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第14話:尾行!尾行!のち・・・ありえないキス
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二階堂愛里沙・・・。何よ!あいつ!
腸が煮えくり返るほどムカついている。
『あんたがたまたまくだらない男にしか会えなかっただけでしょ!?』
そうよ!そのとおりよ!それの何が悪いってのよ!
だから、こっちから願い下げだっつーの!
あんただって、そのうち大きくなって男に騙されりゃわかるわよ。
ああ・・・むしゃくしゃする!
コンビニに立ち寄って、ストロング缶を買う。普段の私はあまりアルコールを飲まないが、今日は別だ。このいらだちを抑えるのに、酒の力を借りたい。借りずにはいられない。
コンビニの近くの公園のベンチで、ブシっとストロング缶を開け、一息に呷る。冷たいアルコールが喉を通過し、胃がカッと熱くなった。
500mlの半分も飲む頃にはいい感じに酔いが回ってきた。
「何が『私が許さない!』よ・・・」
思い出したくないのに、さっきの二階堂愛里沙の切った啖呵が頭にリフレインする。
ああ!もうムカつく!
腹立ち紛れに残りを一気に呷ってしまう。ああ、足りねえわ・・・。
念の為、と買っておいたもう一本も開けた。
許せない・・・『私の秋良を』って・・・。
なんで、あんなに怒れるの?
酔いが回って、頭がくるくるしてきた。思い出したくないことをたくさん思い出す。もっと、もっと昔のこと。
熊谷健太・・・。
アイツらがやったことについては、ふざけんな、と思った。
でも、私もアイツのことを別にそれほど好きじゃなかったんじゃないかな。
それに、その後の小学生とのセックス・・・好きだったのかっていわれれば、そうじゃないかもしれない。興奮はした、征服感はあった・・・でも、それは愛だろうか?
ああ・・・そうか・・・イライラしている理由がわかった。
二階堂愛里沙、あの子はちゃんと愛しているんだ。
紫藤秋良を・・・
大事にしてるんだ、あの武内小太郎を・・・
だからか・・・そんなに人を愛せる、大事にできるあの子が、羨ましくなって、自分が情けなくて、それで、苛つくんだ。
そうだ・・・私がカップルを壊したいと思うのも、私にないものを持ってるのが妬ましくて、欲しくて・・・だからだったのか・・・。
こんな、自分の心の内を、あんな年端もいかない小娘に暴かれて・・・。
ああ・・・いけない、駄目だ・・・。私は一人で生きてかなきゃいけないのに・・・
こんなところで泣くわけにはいかないのに・・・。
涙が、出そうだ。
ぐいっと二本目のストロング缶の中身を胃に流し込む。
もう、取り戻しようがない。どうすることもできない。
あのことを武内先生に知られた以上、この学校も早々に引き払うしかない。何を口実にしよう。親でも死んだことにしようかしら?
あゝ、私ってば・・・情けない。
二階堂愛里沙・・・あんな真っ直ぐで、曇りがない目で、好きだって言える。
なんなのよ、あいつ・・・。ほんと、ほんとうに鬱陶しくて・・・眩しくて、羨ましい・・・。
そんな事を考えていた。
そう、このときの私は、ぐるぐるとした頭で、ぼんやりと考え事をしていて、いつもなら払うはずの当然の注意を払っていなかった。こんな暗がりで一人ぼけっとしているなんて、普段なら絶対にしないことだった。
そして、考え事に夢中で、周囲を知らない数人の男性に囲まれていることにすら、気づかなかった。
「おっやー!?お姉ちゃん・・・一人?随分酔っ払ってるみたいじゃん?俺等と・・・遊ばない?」
ニヤニヤと笑いながら、崩れた格好をした若者が5人ほどで私の周囲を取り囲んでいた。
逃げなくちゃ・・・。立ち上がり、駆け出そうとするが、酔いが回っていて、うまく走れない。足がもつれたところを男の一人に抱きとめられるようにされてしまう。
「おお!お姉さん、積極的だねえ・・・!おっぱいでけえし・・・これから楽しいことしようぜ?な?」
ぎゅっと手首を掴まれる。とても力じゃ敵わない。
後ろから腰のあたりを両手で掴まれ、なおさら身動きが取れないようにされる。
「静かにね?騒ぐと・・・わかるよな?」
後ろから私を捕まえている男が耳元で言う。
「おいおい!脅しちゃ可愛そうじゃん?・・・大丈夫、大丈夫、俺達紳士だし!」
「そうそう・・・優しく輪姦(まわ)してあげるから」
ゲラゲラと下品に笑い合う男たち。
私は唇を噛む。悔しい・・・たしかにあの娘の言う通り。私が会ってきたのはくだらない男ばかりだった・・・。昔も、そして、今も。
男たちの笑い声が、かつて教室で私をバカにしていた男子の笑い声に重なる。
なんで・・・なんでよ!
