不可抗力

SHIZU

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夢にまで見た夢(最終話)

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 家に帰ると俺は両親に聞いた。
「ねぇ?この箱の中身2人も見たんだよね?」
「あぁ……全然知らなかったよ。昔あんなことがあったなんて」
「隣の子が……凱がなんか言ってた?」
「息子さんを僕にくださいって言いにきたわよ」
「は!?……あいつ本当に…」
どう話そうか悩んでいると、
「お前は好きなのか?彼のこと…」
と父さんが言った。
「俺は……うん。俺も好きだ。凱のこと」
「そうか。なら私たちから言うことは何もないよ」
「反対しないの?」
「爺さんたちの時代とは違うしな。藍の幸せは藍にしか決められない。愛する人に愛してると言える……爺さんたちが望む時代に、少しはなったんじゃないか?」
「そうか。父さん、母さん。ありがとう」
「その代わり、絶対幸せになるんだぞ?」
「はい」

 卒業制作で作った1着のスーツ。
タイトルは"共に生きる"にした。
着られなくなった着物や、汚れてしまった着物の使える部分をリサイクルして、世界に一つしかないスーツを作った。
 それを来て卒業式に出た。
「見送りには行かない。これが答えだ」
写真とこの言葉で、あいつに気持ちが伝わると思った。


 ー3年後ー

俺は空港にいた。
ここである人を待っている。
人々がざわついている。
みんなの目線の先には、タキシードに身を包んだ凱がいた。
あいつ何考えてんだ!?
「かっこいい!」
「ドラマの撮影かな?」
「CMじゃない?」
みんなの視線の中を颯爽と歩いて、椅子に座って待っていた俺の前に立つ。
「お前さぁ…」
と俺が文句の1つも言ってやろうと立ち上がると同時に、凱は片膝をつき俺の左手を握ったかと思うと、薬指に指輪をはめた。
「藍、お待たせ。共に生きよう。これからずっと」
「……何やってんの?こんなとこで恥ずかしいだろ。そんなもんまで着て…」
「大丈夫。お前のもあるよ」
 そう言って、凱は自分で作った藍色のタキシードを俺に渡した。





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