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第1章

第12話 作戦会議

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 大王の掛け声を合図に、当たり前のように作戦会議が始められた。

 (なんで私まで?)

 「ときに、長官様、これは必要ないのでは?」
とにかく腹が立ったので、さっきまで(不本意だけど)父親だと思ってた人にバカ丁寧な言葉遣いで、テーブルの上の一升瓶を指さしながら進言した。

 「何、これはお守りみたいなものだ。」

 にしても、弟の背中から出ている龍が気になるよ。弟は寝てるから気付いてないみたい。

 「大王様、そんなに体を小さくされていますと、窮屈ではありませんか」
「いや、もう慣れた。長らく小さくなったままだから、ちゃんと大きくなれるか心配だが。」
 
(えーっ、本当はどんくらい大きいんだろう?)

「あの、2、3質問があるんですが、大王は弟の体を借りてこの星に生息してるんですよね。で、皆さんは誰かの体を借りていて、本体は別にあるのですか」

 「いや、僕達は宇宙人だから人間になれる。だからこの星では僕は僕だし、利子は利子、君のお父さんは君のお父さん。でも大王は龍だからね、人間にはなれないんだ。まあ、弟さんに寄生している感じかな」

 「えっ、それって弟の体に影響あるんじゃないんですか」

 「はは、大丈夫、大丈夫、むしろパワーを分けてもらえるから病気にもならないし、能力もアップする」

 ああ、こんな貧乏で、ひどい家庭環境でも健康体ですくすく育っていて、成績も優秀なのは、そういう理由もあったのか。もちろん、弟の努力もあるけどね。多分。

 「宇宙人の大王って龍なんですか。皆さんは同じ星の宇宙人なんですか」

 「うーん、もともとは肉体ないから、ひとつの星にずっといるわけじゃないし、大王は国とか場所の王というわけじゃなく、大きな念のまとめ役みたいな感じかなあ」

 (ああ、わけわかんなすぎる)

 「まあ、人間の概念では計り知れないのが宇宙の仕組みなんだよ」
 
 (もう、いいや。じゃあ、次の疑問を解消しよう)

 「お父さん、店に来たのは初めて?」

 「う、う~ん、まあ、裁判で偶然正義まさよし(弁護士の名前)が相手になって、あの店に利子がいることを聞いて何度か打合せのためにに会いに店に行ってた。普通はお前とは顔を合わせないからな」

 まあ、普通は他の客と会わないようになってるけどね。

 「でも、利子ちゃんに会うためなら店でなくてもよいのでは」

 「まあ、それはまあ、なんだ」

 なんか、ばつが悪そうに言葉を濁す親父。

 「はあ、もうひとつの目的も毎回実行されていらっしゃるわけですね」

 「まあ、それは人間の男性やってると聖なる欲望というやつがうずくわけでな」

 「利子ちゃんが可愛そうじゃない」

 「いえ、仕事ですから」

 (うーん、それはどっちの仕事のことを言ってるのかな)

 「ちゃんと報酬はいただいておりますので」

 (うーん、それもどっちの? 風俗嬢としてのだったら、それ私の稼いだお金だよね。娘が体売ったお金で、別の女を買う父親っていったい? そんなやつが宇宙の平和を守る組織の長官っていったい宇宙って?)


 「私と同じ店に利子ちゃんがいたことも、裁判で弁護士さんに出会ったのも、そもそも私があなたの娘なのもみんな偶然だっていうの? あまりにも偶然重なり過ぎじゃないの?」

 「娘、すべては仕組まれているのだ。我々の計り知れないところで、見えない意図が複雑に重なり合っているのだ」

 ああ、わけわかんないこと言って丸め込もうとしてるけど、こいつが稀代のダメ親父という現実は変わらないよ。
 しかし、解せないのはこのダメ親父がこんな巨大なプロジェクトの長官だということだ。

 「いや、この星は欲望の多い星だな。欲望の前には任務や使命などというものはたやすく屈してしまうものなのだな」

 まったく反省する様子もなく、ダメ親父と弁護士は顔を見合わせ、薄笑いを浮かべながら頷きあっている。
 
 あああ、巨大な悪の組織に立ち向かおうっていう正義の組織のメンバーなはずの男2人が、こうもたやすく欲望に負けてしまうとあっては、このプロジェクトの失敗は目にみえてるじゃないか。

 「えーいっ、あんたたちにはもうまかせておけないわ。私がこの作戦の指揮を執ります」

 自分の意志とは別の意識が勝手に自分の口と体を動かしている。言ってしまってから全身の震えが止まらない。

 やっと震えが止まった頃合いで3人から大きな拍手が沸き上がっていた。

 「素晴らしいわ。やはりこの星のことはこの星の人間が変えなければ、根本的な解決は得られないのよ」

  なんか、うまく乗せられた感は否めないけど、もうこうなったらとことんやってやるう!

 
 


 


 

 



 
 
 

 
 


 




 
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