日は夜を知らず、月は昼を知らず

SHIZU

文字の大きさ
18 / 38

友達になって

しおりを挟む
彼の不思議な力の話はそれだけではなかった。

「中学の頃、祖母が亡くなり、その手鏡は形見になりました。普段から使うことはなかったですが、体調がよくない時や、受験のようなここぞというときには、鞄に入れて持ち歩いていたんです。祖母が力をくれるような気がして」

「御守り、ですね」

「はい。とても大事な」

じゃあなぜ割れているんだろう?

俺のその思考を見抜いたように、環さんは続けた。

「高校生の時。たまたま私の鞄の中を見た前の席のクラスメイトが、その手鏡を見つけました」


ーーーーーーーーーー

「男のくせに手鏡なんか持ってやんの!」

「返して! 大事なものなんだから」

周りの生徒は見ているだけ。

からかうような笑みを浮かべる生徒もいた。

揉み合ううちに、鏡は手を離れ落下した。

割れた手鏡を見て、

「お前が悪いんだ」

彼はそう言った。

ーーーーーーーーーー


「それで割れたんですか?」

「そうです。祖母の鏡が割れてショックを受けた私は、決して思ってはいけないことを考えてしまった」

「まさか……」

「彼はその学校の帰り、交通事故に遭いました。私の目の前で」

「……」

返す言葉がなかった。

環さんを怖いとか思ったわけじゃない。

だけど……

「学校ではみんなたまたまだと思って、特に大騒ぎにはならなかった。だけど私は怖くなって、それを両親に話しました。すると祖母が両親にこう言っていたそうです。環の力は私よりも強いかもしれない。私の手鏡がその力を更に強めるのかもしれないと」

「どういうことですか?」

「落雷と交通事故の時、私は鏡に触れていました。ですが毒キノコの時は近くに鏡がなかった。だからはっきりとしたビジョンではなく黒いドクドクしたものしか見えなかった。昔からそんなことが起きるうちに祖母はそのことに気づいて話していたそうです」

「なるほど」

「私が強く望んだことが叶ってしまうかもしれないということが怖かった。鏡があってもなくても。だから人を遠ざけて、友達を作ることも極力避けてきました」

孤独。

今の俺にはよくわかる。

恋人に振られ、仕事を頑張っても邪魔をされ、メンタルを壊す寸前だった。

「あの……」

「はい」

「それなら俺が友達になります」

「え?」

「お隣さんを入れたら、2人目の友達に。友達2号に俺がなります。ダメですか?」

「ダメ……じゃないです。だけど怖くないですか?」

「何がです?」

「私のせいで何か起きないかと」

「それって俺が環さんを怒らせたりしたらってことですよね? そんなことあるわけないですよ」

俺は右手を差し出した。

「だから友人として、これからよろしくお願いします」

「……はい。お願いします」

と環さんは俺の手を握った。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

祖国に棄てられた少年は賢者に愛される

結衣可
BL
 祖国に棄てられた少年――ユリアン。  彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。  その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。  絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。  誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。   棄てられた少年と、孤独な賢者。  陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。

モブなんかじゃ終わらない!?

MITARASI_
BL
気がつけばそこは、人気BLゲームの世界。 けれど与えられた役割は、攻略対象でも悪役でもない――ただのモブ。 本来なら物語の外でひっそりと生きていくはずだった。 だが、そんな彼の存在が、少しずつ“運命のルート”を揺さぶっていく。 選ばれないはずのモブが紡ぐ、新たな恋の物語。 ゲームの定めを超えて、彼が辿り着く未来とは――。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

処理中です...