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2部 3章
濡れ衣
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私達は訓練場を後にし、領主の館へと戻ってきていた。
「アンリエッタ~、起きて~」
訓練場で、炎の竜巻に切り刻まれようとしているヴァルガンの王女を見て、その意識を手放してしまったアンリエッタを私は頬をペシペシと叩きながら起こす。
「ま、魔女様?……う~ん、私は一体……はっ……ララ王女は!?」
「おう、アタシならここにいるぞ?」
「よかった、ご無事でしたか!?」
「当たり前だぜ!」
ララ王女の無事を確認したアンリエッタは胸を撫でおろすと、今度は私の方を見て怒る。
「魔女様!一国の王女相手になんて魔法を使われるんですか!ララ王女が死んでしまったらどうするんです!」
「あ、えっと……ごめん」
ララ王女が強いことはなんとなく解っていたのであれで死ぬとは思っていなかった……とはいえ、周りで見ている人からしてみればハラハラものだったのだろう。
アンリエッタを気絶させてしまった為、少し申し訳ない気持ちにもなるのだ……。
「カモメを攻めるな、ラリアスの領主よ……アタシとレオ兄が望んだ戦いだ……カモメとエリンシアはその気持ちに答えてくれただけさ」
「は、はい……」
「それよりも、今後の事について考えよう……だよな、レオ兄」
「ああ、先ずはアンダールシアの解放になるだろう」
「え、それでは……」
「うむ、我らヴァルガンはそなたらを信じ、手を貸すと約束しよう」
よかった、どうやら、ヴァルガンに協力をしてもらえることになったみたい。
「しかし、こちらに来る途中でアンダールシアの様子も見てきたが、街は至って平穏……圧政をひかれているわけでもないようだった……敵の目的が解らんな」
そうなのか……てっきり、王様が偽物に代わってやりたい放題なのかと思ったけど……どうやら、そうではないらしい。
「ワタクシ達の見解では、レンシアの狙いはアンダールシア、ヴァルガン、ローランシアの三つの同盟を壊すためのものと思っていますわ」
「ん、どういうことだ?」
「例えば、レンシアがヴァルガンに攻め入ったとなればどうされます?」
「そりゃ、戦うにきまってるだろ?」
ララ王女のその返答に、エリンシアはズッコケる。
思っていた答えとは違ったようだ。
「ララ……エリンシア殿はそんなことを言っているのではない……うむ、先ずは味方国に援軍を要請するだろうな……しかし、そうか……」
「レオ王子は解ったみたいですわね」
ララ王女は頭にハテナを浮かべている……でも、これはさすがに私でも解る。
「そっか、援軍を要請してもアンダールシアの王様は偽物……」
「ええ、援軍が来ないだけならまだしも、援軍を送ったふりをして裏切られたらどうなると思います?」
「不意打ちを喰らい、我が国は敗北するだろうな」
「なんだって……卑怯だぞ!!」
どうやら、ララ王女も状況が解ったらしく、声を上げた。
「それだけではありませんわ、ローランシアも援軍を送るためにはこのアンダールシアを通らなければなりません……ですが、通ろうとした援軍は邪魔されるでしょう」
「そうなれば、ローランシアも痛手を負い……その隙を突かれてレンシアに攻め込まれる可能性もある訳か……ふう……メリッサ王女には感謝せねばならんな」
「ですわね、彼女が逃げ延びたおかげで最悪の事態は回避されましたわ」
そうだったんだ……もし、メリッサが逃げのびていなかったら私達も全然知らずにいた……そして、レンシアが攻め込んできてどうなっていたか分からないだろう……。
「お手柄だぜ、メリッサ!」
ララ王女がメリッサの頭を撫でる。
「では、メリッサ王女は我々の国で保護すればよろしいか?」
レオ王子が尋ねる……そうか、ヴァルガンに保護してもらえば、メリッサの危険は減るだろう……だけど……。
「いえ、私も戦います」
「メリッサ王女!?」
驚きの声を上げたのはアンリエッタとフランクであった。
まあ、それはそうだよね……。
私達は、メリッサの気持ちを知っているから驚いたりはしなかったけど、今まで戦いとは無縁だった王女様が、戦うと言ったのだ……驚くだろう……って思うんだけど、レオ王子と、ララ王女は全然驚いている様子を見せなかった。
「そうか、ならば、このままカモメ殿に任せて問題ないか?」
「え、あ、うん……私は問題ないよ?」
「はは、いい面構えになったなメリッサ……今度勝負しようぜ」
「えっと……ありがとう……ございます?」
メリッサは褒められたことにお礼を言おうとしたが、最後の一言のせいで疑問形になってしまった……本当に戦うの好きだね、ララは……。
「じゃあ、レオ兄……父上への報告は任せていいか?」
「ああ、任された」
「ん、どういうこと?」
「ここには兵力なんて殆どないだろ?」
「うん、アンリエッタの所にいる兵士さんと冒険者くらいかな」
「それじゃ、戦力としては少なすぎるからな」
ララ王女の言う通り、国を相手にするには私たちの兵力は少なすぎる。
それは、クオンやディータも危惧していたので私も考えていた。
ヴァルガンとローランシアとの話が終われば、近くにいると言われるエルフに協力を仰ぎに行こうと思っていたのだ。
「だから、アタシが兵を率いてアンタたちに協力するのさ」
「王女、自らですか!?」
「ああ、その方が都合がいいだろうからな」
「どういうこと?」
今度は私が頭の上にハテナを浮かべていると、エリンシアが答えてくれる。
「メリッサと違い、ララ王女は国民にその顔を知られているのでしょう?……それならば、ララ王女がワタクシ達に協力してくれればメリッサさんが本物の王女であるとアンダールシアの国民に証明できるということですわ」
うん……と?証明するとなにかあるのかな?
