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1-1.二人の日常
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翌朝二人はベッドに並んで眠っていた。二人とも下着だけを身に着けており、着ていた服はベッドの周囲に散乱したままだった。
先に目を覚ましたのは王輝だ。目を開けると遮光カーテンの向こう側に太陽の気配を感じる。撮影日和になりそうだと思いながら、何度かまばたきをした。もうすぐ六月になろうとしている。梅雨に入ると撮影スケジュールが遅れる可能性があり、撮影日の天気がいいのに越したことはない。
王輝は枕元のローテーブルに置いてあるスマホを掴み、時間を確認した。7:55と表示される。昨晩セックスする前にセットしていたアラームは八時で、あと五分眠れたのにと王輝は少し損した気分になった。あと五分眠ろうかと一瞬迷ったが、諦めて起きることにする。仕事までにセリフの確認をしておきたかった。
王輝はアラームを解除し、ベッドのシーツの滑らかさを感じながら、寝返りをうつ。隣には遼の寝顔があった。いつもは精悍な顔つきだが、あどけない顔で気持ちよさそうに眠り、すぅすぅと寝息をたてていた。
昨日のセックスの記憶が一気に蘇ってくる。遼とのセックスはいつも最高だが、激しめの遼はもっと最高だったと脳内で反芻し、身もだえた。
二人はベッドでセックスしたあと、シャワーを浴びるために浴室に移動し、そこでもう一度ヤッたのだ。王輝は立ちバックで遼に散々攻められ、薄い精液を吐き出し続けた。王輝の記憶はあやふやで、どうやってベッドまで戻ってきたか覚えていない。でも最高に気持ちよかったことだけは覚えていた。
思い返していると、中がずくんと疼いた。今からもう一回とも思ったが、確実に仕事に支障がでると判断して、すぐに諦めた。仕事に対してはストイックな王輝だった。それに、身体には心地よい疲労を感じ、精神的には充足感に満ちていた。昨日のセックスで、心身ともにうまくリセットできたようだ。
王輝が遼とセックスしている理由は、それだった。芸能活動するなかで、どうしても溜まるストレスをどうにか発散する方法はないかとずっと探していた。酒や食事では発散されず、スポーツで汗をかいてもすっきりしない。息抜きに旅行にでても疲れてしまうし、大好きな映画を見ても上の空だった。ストレスが溜まると仕事に影響し、またストレスが溜まり、そして仕事がうまくいかない。それの繰り返しで悪循環に陥っていた時期が王輝にはあり、その時期の仕事は今見てもひどいものだ。自慰をすればある程度解消されることに気づき、セックスならと思いついたが、事務所的には彼女NGであったし、風俗に行くなんて全くの問題外。王輝は日に日に追い込まれていった。
そんな風に悩んでいた王輝が出会ったのが遼だった。王輝が新しいマンションに引っ越し、その隣人が遼で、そこからセフレ関係が始まった。偶然始まった関係だったが、二人の身体の相性は抜群で、王輝のストレスはすっかり解消された。それだけでなく、遼とセックスするとリセットされるような清々しい気持ちにもなり、仕事も絶好調だった。ドラマだけでなく、映画や舞台の仕事も決まっている。
事務所は引っ越したことが気分転換になったと思っているようで、それは好都合だった。隣人かつセフレという近くて遠い関係が、王輝にはちょうどよかった。王輝にとって遼はまさに救世主のような存在だった。
その救世主がゆっくりと目を開けた。ぼんやりした表情で王輝を見つめ、何度かまばたきをして、もう一度目を閉じた。オフと言っていたから二度寝するのだろう。王輝はそう判断して、遼の寝顔を見ながら起き上がると、ぱちりと遼の目があいた。目覚めたようで、今度はしっかりと王輝を見つめた。
「ごめん、起こした?」
「いや、目が覚めて……、あー、…昨日ごめん」
遼は素早く起き上がり、ベッドの上で土下座をした。寝起きの動きとは思えない素早さで、王輝は可笑しくて吹きだしてしまった。昨日のセックスで謝られることはない。王輝は嫌であれば本気で嫌がるし、拒むためなら殴るくらいはできる。そんなに軟な男ではない。
「気にしないで、俺はよかったから」
「でも……、本っ当にごめん」
顔をあげた遼は正座のまま暗い表情をしていた。短い髪があちこち跳ねている。昨晩面倒くさがって、髪を乾かさずに寝たのが原因だ。
「本当に嫌だったら、佐季のこと今頃廊下に投げ捨ててるよ。そういう性格だって知ってるだろ?」
「そうだけど」
「この話はもう終わり。佐季は今日オフだよな?まだ寝てれば?」
