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第1部『旅の魔法使いと水神の巫女』

ゴーレムだけど美人メイド、ユーリ

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 まず目の前の美人メイドの容姿について。

 銀髪の腰まである長いツインテール、服装はメイド服でスカートは短く胸元は胸の谷間がしっかり見える、そして色白の肌と整った顔立ちという完全にどこぞのスケベアラサーの本能が悪い方に働いた結果としか思えない美人メイドである。

 ちなみに瞳の色はレッド、とてもファンタジーな銀髪赤目のメイドさんだ。

 美人なのでコミュニケーション能力が微妙な私は少し気圧される。

「こっこんにちは、私は青野と言います。貴女は何という名前なんですか?」

「ワタシは今生まれたばかりですので名前はありません。ご主人様がつけてくれると嬉しいのですが…」

 なる程、言われてみるとその通りだ。ならこのゴーレム美人メイドを生み出した私が名付けるべきなのか。よし…。

「なら名前はユーリは如何ですか?」

 この名前にした理由とかはない、何となく覚えやすそうな名前にしたかった。

「ユーリ……ワタシはユーリ、ありがとうございますご主人様。この名前を大事にします」

 ユーリはそう言うと何故か片膝をついて頭を垂れた、どこの騎士様だよ?膝が汚れるから辞めなさいな。あっそれと……。

「立って下さいユーリ、それとご主人様は流石に恥ずかしい。青野と呼んでくれませんか?私もユーリと呼びますので」

「分かりました、ではアオノ様とお呼びします」

 様付けも要らないってば、けどなんかこの美人メイド、変に忠誠心が高い気がする。ごちゃごちゃ言うのは私も好まないしこれくらいは好きにさせるか。

「それで構いません。早速ですがユーリ実は……」
「アオノ様はダンジョンに来てから先の行動に悩んでいる、そうですね?」

「え?知ってるんですか?」
「ワタシを生み出す時に必要な情報としてインストールされています」

 何と、確かにゴーレムには一々命令しなくても最低限こちらの意に沿った働きをさせる能力があるけど、便利機能に進化しているとは……魔法使いなのに自分の魔法についてあんまり知らない所があってゴメンね。けどそれなら話が早い。

「それなら話が早いですね。正直な話ここから何をするのかリエリもヒントを出してくれなくて……」

「では僭越ながらワタシの意見を……ダンジョンに来てする事は基本1つ。それはダンジョン探索です」

「はいっしかし目的もなくダンジョンを彷徨うような真似は──」

「だからこそ、あの本があるのでは?」

 本?異世界ガイドブックか?。私はインベントリから異世界ガイドブックを取り出す、念じるだけで手元に現れた。このインベントリのお陰で荷物とか持って歩く必要がないのでとても助かる。

 ガイドブックを開く、内容は変わらずこのダンジョンの物と思われる地図である。地図としてこれを使えと?。

「う~~んガイドブックを地図として使うのは分かりますが、それで何をすればいいと言うんですか?」

「それをガイドブックではなくもっと別の種類の本だとしたらどうですか?」
「別の種類の本?」

 ダンジョンの地図が載ってる本なんてあるか?……あるな。例えばゲームの攻略本とか……あっ。

「……ユーリ」
「おそらく、アオノ様の予想通りだと思います」

 私はリエリの方を向く。

「このダンジョン、まだ発見されてないエリアがあったりしますか?そしてその先に例えばダンジョンのボスがいるとか」

「………ふふっ」

 リエリは答えない、しかしその微笑が答えだ。

 つまりこの異世界ガイドブックにしか載っていない道がこのダンジョンにはある、それは恐らくこの本がないとまず見つけられない物で、それ故にこの本を持つ私がここに来させられたと言うわけだ。

