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2部 2章
敵軍
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ディータと別れて僕たちは別行動をしながら城の状況を探っていた。
僕はディータと違って姿を隠す魔法を持っていない。その為、別の方法で侵入することにした。
まずは城の城壁を風の魔法を駆使し駆けあがる。
そして、近くにいた一人の兵士を当て身で気絶させ、その服を奪った。
兵士に変装して侵入したのである。
ちなみに、気絶させた兵士は茂みの中に隠しておいた。しばらくは目を覚まさないはずだ………風邪をひいたらゴメン。
「さて、変装したとはいえボロが出る可能性もあるし、出来るだけ人に合わないようにしないとね」
城の兵士、全員の顔を覚えている人間なんてそうそういないだろうけど、それでも見ない顔を見たらおやっと思うかもしれない。慎重にいこう……敵の戦力が解らないのだから。
恐らく、姿を隠せるディータなら、城の中にいる人の話を盗み聞きして情報を得るだろう。
なら、僕は敵の戦力を確認しておくか……軍の規模……それと作戦を考える頭脳と言える人間の力量……後は王の様子も見ておきたい……少々危険な気もするが最低でもそれくらいの情報を得ないと戦いにもならないだろう……そうだ、今後の方針なんかも調べられたら見ておきたい。
欲しい情報を確認すると、僕はまず兵士の詰め所を探した。
兵士の詰め所は簡単に見つかる。
ちょうど兵士たちが数人移動していたので後をつけたのだ。
「さて……兵士の格好をしていると言ってもこのまま入るわけにはいかないよね……」
いくら何でも兵士同士であればお互いの顔を知っているだろう。
そこに入っていけばすぐにバレてしまう。
そこで僕は扉の前に行くと風の魔法を使い、音の振動を上手く風に乗せこちらに聞こえるようにした。
ディータと違って僕はこういう細かい調整をする魔法の方が得意である。
ただ、それ程魔力がないので簡単なものを応用するくらいしか出来ないが……これが意外と便利なので自分でも気に入っている。
「隊長……本当に王妃様はメリッサ王女に殺されたのでしょうか……」
「お前、王様を疑うのかよ!」
「そうじゃねぇけどよ……でも、信じられねえんだよ……あのメリッサ王女だぞ?」
「う……けど……けどよ……あのお優しい王妃様が殺されたのは本当なんだぞ?王様が嘘を吐くわけがないだろう!」
「そりゃあ……そうなんだけどよぉ……」
「真実は俺にも解らん……だが、我々は兵士だ。この国を護るのが使命だ……もし、王女がこの国を脅かすのであれば我々は王女を討たねばならん」
「……」
「それに、我々は軍司令に従うしかない……あの方が何を考えているのか解らんが……な」
「いきなりやってきて軍司令になったあいつを俺は信用できませんよ……」
「そうだよなぁ……って、しまった。俺、軍司令の所にこの書類を届けないといけないんだった!ちょっと行ってくる!」
部屋の中で急いでいる足音が扉に近づいてくる。
僕は一度その場を離れ、姿を隠した。
なるほど、兵士の間でも半信半疑というところなのか……そして、新しくやってきた軍司令ね……怪しいな。どうやら、今、出て行った兵士が軍司令の部屋まで行くようだし……後をつけてみるかな。
僕は、気づかれないように距離を取りながら前を走る兵士の後を追った。
階段を上り、二階に着くと西側の奥の部屋へと向かう。
その先にどうやら目的の部屋があったようで、兵士は扉をノックすると「失礼します」と入っていった。
僕はすぐにその扉に近づき、先ほどと同じように風の魔法で中の会話を聞こうとする。
「あれ……いないや……まあ、いっか書類だけ置いて行こう」
先ほどの兵士の声が聞こえる。
