闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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8章

逃走

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「竜族の長よ、急いで闇の魔女を追うのです」
「申し訳ありません、『世界』よ……どうやら、先ほどの攻撃で脳を揺らされたようで……思うように動けません」
「くっ……なんということ……」



 竜族の追手が来る前に竜族の里を離れ、風の魔法を使いドラグ山脈の上空を離れていくカモメ達は後ろからの追撃を気にしながらも急いでツァインへと向かっていた。


「大丈夫なのじゃ、追っては来ぬのじゃ」
「え?どういうこと?」
「レガロールの奴が上手く時間を稼いでくれているのじゃ」
「レガロールが?」


 竜族の長となったレガロールがなぜ?
 本来なら、世界の言う通り私たちを殺す為追いかけてくるはずなんじゃ?


「あれでいて、レガロールは律儀な奴でのう……お主等に里を救ってもらった恩を忘れてはおらん」
「でも、私達、リーンをこの封印から解放する手伝いをするかもしれないのに……」
「なぁに、封印を壊したところでリーンなる者を倒してしまえば問題ないのじゃ」
「そう簡単に行くかなぁ……?」


 現状、リーンが何処にいるのかすら分からないのだ。
 このまま、リーンの言う通り結界を壊してしまえば、最悪、リーンを解き放ち、その上、クオン達とも二度と会えないかもしれない。

 封印を壊すとしても、何か考えないと……。


「そうね、先ずはリーンが何処にいるのか……私達と会った事のある人物で誰なのか……それを探らないといけないわね」
「そう簡単に見つかりますでしょうか?」
「何か、リーンと特定できるものがあればいいんだけれど……」


 リーンを特定できるものか……気を使って一人ずつ殴っていく……なんてのはさすがに駄目だよね。
 普通の人も怪我しちゃうし……うーん。


「ただ、唯一解るのは、リーンもこちらの動向を知りたいはず……だから、何かしらこちらの情報を得るために様子を伺いに来るはずよ」
「ですわね、少なくとも人数は絞れそうですわ」


 確かに、私たちが結界を壊そうとするかどうかを確認しにくるはずである。
 自分の作戦が上手くいっているかどうか気にならない人はいないだろう。


「なら、そこを捕まえる?」
「駄目よ、仮にリーンの正体が解ったとしてもレナ達の居場所が分からないうちに捕まえようとすればレナ達の命が危ないわ」


 そっか、もし失敗して取り逃がしたらクオン達を殺されかねない。


「なら、どうするの?」
「正体を見破ったことを悟られないようにして、ワタクシ達はリーンの掌で踊っているふりをするんですわ」
「なるほど……でも、その後は?結局クオン達を見つけないと結界を壊しても意味ないよ?」
「ええ、だから、レナ達の無事を確認するためにレナ達をその場に連れてこさせるようにするのよ」
「うん?」


 どうやってその状態に持っていくのだろう……もし、リーンが自らクオン達を連れてその場に現れるのなら正体を見破る意味も無くなるし、結界を壊した後、リーンがどういう行動をとるか分からないと思うのだけれど……。うーん。


「リーンにとって最悪の展開ってどんな展開だと思う?」
「え?」


 私が頭を悩ませていると、ディータがそう聞いてきた。


「んと、私たちが結界を壊さなくて、『世界』と協力してリーンを倒しに行くこと……かな?」
「ええ、その通りよ、ならリーンはその展開を避けようとするわよね」
「うん、だと思う」


 そうだよね、態々クオン達を人質にとったりしたのに、その意味も無くなって、結界を壊すためにあの場で私たちを殺そうとしなかったりしたんだもん。それなのに、結界は壊れないし、人質の意味もなくなったらリーンにとってはあの場で私たちを殺さなかった意味がなくなるもんね。


「なら、逆にリーンにとって一番良い展開は何になると思いますの?」
「えっと」


 今度はエリンシアが私に聞いてくる。
 リーンにとって一番良い展開……。


「結界が破れて、外に出れること……だよね?」
「ですわね、その上、ワタクシ達の追撃も無ければ言うことがありませんわ」


 あ、そっか、確かに。もし、結界が壊れてクオン達を救出出来たら、私達は必ずリーンを倒すために戦いを挑むだろう。


「なら、その状況に持っていくためにはどうしたらいい?」
「私達をその場で殺しちゃう?」
「まあ、それが出来るのならばそれが一番ね……私達もそう簡単にはやられないわよ?」
「ですわね、そしてそうするとかなりの時間を結界があった場所で足止めされることになりますわ」


 そっか、そうなった場合、『世界』がそのことに気付いて行動を起こすかもしれないんだ!


「そっか、なら、早くその場を移動したいってリーンは思うよね?」
「そうね、でもリーンは幻術が使えるわ」
「ですわ、そして幻術でもう一人自分を作ることが出来るのは前回の戦いでも解っております」


 前回の戦いでリーンは幻術で自分の幻を作り、やられた振りをしたりして不意を突いていたらしい……あ、そっか。


「なら、幻術で自分の偽物を作ってやられた振りをすれば……」
「そう、本物のリーンはそのまま何者かに化けてその場をやり過ごし、後日悠々と結界の外に出れるというわけよ」
「なるほど……」


 なら、その本物のリーンを見破っておけば、クオン達を助けた上にリーンを倒すことも出来るかもしれない。見破られていないと思っているリーンは油断をしている筈だ。


「じゃあ、やっぱりリーンが誰なのかはっきりさせないとね……」
「ですわね……そこが一番の問題ですわ」
「誰か、幻術を見破れる人でもいればいいのだけれど」


 もしかしたら、魔導具でそう言う物があるかもしれないけど……この状況でダンジョンに潜ってあるかどうかも分からない魔導具を探すというわけにはいかないよね……どうしたものか……。エルフのコハクやリーンなら超感覚で見破ったりできないかなぁ……無理だよね。


「何じゃ、幻術を見破りたいのか?」
「うん、ラガナいい方法知らない?」
「余なら見破れると思うのじゃ?」
「……ええ!?」


 ラガナってそんなこと出来るの!?


「余も変化の術を得意とする身じゃからのう……そう言うのを見破るのは得意なのじゃ」
「それが本当ならラガナ……お願い、力を貸して!」
「うむ、任せるのじゃ!じいを殺したという相手……余も放ってはおけぬからのう」


 そう言う、ラガナの瞳は私が見ても怖いと思う程、今までにない真剣な瞳をしていた。
 当然だよね、ラガナにとってコロは家族とも呼べるような存在だったのだから。
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