未来の記憶と生徒会の先輩

ゆきち

文字の大きさ
3 / 6

翌日と旧校舎

しおりを挟む
翌日、僕はまとめたノートを持って学校に向かった。結論は出なかった。先輩から実際に起こることを聞かないとわからないからだ。僕の場合はあまり日常生活に不便はない。ただ白石先輩の場合は別で日常生活に支障が出ることが起きている。先輩を治す方法は、僕の未来の記憶の修正時に出てきたことを片っ端から試す以外思いつかなかった。学校につき、自転車を止めて昇降口に向かっていると近くの生徒が会長について話していた。
「ねぇ、会長と副会長ってさ、付き合ってるのかな?」
「わかんない。でもあの2人、よく一緒に帰ってるし、物理的距離も近いよね。」
「だよね!今日の朝も雑談をしながら並んで歩いているのを見たって。あの白石さんが笑顔で話してたって。」
「マジで!?それは見たかったかも。」
そんなこと一切思いつかなかった。いいや、思いついていたけど無視をしていた。僕がしたいことは白石先輩が記憶を失わなくなることで、付き合っていようが変わらない。少し心が痛んだことに気づいていないふりをすることにした。

放課後、生徒会室に行くと会長と白石先輩がいた。
「やっほー、ゆうちゃん。」
「会長、白石先輩こんにちは。」
「結城くん、こんにちは。」
「ゆうちゃんは今日は俺たちの説明を聞いてもらおうか。」
「もちろんです。僕も色々聞きたいことがあるので。」
覚悟を決めた。多分これから白石先輩のことについて話される。生徒会補佐として知っておくべき情報だと思う。そして僕もいうべきだと思う。未来が見えること、先輩を治す方法があるかもしれないこと。未来の記憶が修正された時に泣きながら笑う白石先輩がいた。多分いつになるかはわからないけれど先輩を治せるということだと思う。
「結論から話すと、私は毎月25日にその1ヶ月分の記憶が消えます。一度消えると思い出すことはないので一生思い出すことはできません。昨日、放心状態みたいなぼーっとしていたのはそういうことです。」
「…なんとなく察していました。」
「しろちゃんのこれは原因不明でどうしたら治るかがわかっていない。脳に異常はないし発症したのはこの生徒会に入ってからなんだ。」
大体昨日の夜に考えたことはあっていた。僕からもいうべきだと思い口を開いた。
「あの、僕も言わないといけないことがあって…」
2人は少し驚いたような顔をした。
「先輩と同じように僕にも原因不明のことが起こります。」
「結城さんもですか?」
「ゆうちゃんも記憶なくなるの?」
「えっと、僕の場合は逆です。未来の記憶が見えるんです。」
「え……」
2人はそんな人いるのかというような顔をしながら僕の言ったことを理解しようとしていた。
「未来の記憶は毎月25日に修正されます。行動から未来を予測して結論を先に提示されるみたいな感覚です。未来の結論は基本変わらないんですけど大体1年間分の未来を見ることができます。」
無言の時間ができた。僕は2人の反応を待った。先輩の記憶がなくなることくらいなら予測ができていたから驚かなかったし、2人の方が驚いている可能性が高いなと思い黙ってみた。
「えっと…しろちゃんは記憶を失い、ゆうちゃんは記憶が見れるってこと…?」
「そういうことです。僕のは生まれた時からなので発症原因はわからないんですけど。」
「私も記憶にいましたか…?」
「いました。だから記憶を失くさなくてすむ方法を一緒に探しませんか。僕が探して、白石先輩が試すみたいな形にはなってしまうんですけど…」
「しろちゃんの好きにしたらいいと思うよ。」
「私は……」
白石先輩は黙って考えている。多分治したいけれど治るという確証がないから迷っているのだろう。
「…私は治したいです。結城さん、協力していただけますか?」
「もちろんです。」
僕と白石先輩は協力関係になった。