どうやら、軍司令と言われる人物は不在の様だ……都合が良いな。
兵士の男が部屋から出ると、僕はその軍司令の部屋へと侵入した。
「良し……この国の軍の編成、人数が書かれた物がある……」
運のいいことに、軍に関する資料が机の上に広がっていた。
恐らく来たばかりの司令官がこの国の軍を把握していたのだろう。
僕はそれを盗み見る。
「軍の規模は全体で10万か……そこまで多くはない。その内500名は近衛隊……隊長の名前はギリアム……副隊長はセリシアナか……そしてその他のめぼしい人物は将軍職の者が3人……ドルボルア……ゼルネア……ソードイン……か……」
軍の規模、そして将軍職の人物の名前、さらに近衛隊の隊長の名前が解ったのは大きい。
そして、それに加えてこの部屋の主である軍司令……それと先ほどの兵士が届けたこの書類に書かれているジーニアス宰相と呼ばれる人物がいるようだ。
さて……この将軍や宰相たちはメリッサが母親を殺したということを信じているのだろうか……。
と、その時、部屋の外に気配を感じる……僕は咄嗟に窓から外に出た。
窓の外から様子を伺うと、一人の人物が部屋の椅子に座る。
どうやら、あの人物が軍司令と呼ばれる男の様だ。
男は椅子に座ると、机の上にあった資料に目を通し始めた。
あの男……かなりの使い手だね……。
もしかしたら、思ったよりも個人の力も強いのかもしれない……予想以上に厳しい戦いになりそうだ。
僕はそれを確認すると、窓から三階へと昇り、近くに人がいないのを確認すると窓から三階へ侵入した。
さて、後は宰相ジーニアスと呼ばれる人物の情報と今の王様の様子を見ておきたい……。
ジーニアスがどこにいるかは解らないので、とりあえずは王の間へと向かう。
そこならば、王様の姿があるかもしれない。
僕は出来るだけ目立たないようにしながら通路を歩く……少し歩くと一際大きな扉が見えてきた。
……あれかな?
僕は扉を少し開けると、素早く中に侵入し、柱の陰に隠れる。
「む?今、扉が開かなかったか?」
「いえ、私は気づきませんでしたが……?」
恐らく王だろう……煌びやかな服を着て兵士と話をしている。
どうやら、ビンゴの様だ。
「まあ、よい……して、抜かりはなかろうな?」
「はっ、マストリス殿が部隊を準備しております。明日の昼には出陣できるかと」
「ならよい、下がれ」
「はっ!」
出撃の準備?……まさかラリアスにと言う訳ではないよね……。
メリッサがラリアスにいることが知られている以上、可能性がないとは言えない。もしそうならば、今のうちにその部隊を潰しておくか?
僕がそう考えている、一人の男が扉を開けて入ってきた。
「む?ジーニアスか……どうした?」
「王女の件だ……どうやら、辺境の街ラリアスへ逃げていたらしい」
「ほう、見つけたのか……しかし辺境まで逃げるとは足の速い餓鬼よな」
「喜んでいる場合ではない……暗殺を命じた男の話によると「闇の魔女」と呼ばれる者が王女を保護したとのことだ」
「闇の魔女?聞いたことないが……」
闇の魔女という言葉に僕は反応する……暗殺を命じた男というのはカモメが対峙し、エリンシアが撃退したという男の事だろう。こちらの情報がばれてしまったのは痛いな……。
「どうやら、ラリアスに放った邪鬼を倒したらしい」
「なんだと!?」
……待て、今、あの男はラリアスに邪鬼を放ったと言った?
つまりあの邪鬼も、こいつらに関係しているっていうことか……それはいくら何でもマズいのではないか?……この国の軍だけではなくこいつらは邪鬼をも味方にしているということなのか?
そうなると、敵の戦力がどれほどになるのか……いや、そうだ……こいつらの後ろにはレンシアもいるはずだ……なら、邪鬼と繋がっているのはレンシアということか?
僕は動揺した……敵の戦力が多すぎる……今のままじゃ勝ち目なんてないのでは?
