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第一章

【番外編】君にとってのラーメンに勝てるんじゃない?

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【植木風斗】(うえきふうと)30歳。

今日この日、
3年間お付き合いをしている、
彼女【真戸玲香】(まとれいか)に
プロポーズをしようと思っている。


ちなみにプロポーズは今日で2度目となる。


1回目は夜景の綺麗な
フレンチを食べ終えた後に、
指輪を見せて、プロポーズをした。

植木「僕と結婚してくださいッッ!!!」

ついでに赤い花束も用意した。


しかし彼女からは辛辣な返答が帰ってきた。


真戸「ありがとう、
でもちょっと待ってほしい…。」



植木(!?)∑


待ってほしいとは??
遠回しに断られたのだろうか?……


プロポーズのシチュエーションが
ベタすぎただろうか……


彼女は少し完璧主義な一面があり、
昔から安易に首を縦に振らない性格だった。



普通の人なら
心が折れているかもしれないが、僕は違う。


以前、僕の親友の橋本が言っていた。


「1回誘って駄目でも、
100回目には成功するかもしれない。」


「俺は100回目に成功するかもしれないのに、
99回目で諦めたりはしない。」


その言葉が今でも僕の心に突き刺さっている。



2回目の今日は彼女と初めて食事をした
思い出のラーメン屋さんに行って、
その帰りに場所を変えて、
プロポーズをしようと思っている。


フレンチディナーよりも
その方が良いといつも言われるからである。


緊張すると満足するまで
食べられない事があり、それが嫌らしい。


3年前の出会ったばかりのあの頃のように、
長い列に並んで、食券を購入する。

その時植木はお店の雰囲気に違和感を感じた。

植木と真戸がいつも入店している
ラーメン店は、男性客が多い。

二郎系のほとんどの店は
早く食べて、早く帰る。
そういった、風潮があるものなのだが、
(※店によります)

