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2部 4章
第二幕 4章 49話 魔女の覚醒
しおりを挟む「あらあら、こんなところに何の用ですの?災厄の魔女さん?」
「ちょっと、貴方達を殺しにね♪」
「っ!!」
「ふ……うふふふ……あははははは!冗談よ、じょ~だん♪疲弊した相手を殺したって意味ないじゃない?」
魔女は笑う……愉快に、愉しそうに……だがその眼は狂ったような妖しさが煌めきだっている。
以前とは違う……以前はまだ人間らしい一面を持っていた……だけど今の魔女は……。
「このおじいちゃんは貰っていくわね♪」
「どうするつもりですの?」
「あら、簡単よ……あなた達と正面から戦うには私も戦力を集めないといけないと思ってね♪使えそうな子を集めているの」
そう言うと、魔女はグラーゴの襟首を掴む……まさか自分が魔女に捕まるとは思っていなかったのだろう、逃げれるスキを伺っていたグラーゴであったが、自分の襟首を掴まれその表情を硬くする。
「ワ、ワシか?……だが、ワシに戦闘力はないぞ?」
「アンタ自身が戦う必要はないわよ……アンタはただ、私の為に人形を作り続ければいいのよ……存分にね」
にやりと笑う魔女を見てグラーゴの背筋が凍る。
逃げることは出来ない……逃げようとしてもすぐに捕まるだろう。
それであるのならば、ここは大人しく言うことを聞くべきである……自分の研究は続けられるのだから……。
「一緒に来るわよね?」
「は、はい……もちろんですとも」
「よろしい」
にっこりとほほ笑むと、災厄の魔女は再びエリンシアを見る。
「闇の魔女に伝えなさい……次は殺すわ」
「……そう言われてはいそうですかと貴方を逃がすと思いますの?」
「ええ、だってあなたじゃ私には勝てないもの……あなた自身も解っているでしょう?」
「………」
エリンシアは奥歯を噛む。
今、自分が言ったようにカモメを殺すと言われてその相手をそのまま見逃すなんて出来るわけがない……それなのに……体が思うように動いてくれないのだ。
自分の体が魔女を相手に恐怖を感じ取っている……このまま戦っても死ぬだけだと……。
なんってっ……情けないんですの!
確かに戦いの連続で消耗もしている……以前は単独で戦った相手でもある……負けはしたけど勝てない相手ではなかったはずだ……それなのにこの短い間に災厄の魔女に何があったというのだ……私の体ははっきりと恐怖を感じているのだ……。
「うふふ、正直ねぇ……私を殺したいのに殺せないのが悔しいのかしら?」
「………」
「まあいいわ、あなたのその表情を見ただけで私は満足よ♪」
自分は一体どんな表情をしていたのだろう……でも、一つ言えるのは悔しいということである。
自分の不甲斐なさに腹立たしく……自分の弱さに苛立つ……こんな思いをまたすることになるなんて……これではヴィクトールさんの時から成長していないじゃありませんの!!
「それと、もう一人目をつけているのよね……悪いけどそっちに行かないといけないからもう行くわね♪」
あっけらかんとした口調で魔女はその場から去ろうとする……グラーゴの襟首を掴み、まるでお買い物中の少女のようにスキップをしながら魔女はその場を後にした。
残されたエリンシアは緊張が解けたのか、その場にへたり込んでしまう。
そして、小刻みに体を震わせると、拳を振り上げ、地面へと叩き込むのだった。
その威力は地面を抉る程の威力である……そしてその光景がエリンシアの自分への怒りを表しているかのようであった。
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