マイダンジョン育成中

どらいあい

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第70話

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 アヤメの力によって出現した大きな海水の塊。
 その中を自由に泳ぎまわるジュエルフィッシュを見ながら本当に綺麗だなと思う。

 指先で海水に触れてみると確かにちょうどいい冷たさで、そこまで冷たすぎるということもない。

 これくらいなら問題なく泳げそうだ。
 しかし残念ながら今回の私は万が一に備えての見張り係をしているので泳ぐことはできない。

「………全く、しょうがないな~ほいっ!」

 アヤメが小さく何かをつぶやいた。
 すると目の前の海水の塊が動き出して……え?

「ちょっちょっとま──」

 海水の塊が私を飲み込んだ。
 一瞬、本当に溺れそうになったがなんとか無事だった私だ。
 しかし鼻や口から海水が……急いで顔の下半分を手で隠した。
 そして全身はずぶ濡れである。

「アヤメ、一体何を…!?」

「だ~か~ら~こんな風に念動力が使える私がいるんだから見張りなんてつまんないことヒロキ君がする必要ないってわけよ~」

「……!」

 アヤメが若干ふてくされながら言っていた。
 言われてみれば確かにその通りかもしれない。
 つまりアヤメのこの行動は…。

「……分かったよ、こんな風に全身にずぶ濡れにしちゃったんなら今更だしね。着替えてくる」

「分かればよろしい」

 アヤメはご満悦そうな顔だ。
 私は一度ワゴン車の方に戻った。
 私だって以前からこのダンジョンの綺麗な海で泳ごうと考えていた男だ。

 海パンの一つくらい実はとっくに買って用意している。
 ワゴン車の裏でパパッと着替えて海パンを履く、そこにハルカが現れた。

「そっちの脱いだ服は洗濯に出しましょうか。新しい着替えはここにも持ってきておくわね」

「ありがとう、ハルカ」

 これじゃどっちが大人か分からないな。
 そして本当にアヤメがわがままな妹でハルカ気が利くお姉さんって感じだ。
 バランスが取れていて大変いいと思います。

「あっそれとヒロキさん」

「何だい?」

「………その海パンはちょっと目立つと思うわよ?」

 ハルカはそんな気になる一言を言って新居の方に私のずぶ濡れの服を持って行った。
 それってどういう意味なんだい?
 まあいいか。

 私は海パン姿で海の方に向かった。
 するとアヤメの方から一言。

「…ヒロキくん、その海パン何なの?」

「何なのって言われても…私が買った海パンだけど?」

 そうっ私が以前に購入していた海パンだ、マーブルカラーの海パンである。
 なんとなく海といえば夏で夏と言えばトロピカル。
 そして、トロピカルといえばマーブルカラーというイメージがあった私だ。
 だからそんな海パンを買った。

「夏のトロピカルといえばマーブルカラーでしょ?」

「トロピカルとマーブルカラーって多分 イメージする感じは違うような気がするわよ~?」

「そうなの?」

「違うと思います」
「確かに」

 工藤さんと月城まで冷静な口調で言われてしまった。
 そんな2人も私のマーブルカラー海パンに対しては微妙な反応のようだ。

 なんだよなんだよアラサーの海パンが何の柄かなんてどうでもいいじゃないか。
 私は内心ふてくされた。
 しかしそんなことよりも海に入ってみることにする。

 足首を入れてみるとやはり冷たいな。
 ただこの冷たさは気持ちいい方の冷たさだ。
 私はずんずんと海に入り腰くらいまで深さの所まで来た。
 すると工藤さんと月城さんが来る。

「一河さんも海に入ることにしたんですね」

「正直私たちだけ楽しんでいたのも気が引けていたので嬉しいです」

 どうやら気を利かせたつもりが逆に気を使わせてしまっていたようだ。

「すいません、海なんてもう何年は入っていなかったもんで。入ろうか悩んでました」

 社会人になってから海になんて入ってない。
 正確には海を見に行くことはあっても入ることはなかった。
 だって基本的に人が少ない時期に行ってたからさ、春の少し手前とか冬とか。

 誰もいない海でただ静かに読書をする、そんなことをして社会人のストレスを紛らわせていた私だ。

「そんな世間話はどうでもいいのよ! せっかく海入ったんだからもっと楽しまなくちゃね! それーー!」

 アヤメが念動力のスキルを使い私たちの周りに野球ボールくらいの水玉をいくつも出現させた。

 その水の玉一個一個の中には小さなジュエルフィッシュが入っている。
 芸が細かい、確かに綺麗だけど中のジュエルフィッシュル達が若干困っているように見えるのは気のせいではないだろう。

 だって狭すぎるもの。
 アヤメにして操られた水玉は私たちの顔面目掛けて迫ってきた。

「うわっちょっ危ないなアヤメ!」

「先手必勝よー!」

「ひやっやられてしまいました…」

「だったらこっちも反撃させてもらうわね!」

 工藤さんの倍返しへの意欲は高そうだ。
 そんな子供がやるようなノリで私たちは水の掛け合いをすることになった。

 最初は主に相手はアヤメだったのだが 途中で工藤さんと月城さんが私にまで水をかけて来たのはお約束だ。

 そこから先は皆が敵のゲームである。
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