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1章
異常種
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「カモメ、大丈夫?」
「あ、うん、へーきへーき。」
「そっちの子も大丈夫そうだね、頬をちょっと擦りむいているだけだ」
「うん、あ、擦りむいたところは治癒魔法掛けてあげるね。」
そう言って、私は少女に治癒魔法を掛ける。大した怪我ではなかったので見る見るうちに回復していって傷跡すらなくなった。
「これでよし!」
「ありがとー、おねーちゃんたち!」
「どういたしまして」
「・・・・・あ」
「どうしたの?」
少女が少し離れた地面に目を向ける、そこには先ほどまで少女が持っていたリンゴが転がっていた・・・原型を無くし。
大臣に蹴られたときに割れてしまったのだろう。割れた部分には砂がべっとりと付いており食べられる状態ではなくなっていたのだ。
「う・・・うわあああああああん!」
少女が泣き出してしまった。
蹴られても泣かなかった少女がリンゴが食べれなくなった事で泣く。
予想外の状態に私は戸惑った。
「ど、どどどどどどうしたの!?なんで!?え?ええええ?」
見事に私はパニックである。いやー、みっともない。
私がどうしたらいいか分からずしどろもどろしていると、クオンが少女に近づき頭を撫でた。
しばらくクオンが撫でていると、だんだんと少女が落ち着き始めた。
「大切なリンゴだったの?」
「ひっく・・・ひっく・・・うん・・・・」
「そっか、あのリンゴじゃないとダメ?」
「ううん・・・でも、もうお金ない・・・お母さんに食べて欲しかったのに・・・う・・・うえええん」
なるほど、お母さんの為に買ったリンゴだったのか。
それなら、もう一度リンゴを買って・・・って、あれ?
「そっか、なら、あそこのお姉ちゃんに相談してみよっか?」
「ふぇ?」
そう言ってクオンが指をさす、その先にいるのはエリンシアだ。
そうエリンシア・・・なのだが、なぜかでっかい紙袋を持っている。
そういえば、さっきリンゴを見て少女が泣き出した時、どこかへ走り出していた。
「か、勘違いしないでほしいですわ!別にその子の為に買って来たんじゃありませんわよ!」
「うう・・・」
再び泣き出しそうになる少女。その少女を見てエリンシアが明らかに慌てる。
「で、ですが、もう食べたくなくなってしまいましたの!ですから欲しいのでしたらあげますわよ!」
「ぶふっ、なにそれ!」
余りの苦しい言い訳に私は吹き出してしまった。
「うるさいですわ!それでいりますの?いりませんの?」
「・・・いいの?」
「うん、あなたの為に買って来たんだって」
「ひとっこともそんなこと言ってませんわよ!?」
「ありがとー、おねーちゃん!」
「ふぇ!?・・・お気になさらないでくださいまし!」
顔を真っ赤にしながらそっぽを向くエリンシア。
そっぽを向きながら持っていた袋を少女に渡した。かなりデカいけど大丈夫かな?
「持っていける?」
「うん!おうちすぐそこだからだいじょーぶ!ありがとーおねーちゃんたち!」
そう言って袋を抱えて歩き出した少女を見送る私達。
あの袋の中身びっしりリンゴが入ってたよ・・・一体何個買って来たんだろう・・・さすがお金持ちというか限度を知らないというか。
ま、あの子が喜んでたからいっか♪
「それにしても、この国の大臣ってあんな人だったんだね・・・王様はなんであんな人を大臣にしてるんだろう」
「本当ですわね・・・」
あんなのが大臣じゃ、そのうち暴動とか起きそうだけど・・・。
そんなことになったら、せっかく平和なこの国の人々の暮らしがめちゃくちゃになっちゃう。
とは言っても、私にはどうしようもないんだけど・・・。
私は大きなため息を吐き、大臣が去った方を見るのだった。
「それよりもですわ!ワタクシたちは盗賊を探さねばなりませんのよ!」
「そうだ、そっちも手詰まりなんだよね」
「うん、やれることと言えばヘインズさんの行方を探すか、盗賊のアジトをしらみつぶしに探すかと
いったところだね」
「アジト探しは現実的ではありませんわね」
「ヘインズさんを探すと言ってもどう探せばいいの?」
「「「うーん」」」
あれ、八方塞がりじゃない?
