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3章
戦争
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「魔女殿」
「はい?」
「魔女殿から見てこの者たちはどう思う?危険な存在か?」
「うーん、みんな癖は強いけど悪い子たちじゃないよ・・・ただ」
「唯?」
「ちょっと常識を知らないところがあるかもね」
「例えば?」
ラガナは強い人を見ればすぐに勝負を挑もうとするだろうし、レディはイケメンを追いかけまわすし、ミャアって子はディータを咥えてたしちょっと自由な性格なのかも・・・コロは見ためがね・・・。
悪い子達じゃないんだけど全く問題がないわけじゃない・・・まあ、みんな言えばちゃんとわかってくれそうだけど。
私がそう王様に説明すると王様は少し考えてから口を開いた。
「ふむ・・・」
「王よ・・・さすがにこの者たちを街に入れるのは無理ではありませんか?」
街に入れる?王様はレディたちをツァインに迎え入れるつもりだったの?
さすがに人を襲ったりしないとはいえ(別の意味で襲い掛かるのいるけど)ラガナ以外は見た目が完全にモンスターなのだ。
特にコロは人目に付いた瞬間叩き潰されそうだ。
コオロギの魔物の異常種らしいけど細かい形なんてほとんどの人知らないだろうしね・・・。
異常種だからなのかちょっと平べったいのが大問題なのだ。
「そうだな・・・ラガナ殿なら珍しい亜人として振舞えようが他の者たちは厳しいな」
「ラガナは魔法で姿を変えてるんだっけ?」
「うむ、竜族のみに使える特殊な魔法なのじゃ」
「竜族のみか・・・」
その魔法を教えられたらレディたちも姿を変えられるかと思ったんだけど。
でも、どうして王様はレディたちを街に入れようとするんだろ?
私的には嬉しいけど、街の人たちは大丈夫なのかな?街を守る王様としては入れない方がいいんじゃ?
「姿を変える・・・あらあら、それなら」
「アネル殿、何かあるのですか?」
「ええ、確かベインスが姿を変えることの出来る指輪を作ったって言っていたわね」
「本当か!ならば是非この者たちにその指輪を・・・」
「ちょ、待って待って!王様」
「どうしたのだ魔女殿?」
どうしたもこうしたもないよ・・・さっきから話がポンポン進んでいるけど大事なことを忘れているよ・・・。
「さっきからレディたちに何の確認も取らずに話を進めているけどレディたちはいいの?」
「む・・・そうだったな。すまぬ、少し焦ってしまった」
焦ったってなんで王様が焦るの?
「いや、構わぬのじゃ。その指輪があれば他の者たちも人間の街に入ることが出来るのだろう?」
「ええ、ベインスは指輪をはめた者の望む姿に変えられると言っていたから大丈夫だと思うわ」
「皆も構わぬか?」
「街に入ったらショッピングもできるしぃん。カモメちゃんとも一緒にいられるのなら大歓迎よぉん」
「おお、レディとショッピング!」
ちょっと楽しそうだね。
「ミャアも人間の街に入ってみたいのニャ!美味しいものがきっといっぱいあるのニャ!」
「ぼ、僕も入ってもいいんでしょうか・・・?」
「コロの問題は見た目だけだからね、問題ないと思うよ」
「わぁあ、是非入ってみたいです!」
コロは周りに小さな花でも飛んでいるのではないかと思うくらい明るい笑顔で喜んだ。
「ところで、そのベインスとかいうのはどこにいるのかしら?」
「北のドラグ山脈にある洞窟に住んでいるわ」
「ドラグ山脈ですか・・・それは・・・」
ドラグ山脈と言う言葉にソフィーナさんと王様は顔を険しくした。
「何か問題あるんですの?」
「ドラグ山脈は竜たちの住処なのです」
「へー」
竜たちって集団で行動しているのかな?
