闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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4章

12神将グラン

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「貴様っ」


 赤髪の魔族に胸倉をつかまれている帝国の兵士が声を上げる。
 だが、その姿は右腕を失っており、すでに重傷を負っていた。


「あん?なんだ、まだ生きていたのか?」
「こんなことをして・・・ただで済むと・・・」


 残っている腕を赤髪の魔族の方へと近づけながら兵士は魔族を睨む、その眼には怒りの色が見えた。
 だが、そんな兵士を鼻で笑い飛ばすと、赤髪の魔族は兵士の首を掴む。


「ぐっ・・・がっ・・・」
「タダで済むかって?そりゃあ済むんじゃねぇか?誰が俺に罰を与えるってんだ?」
「陛下がきっと・・・貴様ら魔族を裁く・・・」


 男のかすれた声に赤髪の魔族は大声で笑いだした。
 

「はははっ、そりゃ、ありえないな」
「な・・・に?」
「陛下が人間なんぞに肩入れするわけねぇだろ?」
「どういう・・・こと・・だ?」
「察しのわりぃ奴だな・・・陛下は魔族・・・それも魔族の王、魔王様だからに決まってんだろうが?」
「・・・そん・・・な」


 先ほどまで怒りに燃えていた兵士の目が絶望の色へと変わっていく。
 そうか、人間の兵士の人は魔王の事を知らないんだ。


「では・・・貴様らが私たちを襲ったのは陛下の命令なのか・・・」
「いや、これは俺の命令だ、お前らが魔物に食われる姿を見たくなったんでな」
「貴様・・・」
「人間なんてどうせ使えねぇんだからよ、少しは俺を楽しませろよ・・・」
「きさまぁあああ!」


 首を掴まれながらももがく兵士が咆哮を上げる・・・が。


「・・・うるせぇな」
「がはっ」


 赤髪の魔族は持っていた剣を深々と兵士の腹に刺し、引き抜いた。そして、まるでごみでも捨てるかのようにおもむろにその兵士を投げる。
 兵士は瓦礫の上を転がりながらこちらへとやってきた。
 ゴロリと転がってきた兵士は、すでに息をしていなかった。


「さて、よくもまぁ、俺の城を壊しやがったな?」


 赤髪の魔族は改めてこちらを向くと殺気を再び向けてくる。


「あん?てめぇ、闇の子か?」


 再び耳にするその言葉、魔族たちはなぜか私の事を闇の子と言う。
 確かにディータから闇の力を受け継いでいるが、私の異名になっている闇の魔女ではなくなぜ、闇の子というのだろう?まあ、魔族の中ではそう言うのかな・・・。



「だったら何?」
「はっ・・・なるほど、アイツの言う通り現れたってわけか・・・」
「どういう意味?」
「はっ、まあ、闇の子だろうが何だろうが死んじまえば一緒か・・・」


 人の話聞こうよ!?


「じい!」
「はい!」


 赤髪の魔族がのそりと動くと、それを見たミャアが根性スパーク状態になり、魔族に突進する。


「ほお?いい動きをするじゃねぇか」
「ニャ!?」


 オカマの魔族を圧倒した根性スパーク状態のミャアの蹴りを、軽々と片手で掴む赤髪の魔族。


「嘘・・・!?」


 そして、おもむろにミャアを放り投げるとミャアに近づきもせず、剣を振った。
 何もないところ斬って、どうするつもり・・・?
 そう思ったのもつかの間、魔族が振った剣から衝撃波のようなものがミャアに向かって飛んでいく。


「ミャア!」


 咄嗟に私が叫ぶと、ミャアは両腕を顔の前で交差し、身をコンパクトにしながらその衝撃波を受けた。
 衝撃波を受ける場所を出来るだけ小さくしたのだ。

 だが、それでもその衝撃波を受けてミャアは吹き飛び、瓦礫が山になっている場所に突っ込んでしまった。



「ミャアさん!」


 それを見たコロがその場所へ走る。
 瓦礫の中からミャアが出てくると、その姿はボロボロであった。
 足元をフラフラとさせながら少し歩くと、もう立っていられなかったのかその場にへたり込んでしまう。


 あのミャアが、あんなに簡単に?
 この魔族はやっぱりヤバイ・・・。


「ほお、今のを喰らって生きてやがるのか・・・やるじゃねぇか」


 余裕そうに笑いながら、赤髪の魔族はそう言った。


「さあて、次は誰が相手をしてくれるんだ?・・・そっちのロン毛のねぇちゃんか?」


 そう言って、魔族はエリンシアを見る。
 普段は余裕を忘れないエリンシアであるが、今回ばかりは額に汗を浮かべながら緊張した顔で相手を見ていた。それは当然だ、ミャアは私やエリンシアから見ても強いと思う、それこそ、根性スパーク状態のミャアは私達でも戦えば勝てるかわからないくらいなのだ・・・そのミャアがまるで赤子の手を捻るくらい簡単に負けてしまったのだ。


「エリンシア・・・一人ずつ戦っても・・・」
「ええ、勝ち目はありませんわね」
「うん・・・だから・・・」
「同時に行きますわよ!」
「うん!」


 私とエリンシアは同時に行動を開始する。
 エリンシアは魔導銃を抜き、聖属性の魔弾を放ち、それに私は追随する。



「良い判断じゃねぇか」


 魔族は片手でエリンシアの魔弾を防ごうとする・・・だが。


「風よ!」


 私は風の魔法でエリンシアの魔弾を弾けさせる。目くらました。


「む?」


 私の姿を見失った魔族の背中に回り込み、私は闇の魔法を発動させた。


闇魔滅砲イビルスレイヤー!」


 今の魔力では黒炎滅撃フレアザードを撃つことは出来ない、なので闇の魔法でも威力の高いこの魔法で!

 私の魔法が赤髪の魔族に直撃する。



「やりましたの!?」


 その光景を見て、エリンシアが言葉を漏らす・・・が。


「はっ、やるじゃねぇか・・・だが、そんな攻撃じゃ、この俺12神将が一人、グラン様は倒せねぇぜ?」


 そこには悠然と立つ、魔族の姿があった。


「そんな・・・」


 以前戦った12神将と名乗る魔族よりこの魔族は遥かに強い・・・私の闇の魔法がまるで効いてないなんて・・・。


「そら」


 グランが剣を軽く振ると、衝撃波が私を襲う。


「きゃあああ!」


 私はそれをまともに喰らってしまい、瓦礫の上を転がった。
 軽く振った一撃であるはずなのにその威力は凄まじい、私は必死に立ち上がろうとするが、腕にも足にも力が入らなかった。

 その私の姿をグランは笑いながら見ているのであった。
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