 そしてダンジョンの奥にはボス的なのがいるのも多分間違いなさそうですな………ハァッ。

「まあ魔法使いやってた頃は結構武闘派でモンスターともやり合ってたりしてましたけど……」
「流石はアオノ様です」

「イヤイヤッそれからモンスターとかいない世界で生きてましたからね?ブランクが半端じゃないんですってば──」

「ご主人様なら余裕ですよ、ワタシもいますから!」

「…………」

 元気ですな~~頼りなるのかいまいち分かんないけどやる気だけはあるみたいだ。そしてそんなユーリが何気なくする笑顔にこちらもやる気が起こるのを感じる。

「分かりました。それではダンジョンを進もうと思います、それでは戦闘の際の配置を決めましょう」

「ユーリはゴーレムです、前衛は任せて下さい。大型のモンスターでも力負けはしませんので」

「私は魔法の支援が得意よ?出来れば後衛がいいわね?」

 それぞれの強みを主張出来る、それはとても素晴らしい事だ。おかげで私も判断し易い。

「では前衛はユーリ、リエリは後衛。私はどちらにも回れるように立ち回るっと言うことでいいですか?」

「はいっ分かりました」
「それでかまわないわ」

 それでは改めてダンジョン探索と行きますか。


◇◇◇◇◇◇


 そしてダンジョン探索をする。流石にパーティーメンバーが2人もいると心強いな、そして2人とも美人とか本当にネットで読んだ異世界ラノベみたいである。ダンジョンは不気味だがとても楽しい気分だ。

 異世界ガイドブックと私の魔法(マジックサイトね)を合わせれば冒険者であれモンスターであれまずエンカウトする前に出会わない通路を通る。

「アオノ様、モンスターと全然出会えませんね。これだとワタシのゴーレムとしての性能を見せる機会がありません……」

 ゴメンね。それは私がそう言う道を進んでいるからです、しかしユーリの言うことも一理ある。
 モンスターは避けようと思えば避けれる、ならこの即席パーティーで戦闘を経験するのも悪くないか?。

「それなら向こうの道に行きましょう、恐らくモンスターがいるはずですよ」

「本当ですかアオノ様!」

「ふふっ気を付けなさいよユーリ」

「リエリもご主人様とワタシの背中を頼みますよ?」

 何気にリエリとユーリは意気投合していた。リエリが大人として距離感をそれとなく調整しながら接してくれたおかげだな。

 ユーリは私にはちゃんと接するがそれ以外の人に割と厳しい感じで接するスタンスのようでそれをリエリとのやり取りで理解した、そこをリエリが大人の対応をしてくれたからこそ良好な関係を築けているのだ。

 そんなことを考えていると……モンスターの気配がするな。そろそろか。

「モンスターが見えてくる筈です」
「アレは……茶色い大きなトカゲですか?」

「アレはロックリザードよ。岩のように硬い鱗に覆われたモンスターで牙には毒があるわ」

 ロックリザード、リエリの説明通りなら噛み付かれるのは避けたいな。大きさも三メートルはあり本当にデカい。

 まっあのビッグミミズや二つ前の前世ではもっと大きなモンスターを見た私にはふぅ~んってレベルでしかないけど。

 しかし油断はしない、初のパーティー戦だ怪我人とか出さないようにするぞ!。

「ユーリ、ロックリザードは全部で3体です何体足止め出来ますか?」

「………恐らく全滅出来ますよ?」
「え?」

演舞する飛剣サークルソード、展開!」

 ユーリが言葉を発すると彼女の周囲に十数本の白銀の剣が現れた。それはユーリを中心に円を描くように浮いている。

 何あれ?ユーリを生み出した私の知らない能力を発揮しまくる美人メイドに元アラサーは度肝を抜かれているよ?。

「貫け!流星剣ソードオブミーティア!」

 浮いている剣が光を纏う、剣がひとりでに動いて切っ先をロックリザードに向けるとユーリの言葉に応じるように突撃を開始した。

 正に流星って感じになって高速で突進する剣は岩より硬い筈のロックリザードの身体を易々と貫いた。

 ズガンズガン、ズドンズドンと大きな音がした。

 ロックリザード全滅である。

「ふふっ流石にダンジョン1層のモンスターじゃ、あの子や私の相手にはならない見たいよ?」
「そうみたいですね………下の階層を目指しますか」

 リエリめ、知ってたな?こうなるって。
 美人の手の平でコロコロされてる感がある、それも悪くないと思う私はダメな元アラサーだなぁ。









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