好んで人前に出てこない魔物の為、余りその行動は知られていない。
だが、少なくともこのツァインにいる竜達は集団で行動しているようだ。
「ほう、ウチの近くなのじゃ」
「・・・あ」
そう言えば、ラガナも白竜の異常種だったっけ・・・忘れてた。
でもラガナは一人で行動するし、仲間も竜以外の魔物だし・・・まあ、それこそ異常種だからなのか、それとも竜がそもそも気まぐれな魔物なのか。
「じゃ、その指輪を作ってもらいに行くってことでいいのかな?」
「うむ、問題ないのじゃ!」
「でも、いいのかしら?街に魔物を入れることになるわよ?」
ディータが王様に問う。
そう、たとえ見た目が変わってもレディたちが魔物であることに変わりはない。
もしバレた時、街の人たちがどういう反応をするのか・・・。
「うむ、魔女殿の友もいると聞くしな無碍には出来ん。それに、街の外で自由にされても冒険者たちを怯えさせる結果になりかねんしな」
「まあ、それもそうね」
(それに今は少しでも戦力が欲しいのだ・・・)
「何か言ったかしら?」
「いや、何も言っておらん」
何か小声で言っていたような気がしたけど気のせいだったのかな?
ディータも気のせいだったのかと思ったのかすぐに納得してこちらに飛んできた。
「じゃあ、そのドラグ山脈に出発しましょう!」
「ですわね!」
「おー!」
ディータの掛け声に私たちが答える。
こうしてみると結構な人数である。大所帯になりそうだ。
「ま、待ってくれ!」
「どうしたの王様?」
「すまないが、クオン殿とエリンシア殿はツァインに残ってはもらえぬか?」
「え、どうして?」
「以前の魔人の時のこともあるかもしれんしな」
「あら、それを護るのが兵士の皆さんの仕事ではありませんの?もちろん、その場にいれば手助けいたしますけどワタクシたちは冒険者ですのよ?」
「わかっている・・・だが・・・」
んー、王様の表情が暗い。
なにかあるのかな?
「何か隠しているのかしら?まるで何か不安があると顔に書いてあるわよ」
「ぐっ・・・」
「そもそも、魔物であるレディたちを街に入れようとするのもおかしな話よね、郊外に住まわせて監視でもつけておけばいいじゃない、わざわざ街の中に入れるようにしようとするなんて、最初はカモメへの日ごろの感謝からとかそんなものかと思ったけど違うみたいね?」
ディータが再び王様に問いかける。
確かにディータの言う通りである。
「王よ・・・素直に話された方がいいと思います・・・魔女殿達の為を思っての事でしょうが、これ以上隠すのは疑心を生みかねないかと」
ソフィーナさんがまともなことを言う・・・。
王様はその言葉を聞き、一つ溜息を吐いた後こちらをまっすぐ見て話し出した。
「実はな・・・グランルーンが滅びたのだ」
「なんですって!?」
グランルーンが滅びた・・・?
え、どういうこと・・・なんで!?
「どういうことですの!?」
「ヴァルネッサ帝国がグランルーンに戦争を仕掛けたのだ」
「戦争・・・」
そんな・・・エリンシアの家族は?ラインハルトさんは?
「その戦争はいつ起きたんです?」
「知らせではヴァルネッサが宣戦布告したのが五日前だそうだ」
「な・・・たったの五日で勝負がついたというんですの!?」
「そうらしい・・・普通ではありえん事だ・・・私も、しばらくは膠着状態になるだろうと思っていたのだが・・・」
結果は早期終結・・・なにがあったの?
「何があったんですの?」
「まだ、わからなぬ・・・その後、情報を集めさせているが分かっているのはヴァルネッサが勝利をしたことだけだ」
「街の人は大丈夫ですの?」
「わからぬ・・・」
「エリンシア・・・」
エリンシアの表情が暗い、それはそうだ、エリンシアの実家はグランルーンにある。
そこにはまだエリンシアの家族が暮らしているのだ・・・無事だといいけど。
「つまり、そのヴァルネッサがこのツァインにも攻めてくる可能性があるから戦力を少しでも確保したい、その為にレディたちや私たちにも恩を売っておきたいと言うわけね」
「・・・その通りだ」
「利用する気マンマンね」
ディータの言う通りである。
「ま、待ってくれ・・・王は民を護る為に必死なのだ・・・我が国の兵力ではヴァルネッサに攻められれば一溜りもない・・・だから」
「よせ、ソフィーナ・・・俺が間違っていた」
「王、しかし・・・っ」
「最初からこうするべきであったな・・・・・・・・・・頼むっ、我が国に力を貸してくれ!」
王様は頭を下げた。
「え、ちょっ!?」
「あらあら、一国の王様が冒険者に頭を下げちゃうなんて・・・えらいわぁ、フィルディナンドちゃん」
いや、偉いわって違うでしょ!
