闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

文字の大きさ
116 / 412
4章

階層ボス

しおりを挟む
 ダンジョン2階層、階層ボスの部屋。
 僕らは今、そこで2階層のボスと対峙していた。


「兄様・・・あのモンスターは?」
「確か、ミノタウロスと呼ばれる魔物だ」


 そう僕らの前に悠然と構えている魔物は牛の頭を持った魔物、ミノタウロスである。


「ミノタウロス・・・確かランクはCだったね」


 階層のボスは最低Cランク以上という情報だったので、2階層のボスがCランクなのは予想通りである。
 そして、Cランクの魔物だったという事は、僕は戦わず、戦うのはコハクたち三人と一匹になる。


「じゃあ、クオンさん。予定通り、この階層ボスは僕らにやらせてもらえますか?」
「うん、任せる」
「はい!」


 そう言うと、コハクたちは武器を構え、隊列を組む。
 隊列はソフィーナさんが戦闘、その少し後ろにヒスイが、そして後衛に魔法を使うリーナと弓を操るコハクである。


 パーティのバランス的にはちょうどいいと思う。
 ただ、ソフィーナさんはAランク並みの実力を持つので、相手がCランクのボスという事もあって攻撃よりも敵の注意を引く役目をするらしい。

 確かにソフィーナさんならウェアウルフと同じランクのミノタウロスに後れをとることも無いだろう、だけど、ソフィーナさんが楽々倒してしまったらコハクたちの経験にならないしね。


「では、作戦通りにいこう!」
「「はい!」」
「わん!」

 ソフィーナさんが号令をかけると各々返事をする。

 まずは敵がこちらに近づいてくる前にコハクとリーナが遠距離からの攻撃を放った。


強射ストリングショット
炎弾射フレアビット!」

 二人の放った、魔法と技がミノタウロス目掛け、直線で突き進む。
 ミノタウロスはまだこちらに気付いていなかったのか、その攻撃を防ぐこともせず受けた。


「ぐもおおおおお!!」


 二人の攻撃はミノタウロスにダメージを与えられたらしく、ミノタウロスは悲鳴を上げる。


「こちらに来る!二人は私の後ろに!」
「「はい!」」


 そう言うとソフィーナさんはこちらへ突進してくるミノタウロスに向けて走り出した。
 ミノタウロスが持っていた大きな斧を振り上げ、向かってくるソフィーナさんに向けて振り下ろす。
 ソフィーナさんはその攻撃を普通の大きさの剣で受け止めた。

 大きな金属のぶつかる音がすると、その普通の剣で大きな斧を完全に受け止めてしまうソフィーナさん。


「すごい・・・」


 コハクが感嘆の声を上げる。
 よく見ると、ソフィーナさんの剣が淡く光っている、どうやらあの普通に見える剣は魔剣の類なのだろう。使用者の魔力で剣自身を強化するといったところか。


「ヒスイ!」
「ガウ!」


 ソフィーナさんの掛け声に、ヒスイは横からミノタウロスの首めがけて噛みつく。
 ミノタウロスは首を噛まれた衝撃で体制を崩す。

 そして、それを待っていたとばかりに、コハクはよろめいたミノタウロスめがけて、矢を放った。


二連射ダブルショット!」


 放たれた二つの矢が同時にミノタウロスの左目に突き刺さる。


「ぐもおおおおおおおおおお!!!」


 やられた左目を抑えながらミノタウロスはその場に膝を付いた。
 その隙を逃すまいとヒスイは追い打ちをかける。
 ヒスイの爪が残った右目を捕らえ、左目に引き続き右目をも失ったことにミノタウロスは再び声を上げた。


「よし、相手の動きは完全に止まった!」
「行きます!氷柱弾アイシクルショット!!」


 リーナから放たれた氷の魔法はミノタウロスに命中するとその姿を一瞬で氷漬けにする。
 カモメ程ではないがリーナもまた稀有な魔力を持つ魔法の使い手である。
 その威力はすでにEランクの冒険者のものではないだろう、いや、リーナだけではない、コハクもまた弓の腕は一級品である、その上、判断能力にも優れている為、Eランクの冒険者とはいえ、その力はD・・・いやCランクの冒険者にも引けを取らないほどに成長していた。


 とはいえ、ギルドの魔導具が彼らをEランクと判定したのには理由がある、それは恐らく経験の少なさだろう。いくら普通の人より大きな力を持っていても経験が無ければそれを生かすことは出来ない。だからこそ、彼らは僕についてきてこのダンジョンで経験をつもうとしているのだ。

 きっと、このダンジョンをクリアした後は、自信とそれに見合ったランクが付いてくるに違いない。


「トドメだ!」
「ガウ!!」

 コハクの矢が頭に、ヒスイの爪が胴体にヒットし、氷漬けになっていたミノタウロスの体は、その衝撃でヒビが入り、粉々となった。
 粉々になったミノタウロスの体が輝くと、その体は魔石へと姿を変える。


「これは持って帰ってディータ殿に渡さねばな」
「ですね」


 本来であれば魔石はギルドに売ることが出来るため、冒険者にとって収入源になるのだが、僕らの仲間にはぬいぐるみ・・・もとい、ソウルイーターとなった女神がいる。
 あの女神は魔石を食べることでソウルイーターの体の魔力量を増やすことが出来る。その為、僕らは魔石を手に入れるとディータへと渡してあげていた。

 ・・・・まったく、手間のかかる女神だよ。


「お」


 ミノタウロスの魔石を持っていた袋にしまっていると、奥にあった扉が音を上げて開いていく。


「どうやら、次の階層への扉が開いたようだな」
「はい、この調子でドンドンいきましょう!」
「うん、そうだね」


 ソフィーナさんとリーナの言葉に僕は頷く。
 だが、アネルさんの話だと、階層を進むごとにこのダンジョンは難易度が上がっていくらしい。
 一階層は特に何もなく魔物が出てくるだけ、後はランダムの宝箱が出現するのみとなっている。
 二階層はそれに加え、階層ボスが出てきた。
 三階層はアネルさんの話だと、罠が追加されるらしい。
 四階層は一気に難易度が上がり、通常に出てくる魔物もCランク以上、罠の危険度も増し、階層ボスはAランクになるという事だ。
 そして、五階層はボスのいるフロアだけで、そのボスの強さはSランク以上という事らしい。

 五階層のボスを倒せば、目当ての聖武具が入った宝箱にたどり着くことが出来る。僕らは順調に進んでいることもあり、意気揚々と、次の階層へ歩を進めた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...