「試したい方法はいくつかあるんですけど、説明してもいいですか?」
僕は昨日まとめたノートを取り出して白紙のページを開いた。今の所やってみたい方法は3つ。
1、記憶がなくなる直前まで話し続ける
2、僕の未来の記憶を使って記憶の接続を図る
3、発症当時の再現をする
1と3は結構簡単にできるんじゃないかなと踏んでいる。昨日誰もいない時に発症してしまったからどういう原理で起きているのかがわからない。だからこそ1を試したい。2だけはあまり現実的ではない。脳波を繋げてみるという暴挙だ。僕が寝ている状態の未来が見れる状態の時の脳波を白石先輩に繋げることで少し改善しないかなという妄想だ。
「この3パターンを試したくて、3ヶ月かかってしまうのは確定なんですけど…」
「発症当時の再現は今でいいならできるよ。俺しか覚えてないから頼りないかもだけど。」
「もしかしたら25日以外でも特定のタイミングで記憶が消えるとかもありそうなので試したいです。白石先輩、やりますか?」
「私も、はやく治る可能性があるならやりたいです。」
「じゃあ決定だな。旧校舎に行こうか。」
会長は立ち上がって旧校舎の鍵をとった。白石先輩は旧校舎と言われてから少し手が震えている。
「白石先輩、旧校舎は嫌ですか?」
「えっと…」
「しろちゃんの記憶が消えるようになったのは旧校舎に出入りした後なんだよ。だから極力しろちゃんには近づかないようにしてもらってるの。でも今回は流石に行かないことはできないから…」
「白石先輩、やめましょうか。」
「え……」
「嫌な状態で行っても体に負担をかけるだけです。試せるものが減るのは少し痛いですが、僕は無理をしてまで行く必要はないと思っています。」
あの旧校舎は嫌な雰囲気があるのは確かだ。嫌なら近づかないほうがいい。しばらく無言の時間が続いた。葛藤しているのだろう。
「行きます…」
「大丈夫ですか?」
「行かないと変わらない気がするので。変わるためにも。」
「しろちゃんのそばには俺がつくよ。」
「助かります。僕の背だとすぐに抱えることはできないので。」
会長の方が背が高くガタイもいい。僕が隣にいるよりも心強いだろう。

旧校舎にたどり着いた。僕が先頭を歩き、後ろに白石先輩と会長がいる。会長は白石先輩に合わせて歩いているから僕が先陣を切るしかなかったのだ。
「会長、1番最初に症状が出たのはどの辺りでしたか?」
「旧校舎の教室の一室だ。玄関から入ってすぐ右の教室で掃除中に急に気絶して起きたら記憶がない状態だった。」
「この部屋ですか…」
昨日外を掃除した時に嫌な予感がして、唯一近づきたくなかった部屋だった。
「白石先輩、まだ平気そうですか?」
「まだ大丈夫です。ただ少し頭痛がしていて…」
「無理はしないでくださいね。」
僕が部屋を見渡して物色し始めると不思議なものを見つけた。ノートだが紙が黄ばんでいる。
「会長、これ知ってますか?」
「知らないな。ノートにしても古すぎる。」
「ですよね。確認したいので中身見ますね。」
ノートを開いた。内容は不思議なものだった。記憶の原理とショックを起こす方法、継続方法とどうしたら人間を洗脳できるか。
「このノート結構古い割には現代的なことが書かれてありますよ。」
「しろちゃんはそれを見てしまったからこうなったのか…?」
「可能性はあります。会長、白石先輩を連れて外に行けますか?」
「あぁ。しろちゃん、行くよ。」
白石先輩はこのノートを見つけてから一度もしゃべっていない。これ以上ノートに注目させるのは得策ではない気がしたから外に出てもらった。僕はノートを見ながら解決方法を探した。すると最後のページに解除方法が書いてあった。
「洗脳はストレスと反応し、解除方法は未来を見る子が当人の未来を見て安心させることが必要。」
僕は自分以外の未来を見たことがない。失敗する可能性が高い。会長に協力してもらって実験するしかない。僕はノートを棚に細工して隠し、外に出た。

「会長、白石先輩、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。少しの間しかあの部屋にいなかったので無事です。」
「俺も平気。それより、治す方法書いてあったのか?」
「ありました。でも僕はそれを試したことがないです。だから少しの間だけ待ってください。」
白石先輩は安心したような顔をしている。治る可能性が出てきたから安心するに決まっているだろう。会長は心配そうな顔をしていた。試したことがないなんて怖いことでしかない。失敗する可能性も十分にあり得る。どちらの顔も理解ができるし納得ができるからこそ僕は複雑だった。
「白石先輩、絶対に治すので待っていてください。」
「わかった。信じてるよ。結城くん。」
「俺は何もできないから待つしかできないんだよな。」
「会長は僕ができない先輩のケアをお願いします。記憶がない白石先輩の対応は僕じゃできないから。」
「おう。まかせろ!」
この後生徒会室に戻って僕は解除の原理を探し、先輩たちは生徒会の仕事を進めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...