下げちゃ駄目でしょ王様!?
「わ、わかったから頭を上げてください王様!!」
「魔女殿・・・」
「グランルーンが滅びたなんて聞いたら私だって放ってはおけないもん・・・あそこにはエリンシアの家族だってラインハルトさんだっているし、お父さんたちのお墓だってあるんだから」
「カモメさん・・・」
でも、どうしよう、そう言う事ならグランルーンの様子を見に行く方がいいじゃないかな?
私なら空を飛びながらいけるし・・・。
「なら、私はグランルーンの様子を見に行った方がいいかな?」
「いや、それは危険すぎる」
私の提案を即座にクオンが却下する。
「でも、情報がないと不安じゃない?」
「それはそうだけど・・・」
「いや、クオン殿の言う通りだ、ただでさえ魔女殿は指名手配をされている。グランルーンが滅びたとはいえすでに闇の魔女の名はこの世界に広まっている、もし小国の者に見つかればヴァルネッサへの手土産代わりに狙われかねん」
「オーマイーガー」
グランルーンが滅びたのなら指名手配がなくなるかと思ったのだが、私の立場は余計に悪くなったようだ。
・・・・・・しくしく。
「カモメさん、今は無理をせず力を溜めますわよ」
「でも・・・」
「ありがとうございますですわ、カモメさん私の家族の為に無理をしようとしてくださっているのでしょう?」
「う、うん・・・だって・・・」
「ええ、グランルーンが滅びたという以上、無事という保証はありませんわ・・・ですが、だからと言ってカモメさんを危険な目に遭わせたいとは思いませんのよ?」
「わ、私なら大丈夫だよ!ほら、悪運強いし♪」
「それで何かあったらワタクシは後悔してもしきれませんわ、ですので、今は事態が動くのを待ちますわよ」
「でも、それでこの国にヴァルネッサが攻めてきたら・・・」
「あら、それなら丁度いいじゃありませんの、捕まえてお拷問でもしてあげますわ・・・そして、グランルーンの情報を喋らせるんですのよ」
きっとエリンシアは今すぐにでもグランルーンに戻って家族の安否を確認したいはずだ。
だけど、それをすべて押さえて私に笑顔で話しかけてくれる・・・すごいな・・・きっと私だったら慌てて飛び出して行っちゃってるよ・・・。
「解った」
私は短くそう言った、それ以外の言葉を言うと余計なことまで言っちゃいそうだったから。
「それじゃ、まずはドラグ山脈に行ってくるよ・・・クオンとエリンシアには留守番をお願いするね」
「ふむ、そう言う理由なら余も残るのじゃ」
「え、でもドラグ山脈は実家なんでしょ?行かなくていいの?」
「よいのじゃ、余はあそこの者たちと合わなかったのでな家出してきたのじゃ、戻っても仕方ないのじゃ」
家出してきたんだ・・・。
でも、ラガナも街にいてくれるのなら心強い・・・(別の不安はあるけど)
「ラガナ、やたらめったらに勝負を仕掛けちゃ駄目だよ?」
「うっ・・・わ、わかっておるのじゃ!」
解ってなかったようだ・・・まったく。
「それじゃ、三人とも留守番をよろしくね」
「うん、カモメも気を付けて」
「無理はしないでくださいまし」
「任せるのじゃ!」
三者三様の言葉を聞き、私は笑顔で出発する。
目指すはドラグ山脈だ。
「はい?」
「魔女殿から見てこの者たちはどう思う?危険な存在か?」
「うーん、みんな癖は強いけど悪い子たちじゃないよ・・・ただ」
「唯?」
「ちょっと常識を知らないところがあるかもね」
「例えば?」
ラガナは強い人を見ればすぐに勝負を挑もうとするだろうし、レディはイケメンを追いかけまわすし、ミャアって子はディータを咥えてたしちょっと自由な性格なのかも・・・コロは見ためがね・・・。
悪い子達じゃないんだけど全く問題がないわけじゃない・・・まあ、みんな言えばちゃんとわかってくれそうだけど。
私がそう王様に説明すると王様は少し考えてから口を開いた。
「ふむ・・・」
「王よ・・・さすがにこの者たちを街に入れるのは無理ではありませんか?」
街に入れる?王様はレディたちをツァインに迎え入れるつもりだったの?
