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ゴブリンの村

れいか嬢はこんな感じ

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 まほう。
 マホウツカイがいることは知っています。
 おじいさんやおばあさんは見たことがあるそうですが、わたしはまだ見たことがありません。
 いえ。きのうも今日も見ました。
 かねかつらさま。
 見上げるほど大きな方で、でもはじめて見たときから、ふつうの人とはちがうかんじでした。
 ほんとうにかっこいいのです。
 色はわたしたちより黒く、それだけでもかっこいいのですが、それよりもかおです。
 すっとした引目、これもすっとしたおはな、カギバナというのでしたか、とてもととのったかお立ちをなさっています。カミノケがゆたかで白と黒がまざってキラキラして、これもほんとうにかっこよいのです。
 くらいほら穴からでてこられたときのあの心に体にドンと何かが当たったような思いはわすれられません。
 大きい男の人はたいていアタマが悪くて、お父さんのほかはこ言葉もうまく話せない人が多いのですが、かねかつらさまはちがいました。とてもていねいなことばを話され、またとてもよいお声で、ずっと話していたかったくらいでした。
 村がたいへんな目に会おうとしていることは知っていました。きやまいでふさぎがちなお母さんのために花を取ろうと思って山へ入り、本当に良かったです。神さまにかんしゃの言葉をささげます。アーメン。
 きょうはお母さんのたんじょうびだし、かねかつらさまという、い大なマホウツカイさまをむかえられてとてもぜいたくなゴハンもいただきました。
 きのうはなかよしのすてが本当のすがたにもどりました。
 なんという良い日なのでしょう!
 そうおもっていましたら、まさか!まさかわたしまで!本当のすがたにしていただけるとは!
 うれしすぎてあたまがうまく回りません。ときどき力しごとにくる、やすみたいにうまくはなせませんでした。かおから火が出るほどはずかしかったです。
 もうなんだかどうしていいのかわからず、すてのされるがままになっていたようでした。
 きがつくと、くりに一人。
 ああ、そうだ。すてはお父さんをよびに行ったんだ。
 かねかつらさまはほんどうかな。
 そうだ、さゆをもっていこう。
 かねかつらさまのまほうで出されたお水はほんとうにおいしくて、いくらでものめてしまいます。
 かまどののこり火をおこして、みずをあたため、小ぎれいなお茶わんにいれておもちしました。
 かねかつらさまはキツネさまとお話しておられました。
 そのりりしいおかおに見とれてしまいます。
 と、声がかかります。
「ありがとう。」
「おそまつさまです。」
「……。ところで、多分れいかさんも魔法を使えるようになってると思うんだけど、わかりますか?」
「本当ですか!」
 まさかまさか。本当に信じられませんが、かねかつらさまの言うことです。きっと本当なのでしょう。
 たとえようのなくきれいになった自分の手足をみてしまいます。そうだ、本当に変わったんだ……。
 かおをまだ見ていないけれど、すてのようにきれいになれたんでしょうか?
「じゃあ、境内で試してみるか。」
「はい!」
「あそうそう、風呂敷持ってきてたよな。」
 お母さんやおばあさんにおねがいして、よいものをいくつかかりました。
 好きなものをえらべと言われてもこまります。どれもとてもきれいなのです。
 ようくかんがえて、おばあさんのうめ色のものをえらびました。はしの方にうめの花がいくつかそめぬいてあってとてもきれいだったからです。
 かねかつらさまはそれを見ていくどかおったりもどしたりして、わたしのあたまにフンワリとまいてくれたのです!ああ、なんとしあわせなことでしょう!アーメン!
 わたしは一生かねかつらさまに仕えることをあらためてちかいました。もちろん、すてもいっしょです。
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