闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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2部 4章

第二幕 4章 30話 ココアの奮闘

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「私は気づくとローランシアの近くにある小さな村の入り口にいました」
「一瞬で別の場所に移動したってこと?」
「はい」


 リーナの空間魔法みたいなものなのかな……でもどうやって?


「それから私は、ツバサがどうなったのか必死で調べました。私が再びローランシアに戻った時にはすでにツバサは居らず、ツバサの家のあった周辺はすべてが吹き飛ばされていました……それを見たとき、私はすぐに気づきました……これをやったのはツバサだと」


 そう、ツバサはココアに裏切られたと思い、心を壊してしまった。
 正直、あの状況のツバサが何をするか想像もつかない。
 復讐に走り、ココアを殺しに行くのではと思ったのだが、あの時のツバサはココアに興味が無さそうであった……目の前に両親を死に追いやった元凶がいるのにそれを殺そうとしない……今のツバサの考えは読めないよね……。


「そして、その時の状況を見ていた人間に詳しく聞くことにしました……それを聞いた私は愕然としました……ツバサが兵士を殺し、周囲を吹き飛ばし無関係な人すらも殺したということに……そして、その原因を作ったのが私だということに……」
「それは違うよ!悪いのはあのラージェとジーニアスだよ!」
「ありがとうございます……でも、もし私がもっとツバサに信用されていれば……ツバサが騙されることもなかったのかもしれません」


 違う……違うよ……でも、私はそう言えなかった。
 ツバサがココアのように相手を見てすぐに見破っていればあの悲劇は回避できたのかもしれい……そう思ってしまっている自分がどこかにいたのだ。


「続きをお話しします。私はその後もツバサを探し続けました……災厄の魔女が現れたと聞けばすぐにでもその場所へ飛んでいきツバサの情報を集めたんです」



 映像に移るココアはどんどんと成長していった。
 その姿は村娘のような姿ではなく、まるで冒険者のように装備を整えて行っている。


「ツバサは強いです……そのツバサとまともに話し合おうと思えば私も強くならないといけませんでした」


 
 ココアがそう言うと、ココアが魔物と戦っている光景が映し出される。
 ココアの成長から見るに、すでに3年くらいの月日が経っているのだろう。
 彼女の動きは洗練されていて、すでに一流の冒険者と言えるほどになっていた。
 だが、彼女の戦い方は少し変わっている、彼女が戦っている時は必ず彼女の身体が輝いているのだ。


「これが私の天啓スキル『女神の祝福』の力なのです……このスキルのお陰で私はあの場所から逃げることが出来ました……そして、その後も戦うことが出来たのもこのスキルのお陰です」


 確かに、この輝きを纏っている時の彼女の動きはクオンにも匹敵するくらい速い。
 いや、それだけではない……彼女が手をかざすと光の弾が生まれ、それが敵を貫く……。
 この力は一体?


「これは女神の力の一端を使えるようになる……と言うものの様です」
「女神の力?」


 女神と聞いた瞬間私の脳裏にはディータとレナの顔が思い浮かぶ……だが、どちらも今のココアのような戦い方はしない。
 いや、レナは少し似ているかもしれないがあのように体に光を纏わせながら戦ったりはしなかったはずだ……。そこまで考えて私は思い出す……そうか、この大地にいる女神の事か……。

 そもそも、この大地に住む人々が持っている天啓スキル自体、女神が与えたものだという。私達結界の中にいた人間はディータ達が創造したものたちだ。その為、天啓スキルなんてものは持っていない。
 だが、この大地の人間は別の女神が創造した人間なのだ……だから、彼女たちの言う女神というのはこの大地の女神の事なのだ……私が知らなくても当然である。


「私はこの力を使い、なんとかツバサの元に辿り着くことが出来ました……でも」


 飛び飛びであった映像が、再びゆっくりと動き出す。
 そこには成長したツバサとココアの姿があった。
 ココアは親友に会えたことを喜んでいる一方、ツバサの表情には何の感情も見られない。
 まるでココアに興味がないと言わんばかりである。


「ツバサ!!」
「………あら、ココア?どうしたの、また私を裏切りに来たのかしら?ふふふふふ」
「違うよ!裏切ってない!私は裏切ってないよ!!」
「あはは、そうね……貴方は元々私を嫌っていたのですもの裏切ったわけじゃないわよね……そう、ただ私が裏切られたと思っているだけね……」
「違うって!私はあなたの親友だよ!だから、絶対ツバサを裏切ったりなんてしない!」
「…………はあ?」


 今まで、感情をほとんど出さなかったツバサの顔に怒りと憎しみの表情が浮かぶ。
 その表情を見たココアはまるで胸を締め付けられるような苦しみに襲われ、言葉を詰まらせた。


「よくも言えたものね……私の両親を殺しておいて……裏切らない?親友?……ふざけるんじゃないわよ!!」
「きゃあ!?」


 ツバサから赤い魔力があふれ出す、その衝撃波でココアは吹き飛ばされ、地面を転がる。


「ふふふふ、良いことを思いついた……この近くに小さな村があるの」
「それがどうしたの?」
「私は今からその村を襲うわ」
「っ!?……なんでそんなことを!」
「あなたのせいよ……あなたが私を苛つかせるから……その八つ当たり」
「やめて!私の話を聞いて!!」
「嫌よ♪……止めたかったら貴方もその村に来るのね」


 そう言い残すと、ツバサはその場から消える。
 折角出会えたというのに、ココアはツバサとちゃんと言葉を交わすことが出来なかった。
 そのことに後悔もしているココアであったが、今はそれをしている時ではない……このままでは自分のせいで誰かがまた傷ついてしまう。そう思った瞬間、ココアは走り出していた。
 ツバサの向かった村へと……。


 
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