さすがに人を襲ったりしないとはいえ(別の意味で襲い掛かるのいるけど)ラガナ以外は見た目が完全にモンスターなのだ。
特にコロは人目に付いた瞬間叩き潰されそうだ。
コオロギの魔物の異常種らしいけど細かい形なんてほとんどの人知らないだろうしね・・・。
異常種だからなのかちょっと平べったいのが大問題なのだ。
「そうだな・・・ラガナ殿なら珍しい亜人として振舞えようが他の者たちは厳しいな」
「ラガナは魔法で姿を変えてるんだっけ?」
「うむ、竜族のみに使える特殊な魔法なのじゃ」
「竜族のみか・・・」
その魔法を教えられたらレディたちも姿を変えられるかと思ったんだけど。
でも、どうして王様はレディたちを街に入れようとするんだろ?
私的には嬉しいけど、街の人たちは大丈夫なのかな?街を守る王様としては入れない方がいいんじゃ?
「姿を変える・・・あらあら、それなら」
「アネル殿、何かあるのですか?」
「ええ、確かベインスが姿を変えることの出来る指輪を作ったって言っていたわね」
「本当か!ならば是非この者たちにその指輪を・・・」
「ちょ、待って待って!王様」
「どうしたのだ魔女殿?」
どうしたもこうしたもないよ・・・さっきから話がポンポン進んでいるけど大事なことを忘れているよ・・・。
「さっきからレディたちに何の確認も取らずに話を進めているけどレディたちはいいの?」
「む・・・そうだったな。すまぬ、少し焦ってしまった」
焦ったってなんで王様が焦るの?
「いや、構わぬのじゃ。その指輪があれば他の者たちも人間の街に入ることが出来るのだろう?」
「ええ、ベインスは指輪をはめた者の望む姿に変えられると言っていたから大丈夫だと思うわ」
「皆も構わぬか?」
「街に入ったらショッピングもできるしぃん。カモメちゃんとも一緒にいられるのなら大歓迎よぉん」
「おお、レディとショッピング!」
ちょっと楽しそうだね。
「ミャアも人間の街に入ってみたいのニャ!美味しいものがきっといっぱいあるのニャ!」
「ぼ、僕も入ってもいいんでしょうか・・・?」
「コロの問題は見た目だけだからね、問題ないと思うよ」
「わぁあ、是非入ってみたいです!」
コロは周りに小さな花でも飛んでいるのではないかと思うくらい明るい笑顔で喜んだ。
「ところで、そのベインスとかいうのはどこにいるのかしら?」
「北のドラグ山脈にある洞窟に住んでいるわ」
「ドラグ山脈ですか・・・それは・・・」
ドラグ山脈と言う言葉にソフィーナさんと王様は顔を険しくした。
「何か問題あるんですの?」
「ドラグ山脈は竜たちの住処なのです」
「へー」
竜たちって集団で行動しているのかな?