そう考え、動揺したのだ……だが、それがマズかった……。
僕が動揺し、気配を消しきれなくなった……そして……。
「誰だ!!」
ジーニアスが叫ぶ……こちらを向いて……気づかれた……。
「その柱の陰にいることは分かっている出てこい……さもないと地獄の炎で焼き殺す」
地獄の炎?……よくわからないけど、そう言うスキルなのか……それとも炎の魔法の事をそんな大層な名前で言っているのか……解らないけどバレてしまっている以上ここに隠れているのは悪手だよね……身動きが取れなくなる。
なら、仕方ないか……。
そう思って僕は姿を現す。
「兵士……か?」
「は、はい……申し訳ありません……偶々お金を落としてしまいまして……」
「嘘が下手だな……金を落としたただの兵士が、今の今まで我らに気づかれずに気配を消していたというのか?」
うん、嘘は速攻でバレた……いやいや、この状況を誤魔化せる嘘なんて出てこないよ……さすがに。
「貴様……何者だ?」
でも、僕が何者かなんてこいつらには解らない。
まさか、相手も闇の魔女の仲間がすでにこの城に入り込んでいるなんて思っていないだろう。
「大方、近衛の連中だろう……ギリアムを助けに来たか」
偽の王がそう言う……なるほど、近衛隊は王が偽物なことに気づいたのだろう……それで敵対していると……。
「さあ、どうでしょうね?」
「どうでもいい……ここで殺せば変わらん」
そう言うと、ジーニアスは僕に向けて手をかざす。
その掌から黒い炎が僕に襲い掛かった。
「ちっ!」
僕はクレイジュを抜き、その炎を切り裂く。
「何!?」
僕の行動にジーニアスは驚く。
「ならば、これなどうだ!」
ジーニアスの背後に黒い炎の狼のようなものが現れた。
「地獄の狼よ、奴を焼き殺せ!」
炎の狼が僕に襲い掛かる。
「クレイジュ!」
(あいよ、相棒!!)
クレイジュの刀身が光を放つ。
僕がクレイジュを振るうと、光の刃が炎の狼へと押しかかり、それを斬り裂き消し飛ばす。
「馬鹿な!?」
(相棒、外が騒がしくなってきた……逃げたほうがいいぜ!)
恐らく、先ほどの炎の狼を切り飛ばした時の音で外にいる兵士に気づかれたのだろう。
僕は大急ぎで扉の外へ出ると、そのまま近くの窓を割り、外へと逃げ出した。
その後は空を翔け、いったん街の外にまで逃げるのだった。
完全に失敗した……後でディータにネチネチ言われそうだ……。
だけど、かなりの情報を得ることが出来た……あ、ディータとどうやって合流しよう……。
僕はディータと違って姿を隠す魔法を持っていない。その為、別の方法で侵入することにした。
まずは城の城壁を風の魔法を駆使し駆けあがる。
そして、近くにいた一人の兵士を当て身で気絶させ、その服を奪った。
兵士に変装して侵入したのである。
ちなみに、気絶させた兵士は茂みの中に隠しておいた。しばらくは目を覚まさないはずだ………風邪をひいたらゴメン。
「さて、変装したとはいえボロが出る可能性もあるし、出来るだけ人に合わないようにしないとね」
城の兵士、全員の顔を覚えている人間なんてそうそういないだろうけど、それでも見ない顔を見たらおやっと思うかもしれない。慎重にいこう……敵の戦力が解らないのだから。
恐らく、姿を隠せるディータなら、城の中にいる人の話を盗み聞きして情報を得るだろう。
なら、僕は敵の戦力を確認しておくか……軍の規模……それと作戦を考える頭脳と言える人間の力量……後は王の様子も見ておきたい……少々危険な気もするが最低でもそれくらいの情報を得ないと戦いにもならないだろう……そうだ、今後の方針なんかも調べられたら見ておきたい。
欲しい情報を確認すると、僕はまず兵士の詰め所を探した。
兵士の詰め所は簡単に見つかる。
ちょうど兵士たちが数人移動していたので後をつけたのだ。
「さて……兵士の格好をしていると言ってもこのまま入るわけにはいかないよね……」
いくら何でも兵士同士であればお互いの顔を知っているだろう。
そこに入っていけばすぐにバレてしまう。
そこで僕は扉の前に行くと風の魔法を使い、音の振動を上手く風に乗せこちらに聞こえるようにした。
ディータと違って僕はこういう細かい調整をする魔法の方が得意である。
ただ、それ程魔力がないので簡単なものを応用するくらいしか出来ないが……これが意外と便利なので自分でも気に入っている。
