破滅の魔王は逆行した世界で幽霊聖女に憑りつかれる!

遙かなた

文字の大きさ
2 / 8
第一章

2話 善行ミッション?

しおりを挟む
「あの、で、殿下。怖い夢でも見られましたか?そ、その大丈夫でしょうか?」

 メイドは俺のことが怖いのだろう。体を震えさせながら俺に尋ねてくる。


「いや、なんでもない。そうだな、少し夢見が悪かったのだ。下がれ」

「は、はい、失礼しました」


 メイドは勢いよく部屋から出て行った。


『アンタ、メイドさんを怖がらせて何が楽しいのよ?』

「怖がらせてなどいないだろう。別に俺は何もしていない」

『アンタねぇ、そんな怖い顔で睨みつけた上にあんな低い声で下がれなんて言ったら誰だって怖いわよ!』

「この顔は生まれつきだ!それに怖がれているのは顔ではなく俺の力だ」


 俺の力……『黒き炎』と呼ばれるこの力は一度炎に襲い掛かられればその対象を燃やし尽くすまで消えない。俺自身ですら一度炎をつけたら消せないのだ。つまり、俺に反感を買い、もしこの炎で攻撃されれば死は免れないという事だ。

 誰もが俺を忌避するのは当たり前。機嫌を損ねたら死ぬ。そんな相手と関わりたくないだろう。

『バッカねぇ。アンタやっぱり脳みそ豆腐だわ』

「なんだと!」

『そんなのアンタに信用がないだけじゃない。アンタならそんなことはしないと思ってもらえればあんなに怖がれないわよ!』

「……人を信用など出来るものか。貴様は俺のような力を持っていないからそう言えるのだ」

『何言ってるのよ、私に負けたくせに』

「うぐっ」


 そういえば、この女は俺の炎をいとも簡単に消していたな。何度燃やそうと笑いながらこちらに突っ込んできていた。この女の方が化け物では?


『まあでも、希望はありそうね』

「何がだ?」

『なんで私がわざわざアンタをタイムリープさせたと思ってんのよ?』

 ――――――――タイムリープ?時間を戻したことか?

「一体何の目的でこんなことをした?」

『決まってるでしょう?アンタの魔王化を防ぐためよ』

「なっ……出来るのか?いや、出来るはずがない!」

『出来る出来ないじゃないのよ。やるの』

 何を言っているのだコイツは、そんなこと……出来るはずが…いや。

「そうか、魔王になる前の俺を殺すのだな?」

『んなわけないでしょ!それじゃ意味が無いの!』

「意味ならあるだろう、それで魔王は生まれない」

 そうだ、魔王が生まれなければこの国は無くならず、父も母もこの国の人も……。

『駄目よ、そもそもなんで未来で私があなたを殺さなかったと思っているのよ』

 確かに、未来のあの時俺は負けていた。時間を戻す意味はない。

『アンタの魂は呪われてるの』

「な…に?」

『仮に肉体を殺したところでまた復活する。何度倒しても意味ないのよ』


 頭が真っ白になった。つまり俺は、永遠に人を殺し続ける。
 いや、たとえすべての人間を殺してもさまよい続けるということだ……あの憎しみと怒りを抱きドス黒い感情だけが溢れかえっていたあの状態で。

『なに落ち込んでんのよ!だから魔王にならなければいんでしょうが!』

「そうだ、今の俺は魔王ではない。なら今の俺が死ねば蘇らないのでは!」

『どうやって?』

「誰かに殺してもらえば!」

『誰が黒き炎のアンタを殺せるのよ?私はいないのよ?』

 ぐむ……確かにほとんどの人間は俺を殺そうにも黒き炎が怖くて出来ないだろう。かといってコイツのような人間をやめている規格外の存在は……。


『アンタ、失礼なこと考えてるでしょう人外魔王』

「誰が人外だ!それなら自分で死を選ぶ!」

『アンタ、絶望して自害した結果、魔王に覚醒したって聞いたんだけど?』


 そ、そうであった。俺は父に母、そして国民すべての人間に嫌悪されその結果自害を選んだ……それなのになぜ魔王などに……。くそっ、それでは意味がないではないか!……だが、それでは。


「どうすることも出来ないではないか……仮に絶望しなかったとしてもどんなタイミングで魔王になるかもわからん」

『アンタねぇ、私が何も考えていないと思う?わざわざこんな状態になってここにいるのに意味が無いと思っているのかしら?』

「……どういうことだ?」

『アンタに私の力をあげる』

「聖女の力を?」

『そう、この清く美しい私の力を!そうすれば、アンタの黒き炎と打ち消しあえるはずよ』


 つまり、俺の魔王化の原因はこの黒き炎の力にあるという事か?そして、聖女の力であればそれを打ち消せる……もし、本当にそうだというのなら。

「頼む、聖女セラティナよ。俺に力を貸してくれ」

『むぐ、いきなり真面目になるんじゃないわよ。調子狂うわね……頼まれなくてもその為に幽霊になってまでここにいるんじゃない』

「頼む。そういえば時間を戻したのは魔王化した後だと聖女の力でも打ち消せないからか?」

『そうね、それもあるわ。』

「それも、ということは他にも理由があるからか?」

『ええ、そうよ。聖女の力をあなたに上げるには時間がかかるの。それにあなたの協力も』


 なるほど、その為の時間稼ぎに時間を巻き戻したという事か。こんな子供の頃まで戻したのだ、それだけ大変な試練が待っていると考えたほうがよさそうだな。


『ってことで悪行多き根暗魔王ちゃんには善行ミッションを行ってもらいまーす♪』

「……あん?」

 誰が根暗魔王だ……いやそれより善行ミッションってなんだ?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2話目になります。
読んでいただきありがとうございます!
宜しければ、感想やいいね、お気に入りなどしていただけると嬉しいです!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

処理中です...