好んで人前に出てこない魔物の為、余りその行動は知られていない。
だが、少なくともこのツァインにいる竜達は集団で行動しているようだ。
「ほう、ウチの近くなのじゃ」
「・・・あ」
そう言えば、ラガナも白竜の異常種だったっけ・・・忘れてた。
でもラガナは一人で行動するし、仲間も竜以外の魔物だし・・・まあ、それこそ異常種だからなのか、それとも竜がそもそも気まぐれな魔物なのか。
「じゃ、その指輪を作ってもらいに行くってことでいいのかな?」
「うむ、問題ないのじゃ!」
「でも、いいのかしら?街に魔物を入れることになるわよ?」
ディータが王様に問う。
そう、たとえ見た目が変わってもレディたちが魔物であることに変わりはない。
もしバレた時、街の人たちがどういう反応をするのか・・・。
「うむ、魔女殿の友もいると聞くしな無碍には出来ん。それに、街の外で自由にされても冒険者たちを怯えさせる結果になりかねんしな」
「まあ、それもそうね」
(それに今は少しでも戦力が欲しいのだ・・・)
「何か言ったかしら?」
「いや、何も言っておらん」
何か小声で言っていたような気がしたけど気のせいだったのかな?
ディータも気のせいだったのかと思ったのかすぐに納得してこちらに飛んできた。
「じゃあ、そのドラグ山脈に出発しましょう!」
「ですわね!」
「おー!」
ディータの掛け声に私たちが答える。
こうしてみると結構な人数である。大所帯になりそうだ。
「ま、待ってくれ!」
「どうしたの王様?」
「すまないが、クオン殿とエリンシア殿はツァインに残ってはもらえぬか?」
「え、どうして?」
「以前の魔人の時のこともあるかもしれんしな」
「あら、それを護るのが兵士の皆さんの仕事ではありませんの?もちろん、その場にいれば手助けいたしますけどワタクシたちは冒険者ですのよ?」
「わかっている・・・だが・・・」
んー、王様の表情が暗い。
なにかあるのかな?
「何か隠しているのかしら?まるで何か不安があると顔に書いてあるわよ」
「ぐっ・・・」
「そもそも、魔物であるレディたちを街に入れようとするのもおかしな話よね、郊外に住まわせて監視でもつけておけばいいじゃない、わざわざ街の中に入れるようにしようとするなんて、最初はカモメへの日ごろの感謝からとかそんなものかと思ったけど違うみたいね?」
ディータが再び王様に問いかける。
確かにディータの言う通りである。
「王よ・・・素直に話された方がいいと思います・・・魔女殿達の為を思っての事でしょうが、これ以上隠すのは疑心を生みかねないかと」
ソフィーナさんがまともなことを言う・・・。
王様はその言葉を聞き、一つ溜息を吐いた後こちらをまっすぐ見て話し出した。
「実はな・・・グランルーンが滅びたのだ」
「なんですって!?」
グランルーンが滅びた・・・?
え、どういうこと・・・なんで!?
「どういうことですの!?」
「ヴァルネッサ帝国がグランルーンに戦争を仕掛けたのだ」
「戦争・・・」
そんな・・・エリンシアの家族は?ラインハルトさんは?
「その戦争はいつ起きたんです?」
「知らせではヴァルネッサが宣戦布告したのが五日前だそうだ」
「な・・・たったの五日で勝負がついたというんですの!?」
「そうらしい・・・普通ではありえん事だ・・・私も、しばらくは膠着状態になるだろうと思っていたのだが・・・」
結果は早期終結・・・なにがあったの?
「何があったんですの?」
「まだ、わからなぬ・・・その後、情報を集めさせているが分かっているのはヴァルネッサが勝利をしたことだけだ」
「街の人は大丈夫ですの?」
「わからぬ・・・」
「エリンシア・・・」
エリンシアの表情が暗い、それはそうだ、エリンシアの実家はグランルーンにある。
そこにはまだエリンシアの家族が暮らしているのだ・・・無事だといいけど。
「つまり、そのヴァルネッサがこのツァインにも攻めてくる可能性があるから戦力を少しでも確保したい、その為にレディたちや私たちにも恩を売っておきたいと言うわけね」
「・・・その通りだ」
「利用する気マンマンね」
ディータの言う通りである。
「ま、待ってくれ・・・王は民を護る為に必死なのだ・・・我が国の兵力ではヴァルネッサに攻められれば一溜りもない・・・だから」
「よせ、ソフィーナ・・・俺が間違っていた」
「王、しかし・・・っ」
「最初からこうするべきであったな・・・・・・・・・・頼むっ、我が国に力を貸してくれ!」
王様は頭を下げた。
「え、ちょっ!?」
「あらあら、一国の王様が冒険者に頭を下げちゃうなんて・・・えらいわぁ、フィルディナンドちゃん」
いや、偉いわって違うでしょ!
