元女子高生ですが、異世界で人狼(男)やってます! ~人狼さんと錬金術師の卵~

涼波

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第2章 人狼さん、冒険者になる

30話 人狼さん、採取する

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 街を出て、東へ一時間ほど歩いた雑木林の中。
 依頼を受けた薬草の採取場へと到着した。
 どこにでもある雑木林だけど、ここでいいんだよね? 思わず手に持っている地図を見直すけど、間違いないようだ。

 いやー、見事に誰も居ないね。
 耳を澄ましても、聞こえてくるのは小鳥の囀りぐらいで人の気配は無し。
 人気が無い依頼だとは聞いていたけど、本当なんだなぁ。

 そんなことを思いながら、正式に依頼を受けた時のことを思い出す。
 ニコラに本当にいいんですかと念を押されたけど、何も問題が無いので大丈夫だと頷いたんだよね。そしたら、本気で感謝されてしまった。

 その時、大げさに両手を握られてお礼を言われたんだけど、周りにいた若い冒険者達の顔がちょっと笑えた。
 なんて言うのかな、自分の好きな子が他の男に告白してる現場に居合わせた、みたいな絶望感満載の顔?
 大げさだなぁと思ったけど、ニコラは受付のお姉さんの中でも一番美人だから、憧れてた男の人達は多いのかも。
 多分、次に依頼が出たら、率先して受ける男達が続出するんだろうな。
 冒険者は女の人が少ないから、出会いが無いんだろうね。大変だ。

 さて、私も受けた手前、しっかり仕事をしようか。
 一見普通の林にしか見えないけど、足元を中心に草花に鑑定をかけていく。するとあるわあるわ……。

 なんかよくわかんないけど、沢山生えてるなー。
 あっちにもこっちにもと生えまくってて、まるでよくある雑草の一つにしか見えない。 
 採りに来る人が滅多にいないようだから、生え放題なのかもしれないね。
 そんなことを考えながら、屈みこみブチブチと摘み取っていく。
 根を残しておくと次の年も元気に生えてくるらしいので、そこだけ注意して採取する。
 
 それにしても鑑定って、相変わらず便利すぎるね。
 知識が無くてもその情報を読み取ることが出来るから、初見でも余裕だし、似ている草があっても迷うことなく採取できる。
 どの部位が必要かもわかるし、採取後の処理の仕方まで完璧だ。
 今回のこれも楽勝だよ。

 しかも、エイダから買った収納系アイテムのお陰で、いくらでも採り放題だ。  
 二コラ曰く人気の無い依頼なので、採れるだけ採ってきて欲しいとの要請も受けている。
 どうやらギルドで一括で買い取って、依頼が来るたびに小出しにしていく気らしい。良い案だよね。
 ニコラの手を握る夢を見ている男の人達にはご愁傷さまとしか言えないが、あえて口に出すのも野暮というモノだろう。
 しばらくは、張り出されない依頼書に夢見るのも良いよね。
 
 でもこれって、収納系に保管しておけば劣化しないからこそ、出来ることだよね。
 収納アイテム内は時間が止まっているらしいんだけど、原理がよくわからない。分からなくても使うのには問題無いからいいけど。
 日本にいた時も、そういう物はあったしね。
 ホントこの世界は恩恵といい、色々便利なモノがあるよ。

 便利といえば、ヒナも持っていると判明した錬金術がダントツで便利だと思う。
 エイダが体の一部が欠けても速攻で治せる薬の話をしてたけど、よく考えたらチートだよ。

 エイダを手伝った時に他にも色々話をしたんだけど、この世界には《回復師》という、怪我や病気を魔法で治せる恩恵があるのだそうだ。
 薬も必要なく、手をかざすだけで傷を治してくれる。
 そんな素晴らしい恩恵なので、かなり有難られる職だ。 
 で、彼らは自分の魔力を使って傷なんかを治すらしいんだけど、その魔力の量でかなり差があるらしく、当たり外れが激しいので、見極めが大変らしい。

