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第四章・宵の鬼

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「いや、葉千子のせいではない。」

「え?」

でも、つづらを開けたのはあたしだよ?太郎先輩、もしかしてあたしをなぐさめようと?

「悪いのは舌切り雀の婆だ。あいつは、生徒会の人間に大きいつづらを開けさせようとするんだよ。妖鬼をつづらに封印できるのも生徒会の人間だけだが、つづらの封印を解くことができるのも生徒会の人間だけなんだ。」

そうだったんだ……。

「でも、あたしあのつづらを開けたときはまだ生徒会じゃなかったよ?」

覚えている。あれはパパの会社の倒産を知らされた日の朝。

生徒会に入る前だった。

「そうだったね。でもさ、葉千子ちゃん犬飼先輩と輝夜先輩の娘でしょ?歴代生徒会の血統だから開けることができるって舌切り雀の婆も思ったんじゃないかな。というか、生徒会に入ってる人間は『つづらは開けてはいけない』くらいは分かってるから、まだ生徒会に入っていない葉千子ちゃんをあえて狙ったんだと思う。だから葉千子ちゃんは悪くないよ。」

冷え冷えのペットボトルをあたしの頬に押し当てた飛くんが優しく微笑む。

「まぁ、イマドキつづらなんて珍しいし、知らない人に『つづらを開けて。』と言われて、素直に開ける人の方が珍しいんだけどな。」

くぅ。太郎先輩の言葉が胸に刺さるよぉ。確かに誘惑に負けて開けちゃったあたしが馬鹿だったよぉ。

ちょっとでもお金やランニングシューズが入ってないかと期待しちゃったのは認めるよぉ。

「まぁまぁ、太郎くん、そんなに葉千子ちゃんいじめちゃ嫌われちゃうよ~。」と飛くんが太郎先輩をいなしてくれたけど、あたしに嫌われるもなにも、あたしが太郎先輩に嫌われてそうだよ。

悲しいけど。

でも、ちょっと待って。

「鬼や妖の化け物たちは、平成の生徒会がつづらに封印したんでしょ?どうして舌切り雀のおばあさ……美魔女さんだけ封印されなかったの?それっておかしくない?」

あたしの疑問、間違ってないよね。
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