うーん、都合よくまた盗賊が現れたりしないかな?さすがに無理か。
私が、能天気なことを考えていると周りの人たちが騒めきだした。
「うん?なんだろう?」
「また、あの大臣が戻ってきたとか?」
「うげ、それは嫌だよ」
「違うみたいですわよ・・・どうやら、門の方で何かあったみたいですわね」
「行ってみよう」
私達は門へと向かった。
門に近づくと門番の兵士に若い女性が青い顔をして何かを訴えている。
「何かあったみたいだね」
「あれはっ!」
何かに気づいたのかエリンシアが走り出した。
「ちょ、どうしたのエリンシア!」
「僕らも行ってみよう」
「うん!」
血相を変えて走り出したエリンシアを私たちは追いかける。
エリンシアが向かった先には女性が青い顔をして座り込んでいた。
「マーニャ、どうしたんですの!」
どうやら、エリンシアの知り合いらしい。
もしかして、本当に盗賊が現れたの?
「お、お嬢様!大変ですクレイが!」
「クレイがどうしたんですの!?」
お嬢様ということはグラシアール商会の人?
かなり慌てているみたいだ。
「クレイがモンスターに攫われてしまったんです!」
「なんですって!?」
モンスターに攫われた!?
どういう事、襲われたとか言うならわかるけど、モンスターが人間を攫うなんて聞いたことない・・・。
いや、確か人間を食べるモンスターがいるっていうのをお父さんから聞いたことがある。もしかしたら食料として連れて行った可能性があるのか。
「順に説明なさい、どうしてクレイが攫われたんですの?」
「私たちは冒険者に護衛を任せて、隣町まで行っておりました」
「ええ、知ってますわ」
「無事、隣町での商談を成立させて王都へ帰る途中の事です。いきなりオークの異常種に襲われたんです」
「オーク、しかも異常種・・・」
「はい、そのオークは護衛の冒険者が対応できないほどの素早さでクレイを抱え攫って行ってしまったのです」
「その冒険者たちはどうしたんですの?」
「彼らは冒険者ギルドに報告をしにいきました、私は兵士さんにオークを探してもらおうと協力を願っていたんです」
「ああ・・・だが、どこにいるかわからない魔物を探すとなると・・・」
「そんなっ、急がないとクレイがどんな目にあわされるか・・・」
オークは確か肉を食べる魔物だ、人間の肉を好むとは聞いたことないけど無いとは言い切れない。
「マーニャ、あなたはお父様にこの事を伝えなさいですわ」
「で、ですが、クレイは!」
「わかってますわ、私と後ろのお二人でクレイとモンスターを探しますわ」
「なっ!お嬢様!お嬢様がお強いのは知っておりますが、それはいくらなんでも危険すぎます!」
「そうだ、オークと言えばDランク、しかもその異常種となればCランクの強さをもっているかもしれないんだ。
我々兵士でも単独ではまともに相手はできないのだぞ、それを子供がどうにかできるわけがないだろう」
異常種というのは時たま現れる普通の魔物とは違う見た目や強さを持った魔物の事だ。
上位種、例えばオークならばその上位種はオークアーチャーやオークウォーリアーになる。
だが、異常種はそのどちらでもない形をした魔物で、他のその種族とは見た目も強さも別物のと言える。
その為、ランクも本来のランクよりも一つか二つ上のランクに指定されることがほとんどなのだ。
「Cランクであればなんとかなりますわ、私と後ろの二人が協力すれば・・・ですわよね?」
「え、うん、たぶん何とかなると思うけど」
私の実力は個人でもDランクの魔物であれば負けはしない。
クオンもDランクのダイアーウルフを複数相手にして倒していたのだから問題ないだろう。
エリンシアの実力は分からないけど、三人で相手するならCランクの魔物でも行けるはずだ。
しかし、依頼主であるエリンシアをそんな危険にさらしていいものだろうか?
