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番外編
第22話『おっさんスライムとサマー(3)』
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冒険者ギルドは3階建ての建物である、その3階にある1番大きな部屋に案内された。
そこでデスクに腰掛けていたのは銀髪を短く切った四十代ほどの男でスーツを着ていた、名をマイクと名乗った。
そこでのやりとりはシーラが言っていた通り、アンセムが知る穴場を無条件で教えろとのこと。
マイクから見下してくる様な発言で言われた。
アンセムはたまたま見つけただけで、海の中なので場所なんて分かりませんと答えた。
その後ものらりくらりと話を躱すアンセムに痺れを切らしたマイクからはもういいと一方的に話を打ち切られ部屋から追い出された。
(追い出されたか。まあこっちは元から根なし草、このブルーハワイアンに居場所がなくてもなんとでもなるから良いけどな……)
その後数日間ほど冒険者ギルドに近付かなかった、お金はあったので観光がてらのんびりと過ごした。
すると街の人々のウワサ話を耳にする。
なんでもマイクが流行病に倒れたらしいと、アンセムは冒険者ギルドに出向いてシーラにウワサ話の事を確認した。
「残念ながら本当よ、ギルドマスターは倒れたわ生きてはいるけど事態は深刻よ」
「そうか」
「それと問題はもう一つ、ギルドマスターの病気を治すのに必要なアイテム『千年貝の粉末』と言う物を入手する緊急依頼がギルドに張り出されたわ」
ギルドの壁に掛けられた依頼ボードには多くの冒険者が集まっていた。
「『千年貝の粉末』はミレニアム・シェルロードと言うモンスターの貝の粉末なの、そのモンスターは海に稀にしかいない上に強力な魔法で海流を操るわ、依頼の難易度は最高ランクよ」
「つまりマイクは命を金で買おうとしてる訳か」
「ええっこのブルーハワイアンにはマイクと仲の良い冒険者も多数いるからソイツらが依頼を受けるでしょうね」
シーラと言うとおり壮年の冒険者パーティー4つが共同で依頼を受ける、依頼ボードから依頼紙を剥ぎ取ると依頼カウンターまで向かった。
2日後、また依頼は依頼ボードに張り出された。
風のウワサでは4つのパーティーは全滅したとウワサが流れた。
次に3つの熟練者の冒険者パーティーが依頼を共同で受けた、2日後にまた依頼は張り出され、冒険者パーティーは全滅したウワサが流れる。
マイクと仲が良かった冒険者パーティーが1つ、まと1つとブルーハワイアンから姿を消した。やがてブルーハワイアンから古株の冒険者がいなくなった。
(マイクも哀れだな。散々目をかけた連中も流れが悪くなれば去って行く、人間なんてこんなもんだろうな。去った人間も2度とこの街に来る事はないだろう……)
アンセムにマイクを同情する気持ちはなかった。
アンセムの元にシーラが来る。
「アンセムさん『千年貝の粉末』の依頼。受ける気はありませんか?もうアンセムさん以外に海の依頼でまともに結果を出している冒険者はいません」
「受ける気はないよ、マイクとは1度話をした。人を見下してくる嫌なヤツだったよ、悪いが命を懸けてまで助けようとは思えないね」
「…………」
「───シーラちゃん、1つ確認していい?」
アンセムもミレニアム・シェルロードとやらと戦う気は毛頭ない。しかしなんとなく気になったのでそのモンスターについて少しだけ調べたのだ。
「そのミレニアム・シェルロードってどんなモンスターなのか分かる?見た目貝の色とか深い青色をしてない?」
「そうです、ミレニアム・シェルロードはまるでサファイアのような光沢のある深い青色をしている二枚貝のモンスターですよ、かなり大きい貝です」
「そっかぁ~~」
(マイクって野郎、本当に悪運が強いな……仕方ない助けられそうだし動いてみるか)
「シーラちゃん、その依頼は受けられない。けどここだけの話、その『千年貝の粉末』とやらを手に入れられる可能性はある」
「えっ!?」
「多分その二枚貝らしきのを見かけた場所は言えんけど、それが本物なら報酬は出してくれる?」
シーラは無言で頷いた、アンセムはニヤリとして冒険者ギルドを後にした。
忍者タコに変身して海底洞窟に向かう、変わらずモンスターもいない平和で美しい珊瑚礁の世界が広がっていた。
