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第1部『旅の魔法使いと水神の巫女』

マッスルドラゴン!

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 そして数分後。結局舞台にあがるのは私とユーリとザングスで決まった、リエリは本当に舞台の外で高みの見物をしている。なんかムカつくわぁ~~。

「舞台に上がると直ぐに魔法陣が……来たぞ!」

 ザングスが警告する、すると舞台の中心に魔法陣が現れた。そしてその魔法陣の中から──。

「グォオオオオーーーーーーッ!」

 現れたのは真紅の鱗を持つドラゴンだ、但し西洋ファンタジーに出て来る手足が短いあれじゃない。
 身体はむしろ人間に近い、逆三角形のマッスルボディだ。腕や足も人間に近く5本指で鋭い爪を生やしている。マッスルドラゴンだな。

 体長は軽く四メートル以上はある、しかも手には馬鹿でかい戦斧、なんか予想とは違うけど、コイツは大物である。とても怖いので帰りたくなってきましたな。

「アオノ様、ここはユーリが行きます」
「俺もだ!コイツをぶっ飛ばしてやる!」

 やる気十分な前衛の2人が前に出る。よしっザングスはともかくユーリの強さを見るには丁度良い相手が現れたかも知れないのでいつでも魔法を発動出来る状態で待機、戦況を見守るのだ。

「2人とも、後方支援は任せて下さい!」

「はいっ!行きます!」
「突っ込むねぇメイドのねぇちゃん!まっ俺も単独行動しか出来ねぇソロだ!好きにやるぜ!」

 さっき出会ったばかりの我々の辞書に協力プレイなんて言葉はない。

 先ずはユーリが剣を手に突撃する。マッスルドラゴンはユーリのスピードに危険を感じ取ったのかいきなりのブレス攻撃をしてきた、炎のブレスだ。

 ドラゴンだからブレス攻撃は有り得ると思ったけど、いきなりとはね。しかしユーリはその場で跳躍してブレスを躱す、むしろ後ろにいたザングスに被害が出た。

「あっち!あちぃなクソッ!」

「グルルルル!」

「余裕のつもりですか?あまいですよ!」

 炎から逃れるザングスを笑ったように見えたマッスルドラゴンにユーリの攻撃が炸裂した。
 ユーリの両手の剣による斬撃だ、マッスルドラゴンの硬そうな鱗と筋肉質な脚に遠慮なく斬りつける。

 一撃で断ち切れてりはしないが剣は通っているのか遠目にも血しぶきが見えた、マッスルドラゴンも痛みも感じたのか、いつの間にか至近距離まで接近していたユーリに向かって尻尾で応戦する。

 マッスルドラゴンの尻尾は鱗が突起状になっておりまるでスパイクだ。その尻尾を器用に、そして素早く動かしてユーリの剣を阻む。
 ガキンガキンとまるで金属同士がぶつかるような音がする。片方は尻尾である、ユーリのゴーレム印の腕力すらドラゴンの尻尾パワーは上回るのか?。

「俺を無視すんなよ!うぉりぁあーーーッ!」

 いつの間にか炎から逃れたザングスがあの強力そうな棍棒を上段から振り下ろす、狙いはマッスルドラゴンの右足の………指だ!。

 ボッギン!

「グォオオオオーーーーーーーーーーッ!?」

 確実にダメージを与え、動きを阻害する。何よりマッスルドラゴンが心底痛がるように小指を………ザングス、中々やるじゃないの~~。

 マッスルドラゴンぶっちぎれ。ドラゴンらしく背中の翼を広げて空に舞い上がった!。

「野郎、俺はあの空に逃げられてからの攻撃にやられたんだ。どうするアオノ!」
「ここはワタシの流星剣ソードオブミーティアで──」

「……いえっここは私が相手をします」

 ユーリ、ザングスの実力は十分見せてもらった。ここからはこのアラサーソウルの青天パーにお任せあれ!。

 私は魔法を発動する。

「……『魔法の呪縛マジックバインド』」

 空飛ぶなんて機動力ありそうなのにもこの魔法は有効だ。マッスルドラゴンは1発で空中に縛り付けられたように動かなくなった。

 よ~~し、後は適当な攻撃魔法で──。

「グォオオオオーーーーーーーーーーッ!」

「いやいやっ鳴いても無駄だから……ん?」

 え?なんかまた舞台の中央に魔法陣が現れたよ?。

 そしてその魔法陣から新たなマッスルドラゴンが……。

「なっ!?マジかよ、アイツ仲間を喚びやがっただと!?」

 ザングスが怒りの声をあげる、私もふざけんなよって思った。ボスが同じボスを喚ぶとかゲームじゃまずしちゃダメだろ。

 現れたのはマッスルドラゴン五体、五体は多くないかい?舞台が大分狭くなるよ。そしてマッスルドラゴン達は全て飛んでこちらに向かって来た。

「アオノ様、ここはワタシが抑えます」
「俺もだ!その間にアンタだけでもなんとか結界の外に………」

「……………………ハァッ」

 もうさっこう言う真面目にボス戦とか頑張ってるのに水を差されるのって本当に腹が立つよな。
 こう言う理不尽で舐めた真似をしてくるヤツには魔法使いからキツいお仕置きが必要だよね。

「2人とも私の後ろに、ここからは私が相手をします」

「ほっ…本気がアオノ」
「はいっあの数を相手にまともに戦うだけ無駄です。だから私が前に出ます」

「………分かりました、アオノ様の言葉に従います」

 ザングスとユーリが私の後ろに移動する。

「すみません、2人の実力を知ろうとして様子見をしてしまいました。結果として危険な目にあわせてしまいました、しかし──」

 私は魔法を発動する。

「ここからは何も危険はありませんよ。『魔法の呪縛マジックバインド』!」

 私のマジックバインドは元から複数の敵にも使える。だからマッスルドラゴンが何体いても基本的に何も変わりはしないのだ。一体に通じれば他の同じ個体にもほぼ通じるからね。

 数の有利も全てのマッスルドラゴンが宙に拘束されてしまえば関係ないのだ。残念でした。

「まっマジかよ、あの数のストレングスドラゴン達をまとめて魔法で動きを止めるだと!?」

「アオノ様……流石です」

 2人にリアクションされて何気に嬉しい私だ。せっかく魔法を披露してるからね、どうせならビックリしてくれた方が嬉しい。なんか手品とか見せて驚かしてるマジシャンの気分である。

 私は更に魔法を発動した。

「『魔法の掌マジックハンド』」

 身動きが取れないマッスルドラゴン、その真上に巨大な光る手が現れた。私はマジックハンドを操りマッスルドラゴン達をまとめて舞台に叩きつける。

 ビィッタァアーーンッ!

 良い音。舞台にはかなり大きなクレーターが出来た。マッスルドラゴン達はクレーターにめり込んでいた。










 
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