下げちゃ駄目でしょ王様!?
「わ、わかったから頭を上げてください王様!!」
「魔女殿・・・」
「グランルーンが滅びたなんて聞いたら私だって放ってはおけないもん・・・あそこにはエリンシアの家族だってラインハルトさんだっているし、お父さんたちのお墓だってあるんだから」
「カモメさん・・・」
でも、どうしよう、そう言う事ならグランルーンの様子を見に行く方がいいじゃないかな?
私なら空を飛びながらいけるし・・・。
「なら、私はグランルーンの様子を見に行った方がいいかな?」
「いや、それは危険すぎる」
私の提案を即座にクオンが却下する。
「でも、情報がないと不安じゃない?」
「それはそうだけど・・・」
「いや、クオン殿の言う通りだ、ただでさえ魔女殿は指名手配をされている。グランルーンが滅びたとはいえすでに闇の魔女の名はこの世界に広まっている、もし小国の者に見つかればヴァルネッサへの手土産代わりに狙われかねん」
「オーマイーガー」
グランルーンが滅びたのなら指名手配がなくなるかと思ったのだが、私の立場は余計に悪くなったようだ。
・・・・・・しくしく。
「カモメさん、今は無理をせず力を溜めますわよ」
「でも・・・」
「ありがとうございますですわ、カモメさん私の家族の為に無理をしようとしてくださっているのでしょう?」
「う、うん・・・だって・・・」
「ええ、グランルーンが滅びたという以上、無事という保証はありませんわ・・・ですが、だからと言ってカモメさんを危険な目に遭わせたいとは思いませんのよ?」
「わ、私なら大丈夫だよ!ほら、悪運強いし♪」
「それで何かあったらワタクシは後悔してもしきれませんわ、ですので、今は事態が動くのを待ちますわよ」
「でも、それでこの国にヴァルネッサが攻めてきたら・・・」
「あら、それなら丁度いいじゃありませんの、捕まえてお拷問でもしてあげますわ・・・そして、グランルーンの情報を喋らせるんですのよ」
きっとエリンシアは今すぐにでもグランルーンに戻って家族の安否を確認したいはずだ。
だけど、それをすべて押さえて私に笑顔で話しかけてくれる・・・すごいな・・・きっと私だったら慌てて飛び出して行っちゃってるよ・・・。
「解った」
私は短くそう言った、それ以外の言葉を言うと余計なことまで言っちゃいそうだったから。
「それじゃ、まずはドラグ山脈に行ってくるよ・・・クオンとエリンシアには留守番をお願いするね」
「ふむ、そう言う理由なら余も残るのじゃ」
「え、でもドラグ山脈は実家なんでしょ?行かなくていいの?」
「よいのじゃ、余はあそこの者たちと合わなかったのでな家出してきたのじゃ、戻っても仕方ないのじゃ」
家出してきたんだ・・・。
でも、ラガナも街にいてくれるのなら心強い・・・(別の不安はあるけど)
「ラガナ、やたらめったらに勝負を仕掛けちゃ駄目だよ?」
「うっ・・・わ、わかっておるのじゃ!」
解ってなかったようだ・・・まったく。
「それじゃ、三人とも留守番をよろしくね」
「うん、カモメも気を付けて」
「無理はしないでくださいまし」
「任せるのじゃ!」
三者三様の言葉を聞き、私は笑顔で出発する。
目指すはドラグ山脈だ。
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