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友達になって
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彼の不思議な力の話はそれだけではなかった。
「中学の頃、祖母が亡くなり、その手鏡は形見になりました。普段から使うことはなかったですが、体調がよくない時や、受験のようなここぞというときには、鞄に入れて持ち歩いていたんです。祖母が力をくれるような気がして」
「御守り、ですね」
「はい。とても大事な」
じゃあなぜ割れているんだろう?
俺のその思考を見抜いたように、環さんは続けた。
「高校生の時。たまたま私の鞄の中を見た前の席のクラスメイトが、その手鏡を見つけました」
ーーーーーーーーーー
「男のくせに手鏡なんか持ってやんの!」
「返して! 大事なものなんだから」
周りの生徒は見ているだけ。
からかうような笑みを浮かべる生徒もいた。
揉み合ううちに、鏡は手を離れ落下した。
割れた手鏡を見て、
「お前が悪いんだ」
彼はそう言った。
ーーーーーーーーーー
「それで割れたんですか?」
「そうです。祖母の鏡が割れてショックを受けた私は、決して思ってはいけないことを考えてしまった」
「まさか……」
「彼はその学校の帰り、交通事故に遭いました。私の目の前で」
「……」
返す言葉がなかった。
環さんを怖いとか思ったわけじゃない。
だけど……
「学校ではみんなたまたまだと思って、特に大騒ぎにはならなかった。だけど私は怖くなって、それを両親に話しました。すると祖母が両親にこう言っていたそうです。環の力は私よりも強いかもしれない。私の手鏡がその力を更に強めるのかもしれないと」
「どういうことですか?」
「落雷と交通事故の時、私は鏡に触れていました。ですが毒キノコの時は近くに鏡がなかった。だからはっきりとしたビジョンではなく黒いドクドクしたものしか見えなかった。昔からそんなことが起きるうちに祖母はそのことに気づいて話していたそうです」
「なるほど」
「私が強く望んだことが叶ってしまうかもしれないということが怖かった。鏡があってもなくても。だから人を遠ざけて、友達を作ることも極力避けてきました」
孤独。
今の俺にはよくわかる。
恋人に振られ、仕事を頑張っても邪魔をされ、メンタルを壊す寸前だった。
「あの……」
「はい」
「それなら俺が友達になります」
「え?」
「お隣さんを入れたら、2人目の友達に。友達2号に俺がなります。ダメですか?」
「ダメ……じゃないです。だけど怖くないですか?」
「何がです?」
「私のせいで何か起きないかと」
「それって俺が環さんを怒らせたりしたらってことですよね? そんなことあるわけないですよ」
俺は右手を差し出した。
「だから友人として、これからよろしくお願いします」
「……はい。お願いします」
と環さんは俺の手を握った。
「中学の頃、祖母が亡くなり、その手鏡は形見になりました。普段から使うことはなかったですが、体調がよくない時や、受験のようなここぞというときには、鞄に入れて持ち歩いていたんです。祖母が力をくれるような気がして」
「御守り、ですね」
「はい。とても大事な」
じゃあなぜ割れているんだろう?
俺のその思考を見抜いたように、環さんは続けた。
「高校生の時。たまたま私の鞄の中を見た前の席のクラスメイトが、その手鏡を見つけました」
ーーーーーーーーーー
「男のくせに手鏡なんか持ってやんの!」
「返して! 大事なものなんだから」
周りの生徒は見ているだけ。
からかうような笑みを浮かべる生徒もいた。
揉み合ううちに、鏡は手を離れ落下した。
割れた手鏡を見て、
「お前が悪いんだ」
彼はそう言った。
ーーーーーーーーーー
「それで割れたんですか?」
「そうです。祖母の鏡が割れてショックを受けた私は、決して思ってはいけないことを考えてしまった」
「まさか……」
「彼はその学校の帰り、交通事故に遭いました。私の目の前で」
「……」
返す言葉がなかった。
環さんを怖いとか思ったわけじゃない。
だけど……
「学校ではみんなたまたまだと思って、特に大騒ぎにはならなかった。だけど私は怖くなって、それを両親に話しました。すると祖母が両親にこう言っていたそうです。環の力は私よりも強いかもしれない。私の手鏡がその力を更に強めるのかもしれないと」
「どういうことですか?」
「落雷と交通事故の時、私は鏡に触れていました。ですが毒キノコの時は近くに鏡がなかった。だからはっきりとしたビジョンではなく黒いドクドクしたものしか見えなかった。昔からそんなことが起きるうちに祖母はそのことに気づいて話していたそうです」
「なるほど」
「私が強く望んだことが叶ってしまうかもしれないということが怖かった。鏡があってもなくても。だから人を遠ざけて、友達を作ることも極力避けてきました」
孤独。
今の俺にはよくわかる。
恋人に振られ、仕事を頑張っても邪魔をされ、メンタルを壊す寸前だった。
「あの……」
「はい」
「それなら俺が友達になります」
「え?」
「お隣さんを入れたら、2人目の友達に。友達2号に俺がなります。ダメですか?」
「ダメ……じゃないです。だけど怖くないですか?」
「何がです?」
「私のせいで何か起きないかと」
「それって俺が環さんを怒らせたりしたらってことですよね? そんなことあるわけないですよ」
俺は右手を差し出した。
「だから友人として、これからよろしくお願いします」
「……はい。お願いします」
と環さんは俺の手を握った。
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