この日は何故か女性客も数人いて、
やけに賑やかに会話をしている人が多かった。


植木「今日もいつものメニューでいいの?」

真戸「いや、今日は少なめ、小盛りにする。」

植木「珍しいね、ライス付ける?」

真戸「付ける。」



このところ機嫌が悪いのか、
ちょっとわがままな素振りを
見せる事が増えた。


植木「食欲ないの?俺並盛りにするけど、
食べられなかった時の為に小皿貰おうね。」


3年前と同じ席に座って
同じ注文をする。

店員「いらっしゃいませー
ニンニクはどうされますか?ー」

植木「並盛りまぜそば、
野菜なしチャーシュー追加、
アブラマシマシニンニクなし」
植木「あと、チャーシュー麺小盛、
野菜麺半分、小ライス、生卵、
ニンニクなし」



植木「あと小皿1つください
ウーロン茶は2つで」


店員「かしこまりましたー。」


植木「本当に大丈夫?もしかして体調悪い?」


真戸「大丈夫、」


そしてすぐにラーメンがテーブルに届いた。


店員「ご注文以上ですか?」


植木「はいありがとうございます…、」


植木「今回はうつわ逆じゃなかったね。」

真戸「……。」

真戸「あの、………」

真戸「私これ全部食べれないかもしれない。」


植木「お店出ようか……、
無理して食べないほうがいいよ。」

真戸「ううん、食べたい。」


植木「じゃあ食べれない分を
小皿に取り分けてください、」

真戸(!?)∑

真戸「風斗最近良く食べるね、
前は少食だったのに。」

真戸「本当に食べられるの?」

植木「大丈夫、野菜なしになってる。」

植木のラーメンには野菜がなかった。
【※注文時、野菜をなしにしていた。】

植木「少し多めにください、
心配しなくても食べられるからね。」


植木「なんせ……」



植木「ラーメンは飲み物ですから。」



植木「ライスは食べられたら食べてみてね。
食べられなかったら僕が食べるよ。」


真戸「頼もしいね…」

真戸が少し笑顔を見せた。

そして髪の毛を1つに結んだ。

真戸「麺が太くてうまくすすれない…」


植木「玲香は口が小さいから、いつも
すすれないんだよね、僕は男性だから
すすれるようになったでしょ?」

植木は汁が飛ばないように
口を手で隠しながら
真戸からもらった野菜を食べ始めた。


植木「あまり見ないでね。」

植木「僕たぶん今食べ方汚い。」


真戸「あっ!ごめんね……」


植木「どうしたの?食べないの?」


植木が真戸の方を見ると、

真戸は急に泣き出した。



植木「えッッ!??どうしたのッッ!???」

植木「なんか辛い事でも
あったのッッ!??」∑


植木「ごめん僕気がきかなくて!!!」
ヾ(・ω・`;)ノ


植木がそう言うと真戸は首を横に振り、
より一層泣き出す。


真戸「うぅ、……違うの………」


溢れる涙を手ではらうが
後から後から涙が溢れてくる。


どうにも止まらないようだった。


真戸がカバンから小さな箱を取り出した。


真戸「風斗にこれ渡したかったの……」


植木「えええ!!!あ、ありがとう!!!」∑

植木「とりあえずハンカチあるから
涙拭こうね……」

そう言うと植木はハンカチで
真戸の涙を拭ってあげた。


植木「あーあー、駄目だね、全然止まらないねー、
何があったのよ、言ってご覧ん?」


真戸「……うぅ、クズッ……箱開けてほしい………」

植木「なぁにー?じゃあとりあえず開けるよ???」

植木「いいの?」

真戸は首を縦に振って頷いた。



見た目はプレゼントボックスのようだった。

赤い包装に包まれている。




植木は丁寧に包み紙を外した。



そして思わず、言葉をこぼす。


植木「とまりんだ!!!」


【とまりんとは、植木と真戸が
今はまっている、トマトがモチーフの
どこかの地域のご当地
キャラクターの事である。】
(※架空キャラ)

植木はさらに包装を開封する。


植木「これはとまりんの
ぬいぐるみ用の衣装だね!!」

植木「どうしたの?これ?
とまりんの柄だね??」


真戸は泣きながら首を横に振った。


真戸「違うの………」



真戸「それは子供用だからッッッ!!!!」



植木(????)



植木「……………。」




植木(!?)∑






風斗「え゛え゛ッッ!!!」





風斗「そういう事!???」∑




風斗「僕パパになれるって事!??」∑




玲香「そうだよ………」


玲香「おめでとー風斗……」






その時、
カウンター席の一人の客が声をあげた。


客「おめでとー!」


そしてこちらに拍手をした。


風斗と玲香に気が付いた他の客も
こちらに振り返り、
つられて全員が拍手する状態となった。


風斗「すみません、なんか………(◎_◎;)」

風斗「ありがとうございます、
なるべくすぐ食べますからッッッ!!!」


そう言うと玲香の涙がようやく止まってきた。

玲香「本当は最初のプロポーズ嬉しかったの……」


そしてまた泣き出す。


玲香「でも風斗が先に
高そうな宝石の指輪とか渡してくるから……」


玲香「びっくりしちゃって、動揺して……
私気が引けて………うぅ……クズ………」


玲香「血圧も低いし、悪阻(あそ)も辛くて……
混乱しちゃって……」


【悪阻が何か知らない人は
今後の為に調べてみてください。】


風斗「分かった分かった、すぐお店出ようね、
大変だったねッッ…」


玲香「お店出ない……」


風斗「そんなに食べたいの?」Σ



玲香「それもそうだけど……」




玲香「今日貸し切りだから………?」



風斗「貸し切りって何ッッッ!!!」∑



泣いていた玲香の心配をしていた風斗だが、
ここで周りの客の異変に気がつく。


風斗「え゛ッッッ!!!」∑



店の客全員が、
風斗と玲香の親族、友人であった。

風斗(!?)Σ


風斗「ラーメン屋貸し切りなんてッッ!!
聞いたことないよッッッ!!!」Σ


そして、親族、友人の
客の中には風斗の親友の橋本もいた。


最近、橋本には彼女が出来ていて、
その彼女と一緒に来てくれたようだ。


そして橋本が言った。


「あ゛!!麺が伸びちゃいますね!!!」∑


その一言で、全員がラーメンの方を向いた。


橋本が「とりあえず俺、
先にラーメン食べちゃいますね!」と言ったら、


親族友人一同が、つられて、
慌ててラーメンをすすりだす。

そして賑やかな会話が聞こえてくる。


「この麺太いのね、すするのが難しいわ。」

「量が多くて食べごたえあるな!」

「チャーシューホロホロで美味しいね!」

「マヨネーズみたいなのかけると美味しいぞ。」


「美味しい」

「美味しい」

「美味しい……」



各々皆が言葉を揃えた。


その光景に店長は感動して
少しだけ泣いていた。


玲香は妊娠中の悪粗で
ライスと少しのスープ、そして、
チャーシュー一切れしか食べられなかった。


3年前と同じように、
この日も玲香はお腹いっぱいにならなかった。



でも凄く心が満たされていた。


玲香「血圧も正常になった後に
妊娠出来てよかった。」
(※絶対に真似しないでください。)


玲香「私ラーメン本当に大好き。」


そして店内の皆が、
ラーメンを食べ終わった後に、
風斗はひざまずいて、
指輪の箱を2つ差し出した。


片方は1度目のプロポーズで渡した物で、
もう一つは食品サンプルのラーメンがついた、
玩具の指輪だった。


そして風斗は思った。



(これから先、
どんなに君が身体を壊したとしても、
僕が守ってあげよう……)


(血圧低いのもサポートして、
僕自身が君の薬になりたい。)





(僕は君にとってのラーメンになりたい。)




end、、、&、、
「小説の制作秘話」のエピソードもあります。
良ければそちらも探して読んでみてください。


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みんなの感想(1件)

もりりん
2024.01.15 もりりん
ネタバレ含む
はぁTornado
2024.01.15 はぁTornado

ご指摘ご感想ありがとうございます(ㅅ´ ˘ `)
短所も長所として見ていただけると幸いです。

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