 魔力が多く練度が高い回復師だと、切断直後の身体ならばくっつけたり生やしたりできるが、未熟な回復師や魔力の少ない回復師だと、傷を塞ぐのがやっとなのだそう。
 この練度というのは、私が鑑定した時にでてくるLvのことらしいので納得できる。Lv1とLv10じゃ、差があり過ぎだ。

 しかも、立て続けに大怪我を直していたら魔力が枯渇して自分が死ぬという事故もあるらしく、回復師達も万能じゃない。
 一応、魔力回復の薬もあるそうだが、それを併用して延々と回復するのにも体に限界があるらしい。

 そんな時に使えるのが、錬金術師の回復薬。
 いわゆる回復ポーションというやつだ。
 飲めば切断した手足が、瞬時に生えたりくっついたりしてくれるという夢のアイテム。
 ただこれも制限があって、古傷には効果は無いらしい。
 それでも回復師がいなくても戦い続けることが出来るのだ。画期的と言えるだろう。

 何と言っても、回復ポーションは回復師のように魔力枯渇で死者が出るわけでもない。枯渇して回復できない回復師の代わりにもなる。
 持ってさえいれば、即死以外なら必ず生きて五体満足で戻って来れるのだ。
 正にチート。便利すぎる。
 戦闘大好き人狼さんには夢のようなアイテムだが、あいにく里には回復師も錬金術師もいないのだった。残念。

 しかも錬金術師は、圧倒的に数が少ないレア職だ。
 その為、彼らの作ったアイテムの流通量は少なく、値段が高いのが当たり前。駆け出しの貧乏冒険者には、傷薬よりも遥かに手が届かない高嶺の花なのだ。
 私も値段を聞いた時には驚いたけど、冒険者をやっていくならお守り代わりに一つぐらい常備しておきたい。

 いくら人狼が強くても、切断されたら元のようには治らないからね。他の人族と同じく、再生能力は無いのだ。
 むしろ、再生能力は一部の魔物が持つものなので、人族が持つことは無いらしい。

 まぁ、獣化した人狼が腕を切り落とされるとか、私からすると想像つかないんだけど。里のみんなも強いからなぁ。
 だからこそ、治療は薬師だけで問題無かったんだよね。
 それでも、黒狼は迫害されて人間に殺された過去があるし、最強という訳じゃないんだろう。

 そういえば、黒狼がどうやって殺されたのか聞いてないな。
 聞かされていないという事は、今の人間達には、そういうことはされないと確信してるからなんだろう。
 じゃないと、人間の街になんて送り出してくれないよね。
 人狼からすると、過ぎたことを一々細かく掘り返して恨んだりするのは好まないから、あったことはあった、で済んでしまうのだ。
 過去にそんなことがあった、次はそうならないように進んで行こう精神なんだよね。

 それにしても、回復ポーションかぁ。
 ヒナも将来的には作れるようになるのかな。
 伝説級の錬金術師となると、回復師でも治せない病気を治す薬とかも作れちゃったりするらしい。凄いよね。
 ただ、まともな物が作れるようになるには時間がかかるってノアも言っていたし、大変そうだよね。
 そういや、錬金術が他の恩恵より習得しづらいってヒナは知ってるんだろうか。いくらなんでも、知ってるよね?
 いや、それよりも、どうやってヒナに声かけよう……。

 脳内で一人考えを巡らせ下草をかき分けて薬草を採取していくが、もちろん周囲の索敵は怠らない。
 索敵はレベルも上がっているおかげで、かなり遠くまで探ることが出来て重宝している。
 気になる気配は今のところ感じられないので、そのまま採取を続けることにした。

 ただこれ、来る途中に襲ってきた魔物達を返り討ちにしてたから、魔物達に逃げられただけなんだよね。
 本来は魔物が結構襲ってきてウザいんだろうな、とは思う。やっぱり新人冒険者にはきつそうな依頼だ。
 そんな静かな林の中で、黙々と無言で採取していく。

 うーん。
 あとどれぐらい要るのかなぁ。この草……。
 採取って、単調なんだね。
 魔物を相手にするより、辛いです。うん。
 
 

 

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