なんで二階堂愛里沙はあんなにまっすぐいられるのに・・・私は・・・私は・・・。
「ささ・・・行きましょう、楽しい、楽しいパーティーだよ?」
ぐいっと手を引かれる。
『天が許しても私が許さないんだから!』
そんなふうに言える自分になりたい・・・。あのときも、私は馬鹿にされたままただ引っ込んでしまった。二階堂愛里沙なら、迷わず教室に怒鳴り込んでいっただろう。
そうか・・・そうなりたい。私も、ちゃんと私でいられるように・・・。
だったら、せめて抗ってみよう。今回は。たとえ駄目でも、何でも!
「いや!離して!!」
私は無茶苦茶に腕を振って抵抗する。突然の抵抗にびっくりしたのか、手首を捕まえていた手が緩む。その隙に持っていたハンドバックをブンと振り回して、周囲にいる男を牽制した。
「助けて!!」
大声で叫ぶ。
「おいおい・・・騒ぐなよ!」
ただ、多勢に無勢、すぐに私は羽交い締めにされ、口を手で塞がれる。
ちくしょう・・・ちくしょう・・・!
ガリ・・・と思い切り手を噛んでやった。
「痛って!」
慌てて、男が口から手を離すが、羽交い締めは溶けていない。
「助けて!!!!」
口が開いた隙にありったけの声で叫ぶ。だが、またすぐに口を塞がれる。今度は噛まれないように誰かの洋服越しだ。
そして、腹に一発パンチを食らってしまう。
ぐううう・・・。
重苦しい衝撃で思わず前傾になる。
「騒ぐなよ!姉ちゃん・・・・諦めて?な?」
あ・・・諦めるもんか!
なおも私は力のかぎりジタバタした。
「しょうがねえなあ・・・」
男の一人がポケットからバタフライナイフを取り出す。カシャンと柄を回転させ、刃渡り15センチほどの刀身を顕にした。
「ね?お姉さん・・・痛い目見たくないでしょ?」
「うわ!カイくん、悪者みたい」
「うっせーな、お前らだって同罪だってーの!」
キラリと街灯を照り返して光る刀身に私は足がすくんでしまう。目を見開き、身体が動かなくなる。
怖い・・・怖い・・・。
「やっと大人しくなったな」
んじゃ、と、男たちが私の両脇と後ろをしっかり固め、私は引きずられるように歩かされる。
「ホテルでいいか?」
「ああ!そうだな・・・」
「この辺安いのあったっけ?」
男たちは口々に言う。彼らにとっては日常。私にとっては生涯に一度のこと。
クソ・・・こんなくだらない男たちに・・・。
誰か・・・誰か!
助けて!
ぎゅっと目を瞑る。こんな時、私は一人だと実感する。私の周りには誰もいない、誰も私を助けない。悔しくて、悲しくて・・・情けない・・・。
「こら!オメーら、何してんだ?!警察だ!」
涙が溢れそうになった、その時、街の灯りが眩しくて逆光で顔貌はよく見えなかったが、男性が公園の入口に立っているのがわかった。右手に警察手帳のようなものを掲げている。
「やべ!」
男たちは私をドンと突き飛ばすと、文字通り、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
げほ・・・
さっきお腹を殴られた衝撃がまだ残っている。私は咳き込んでしまった。
とにかく、助かったみたいだ。
警察の人が偶然通りかかったのだろうか?
