺めるように言う。


 「だから、言っているだろ、メノウ、あんたは普通だって……」

 仲間のキカにまでそう言われている。


 「皆さん……嫌いです」

 「ならば……あなたがたの言う普通に……せめて、その恐怖におののいてもらいましょう」

 身長くらいある棒……その先端には自分の体の幅くらいのハンマーの頭部分がついている。
 5倍近く跳ね上がった身体能力でそれを軽々しく持ち上げ、
 バトンのようにくるくると回している。

 
 「始めて……いいのでしょうか?」

 狐面の周囲、上空に水の魔装具が創造されている。


 答えを聞かずに飛んだ魔装具を……

 メノウは右手……左手に起用にバトンを受け渡しながら、
 その身長ほどあるハンマーをくるくると回しながらゆっくりと歩く。

 そんなバトンのように振り回しているハンマーで、
 狐面の攻撃を叩き落すように……

 すべての攻撃を叩き落し……
 右足を大きく踏み込むと、両手で掴んだハンマーを突き出す。

 狐面の顔の前で寸止めするようにそんな巨大なハンマーの先を突きつける。


 「過度な期待はしないでくださいね……結局、私は……ただの女の子……だったのですから」

 そう誰かに、自分に言い聞かせるように言う。



 「……咲けっ……初桜っ」

 桃色の刃の刀をツキヨは鞘から抜く。

 「おらぁーーーっ」

 そんな掛け声で乱暴に振り下ろされる、キカのバットのような棍棒を刃で受け止める。

 「うらっおらっおらっ!!」

 ブンッブンッと容赦なく力任せに棍棒を全力で振り回している。

 回避を重点に置き、荒々しい動きを読みながら時には刃でその一撃を受け止める。


 「恨むなら……私を普通と言ってしまったその口を恨んでください」

 メノウが突きつけたハンマーの柄《え》を掴む両手に力を込める。


 「あの……私は言ってませんよ?」

 狐面が首を傾げる。


 「だ……だったら……そんな事を口にした仲間を恨むんですね」

 少しばつわるそうにメノウが言い直し、改めて両手に力を込める。


 「残念ですがぁ、貴方は普通の可愛い女の子です……でも、その普通はもっと喜ぶべきだと思いますよ」

 「どうしても、私を怒らせたいのですねっ」

 ドンっとハンマーで狐面を突く。


 「っ!?」

 パシャリッと水が地に落ちるように地面を濡らす。


 「……水で作り出した分身?」

 そして、自分の周囲に現れるいくつもの狐面の姿……

 「……古典的なのに……」

 見分けがつかない……


 「能力開放……」

 メノウが改めて身体能力を倍化する。


 「ぐーるぐーるっ」

 その掛け声通りにハンマーの柄の端を両手で持ちながら、
 その場で360度何度も回転している。

 高速で回転しながら、座標をゆっくりとずらしながら、
 狐面の分身を破壊していく。


 「どかーーーん……いきますっ!」

 そのまま両手を離すと……ハンマーが一直線に飛んでいく。


 数ある分身の中から本体を見抜くように……


 「………」

 狐面は自分の目の前に分身の水をすべて集めると、
 水の壁で少しだけその勢いとスピードを遅延させ、
 右に大きく跳び、回避する。


 そして、地面を蹴り上げて一直線に進んできたメノウが、ハンマーの柄をリングの外に飛んでいく前に、右手で掴む。


 「お……とっとぉ……」

 自分の投げた勢いのハンマーに身体を少し引っ張られるように両足を地面に引きずりながら勢いを殺し、再びハンマーを手にする。


 「随分と……普通の基準が……恐ろしいな」

 俺は素直に彼女の恐ろしさに関心する。


 「メノウに言ってあげたらぁー?喜ぶよぉ、きっとぉ」

 イブが俺の独り言に反応する。


 「あっ!?……いま、普通に自分で(ハンマー)をぶん投げて、自分で普通にキャッチしたって思いましたよねぇ」

 そんな俺の素直な視線を勝手に勘違いして、頭の天辺から煙をあげるような眼差しで、俺にハンマーの先を向ける。


 「えーーー、メノウはそういうのいいから、試合に集中しなよぉ、ここは負けられないよぉ?」

 初戦を負けているバルナゼクにとっては負けられない次鋒戦……
 迷惑そうにイブがメノウに返す。


 
 「はわわわっ……」

 そして、狐面からの反撃に慌てて反応するように飛んできた水の魔装具をハンマーではじき返している。


 そしてその隣でバットのような棍棒を刀代わりに、ツキヨと競り合っているキカ。


 「ねぇ……レスはやっぱり、あっちを応援しているのかなぁ」

 イブが俺に問うように……頭はリングの4人に向けたまま口にする。


 「俺や……此処の生徒たちだけじゃ……できないこともさ……あいつらに力を借りれば何とかなるかもしれないからな……」

 俺はそうライトの方を見る。


 ライトは俺の目線にすぐに感づくように、そして俺の瞳が自分たちの勝利を期待していると解釈するように右の拳を自分の胸に置く。


 「……ほんと、頼もしいよな」

 そんなライトの自信に呟く。

 「なんだか……複雑だねぇ」

 イブもこっそりとそんなライトを横目に見ながら……

 「……助けるさ……それが、他力本願だったとしても……」

 「レス……ねぇ、それって私ぃ……それとも妹のこと」

 少し口を尖らせながら返される。


 「……両方だよ」

 俺のそんな返しに少しだけ納得しながらも……


 「レスを……こっち召喚《よべた》のは……妹じゃなくて私だからねぇーー」

 何かを主張するように言うイブの頭をポンポンと撫でる。


 「もーーーっ」

 プイっと機嫌を損ねたように、顔を俺の反対に向けるが……
 頭を撫でやすい少しだけ俺のほうに傾ける。
 
 
 
  
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