「そうすれば、アンダールシアの国民の中にもワタクシ達に協力しようとしてくれる方も出てくるかもしれませんでしょう?」
「あ、なるほど……」
そっか、そうすれば、さらに戦力が上がるかもしれないんだね。
「レオ兄」
「うむ……その様子では知らんようだな?」
「何をですの?」
「メリッサ王女は母親を殺した罪人として手配されている」
「……え?」
どういうこと?母親を殺したのはあの時、メリッサを襲っていた男だよね……なんで、メリッサが殺したことに?……………まさか……。
「恐らく、偽の王に濡れ衣を着せられたのだろうな……そうすれば、王族を捕らえ、処刑することに異を唱える者はいない」
「……そ、そんな」
メリッサの顔色が青くなる………、それはそうだよ……自分の母親を殺したなんて濡れ衣を着せられたら……絶望する……人を信じることが出来なくなりそうになる……。
私もそうだったもん……すごく悲しくて……どうして……って、ずっと悲しかった。
でも、あの時の私にはクオンとディータ、そしてエリンシアやレディもいた……だから……。
「メリッサ……メリッサは一人じゃないよ……私達がいる……それに、きっと他にもメリッサの事を信じてくれる人がいるはずだよ……」
「魔女様……」
「うん、メリッサはやってないよ……大丈夫、私達はそれを知っているよ」
「う……うわぁああああああ!………私……お母様を殺したりなんてしてません!……してませんよぉ………ジュダもアンバーも……お父様も……私の大切な人みんないなくなって……それなのにそれが私のせいなんて……」
「うん、知ってる……貴方の大切な人は貴方を護ってくれたんだよね……メリッサはちゃんと覚えてる、その人たちの優しい笑顔を……その人たちの優しい言葉を……でしょ?」
「………はい」
それから、しばらく……メリッサは私に抱き着きながら泣いていた。
私はそんなメリッサを見ながら、グランルーンを追い出されたときの事を思い出していた……私も泣いたな……こんな風に……その時は、クオンが私を受け止めてくれたんだった……。
メリッサが泣き止むまで私は泣いているメリッサの頭を撫でながら、彼女の力になろうと、再度、心に決めるのだった。
「アンリエッタ~、起きて~」
訓練場で、炎の竜巻に切り刻まれようとしているヴァルガンの王女を見て、その意識を手放してしまったアンリエッタを私は頬をペシペシと叩きながら起こす。
「ま、魔女様?……う~ん、私は一体……はっ……ララ王女は!?」
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「当たり前だぜ!」
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ララ王女が強いことはなんとなく解っていたのであれで死ぬとは思っていなかった……とはいえ、周りで見ている人からしてみればハラハラものだったのだろう。
アンリエッタを気絶させてしまった為、少し申し訳ない気持ちにもなるのだ……。
「カモメを攻めるな、ラリアスの領主よ……アタシとレオ兄が望んだ戦いだ……カモメとエリンシアはその気持ちに答えてくれただけさ」
「は、はい……」
「それよりも、今後の事について考えよう……だよな、レオ兄」
「ああ、先ずはアンダールシアの解放になるだろう」
「え、それでは……」
「うむ、我らヴァルガンはそなたらを信じ、手を貸すと約束しよう」
よかった、どうやら、ヴァルガンに協力をしてもらえることになったみたい。
「しかし、こちらに来る途中でアンダールシアの様子も見てきたが、街は至って平穏……圧政をひかれているわけでもないようだった……敵の目的が解らんな」
そうなのか……てっきり、王様が偽物に代わってやりたい放題なのかと思ったけど……どうやら、そうではないらしい。
「ワタクシ達の見解では、レンシアの狙いはアンダールシア、ヴァルガン、ローランシアの三つの同盟を壊すためのものと思っていますわ」
「ん、どういうことだ?」
「例えば、レンシアがヴァルガンに攻め入ったとなればどうされます?」
「そりゃ、戦うにきまってるだろ?」
ララ王女のその返答に、エリンシアはズッコケる。
思っていた答えとは違ったようだ。
「ララ……エリンシア殿はそんなことを言っているのではない……うむ、先ずは味方国に援軍を要請するだろうな……しかし、そうか……」
「レオ王子は解ったみたいですわね」
ララ王女は頭にハテナを浮かべている……でも、これはさすがに私でも解る。
「そっか、援軍を要請してもアンダールシアの王様は偽物……」
「ええ、援軍が来ないだけならまだしも、援軍を送ったふりをして裏切られたらどうなると思います?」
「不意打ちを喰らい、我が国は敗北するだろうな」
「なんだって……卑怯だぞ!!」
どうやら、ララ王女も状況が解ったらしく、声を上げた。