「でも、エリンシア・・・」
「何と言われようともワタクシは行きますわよ!もし、反対するのでしたら一人でもいきますわ!」
「う・・・」
これはこれ以上何を言っても無駄っぽい。
一人で行かれるよりは私たちと一緒の方がいいよね。
「わかったよ・・・」
「では、決まりですわね、マーニャ襲われた場所と魔物が走り去った方向を教えなさい」
「で、ですが」
「あなたの恋人の危機なんですのよ!四の五の言わずに教えなさいですわ!」
「・・・っ!・・・はい」
そっか、クレイさんっていう人はマーニャさんの恋人なんだ。
それは心配だよね。
エリンシアはマーニャさんから詳しい場所を聞きだした。
その場所へと私たちは向かう。
お父さんと一緒じゃないのに街の外に出るのは初めてだ、ちょっと怖いけど、だからと言ってここで見捨てたら冒険者として失格だよね。
「それで、どうやって探すつもり?」
クオンが走りながらエリンシアに問う。
「襲われた場所からモンスターの逃げた方向へ手分けして探すしかありませんわね」
「でも、バラバラに行くのは危険なんじゃない?」
「ですが、のんびりはしていられませんわ」
「そうだね、なら、魔物を見つけたら合図を送って、集合できるまで出来る限り無理はしないようにしよう」
「でも、魔物は待ってくれないよ?」
「ですわね」
「うん、だからできる限り守りに徹して他の人たちが来るのを待つというのはどうかな?」
「それしかありませんわね・・・そう上手くいくと良いんですけど」
敵の強さがどれくらいかわからない状態で持久戦っていうのはちょっと難しいよね。
クレイさんがどんな状態かわからないし。
だから、別の方法を私は提案してみた。
「えっと、私が空から探すから二人には待機してもらって見つけたら二人に知らせるってのでどうかな?」
「え!?」
「あなた、空を飛べるんですの!?」
「うん、風の魔法で飛べるよ」
「すごいね、確か浮遊の魔法は制御が難しいからベテランの魔導士でもないと使えないって聞いたけど」
「へへーん、すごいでしょ」
「では、カモメさんに偵察を任せて・・・いえ、カモメさん、私たちも一緒には運べたりはしませんの?」
「うーん、魔法は私個人にしか掛けられないから運ぶとなると私の腕力で持っていくことになるんだよね・・・一人ならなんとかなるかもだけど二人はきついかな・・・」
「では、ワタクシを連れていってくださいまし」
「クオンいいかな?」
「うん、その方がカモメ一人で戦うことにならないだけいいと思う、モンスターを見つけたらすぐに知らせて、僕も駆けつけるから」
「わかった!」
相談をしながら走っていたら、教えてもらったモンスターに襲われた場所に到着した。
襲われた場所と言ってもそれらしい形跡はない。
そういえば、冒険者の対応できない速さでクレイさんをさらったって言っていたけど、戦いにはならなかったってことだよね。
なら、その魔物は人を襲う事が目的じゃなかったってこと?クレイさんをさらった理由ってなんなんだろう・・・。
まさか、盗賊が妖魔以外にも操れたり・・・いや、それでもクレイさんをさらう理由にはならないかな?
「あ、うん、へーきへーき。」
「そっちの子も大丈夫そうだね、頬をちょっと擦りむいているだけだ」
「うん、あ、擦りむいたところは治癒魔法掛けてあげるね。」
そう言って、私は少女に治癒魔法を掛ける。大した怪我ではなかったので見る見るうちに回復していって傷跡すらなくなった。
「これでよし!」
「ありがとー、おねーちゃんたち!」
「どういたしまして」
「・・・・・あ」
「どうしたの?」
少女が少し離れた地面に目を向ける、そこには先ほどまで少女が持っていたリンゴが転がっていた・・・原型を無くし。
大臣に蹴られたときに割れてしまったのだろう。割れた部分には砂がべっとりと付いており食べられる状態ではなくなっていたのだ。
「う・・・うわあああああああん!」
少女が泣き出してしまった。
蹴られても泣かなかった少女がリンゴが食べれなくなった事で泣く。
予想外の状態に私は戸惑った。
「ど、どどどどどどうしたの!?なんで!?え?ええええ?」
見事に私はパニックである。いやー、みっともない。
私がどうしたらいいか分からずしどろもどろしていると、クオンが少女に近づき頭を撫でた。
しばらくクオンが撫でていると、だんだんと少女が落ち着き始めた。
「大切なリンゴだったの?」
「ひっく・・・ひっく・・・うん・・・・」
「そっか、あのリンゴじゃないとダメ?」
「ううん・・・でも、もうお金ない・・・お母さんに食べて欲しかったのに・・・う・・・うえええん」
なるほど、お母さんの為に買ったリンゴだったのか。
それなら、もう一度リンゴを買って・・・って、あれ?