湿っぽい空気は嫌だし、セックスのことで揉めるのは嫌だった。セックスはセックス、終われば普通に接してくれればいい。遼との関係はドライでいたいと王輝は考えていた。遼はそれをわかってるので、叱られた大型犬のように項垂れた雰囲気をすぐに引っ込めた。
先に目を覚ましたのは王輝だ。目を開けると遮光カーテンの向こう側に太陽の気配を感じる。撮影日和になりそうだと思いながら、何度かまばたきをした。もうすぐ六月になろうとしている。梅雨に入ると撮影スケジュールが遅れる可能性があり、撮影日の天気がいいのに越したことはない。
王輝は枕元のローテーブルに置いてあるスマホを掴み、時間を確認した。7:55と表示される。昨晩セックスする前にセットしていたアラームは八時で、あと五分眠れたのにと王輝は少し損した気分になった。あと五分眠ろうかと一瞬迷ったが、諦めて起きることにする。仕事までにセリフの確認をしておきたかった。
王輝はアラームを解除し、ベッドのシーツの滑らかさを感じながら、寝返りをうつ。隣には遼の寝顔があった。いつもは精悍な顔つきだが、あどけない顔で気持ちよさそうに眠り、すぅすぅと寝息をたてていた。
昨日のセックスの記憶が一気に蘇ってくる。遼とのセックスはいつも最高だが、激しめの遼はもっと最高だったと脳内で反芻し、身もだえた。
二人はベッドでセックスしたあと、シャワーを浴びるために浴室に移動し、そこでもう一度ヤッたのだ。王輝は立ちバックで遼に散々攻められ、薄い精液を吐き出し続けた。王輝の記憶はあやふやで、どうやってベッドまで戻ってきたか覚えていない。でも最高に気持ちよかったことだけは覚えていた。
思い返していると、中がずくんと疼いた。今からもう一回とも思ったが、確実に仕事に支障がでると判断して、すぐに諦めた。仕事に対してはストイックな王輝だった。それに、身体には心地よい疲労を感じ、精神的には充足感に満ちていた。昨日のセックスで、心身ともにうまくリセットできたようだ。
王輝が遼とセックスしている理由は、それだった。芸能活動するなかで、どうしても溜まるストレスをどうにか発散する方法はないかとずっと探していた。酒や食事では発散されず、スポーツで汗をかいてもすっきりしない。息抜きに旅行にでても疲れてしまうし、大好きな映画を見ても上の空だった。ストレスが溜まると仕事に影響し、またストレスが溜まり、そして仕事がうまくいかない。それの繰り返しで悪循環に陥っていた時期が王輝にはあり、その時期の仕事は今見てもひどいものだ。自慰をすればある程度解消されることに気づき、セックスならと思いついたが、事務所的には彼女NGであったし、風俗に行くなんて全くの問題外。王輝は日に日に追い込まれていった。
そんな風に悩んでいた王輝が出会ったのが遼だった。王輝が新しいマンションに引っ越し、その隣人が遼で、そこからセフレ関係が始まった。偶然始まった関係だったが、二人の身体の相性は抜群で、王輝のストレスはすっかり解消された。それだけでなく、遼とセックスするとリセットされるような清々しい気持ちにもなり、仕事も絶好調だった。ドラマだけでなく、映画や舞台の仕事も決まっている。
事務所は引っ越したことが気分転換になったと思っているようで、それは好都合だった。隣人かつセフレという近くて遠い関係が、王輝にはちょうどよかった。王輝にとって遼はまさに救世主のような存在だった。
その救世主がゆっくりと目を開けた。ぼんやりした表情で王輝を見つめ、何度かまばたきをして、もう一度目を閉じた。オフと言っていたから二度寝するのだろう。王輝はそう判断して、遼の寝顔を見ながら起き上がると、ぱちりと遼の目があいた。目覚めたようで、今度はしっかりと王輝を見つめた。
「ごめん、起こした?」
「いや、目が覚めて……、あー、…昨日ごめん」
遼は素早く起き上がり、ベッドの上で土下座をした。寝起きの動きとは思えない素早さで、王輝は可笑しくて吹きだしてしまった。昨日のセックスで謝られることはない。王輝は嫌であれば本気で嫌がるし、拒むためなら殴るくらいはできる。そんなに軟な男ではない。
「気にしないで、俺はよかったから」
「でも……、本っ当にごめん」
顔をあげた遼は正座のまま暗い表情をしていた。短い髪があちこち跳ねている。昨晩面倒くさがって、髪を乾かさずに寝たのが原因だ。
「本当に嫌だったら、佐季のこと今頃廊下に投げ捨ててるよ。そういう性格だって知ってるだろ?」
「そうだけど」
「この話はもう終わり。佐季は今日オフだよな?まだ寝てれば?」
湿っぽい空気は嫌だし、セックスのことで揉めるのは嫌だった。セックスはセックス、終われば普通に接してくれればいい。遼との関係はドライでいたいと王輝は考えていた。遼はそれをわかってるので、叱られた大型犬のように項垂れた雰囲気をすぐに引っ込めた。
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