異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

文字の大きさ
201 / 213
隣国偏-交換生

神(2)

しおりを挟む
 現実《せかい》はそいつらを……決して正しい正義《ほうりつ》で裁いたりなどしない……

 だから、僕は正しかったのか……
 そんなことは本当はどうでもいい……

 現実《そこ》には、弱者《ぼく》が居て……
 そんな弱者を守ろうとした正義《あねたち》が居た……

 『でも……そんな物語は不始末《バッドエンド》だった……』



 ・  ・  ・


 「そんな……物語の主人公の誰《ぼく》は……ただ、弱虫だった自分の物語にオチを作ったんだ……因果応報……相応しい罰を与えろっ……」

 その言葉を言い終えるとリスカは凶悪な瞳をリプリスとカイへ向ける。


 「壊すっ壊せっ壊れろっ……正義がやらないなら……僕がやるっ!!」

 ポケットから上空に石を投げる。
 ピリピリと魔力を帯びると石は巨大化して地面に落下する。


 「いちいち……言い訳がうざってぇって言っているんだよ、お前らは」

 だが、やはり彼女の能力《いと》の前にはそれは届かず、
 彼女たちに届く前にズタズタに切り裂かれる。


 「何か、理由をつけては一人は壊す、もう一人は助ける……随分と楽でいいなぁ、てめぇらの責任ってのはさぁ」

 「っ!?」

 怒り任せに足を動かしたリスカの右腕に糸がからまる。


 「ちっ」

 力まかせに振りほどこうとするがうまくいかない……


 「例えば、今……私がその右手を切り落とす」

 糸を操る両手の左手で自分の右手を切り落とす動作をしながらカイがリスカに言う。

 「お前は……その右手の代償……罪を、私の命で支払う?」

 悪いのは……自分《リスカ》ではなくカイだからと。


 「そうだな……言っていることはごもっともだけどさ、あんたやあんたが従う大商人様は違うのか?」

 そんな俺の言葉にゆっくりとリプリスが俺に目線を向ける。

 「代わらないさ……私の復讐《さかうらみ》もね……違う……というのなら確かめたいのさ、私は……」

 そんな自分の行動《ふくしゅう》の理由を語る。


 「神がこの世界を形作っているというのなら……なぜこうも不平等《アンバランス》なのか……そんな力を持っているのになぜこうも多くの下手をうつのか……なぜ誰一人……自分に救いを求めている者を助けてやれないのか……」

