闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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5章

決着そして…

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 カモメの両手から生まれた破壊の権化ともいえる魔法は、凄まじき轟音と共に一瞬で目の前の全てを飲み込んだ。


 「なんて威力だ……」
 「すごいですわ、カモメさん」


 カモメの放った魔法の威力に唯々、呆然とする二人、今までもすさまじい威力の魔法を見てきた二人であるが、今回放った、魔法は別格であった。


 「さすが、カモメちゃんね♪」
 「アネル……貴方……」


 カモメの魔法を完成させるきっかけを作ったアネルの言葉を聞いていたディータは、その者の正体に疑惑とも不安ともつかぬ目つきで睨んでいた。
 そして、そんなディータにアネルは少し寂しそうに微笑むのだ。


 「笑っても誤魔化されないわよ……貴方本当に……っ」


 アネルを問い詰めようとするディータ。だが……。

 ――――――――――その二人の目の前で何かが地面に倒れるような音がした。


 「カモメ!?」


 カモメが何の抵抗もなく地面に無防備な状態で倒れ込んだのだ。
 驚き慌てて駆け寄る四人、カモメの意識は無くなっていた。












 ――――――――――暗闇。

 カモメは目を覚ますと辺りは真っ暗であった。
 夜なのであろうか、辺りを見回しても何も見えない。
 


 「カモメ、目が覚めたんだね!」
 「カモメさん、もうっ、心配しましたわっ……」


 聞きなれた声が聞こえる、カモメが信頼する仲間であるクオンとエリンシアの声だ。


 「あ、二人とも、良かった二人も無事だったんだね♪」


 二人の声を聴くと一気に記憶が蘇ってくる、白魔鬼との戦い、制御できるか分からない魔法の使用、そして光と闇の合成魔法を完成させたことを。


 「よかった、あの魔法成功したんだね」
 「ええ、ええ、すごい魔法でしたわよ、グランルーンの山々を跡形もなく吹き飛ばしてしまいましたも の」
 「うぇ!?そんなに?」


 エリンシアの話によると、カモメの放った魔法はグランルーンの城の半分や城壁はもちろん、街の外にあった山を飲み込み、まるで絵に描いた山をホワイトで消したかのように一瞬で消し去ったのだ。

 

 「まったく、驚いたわよ……さすが、私が見込んだだけはあるわね」
 「あ、ディータいたんだ!」
 「いたわよっ、酷いわね」
 「たはは、ごめん」


 私って存在感薄い?等と呟きながらディータはカモメにやっと気づいてもらい凹んでいる。
 

 「ところでここはどこ?」
 「ツァインだよ」
 「うぇ!?どれくらい寝てたの私!?」
 「7日だね……心配したよ、でも目覚めてくれてよかった」
 「そんなに!?」


 カモメが白魔鬼を倒してから七日の時が過ぎていた。
 倒れたカモメをクオン達は一度、グランルーンの冒険者ギルトにいるラインハルトの所まで運び、ギルドにあるベッドに寝かせてもらったのだが、次の日になっても目を覚ますことはなかった。
 ディータとアネルの予測から恐らく魔力の使い過ぎによるものだろうとという事でしばらく様子を見ようという事になったのだが、グランルーンには闇の魔女が襲撃を掛けたに来たという理由でいたため、そのままグランルーンにいるのは危険だろうということになりツァインまで移動をしたのだ。

 現在、グランルーンがどうなっているかはフィルディナンドに入ってくる情報によるが、メリアンナ法王の手助けもあり、無事順調に復興をしているらしい。


 「ほぇー、でもまあ、無事にグランルーンを解放出来て良かったよ」
 「まったく、お気楽ですわね」
 

 自分が魔力を使い果たし、倒れてしまったというのに自分の身体より先に自分の事を指名手配したグランルーンの心配をするあたりはカモメらしいとみんなが笑った。


 「ところでカモメ、体の調子はどう?」
 「うーん、ちょっと気だるいかな?」


 肩を回しながらカモメはそう言った。


 「あの魔法は魔力の消費量が尋常じゃないみたいね……貴方の体にどんな影響があるか分からないからやっぱり使用しない方がいいかもしれないわ」
 「うーん、でもまたあんな敵が現れたら使わない訳にもいかないんじゃないかな?」
 「でも、また倒れることになるかもしれないわよ」
 「頑張って、魔力量を増やすよ♪」


 笑顔でそう言うカモメはディータとは視線を合わせていなかった。
 ディータはそんなカモメを見て、珍しく自信がないのかなと思いながらも話を続ける。


 「まあ、あなたなら出来るかもしれないわね、とはいえ、やっぱり乱用は禁止よ、本当にそれしか手段がなくなった時だけにしなさい」
 「うん、わかった」
 「よろしい、じゃあ、少し気分転換に外にでも行ってみる?」
 「いいですわね、新しくできた甘味屋がありますの、ワタクシのおすすめですわ」
 

 ワイワイと盛り上がり始めるエリンシア達、カモメの復帰を祝い、皆でどこか食事でもしようと話になるのだが、そんな皆の様子に、カモメは一つ疑問に思い口に出した。


 「え、でも今夜だよね?まだ、お店やってないんじゃ?」
 「え?」
 「何を行ってますですの?今はお昼ですわよ?」
 「え……」


 カモメの表情が固まる、そう、目覚めたときに感じたように、辺りは暗闇なのだ。
 今まで話をしていた皆の顔も見えないほどに。

 そして、その様子を見て、クオン達の表情がこわばる……。


 「そういえば、さっきから視線が合わないと思っていたけど……」


 疲れているから?自身がないセリフだったから?別の人を見ていたから?等の理由を考え、それ程不思議には思っていなかったことをカモメの言葉を聞いて不思議に思い始める。
 そして、それは焦りへと変わった。


 「カモメ……僕の顔が見えるかい?」
 「ごめん、声で方向くらいは分かるけど……………見えない」


 その言葉に部屋にいた全員が絶望をする…………。


 ―――――――――――――――カモメはその視力を失っていた。
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