「そっか、なら、あそこのお姉ちゃんに相談してみよっか?」
「ふぇ?」
そう言ってクオンが指をさす、その先にいるのはエリンシアだ。
そうエリンシア・・・なのだが、なぜかでっかい紙袋を持っている。
そういえば、さっきリンゴを見て少女が泣き出した時、どこかへ走り出していた。
「か、勘違いしないでほしいですわ!別にその子の為に買って来たんじゃありませんわよ!」
「うう・・・」
再び泣き出しそうになる少女。その少女を見てエリンシアが明らかに慌てる。
「で、ですが、もう食べたくなくなってしまいましたの!ですから欲しいのでしたらあげますわよ!」
「ぶふっ、なにそれ!」
余りの苦しい言い訳に私は吹き出してしまった。
「うるさいですわ!それでいりますの?いりませんの?」
「・・・いいの?」
「うん、あなたの為に買って来たんだって」
「ひとっこともそんなこと言ってませんわよ!?」
「ありがとー、おねーちゃん!」
「ふぇ!?・・・お気になさらないでくださいまし!」
顔を真っ赤にしながらそっぽを向くエリンシア。
そっぽを向きながら持っていた袋を少女に渡した。かなりデカいけど大丈夫かな?
「持っていける?」
「うん!おうちすぐそこだからだいじょーぶ!ありがとーおねーちゃんたち!」
そう言って袋を抱えて歩き出した少女を見送る私達。
あの袋の中身びっしりリンゴが入ってたよ・・・一体何個買って来たんだろう・・・さすがお金持ちというか限度を知らないというか。
ま、あの子が喜んでたからいっか♪
「それにしても、この国の大臣ってあんな人だったんだね・・・王様はなんであんな人を大臣にしてるんだろう」
「本当ですわね・・・」
あんなのが大臣じゃ、そのうち暴動とか起きそうだけど・・・。
そんなことになったら、せっかく平和なこの国の人々の暮らしがめちゃくちゃになっちゃう。
とは言っても、私にはどうしようもないんだけど・・・。
私は大きなため息を吐き、大臣が去った方を見るのだった。
「それよりもですわ!ワタクシたちは盗賊を探さねばなりませんのよ!」
「そうだ、そっちも手詰まりなんだよね」
「うん、やれることと言えばヘインズさんの行方を探すか、盗賊のアジトをしらみつぶしに探すかと
いったところだね」
「アジト探しは現実的ではありませんわね」
「ヘインズさんを探すと言ってもどう探せばいいの?」
「「「うーん」」」
あれ、八方塞がりじゃない?
うーん、都合よくまた盗賊が現れたりしないかな?さすがに無理か。
私が、能天気なことを考えていると周りの人たちが騒めきだした。
「うん?なんだろう?」
「また、あの大臣が戻ってきたとか?」
「うげ、それは嫌だよ」
「違うみたいですわよ・・・どうやら、門の方で何かあったみたいですわね」
「行ってみよう」
私達は門へと向かった。
門に近づくと門番の兵士に若い女性が青い顔をして何かを訴えている。
「何かあったみたいだね」
「あれはっ!」
何かに気づいたのかエリンシアが走り出した。
「ちょ、どうしたのエリンシア!」
「僕らも行ってみよう」
「うん!」
血相を変えて走り出したエリンシアを私たちは追いかける。
エリンシアが向かった先には女性が青い顔をして座り込んでいた。
「マーニャ、どうしたんですの!」
どうやら、エリンシアの知り合いらしい。
もしかして、本当に盗賊が現れたの?
「お、お嬢様!大変ですクレイが!」
「クレイがどうしたんですの!?」
お嬢様ということはグラシアール商会の人?
かなり慌てているみたいだ。
「クレイがモンスターに攫われてしまったんです!」
「なんですって!?」
モンスターに攫われた!?