 「……できるのにやらないのか、たんにできないのか……疑問なのさ」

 ゆっくりと俺の傍に歩いてくる。


 「おっと……動かないでくれ」

 そんな乱暴《まね》はしたくないというように、俺を見る。

 「カイのように、効果的に使いこなせなければ、加減もできない……」

 ゆらゆらとリプリスの両手から細い線が日の光を反射させてその存在を俺に知らせる。

 そして、俺の右手もいつの間にかその糸にとらわれている。





 「おっとっ……試合中、他の選手はリングに登るのは禁止……ですよ」

 白髪……の男、見た目的には男の子でも通りそうな人物。
 ルイン=オメガは、黙ってリングにあがろうとしたライトを静止する。

 「そもそも、イレギュラーな試合、先の試合で私たちの勝利だ……彼は連れて帰る」

 オメガを睨みライトが返す。

 「……なぁんだ、彼の勝利を疑っているってことか」

 そう納得するオメガの鼻先にライトがいつの間にか開放した魔力の剣の刃の先が向けられている。

 「あーー、やだなぁ」

 へらへらと笑っていたオメガの顔がゆっくりと無表情に代わる。


 「もしかして……勇者《あんた》ごときが……本気で僕をどうにかできるとか……思ってます?」

 「彼を侮辱するなら……粛清する……勇者として女として……私はその使命を命に代える」

 そんな……ここに居る誰をも圧倒する魔力《ちから》にも、ライトは臆することなく、刃を向ける。


 「へぇ……」

 その言葉を聞いて、少しだけ心を許すように、
 再びへらへらと笑いながらも……

 能力《トンファー》を開放する。


 「……ライト、ありがとう、でもさ……大丈夫だ」

 俺はそんなライトに言葉を送る。

 「レス……私は君を……」

 何かを言いたげに不安そうな瞳を俺に向ける。


 「大丈夫……負けるつもりは無いさ」

 ゆっくりと、俺に不快そうに目線を送る二人に目線を戻す。


 「だっせぇんだよ……そうやって好かれたいだけで優しさを振舞ってる真似がな」

 カイが俺に叫ぶ。

 「……そうだな、誰にも優しい……そんなものは時には残酷なんだ、レス君」

 リプリスも俺にそう瞳を向けて言う。

 「例えば……彼……」

 リスカを指し、リプリスが語る。


 「この状況、共闘を……本当に、みんな心よく思っているのかい?」

 リプリスが俺に向けて言う。

 「……多くは知らない、それでも彼とは敵対していたのだろ、そして……少なくともその犠牲を負った者が居る……彼を今も恨み続ける者が居る……そんな彼と助け助け合うように馴れ合う姿《いま》を……本当に受け入れてもらえているのか?」

 鋭い目線が俺に向けられる。

 「それでいて……彼《リスカ》を助けたいというのなら、私は何も言わないさ……それでいて、彼も彼女たちも……両方を、助けたいという傲慢さは、さすがに不快《うぬぼれている》と言っている」

 冷たい瞳が俺に向けられる。
 俺の右手を捕らえる糸に少しだけ力がこめられる。


 「悪いけどさ……俺はあんたほど頭はよくねぇからさ……リプリスさん、あんたを説得するだけの言葉は持ち合わせてない……」

 俺はそんな言訳《まえおき》をして……

 「あなたみたいに、計画的に、計算して誰かを助けたりできない……目に見えた者をさ……ただ、自分のできる範囲でがむしゃらに助けてやることしかできない……」

 そして、ゆっくりと自由のきく左手を頭上に伸ばす。


 「……本当にお人よしだよね」

 同じように、そんな俺の意図を読むようにリスカも自由の左手をあげる。

 「……分析……強化」

 まったく無意味な場所につくりだされた俺の結界を強化する。


 「例え……傲慢でも、無計画だとしてもさ……言い負かされる真似だけはできない」

 俺は強化された結界を地面に振り下ろすように落下させる。

 地面に突き刺さるように落下した結界が宙を散りばめられた、
 俺とリスカを拘束する糸を切り落とす。

 「壊す、壊せ……壊れろよっ!!」

 自由になった右手でナイフを握り、刃を起こし、
 自身の脚力を強化し地面を蹴り上げ、一気にカイに詰め寄る。

 首、のどにそのナイフをあてがう。

 「人間《あんた》を壊すのはさ……そこのお節介の能力《けっかい》を破壊するより簡単なんだ」

 「なるほど……」

 リプリスはカイに代わり、降参するように両手をあげる。

 「まいど……君にはまだ、があるからね……」

 そんな言葉で敗北の言葉を宣言する。


 「あの……ごめんなさい……もう一戦だけ、お願いできるかな」

 ノアが目の前に立っている。
 黒い瘴気を身体から放ちながら……

 「ノア……」

 心配するようにリプリスがその名を呼ぶ。

 「ごめんなさい、ねぇさん……またね、限界がくるみたい……」

 そこに居る全員が警戒するように周囲を見渡す。

 災害、黒い瘴気がこの街全体を覆うように、
 竜巻のように周囲を荒らしている。

 「ねぇ……レス君、私を殺《すくっ》て……」

 寂しそうに……俺に笑いかけそう請う。


 「レス君……あんたが……君がその正義《ぎぜん》を、今も語るのなら……頼む、彼女を救ってくれ」

 リプリスが俺にそんな必死な言葉を送る。


 「それを彼に請うのは、酷だよ……神《ぼく》が……やってあげる」

 その言葉にフィーリアがいち早く反応するようにその姿を見る。


 右の脇に、ゲームの盤を挟みゆっくりと黒い霧の中を歩いてくる。


 「待っていたんだ……この状況《ひ》を……」

 フィーリアのそばによったその男は……


 「久しぶりだね……リーヴァ」

 フィーリアではなく、その隣のレインに話しかける。


 「時は来た……父《あいつ》に代わり、僕たちが世界を創るんだ」


 ゆっくり……最終章《クライマックス》は語られ始める。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...