地の底から這い上がる

海月 結城

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転移

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ーーーーー
「ナツメって身体強化の魔法はどんな使い方してるんだ?」
「俺って魔法使えないんだよ」
「……え? 魔法が使えない? さっきリザードマンの頭を潰したのってただの腕力とかその他もろもろだけってことか?」
「あー、そうだね」
「まじかよ」
「ん、どうしたレンジ」
「あぁ、聞いてくれよボウマ。こいつ、魔法使えないらしいんだ」
「は ︎ お前まじかよ」
「え? 何かダメでした?」
「いいか、よく聞け。魔法が使えない“ゴミ”は要らないんだよ」
「……え?」

 そう言って、レンジは腰のポーチから複雑な魔法陣が描かれた魔石を取り出した。

「お前とはここでバイバイだ。運良く生きてたらいいな」
「……え? 何を言って……?」
「バイバイ。哀れな異世界人君」

 シュルハがそう言った直後スキルの石が発動した。足元に魔法陣が描かれ、ダンジョンの天井に届く程の高さまで光が伸びた。

「……お、おい。嘘……だよな? ……なぁ、俺たち、仲間なんだよな?」
「仲間? んなわけねぇだろ。お前は元から裏切られる運命だったんだよ」
「……嘘、だろ? 俺はまた裏切られるのか?」
「あぁ、そういう事だよ。お前の仲間は全員お前をただのカモだとか、そんな風にしか思ってないんだよ。お前の仲間の、あの猫も内心お前のことをいつ裏切ろうと熟考してるだろうよ」

 そういって、レンジ達はゲラゲラ笑って俺のことを見下していた。

「……にゃぽは、そんな事、しない!!」
「本当にそうか? 安心させて、信用させて、地獄に突き落とす。これほど愉快なことは無いんだぜ。そいつも、それを知ってて、お前に近づいたんだろうよ」

 俺は、その言葉に心を壊されかけていた。

(にゃぽは、絶対にそんな事しない! あんなに楽しかったのに。あんなに心を通わせていたのは、俺を裏切る為? そんなはず無い! でも、そうだったら俺は、もう、誰も、信用、出来ない)
「なぁ、だったら聞いてみるか?」
「……え? 何を言って……」

 ボウマが指を鳴らすと岩陰から男が一人出てきた。そこには猫が一匹抱かれていた。

「さー、トレチャ。お前の本心を聞かせてくれよ」
「……そこにいるのは、にゃぽ?」
「私はにゃぽなんてだっさい名前じゃ無いです。トレチャです。これだから餌は……」

 そこに居たのは紛れもなくにゃぽだった。

「お、おい。にゃぽだろ?」
「はぁ、違うって言ってんでしょ? 言葉も分からないんですか? もう、いい顔も見れましたし、食っちゃって良いですかな?」
「まぁ、待てトレチャ」
「はい! ご主人様!!」

 にゃぽはレンジの事をご主人様と呼んでいた。

「おい、嘘だよな、夢だよな。なぁ、覚めてくれよ、夢なら……覚めてくれよ……」
「おいおい、夢なんかじゃ無いぞ。これは現実だ」
「……なぁ、にゃぽ。あの時約束した事覚えてるか? 一緒に居るって、ずっと一緒だって約束したよな、あの約束は嘘じゃ無いんだよな?」
「はぁ、まだあんな事を言っているんですか? これだから“ゴミ”は、そんな約束守るわけないじゃ無いですか!!」

 俺は、力無くその場に倒れてしまった。

「もう、さよならだな」

 シュルハがそう言った瞬間、魔法陣が一際大きな輝きを見せた。

「それは、転移のスキルだ。目的地はダンジョンの最下層だ。『地獄』だろうな」
「ま、せいぜい頑張って生きろよ」
「じゃあな、ナツメ」
「さよならです。“ゴミ”」

 俺はそれをぼやけた視界で見つめながらダンジョンの最下層に転移した。

「はぁ、これでいいんだよな」
「あぁ、ナツメには悪い事をしたな」
「この世界の為とは言え、いい奴だった」
「そろそろ、こいつの『催眠』解かないとな」

 そう言って、ボウマがにゃぽの頭の上に手を置くとにゃぽの目に光が戻った。
 にゃぽは意識を取り戻した瞬間、魔獣の姿になりレンジ、シュルハ、ボウマを一瞬で片付け、にゃぽをここに連れてきた奴も殺した。

「……ご主人様!!」

 にゃぽはナツメを探すために駆け出した。
ーーーーー
次で主人公強くなる、、、はず
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