奥に行くと、以前と同じ場所にミレニアム・シェルロードと思われる巨大な二枚貝が鎮座していた。
アンセムは近付いてもミレニアム・シェルロードは以前と同じく動かなかった。
アンセムはよく観察した、そして予想が確信へと変わった。
(あっやっぱりコイツ死んでるわ、まっ欲しいのは貝の殻の粉末なんだから問題ないけど…)
アンセムは魔法で殻の一部を破壊した、死んでるからな殻は意外と脆かった。
危なげなく仕事を済ませて冒険者ギルドに戻る、そしてシーラに現物を見せた。
「これが依頼の品物で間違いないかな?」
「ええっ!これは間違いなく『千年貝の殻』、これを粉にすれば粉末は手に入ります!これでギルドマスターは助かりますよ!」
「なら1つ忠告しといて、直ぐに傍に寄ってくる人間は直ぐに離れる。新人いびりなんてしてるから人を見てる人間が寄り付かん事になったんだってな」
シーラは笑顔で頷いてギルドの奥に消えた。
数日後、ギルドマスターのマイクは無事に回復しそれを祝って冒険者ギルドでパーティーが開かれた。
冒険者だけでなくブルーハワイアンの街に住む人々も集まり冒険者ギルドの中と外に人が集まった。
金は全額マイクが負担するとの事なのでアンセムも参加した。
気分よく飲んでいるとマイクがアンセムの元に現れる。マイクはアンセムに頭を下げた。
「アンセムさん、新参者と言う理由だけで失礼の態度をとった事を謝罪する。そして貴方のお陰で私は今こうして生きていられる事を感謝する」
「俺が採ってきたのは千年貝とやらの粉末だけだ、他のアイテムは今ギルドに残ってる冒険者達が手に入れて来たんだ」
「そうか、その通りだな。皆にも感謝の言葉を伝えなくては、私は自分に都合と態度が良い人間だけを大事にし過ぎて、本当にギルドと街の事を考えてる人間を蔑ろにして新しい人材を育てる努力すらしなかった」
「新しい人間を使い潰すのは組織が腐ってる証拠、そこら辺気をつけると次は本当に見捨てられるぞ」
「ああっそうならないように努力する。変わることを誓うよ」
マイクはまた他の冒険者達の方に歩いていった。
アンセムはテーブルに並ぶ魚貝系の料理を食べながら思う。
(上手いなぁ~異世界の夏、海の幸に舌鼓を打ちながら過ごすのも悪くないな)
アンセムのいるテーブルに冷えた麦酒が運ばれてきた。ゴクゴクと飲んで「美味い」と笑顔で言った。
異世界での夏をアンセムは満喫するのだった。
そこでデスクに腰掛けていたのは銀髪を短く切った四十代ほどの男でスーツを着ていた、名をマイクと名乗った。
そこでのやりとりはシーラが言っていた通り、アンセムが知る穴場を無条件で教えろとのこと。
マイクから見下してくる様な発言で言われた。
アンセムはたまたま見つけただけで、海の中なので場所なんて分かりませんと答えた。
その後ものらりくらりと話を躱すアンセムに痺れを切らしたマイクからはもういいと一方的に話を打ち切られ部屋から追い出された。
(追い出されたか。まあこっちは元から根なし草、このブルーハワイアンに居場所がなくてもなんとでもなるから良いけどな……)
その後数日間ほど冒険者ギルドに近付かなかった、お金はあったので観光がてらのんびりと過ごした。
すると街の人々のウワサ話を耳にする。
なんでもマイクが流行病に倒れたらしいと、アンセムは冒険者ギルドに出向いてシーラにウワサ話の事を確認した。
「残念ながら本当よ、ギルドマスターは倒れたわ生きてはいるけど事態は深刻よ」
「そうか」
「それと問題はもう一つ、ギルドマスターの病気を治すのに必要なアイテム『千年貝の粉末』と言う物を入手する緊急依頼がギルドに張り出されたわ」
ギルドの壁に掛けられた依頼ボードには多くの冒険者が集まっていた。
「『千年貝の粉末』はミレニアム・シェルロードと言うモンスターの貝の粉末なの、そのモンスターは海に稀にしかいない上に強力な魔法で海流を操るわ、依頼の難易度は最高ランクよ」
「つまりマイクは命を金で買おうとしてる訳か」
「ええっこのブルーハワイアンにはマイクと仲の良い冒険者も多数いるからソイツらが依頼を受けるでしょうね」
シーラと言うとおり壮年の冒険者パーティー4つが共同で依頼を受ける、依頼ボードから依頼紙を剥ぎ取ると依頼カウンターまで向かった。
2日後、また依頼は依頼ボードに張り出された。
風のウワサでは4つのパーティーは全滅したとウワサが流れた。
次に3つの熟練者の冒険者パーティーが依頼を共同で受けた、2日後にまた依頼は張り出され、冒険者パーティーは全滅したウワサが流れる。