「隊長……本当に王妃様はメリッサ王女に殺されたのでしょうか……」
「お前、王様を疑うのかよ!」
「そうじゃねぇけどよ……でも、信じられねえんだよ……あのメリッサ王女だぞ?」
「う……けど……けどよ……あのお優しい王妃様が殺されたのは本当なんだぞ?王様が嘘を吐くわけがないだろう!」
「そりゃあ……そうなんだけどよぉ……」
「真実は俺にも解らん……だが、我々は兵士だ。この国を護るのが使命だ……もし、王女がこの国を脅かすのであれば我々は王女を討たねばならん」
「……」
「それに、我々は軍司令に従うしかない……あの方が何を考えているのか解らんが……な」
「いきなりやってきて軍司令になったあいつを俺は信用できませんよ……」
「そうだよなぁ……って、しまった。俺、軍司令の所にこの書類を届けないといけないんだった!ちょっと行ってくる!」
部屋の中で急いでいる足音が扉に近づいてくる。
僕は一度その場を離れ、姿を隠した。
なるほど、兵士の間でも半信半疑というところなのか……そして、新しくやってきた軍司令ね……怪しいな。どうやら、今、出て行った兵士が軍司令の部屋まで行くようだし……後をつけてみるかな。
僕は、気づかれないように距離を取りながら前を走る兵士の後を追った。
階段を上り、二階に着くと西側の奥の部屋へと向かう。
その先にどうやら目的の部屋があったようで、兵士は扉をノックすると「失礼します」と入っていった。
僕はすぐにその扉に近づき、先ほどと同じように風の魔法で中の会話を聞こうとする。
「あれ……いないや……まあ、いっか書類だけ置いて行こう」
先ほどの兵士の声が聞こえる。
どうやら、軍司令と言われる人物は不在の様だ……都合が良いな。
兵士の男が部屋から出ると、僕はその軍司令の部屋へと侵入した。
「良し……この国の軍の編成、人数が書かれた物がある……」
運のいいことに、軍に関する資料が机の上に広がっていた。
恐らく来たばかりの司令官がこの国の軍を把握していたのだろう。
僕はそれを盗み見る。
「軍の規模は全体で10万か……そこまで多くはない。その内500名は近衛隊……隊長の名前はギリアム……副隊長はセリシアナか……そしてその他のめぼしい人物は将軍職の者が3人……ドルボルア……ゼルネア……ソードイン……か……」
軍の規模、そして将軍職の人物の名前、さらに近衛隊の隊長の名前が解ったのは大きい。
そして、それに加えてこの部屋の主である軍司令……それと先ほどの兵士が届けたこの書類に書かれているジーニアス宰相と呼ばれる人物がいるようだ。
さて……この将軍や宰相たちはメリッサが母親を殺したということを信じているのだろうか……。
と、その時、部屋の外に気配を感じる……僕は咄嗟に窓から外に出た。
窓の外から様子を伺うと、一人の人物が部屋の椅子に座る。
どうやら、あの人物が軍司令と呼ばれる男の様だ。
男は椅子に座ると、机の上にあった資料に目を通し始めた。
あの男……かなりの使い手だね……。
もしかしたら、思ったよりも個人の力も強いのかもしれない……予想以上に厳しい戦いになりそうだ。
僕はそれを確認すると、窓から三階へと昇り、近くに人がいないのを確認すると窓から三階へ侵入した。
さて、後は宰相ジーニアスと呼ばれる人物の情報と今の王様の様子を見ておきたい……。
ジーニアスがどこにいるかは解らないので、とりあえずは王の間へと向かう。
そこならば、王様の姿があるかもしれない。
僕は出来るだけ目立たないようにしながら通路を歩く……少し歩くと一際大きな扉が見えてきた。
……あれかな?
僕は扉を少し開けると、素早く中に侵入し、柱の陰に隠れる。
「む?今、扉が開かなかったか?」
「いえ、私は気づきませんでしたが……?」
恐らく王だろう……煌びやかな服を着て兵士と話をしている。
どうやら、ビンゴの様だ。
「まあ、よい……して、抜かりはなかろうな?」
「はっ、マストリス殿が部隊を準備しております。明日の昼には出陣できるかと」
「ならよい、下がれ」
「はっ!」
出撃の準備?……まさかラリアスにと言う訳ではないよね……。
メリッサがラリアスにいることが知られている以上、可能性がないとは言えない。もしそうならば、今のうちにその部隊を潰しておくか?
