Brain Nunber

藤岡 志眞子

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number.10 赤居 美島

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「梅田さんって、ロサ製薬の…社長さんなんですか?」

シャンデリアが煌びやかに照らす店内には、テーラー仕立てのスーツを身に纏った男性客ばかり。
美島のお客さんも深い藍色のパキッとしたダブルのスーツにブランド物の腕時計、ピカピカに光った革靴を履いていた。

「あぁ。でも堅くならないで。君の砕けた雰囲気が好きで通っているんだから。」

店に来たのは五回目。大手製薬会社の社長さんだなんて思ってもみなかった。
どこかの社長さんではあるなと思っていたけど、まさか。
子供が次から次へと生まれて夫の稼ぎでは到底間に合わなくなった。義母にお願いをして、街のクラブで歳を誤魔化して働いている。

「今まで君といろんな話をしてわかったんだけど、君、頭良いよね。なぜクラブで働いているの?」

「…接客が好きなんです。」

「なら、うちの会社の秘書にでもならない?接客という訳ではないけど、会話力や気配りは大切だからね。…大学はどこ?」

「…大学は行っていません。」

「そうなの?でもいいよ、高卒でも。君のルックスなら問題ないし。」

…高校も途中で、とは言えなかった。
高校在学中に夫の子供を妊娠した。どうしても産んで欲しいと懇願され、希望していた医学部への進路は諦めた。

「…給料は、ここの三倍は出せるよ?」

耳元で言われた魅力的な金額。このクラブの給料だって決して安くはないが、夫の月給は平均以下だし、お義母さんの医療費も嵩むばかり。子供へのお金もすっからかんで、全員高校に行かせられるかまで悩むほど困窮していた。

「…本当に働けますか?」

「いいよ、すぐ秘書課に話してみるよ。そうだな、君が良ければ来週から来ない?」

私はこの甘い話に乗り、ロサ製薬に入社した。

ロサ製薬に勤め始めて二年後、部署の異動を命じられた。異動先は研究室。
秘書課から研究室…?不思議に思い社長に連絡をしたら、

「君は頭が良い。秘書にも向いているがその頭脳を他に使わない手はない。是非、研究室に行って我が社の製品開発に尽力してもらいたい。」

頭が良いとは何の事だろう。二年間目立った失態は犯してないし、こなしている仕事以上に感謝され給料も上がった。うちの経済も安定して上の子ふたりは希望の私立の高校に進学できた。
これ以上求めるものはないが、断ったらここにいられないかもしれない。

「わかりました、できる限り頑張らせていただきます。」

ロサ製薬、製薬開発部研究室に配属された。
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