「大丈夫ですか?風見先生・・・」
走り寄ってきた人は、私がよく知る人だった。
さっきまで一緒にいた人。
「武内先生・・・?なんで?」
☆☆☆
その後、武内先生が、私を家まで送ってくれた。送ってくれる道すがら、少し話をした。
彼が言うには、紫藤くんたちを家に送ったあと、どうしても私に謝りたくて、ダメ元でと思って戻ってきたのだという。
「そうしたら、助けてって先生の声がして」
それで、持っていた黒い手帳を警察手帳のように広げて見せて、チンピラを追い払った、というわけだった。
随分、危ない橋を渡りますね、と言ったら、必死だったんで、と彼は少し笑った。
「謝る、って・・・何をですか?」
どちらかと言うと、私の方がひどいことをしたと思うが・・・?
ええと・・・。
武内先生が言い淀む。
「下心、あったのは確かなんで・・・」
照れたように言った。
そんな事を言うために戻ってきたの?
ちょっと呆れる。
ああ、この人はお人好し、なんだな。
そう思った。
「ここまででいいです」
私の住んでいるマンションが見えるところまで一緒に来てくれた。やっぱり自分の住んでいるところの下まで一緒というのは抵抗があったので、少し離れたところで別れたかった。
「あ!あの・・・」
私が歩き始めると、武内先生が声をかけてきた。
振り返ると、腰をぐっと曲げて最敬礼の姿勢をとっていた。
「気持ち悪い・・・思いさせて・・・すいませんでした!」
人通りもある街中、彼は大声で私に謝ってきた。道行く人が変な目で見ているじゃない。
なによ・・・なんだっていうのよ。あんた。
私、あんなにひどいことしたのに。あんたのこと自分のために利用しようとしただけなのに・・・!
そう、この時の私はいつになく酔っていた。
足元がふらつくくらい、ひどく酔っ払っていたのだ。
だから、これは、きっと気の迷い。ほだされたわけでもないし、別に彼のことが好きな訳でもない。ただ、なんとなく、なんとなくだ。ちょっと胸がいっぱいになったってだけで・・・。
私は踵を返して、武内先生に近づいた。武内先生が顔を上げる。驚いたような表情を浮かべた。
「風見・・・先生・・・?」
顔を上げた彼がなんだか間抜け面で笑ってしまいそうだったけど、そんな気持ちとは裏腹に、気がつくと私は、彼の唇にキスをしていた。
腸が煮えくり返るほどムカついている。
『あんたがたまたまくだらない男にしか会えなかっただけでしょ!?』
そうよ!そのとおりよ!それの何が悪いってのよ!
だから、こっちから願い下げだっつーの!
あんただって、そのうち大きくなって男に騙されりゃわかるわよ。
ああ・・・むしゃくしゃする!
コンビニに立ち寄って、ストロング缶を買う。普段の私はあまりアルコールを飲まないが、今日は別だ。このいらだちを抑えるのに、酒の力を借りたい。借りずにはいられない。
コンビニの近くの公園のベンチで、ブシっとストロング缶を開け、一息に呷る。冷たいアルコールが喉を通過し、胃がカッと熱くなった。
500mlの半分も飲む頃にはいい感じに酔いが回ってきた。
「何が『私が許さない!』よ・・・」
思い出したくないのに、さっきの二階堂愛里沙の切った啖呵が頭にリフレインする。
ああ!もうムカつく!
腹立ち紛れに残りを一気に呷ってしまう。ああ、足りねえわ・・・。
念の為、と買っておいたもう一本も開けた。
許せない・・・『私の秋良を』って・・・。
なんで、あんなに怒れるの?
酔いが回って、頭がくるくるしてきた。思い出したくないことをたくさん思い出す。もっと、もっと昔のこと。
熊谷健太・・・。
アイツらがやったことについては、ふざけんな、と思った。
でも、私もアイツのことを別にそれほど好きじゃなかったんじゃないかな。
それに、その後の小学生とのセックス・・・好きだったのかっていわれれば、そうじゃないかもしれない。興奮はした、征服感はあった・・・でも、それは愛だろうか?