「それだけではありませんわ、ローランシアも援軍を送るためにはこのアンダールシアを通らなければなりません……ですが、通ろうとした援軍は邪魔されるでしょう」
「そうなれば、ローランシアも痛手を負い……その隙を突かれてレンシアに攻め込まれる可能性もある訳か……ふう……メリッサ王女には感謝せねばならんな」
「ですわね、彼女が逃げ延びたおかげで最悪の事態は回避されましたわ」
そうだったんだ……もし、メリッサが逃げのびていなかったら私達も全然知らずにいた……そして、レンシアが攻め込んできてどうなっていたか分からないだろう……。
「お手柄だぜ、メリッサ!」
ララ王女がメリッサの頭を撫でる。
「では、メリッサ王女は我々の国で保護すればよろしいか?」
レオ王子が尋ねる……そうか、ヴァルガンに保護してもらえば、メリッサの危険は減るだろう……だけど……。
「いえ、私も戦います」
「メリッサ王女!?」
驚きの声を上げたのはアンリエッタとフランクであった。
まあ、それはそうだよね……。
私達は、メリッサの気持ちを知っているから驚いたりはしなかったけど、今まで戦いとは無縁だった王女様が、戦うと言ったのだ……驚くだろう……って思うんだけど、レオ王子と、ララ王女は全然驚いている様子を見せなかった。
「そうか、ならば、このままカモメ殿に任せて問題ないか?」
「え、あ、うん……私は問題ないよ?」
「はは、いい面構えになったなメリッサ……今度勝負しようぜ」
「えっと……ありがとう……ございます?」
メリッサは褒められたことにお礼を言おうとしたが、最後の一言のせいで疑問形になってしまった……本当に戦うの好きだね、ララは……。
「じゃあ、レオ兄……父上への報告は任せていいか?」
「ああ、任された」
「ん、どういうこと?」
「ここには兵力なんて殆どないだろ?」
「うん、アンリエッタの所にいる兵士さんと冒険者くらいかな」
「それじゃ、戦力としては少なすぎるからな」
ララ王女の言う通り、国を相手にするには私たちの兵力は少なすぎる。
それは、クオンやディータも危惧していたので私も考えていた。
ヴァルガンとローランシアとの話が終われば、近くにいると言われるエルフに協力を仰ぎに行こうと思っていたのだ。
「だから、アタシが兵を率いてアンタたちに協力するのさ」
「王女、自らですか!?」
「ああ、その方が都合がいいだろうからな」
「どういうこと?」
今度は私が頭の上にハテナを浮かべていると、エリンシアが答えてくれる。
「メリッサと違い、ララ王女は国民にその顔を知られているのでしょう?……それならば、ララ王女がワタクシ達に協力してくれればメリッサさんが本物の王女であるとアンダールシアの国民に証明できるということですわ」
うん……と?証明するとなにかあるのかな?
「そうすれば、アンダールシアの国民の中にもワタクシ達に協力しようとしてくれる方も出てくるかもしれませんでしょう?」
「あ、なるほど……」
そっか、そうすれば、さらに戦力が上がるかもしれないんだね。
「レオ兄」
「うむ……その様子では知らんようだな?」
「何をですの?」
「メリッサ王女は母親を殺した罪人として手配されている」
「……え?」
どういうこと?母親を殺したのはあの時、メリッサを襲っていた男だよね……なんで、メリッサが殺したことに?……………まさか……。
「恐らく、偽の王に濡れ衣を着せられたのだろうな……そうすれば、王族を捕らえ、処刑することに異を唱える者はいない」
「……そ、そんな」
メリッサの顔色が青くなる………、それはそうだよ……自分の母親を殺したなんて濡れ衣を着せられたら……絶望する……人を信じることが出来なくなりそうになる……。
私もそうだったもん……すごく悲しくて……どうして……って、ずっと悲しかった。
でも、あの時の私にはクオンとディータ、そしてエリンシアやレディもいた……だから……。
「メリッサ……メリッサは一人じゃないよ……私達がいる……それに、きっと他にもメリッサの事を信じてくれる人がいるはずだよ……」
「魔女様……」
「うん、メリッサはやってないよ……大丈夫、私達はそれを知っているよ」
「う……うわぁああああああ!………私……お母様を殺したりなんてしてません!……してませんよぉ………ジュダもアンバーも……お父様も……私の大切な人みんないなくなって……それなのにそれが私のせいなんて……」
「うん、知ってる……貴方の大切な人は貴方を護ってくれたんだよね……メリッサはちゃんと覚えてる、その人たちの優しい笑顔を……その人たちの優しい言葉を……でしょ?」
「………はい」
それから、しばらく……メリッサは私に抱き着きながら泣いていた。
私はそんなメリッサを見ながら、グランルーンを追い出されたときの事を思い出していた……私も泣いたな……こんな風に……その時は、クオンが私を受け止めてくれたんだった……。
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