僕がそう考えている、一人の男が扉を開けて入ってきた。
「む?ジーニアスか……どうした?」
「王女の件だ……どうやら、辺境の街ラリアスへ逃げていたらしい」
「ほう、見つけたのか……しかし辺境まで逃げるとは足の速い餓鬼よな」
「喜んでいる場合ではない……暗殺を命じた男の話によると「闇の魔女」と呼ばれる者が王女を保護したとのことだ」
「闇の魔女?聞いたことないが……」
闇の魔女という言葉に僕は反応する……暗殺を命じた男というのはカモメが対峙し、エリンシアが撃退したという男の事だろう。こちらの情報がばれてしまったのは痛いな……。
「どうやら、ラリアスに放った邪鬼を倒したらしい」
「なんだと!?」
……待て、今、あの男はラリアスに邪鬼を放ったと言った?
つまりあの邪鬼も、こいつらに関係しているっていうことか……それはいくら何でもマズいのではないか?……この国の軍だけではなくこいつらは邪鬼をも味方にしているということなのか?
そうなると、敵の戦力がどれほどになるのか……いや、そうだ……こいつらの後ろにはレンシアもいるはずだ……なら、邪鬼と繋がっているのはレンシアということか?
僕は動揺した……敵の戦力が多すぎる……今のままじゃ勝ち目なんてないのでは?
そう考え、動揺したのだ……だが、それがマズかった……。
僕が動揺し、気配を消しきれなくなった……そして……。
「誰だ!!」
ジーニアスが叫ぶ……こちらを向いて……気づかれた……。
「その柱の陰にいることは分かっている出てこい……さもないと地獄の炎で焼き殺す」
地獄の炎?……よくわからないけど、そう言うスキルなのか……それとも炎の魔法の事をそんな大層な名前で言っているのか……解らないけどバレてしまっている以上ここに隠れているのは悪手だよね……身動きが取れなくなる。
なら、仕方ないか……。
そう思って僕は姿を現す。
「兵士……か?」
「は、はい……申し訳ありません……偶々お金を落としてしまいまして……」
「嘘が下手だな……金を落としたただの兵士が、今の今まで我らに気づかれずに気配を消していたというのか?」
うん、嘘は速攻でバレた……いやいや、この状況を誤魔化せる嘘なんて出てこないよ……さすがに。
「貴様……何者だ?」
でも、僕が何者かなんてこいつらには解らない。
まさか、相手も闇の魔女の仲間がすでにこの城に入り込んでいるなんて思っていないだろう。
「大方、近衛の連中だろう……ギリアムを助けに来たか」
偽の王がそう言う……なるほど、近衛隊は王が偽物なことに気づいたのだろう……それで敵対していると……。
「さあ、どうでしょうね?」
「どうでもいい……ここで殺せば変わらん」
そう言うと、ジーニアスは僕に向けて手をかざす。
その掌から黒い炎が僕に襲い掛かった。
「ちっ!」
僕はクレイジュを抜き、その炎を切り裂く。
「何!?」
僕の行動にジーニアスは驚く。
「ならば、これなどうだ!」
ジーニアスの背後に黒い炎の狼のようなものが現れた。
「地獄の狼よ、奴を焼き殺せ!」
炎の狼が僕に襲い掛かる。
「クレイジュ!」
(あいよ、相棒!!)
クレイジュの刀身が光を放つ。
僕がクレイジュを振るうと、光の刃が炎の狼へと押しかかり、それを斬り裂き消し飛ばす。
「馬鹿な!?」
(相棒、外が騒がしくなってきた……逃げたほうがいいぜ!)
恐らく、先ほどの炎の狼を切り飛ばした時の音で外にいる兵士に気づかれたのだろう。
僕は大急ぎで扉の外へ出ると、そのまま近くの窓を割り、外へと逃げ出した。
その後は空を翔け、いったん街の外にまで逃げるのだった。
完全に失敗した……後でディータにネチネチ言われそうだ……。
だけど、かなりの情報を得ることが出来た……あ、ディータとどうやって合流しよう……。
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