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2-2.溢れる気持ち
5 *
しおりを挟む遼はゴムを付けた自身を、ゆっくりと王輝の唇へ近づける。王輝は大きく口を開け、遼自身を向かい入れた。熱い口内に遼の身体がびくっと震える。少しずつ喉の方へと腰を進めていくと、亀頭が喉に当たった。
王輝は歯を立てないように気をつけ、口内を緩ませる。ゴムをしていてもわかる雄臭さに、王輝は妙に興奮していた。口内の異物に反応して唾液が分泌される。早く動いて欲しくて、王輝は舌で遼の裏筋をなぞった。
それが合図だったように、遼はゆっくりと腰を動かし始めた。後孔とは違う口内の感触、そして王輝を屈服させているような体勢に、否応なく昂ってしまう。遼は王輝の肩と頭を支え、自身を出し入れする。短いストロークを繰り返していくと、王輝の唾液が絡んで滑りがよくなってきた。亀頭で上顎を擦ったり、喉奥を優しく突いたりすると、王輝の喉がきゅっと締まった。最初は苦しそうな表情をしていたが、王輝の表情は徐々にうっとりとしてくる。その表情の変化に遼は安心を覚えた。
王輝は後孔の疼きを感じながら、自身を上下に扱いていた。口からは唾液が、性器からは精液混じりの先走りが、だらだらと零れ落ちていく。傍から見れば目も当てられない格好だ。遼の腰の動きに合わせ、意識的に喉を締めると、遼は気持ち良さそうに声を上げた。
「今ヶ瀬、それっ…やばい…」
遼はたまらずに腰を動かし続ける。喉奥を突き上げたい欲望を抑え、あくまでも優しく挿入に徹した。
王輝は遼の優しさを感じつつ、できるだけ口内を緩め、そして奥を締めあげる。ちゅこ、ちゅこ、と出し入れする音が耳に近く、王輝の羞恥を煽り、自身を扱く手が速まる。
「っあ、ごめん、…イくっ…」
遼はびくびくと身体を震わせ、王輝の口内で、ゴムの中に射精をした。口内で跳ねる遼自身が愛おしくて、王輝は喉の最奥を開くようにして、がっぽりと咥えこむ。一瞬息ができなくなるが、それすら気持ちよく感じた。
喉奥できゅうっと亀頭を絞りとられ、遼は思わず腰を引いた。反動で王輝は床に座り込んでしまう。遼が慌てて王輝の顔をのぞきこむと、瞳には涙が滲み、口の周りは唾液で濡れ、肩で大きく息をしていた。
「無理するなよ」
王輝が求めたことだが、今後はやりたくないと遼は強く思った。遼は王輝の背中を優しく擦りながら、ふと王輝の下半身を見る。王輝自身は達しておらず、寂し気に主張していた。
「ごめん、イケなくて…」
王輝は先ほどまで大胆に求めていたのが嘘みたいに、可愛らしく恥じらった。冷静になった遼と、まだ身体が熱い自分との差に、王輝は羞恥で顔を赤く染める。
最後くらいは気持ちよくさせてやらなければと、遼の心に妙な責任感が湧いた。王輝の身体を引き寄せ、王輝自身に手を伸ばす。
「佐季、待って」
王輝は逃げるように身体を捩ったが、遼に動きを封じられるようにキスをされると、大人しく遼の腕の中に収まった。先ほどまで性器の質量を受け入れ、顎が疲れていた王輝は、遼の舌に口内を翻弄される。王輝は舌を吸い上げられ、鼻にかかった嬌声をだした。
遼は王輝の口内を味わいながら、王輝自身を優しく扱く。指で作った輪っかで陰茎を上下に扱き、裏筋をそっと撫でると、先走りがこぷりと溢れた。敏感な亀頭を指の腹で刺激すると、王輝は身体をびくつかせた。
思考も身体も熱くなってき、王輝はどんどん蕩けていく。遼に与えられる全てが優しく、幸福感が胸に広がった。遼への感情を押しとどめていた理性が崩れていくのに、時間はかからなかった。
「っんぅ、…さ、きっ…」
キスの合間に遼を呼ぶ。遼は王輝の唇から離れた。
「…佐季、…っ…」
王輝の頭の中で、やめろ!言うな!と自制する声が聞こえる。
「…っ、俺……」
何か伝えようとする王輝に、遼は王輝自身に触れていた手の動きを止めた。じっと王輝の言葉を待つ遼の眼差しは優しく、堰き止めていた気持ちが溢れた。
「佐季、っ……好き…」
王輝は言葉と同時に、精液を吐き出して達した。射精後の脱力感に揺蕩っている間もなく、自らが発した言葉を思い出し、さっと血の気が引く。慌てて遼の表情を伺うと、ぽかんと呆気にとられた表情をしていた。
「俺、あの…っ…」
何を言っても取り返しがつかない状況に、王輝は軽くパニックになる。とにかくこの場から、遼から離れたかった。ずり下がっていた下着とデニムパンツを履き、慌てて靴を履いた。口の周りと下半身が濡れて気持ち悪かったが、気にしていられなかった。
「ごめん」
王輝はそれだけ言い放ち、隣の自分の部屋へと急ぐ。慌てすぎてうまく鍵が開けれなかった。どうにか開錠し、後手に扉を閉めると、真っ暗な玄関に座りこんだ。大きなため息が玄関に響いた。どうしようと考えようとしたが、考えがまとまらない。今から戻って訂正するのは間抜けだし、訂正すればするほど本気だと捉えかねられない。聞き間違いと思ってくれたほうがまだマシだ。しばらく座り込んでいた王輝は、八方塞がりの状況に、何もかも無駄だと察した。思考を放棄し、シャワーを浴びるために浴室へと向かった。
王輝の背中を見送った遼は、玄関にぽつんと残されていた。確かに王輝の口から「好き」と聞いたが、思い返すと空耳だったかもしれないと不安になる。以前セックスの時になりきって言い合った「好き」とは違う「好き」に、遼の心臓はドキドキと鼓動を速めた。しかし、すぐに気づいたのは、セフレ関係には「好き」はタブーだということ。聞き間違いだったのかもしれないと遼は大きなため息をついた。急激に襲ってきた疲労感と眠気に、遼は重たい身体に鞭を打って、立ちあがる。散らかった玄関を片付けなければならないが、先にシャワーを浴びようと思った。
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