マイクと仲が良かった冒険者パーティーが1つ、まと1つとブルーハワイアンから姿を消した。やがてブルーハワイアンから古株の冒険者がいなくなった。
(マイクも哀れだな。散々目をかけた連中も流れが悪くなれば去って行く、人間なんてこんなもんだろうな。去った人間も2度とこの街に来る事はないだろう……)
アンセムにマイクを同情する気持ちはなかった。
アンセムの元にシーラが来る。
「アンセムさん『千年貝の粉末』の依頼。受ける気はありませんか?もうアンセムさん以外に海の依頼でまともに結果を出している冒険者はいません」
「受ける気はないよ、マイクとは1度話をした。人を見下してくる嫌なヤツだったよ、悪いが命を懸けてまで助けようとは思えないね」
「…………」
「───シーラちゃん、1つ確認していい?」
アンセムもミレニアム・シェルロードとやらと戦う気は毛頭ない。しかしなんとなく気になったのでそのモンスターについて少しだけ調べたのだ。
「そのミレニアム・シェルロードってどんなモンスターなのか分かる?見た目貝の色とか深い青色をしてない?」
「そうです、ミレニアム・シェルロードはまるでサファイアのような光沢のある深い青色をしている二枚貝のモンスターですよ、かなり大きい貝です」
「そっかぁ~~」
(マイクって野郎、本当に悪運が強いな……仕方ない助けられそうだし動いてみるか)
「シーラちゃん、その依頼は受けられない。けどここだけの話、その『千年貝の粉末』とやらを手に入れられる可能性はある」
「えっ!?」
「多分その二枚貝らしきのを見かけた場所は言えんけど、それが本物なら報酬は出してくれる?」
シーラは無言で頷いた、アンセムはニヤリとして冒険者ギルドを後にした。
忍者タコに変身して海底洞窟に向かう、変わらずモンスターもいない平和で美しい珊瑚礁の世界が広がっていた。
奥に行くと、以前と同じ場所にミレニアム・シェルロードと思われる巨大な二枚貝が鎮座していた。
アンセムは近付いてもミレニアム・シェルロードは以前と同じく動かなかった。
アンセムはよく観察した、そして予想が確信へと変わった。
(あっやっぱりコイツ死んでるわ、まっ欲しいのは貝の殻の粉末なんだから問題ないけど…)
アンセムは魔法で殻の一部を破壊した、死んでるからな殻は意外と脆かった。
危なげなく仕事を済ませて冒険者ギルドに戻る、そしてシーラに現物を見せた。
「これが依頼の品物で間違いないかな?」
「ええっ!これは間違いなく『千年貝の殻』、これを粉にすれば粉末は手に入ります!これでギルドマスターは助かりますよ!」
「なら1つ忠告しといて、直ぐに傍に寄ってくる人間は直ぐに離れる。新人いびりなんてしてるから人を見てる人間が寄り付かん事になったんだってな」
シーラは笑顔で頷いてギルドの奥に消えた。
数日後、ギルドマスターのマイクは無事に回復しそれを祝って冒険者ギルドでパーティーが開かれた。
冒険者だけでなくブルーハワイアンの街に住む人々も集まり冒険者ギルドの中と外に人が集まった。
金は全額マイクが負担するとの事なのでアンセムも参加した。
気分よく飲んでいるとマイクがアンセムの元に現れる。マイクはアンセムに頭を下げた。
「アンセムさん、新参者と言う理由だけで失礼の態度をとった事を謝罪する。そして貴方のお陰で私は今こうして生きていられる事を感謝する」
「俺が採ってきたのは千年貝とやらの粉末だけだ、他のアイテムは今ギルドに残ってる冒険者達が手に入れて来たんだ」
「そうか、その通りだな。皆にも感謝の言葉を伝えなくては、私は自分に都合と態度が良い人間だけを大事にし過ぎて、本当にギルドと街の事を考えてる人間を蔑ろにして新しい人材を育てる努力すらしなかった」
「新しい人間を使い潰すのは組織が腐ってる証拠、そこら辺気をつけると次は本当に見捨てられるぞ」
「ああっそうならないように努力する。変わることを誓うよ」
マイクはまた他の冒険者達の方に歩いていった。
アンセムはテーブルに並ぶ魚貝系の料理を食べながら思う。
(上手いなぁ~異世界の夏、海の幸に舌鼓を打ちながら過ごすのも悪くないな)
アンセムのいるテーブルに冷えた麦酒が運ばれてきた。ゴクゴクと飲んで「美味い」と笑顔で言った。
異世界での夏をアンセムは満喫するのだった。
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