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1章

16話

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 リリーの案内に従って森の中に進むと、森の中にしては立派なお城が出てきた。王都にあったようなお城ほど大きくはないが私とアンデットちゃんが暮らすには十分なお城である。見た目は王都にあったお城と同じように洋風のお城である。見たところ城下町跡などもない為、前王都というわけではないだろう・・・とすると、この城一体何の目的で?まあ、風変わりな貴族が作ったとかかしらね。


「それで、あの中には盗賊がどれくらいのかしら?」
「いっぱいよ!!」


 具体的な数が解れば良かったのだが仕方ないわね。とはいえそれなりの規模の盗賊団というわけか・・・うーん、やっぱりサクッと殺しちゃったほうがいいかしら?城の門には見張りらしき盗賊が二人立っている・・・ボーっとしていたり、よそ見をしていたり、サボっていたりなどしていないところ見ると結構統率がとれた盗賊団?正面から乗り込んだ場合誰も殺さずには難しいかしらね?出来るだけ国と対立なんてのはしたくないから盗賊は引き渡す形にしたいのよねぇ・・・あ、そうだ。


「リリー」
「なによ?・・・え、なんで笑顔なの?なんかすごいやな予感がするんだけれど」


 私の作戦に耳を貸したリリーが「いやぁああ!なんでかわいい私がそんなことしないといけないのよぉおおお!」などと叫んでいたが命令と言うと嫌がりながらも渋々頷いた。あは、泣いてるリリーかわいいわ♪

 私はアンデット達みんなを召喚するとまずはリリーを門番たちの下へと向かわせた・・・ゆっくりと飛んで、まるで彷徨う魂のように・・・。


「お、おい・・・あれなんだ?」
「人形?・・・いやでも宙を浮いて・・・」
「くるしいよぉ・・・かなしいよぉ・・・」


 リリー、重く詰め痛い言葉で淡々と言葉を発する。その言葉を聞いた盗賊たちは青ざめお互いに抱き合った。顔を伏せていたリリーは徐々に徐々に二人に近づくと、二人の顔の目の前まで浮遊していき、そこで突然顔をあげる。リリーの顔は口が裂け、目は見開き血走っており、その状態で顔だけ体の三倍ほどにまで膨れ上がる、


「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!」


 悲鳴を上げた二人はその場で泡を吹き顔から液体という液体を垂れ流しながら無様に気絶をした。


「リリー、ナーイス!」
「私の幻術はこんな風に使うためのものじゃないのにぃ!」


 そう、膨れ上がった恐怖の顔のリリーはリリーが幻術で作ったものだ。どうやらバンシーになる前に習得していた魔法やスキルはアンデット化後も使えるようで、リリーは幻術のスキルを持っていた。元々悪戯にしか使っていなかったらしいので今の使い方と一緒だと思うのだけれど。

 とにかくこの方法であれば殺さず捉えることが出来るだろう。気絶した盗賊を踏ん張り、私たちは門の中へと進んでいく。ある時はアントワネットに近づかせしゃれこうべをカタカタとならさせると盗賊は恐怖で走り出し壁に激突して気絶する。ある時はフェデルタに近づかせ、騎士が攻めてきたと思った盗賊が思いっきりフェデルタの頭を鈍器で叩くと、兜が外れ中身のない鎧が動き出すという絵面が完成する。すると盗賊たちは何を土地狂ったのか「これは夢!これは夢!」と叫びながら壁に自ら頭を打ちつけ気絶した。・・・、こうなることを予想してやったのだけれど正直あれのどこが怖いのかしら?可愛いしぐさをする愛らしいアンデットにしか思えないのだけれど・・・。


 そして、城の奥の王座の間へと行くと辺りから悲鳴が聞こえ、混乱した盗賊たちが身を寄せ合いながら震えていた。大の男が情けない。見た限り残りは8人ほどである。この程度なら殺さずに倒すことも出来るが・・・あの震えてる姿を見るともっと遊びたくなるのは淑女の嗜みというものだろう。私はリリーを肩の上に乗せ幻術を使わせると、ゆっくりと王座の間へと足を進めた。
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