ああ・・・そうか・・・イライラしている理由がわかった。
二階堂愛里沙、あの子はちゃんと愛しているんだ。
紫藤秋良を・・・
大事にしてるんだ、あの武内小太郎を・・・
だからか・・・そんなに人を愛せる、大事にできるあの子が、羨ましくなって、自分が情けなくて、それで、苛つくんだ。
そうだ・・・私がカップルを壊したいと思うのも、私にないものを持ってるのが妬ましくて、欲しくて・・・だからだったのか・・・。
こんな、自分の心の内を、あんな年端もいかない小娘に暴かれて・・・。
ああ・・・いけない、駄目だ・・・。私は一人で生きてかなきゃいけないのに・・・
こんなところで泣くわけにはいかないのに・・・。
涙が、出そうだ。
ぐいっと二本目のストロング缶の中身を胃に流し込む。
もう、取り戻しようがない。どうすることもできない。
あのことを武内先生に知られた以上、この学校も早々に引き払うしかない。何を口実にしよう。親でも死んだことにしようかしら?
あゝ、私ってば・・・情けない。
二階堂愛里沙・・・あんな真っ直ぐで、曇りがない目で、好きだって言える。
なんなのよ、あいつ・・・。ほんと、ほんとうに鬱陶しくて・・・眩しくて、羨ましい・・・。
そんな事を考えていた。
そう、このときの私は、ぐるぐるとした頭で、ぼんやりと考え事をしていて、いつもなら払うはずの当然の注意を払っていなかった。こんな暗がりで一人ぼけっとしているなんて、普段なら絶対にしないことだった。
そして、考え事に夢中で、周囲を知らない数人の男性に囲まれていることにすら、気づかなかった。
「おっやー!?お姉ちゃん・・・一人?随分酔っ払ってるみたいじゃん?俺等と・・・遊ばない?」
ニヤニヤと笑いながら、崩れた格好をした若者が5人ほどで私の周囲を取り囲んでいた。
逃げなくちゃ・・・。立ち上がり、駆け出そうとするが、酔いが回っていて、うまく走れない。足がもつれたところを男の一人に抱きとめられるようにされてしまう。
「おお!お姉さん、積極的だねえ・・・!おっぱいでけえし・・・これから楽しいことしようぜ?な?」
ぎゅっと手首を掴まれる。とても力じゃ敵わない。
後ろから腰のあたりを両手で掴まれ、なおさら身動きが取れないようにされる。
「静かにね?騒ぐと・・・わかるよな?」
後ろから私を捕まえている男が耳元で言う。
「おいおい!脅しちゃ可愛そうじゃん?・・・大丈夫、大丈夫、俺達紳士だし!」
「そうそう・・・優しく輪姦(まわ)してあげるから」
ゲラゲラと下品に笑い合う男たち。
私は唇を噛む。悔しい・・・たしかにあの娘の言う通り。私が会ってきたのはくだらない男ばかりだった・・・。昔も、そして、今も。
男たちの笑い声が、かつて教室で私をバカにしていた男子の笑い声に重なる。
なんで・・・なんでよ!
なんで二階堂愛里沙はあんなにまっすぐいられるのに・・・私は・・・私は・・・。
「ささ・・・行きましょう、楽しい、楽しいパーティーだよ?」
ぐいっと手を引かれる。
『天が許しても私が許さないんだから!』
そんなふうに言える自分になりたい・・・。あのときも、私は馬鹿にされたままただ引っ込んでしまった。二階堂愛里沙なら、迷わず教室に怒鳴り込んでいっただろう。
そうか・・・そうなりたい。私も、ちゃんと私でいられるように・・・。
だったら、せめて抗ってみよう。今回は。たとえ駄目でも、何でも!
「いや!離して!!」
私は無茶苦茶に腕を振って抵抗する。突然の抵抗にびっくりしたのか、手首を捕まえていた手が緩む。その隙に持っていたハンドバックをブンと振り回して、周囲にいる男を牽制した。
「助けて!!」
大声で叫ぶ。
「おいおい・・・騒ぐなよ!」
ただ、多勢に無勢、すぐに私は羽交い締めにされ、口を手で塞がれる。
ちくしょう・・・ちくしょう・・・!
ガリ・・・と思い切り手を噛んでやった。
「痛って!」
慌てて、男が口から手を離すが、羽交い締めは溶けていない。
「助けて!!!!」
口が開いた隙にありったけの声で叫ぶ。だが、またすぐに口を塞がれる。今度は噛まれないように誰かの洋服越しだ。
そして、腹に一発パンチを食らってしまう。
ぐううう・・・。
重苦しい衝撃で思わず前傾になる。
「騒ぐなよ!姉ちゃん・・・・諦めて?な?」
あ・・・諦めるもんか!