どういう事、襲われたとか言うならわかるけど、モンスターが人間を攫うなんて聞いたことない・・・。
いや、確か人間を食べるモンスターがいるっていうのをお父さんから聞いたことがある。もしかしたら食料として連れて行った可能性があるのか。
「順に説明なさい、どうしてクレイが攫われたんですの?」
「私たちは冒険者に護衛を任せて、隣町まで行っておりました」
「ええ、知ってますわ」
「無事、隣町での商談を成立させて王都へ帰る途中の事です。いきなりオークの異常種に襲われたんです」
「オーク、しかも異常種・・・」
「はい、そのオークは護衛の冒険者が対応できないほどの素早さでクレイを抱え攫って行ってしまったのです」
「その冒険者たちはどうしたんですの?」
「彼らは冒険者ギルドに報告をしにいきました、私は兵士さんにオークを探してもらおうと協力を願っていたんです」
「ああ・・・だが、どこにいるかわからない魔物を探すとなると・・・」
「そんなっ、急がないとクレイがどんな目にあわされるか・・・」
オークは確か肉を食べる魔物だ、人間の肉を好むとは聞いたことないけど無いとは言い切れない。
「マーニャ、あなたはお父様にこの事を伝えなさいですわ」
「で、ですが、クレイは!」
「わかってますわ、私と後ろのお二人でクレイとモンスターを探しますわ」
「なっ!お嬢様!お嬢様がお強いのは知っておりますが、それはいくらなんでも危険すぎます!」
「そうだ、オークと言えばDランク、しかもその異常種となればCランクの強さをもっているかもしれないんだ。
我々兵士でも単独ではまともに相手はできないのだぞ、それを子供がどうにかできるわけがないだろう」
異常種というのは時たま現れる普通の魔物とは違う見た目や強さを持った魔物の事だ。
上位種、例えばオークならばその上位種はオークアーチャーやオークウォーリアーになる。
だが、異常種はそのどちらでもない形をした魔物で、他のその種族とは見た目も強さも別物のと言える。
その為、ランクも本来のランクよりも一つか二つ上のランクに指定されることがほとんどなのだ。
「Cランクであればなんとかなりますわ、私と後ろの二人が協力すれば・・・ですわよね?」
「え、うん、たぶん何とかなると思うけど」
私の実力は個人でもDランクの魔物であれば負けはしない。
クオンもDランクのダイアーウルフを複数相手にして倒していたのだから問題ないだろう。
エリンシアの実力は分からないけど、三人で相手するならCランクの魔物でも行けるはずだ。
しかし、依頼主であるエリンシアをそんな危険にさらしていいものだろうか?
「でも、エリンシア・・・」
「何と言われようともワタクシは行きますわよ!もし、反対するのでしたら一人でもいきますわ!」
「う・・・」
これはこれ以上何を言っても無駄っぽい。
一人で行かれるよりは私たちと一緒の方がいいよね。
「わかったよ・・・」
「では、決まりですわね、マーニャ襲われた場所と魔物が走り去った方向を教えなさい」
「で、ですが」
「あなたの恋人の危機なんですのよ!四の五の言わずに教えなさいですわ!」
「・・・っ!・・・はい」
そっか、クレイさんっていう人はマーニャさんの恋人なんだ。
それは心配だよね。
エリンシアはマーニャさんから詳しい場所を聞きだした。
その場所へと私たちは向かう。
お父さんと一緒じゃないのに街の外に出るのは初めてだ、ちょっと怖いけど、だからと言ってここで見捨てたら冒険者として失格だよね。
「それで、どうやって探すつもり?」
クオンが走りながらエリンシアに問う。
「襲われた場所からモンスターの逃げた方向へ手分けして探すしかありませんわね」
「でも、バラバラに行くのは危険なんじゃない?」
「ですが、のんびりはしていられませんわ」
「そうだね、なら、魔物を見つけたら合図を送って、集合できるまで出来る限り無理はしないようにしよう」
「でも、魔物は待ってくれないよ?」
「ですわね」
「うん、だからできる限り守りに徹して他の人たちが来るのを待つというのはどうかな?」
「それしかありませんわね・・・そう上手くいくと良いんですけど」
敵の強さがどれくらいかわからない状態で持久戦っていうのはちょっと難しいよね。
クレイさんがどんな状態かわからないし。
だから、別の方法を私は提案してみた。
「えっと、私が空から探すから二人には待機してもらって見つけたら二人に知らせるってのでどうかな?」
「え!?」
「あなた、空を飛べるんですの!?」
「うん、風の魔法で飛べるよ」
「すごいね、確か浮遊の魔法は制御が難しいからベテランの魔導士でもないと使えないって聞いたけど」
「へへーん、すごいでしょ」
「では、カモメさんに偵察を任せて・・・いえ、カモメさん、私たちも一緒には運べたりはしませんの?」
「うーん、魔法は私個人にしか掛けられないから運ぶとなると私の腕力で持っていくことになるんだよね・・・一人ならなんとかなるかもだけど二人はきついかな・・・」
「では、ワタクシを連れていってくださいまし」
「クオンいいかな?」
「うん、その方がカモメ一人で戦うことにならないだけいいと思う、モンスターを見つけたらすぐに知らせて、僕も駆けつけるから」
「わかった!」
相談をしながら走っていたら、教えてもらったモンスターに襲われた場所に到着した。
襲われた場所と言ってもそれらしい形跡はない。
そういえば、冒険者の対応できない速さでクレイさんをさらったって言っていたけど、戦いにはならなかったってことだよね。
なら、その魔物は人を襲う事が目的じゃなかったってこと?クレイさんをさらった理由ってなんなんだろう・・・。
まさか、盗賊が妖魔以外にも操れたり・・・いや、それでもクレイさんをさらう理由にはならないかな?
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