なおも私は力のかぎりジタバタした。
「しょうがねえなあ・・・」
男の一人がポケットからバタフライナイフを取り出す。カシャンと柄を回転させ、刃渡り15センチほどの刀身を顕にした。
「ね?お姉さん・・・痛い目見たくないでしょ?」
「うわ!カイくん、悪者みたい」
「うっせーな、お前らだって同罪だってーの!」
キラリと街灯を照り返して光る刀身に私は足がすくんでしまう。目を見開き、身体が動かなくなる。
怖い・・・怖い・・・。
「やっと大人しくなったな」
んじゃ、と、男たちが私の両脇と後ろをしっかり固め、私は引きずられるように歩かされる。
「ホテルでいいか?」
「ああ!そうだな・・・」
「この辺安いのあったっけ?」
男たちは口々に言う。彼らにとっては日常。私にとっては生涯に一度のこと。
クソ・・・こんなくだらない男たちに・・・。
誰か・・・誰か!
助けて!
ぎゅっと目を瞑る。こんな時、私は一人だと実感する。私の周りには誰もいない、誰も私を助けない。悔しくて、悲しくて・・・情けない・・・。
「こら!オメーら、何してんだ?!警察だ!」
涙が溢れそうになった、その時、街の灯りが眩しくて逆光で顔貌はよく見えなかったが、男性が公園の入口に立っているのがわかった。右手に警察手帳のようなものを掲げている。
「やべ!」
男たちは私をドンと突き飛ばすと、文字通り、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
げほ・・・
さっきお腹を殴られた衝撃がまだ残っている。私は咳き込んでしまった。
とにかく、助かったみたいだ。
警察の人が偶然通りかかったのだろうか?
「大丈夫ですか?風見先生・・・」
走り寄ってきた人は、私がよく知る人だった。
さっきまで一緒にいた人。
「武内先生・・・?なんで?」
☆☆☆
その後、武内先生が、私を家まで送ってくれた。送ってくれる道すがら、少し話をした。
彼が言うには、紫藤くんたちを家に送ったあと、どうしても私に謝りたくて、ダメ元でと思って戻ってきたのだという。
「そうしたら、助けてって先生の声がして」
それで、持っていた黒い手帳を警察手帳のように広げて見せて、チンピラを追い払った、というわけだった。
随分、危ない橋を渡りますね、と言ったら、必死だったんで、と彼は少し笑った。
「謝る、って・・・何をですか?」
どちらかと言うと、私の方がひどいことをしたと思うが・・・?
ええと・・・。
武内先生が言い淀む。
「下心、あったのは確かなんで・・・」
照れたように言った。
そんな事を言うために戻ってきたの?
ちょっと呆れる。
ああ、この人はお人好し、なんだな。
そう思った。
「ここまででいいです」
私の住んでいるマンションが見えるところまで一緒に来てくれた。やっぱり自分の住んでいるところの下まで一緒というのは抵抗があったので、少し離れたところで別れたかった。
「あ!あの・・・」
私が歩き始めると、武内先生が声をかけてきた。
振り返ると、腰をぐっと曲げて最敬礼の姿勢をとっていた。
「気持ち悪い・・・思いさせて・・・すいませんでした!」
人通りもある街中、彼は大声で私に謝ってきた。道行く人が変な目で見ているじゃない。
なによ・・・なんだっていうのよ。あんた。
私、あんなにひどいことしたのに。あんたのこと自分のために利用しようとしただけなのに・・・!
そう、この時の私はいつになく酔っていた。
足元がふらつくくらい、ひどく酔っ払っていたのだ。
だから、これは、きっと気の迷い。ほだされたわけでもないし、別に彼のことが好きな訳でもない。ただ、なんとなく、なんとなくだ。ちょっと胸がいっぱいになったってだけで・・・。
私は踵を返して、武内先生に近づいた。武内先生が顔を上げる。驚いたような表情を浮かべた。
「風見・・・先生・・・?」
顔を上げた彼がなんだか間抜け面で笑ってしまいそうだったけど、そんな気持ちとは裏腹に、気がつくと私は、彼の唇にキスをしていた。
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